ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ストラディバリウスの不協和音〈届かない慈悲〉

 

 あのハロウィンパーティの晩に、コナン君は見事組織のボスへと繋がるメールアドレスの一部を取得したらしい。

 

 途中で見るのをやめたので現場で何があったから知らないが、コナン君は降谷さんにクソ怒られていた。

 

「君な、本当にな、自分がまだ死なないとでも思っているんじゃないか…?」

「えっ、そんなことないよぉ安室さんお顔怖いよ?」

「全面的に君のせいだよ???」

 

 降谷さんはガシリとコナン君の頭を手のひらで掴み、青筋の浮かんだ腕を見せつけながら笑顔で凄んだ。

 すげーな降谷さん。

 戸愚呂(弟)がこれ以上なく似合ってやがる…。

 

 そんなこんなで。

 降谷さんと諸伏さんはその件の後始末のため連日空けることになり。

 ここ数日は事務所には俺とコナン君だけになったのである。

 

 

 コナン君は事務所のソファで幾度もガラケーを片手に音の確認に勤しんでいる。

 ボスへ通じるメールアドレスの音が、どうも引っかかっているらしい。

 

 しばらく悩んだ後、「うーん、黄衣さん。この音ってどこかで聞き覚えない?」とコナン君が俺へと声をかけてくる。

 

「シラソラ?いや、俺もすぐには出てこないな…聞き覚えはある気はするんだけど」

「あ、やっぱり黄衣さんもシラソラだと思う?」

「おうよ。間違いない」

「そう言えば黄衣さんって作曲もするって言ってたっけ。絶対音感があったりするの?」

「それはどうだろ…?」

 

 俺は若干首を傾げた。

 おれは音楽神としての側面もあるため、音楽に関する能力はいくつかあるが…。

 改めて絶対音感があるかと問われると、自分ではよくわからない。

 その音の周波数が幾つかは正確に分かるが、別に音階で認識しているわけじゃないし。

 

 まあ、何はともあれ今日は依頼で遠出である。

 一通り仕事を片付けたら、事務所の戸締りをする。

 最近は極秘の書類も増えたため、上から魔術的な施錠も追加でかける。

 

「今日は何の依頼?」

「依頼者は設楽蓮希さん。有名な音楽家の一族だそうだから、もしかしたらコナン君が聞いたっていう音のヒントも聞けるかもしれないね」

 

 事務所の横に停めてあるハイエースに乗り込み、エンジンをかける。

 バンは二人で乗るには大き過ぎるが、もう一台は諸伏さんが乗っていってしまったから仕方ない。

 車用の安全管理魔術を起動して、窓ガラスに各種映像を投影する。

 SFカー仕様だが、それにコナン君も慣れたものだ。

 

 それから、続けて車にスマホを接続し、登録してあった音楽を車内にかける。

 

 今回かけるのは、コナン君用に一から俺が作曲したものだ。

 魔術的な音楽ではなく、曲構成を工夫しただけの極々普通の音楽になる。

 コナン君がこれを聞けば、緩やかにSAN値を回復させるように作曲してある。

 

 コナン君が上機嫌で俺の曲に聴き入りながら、ポツリと話しかけてくる。

 

「そう言えばこれ、他で聞いたことがないけどどこの曲?」

「あ、言ってなかったっけ。これ俺が作ったやつだよ。結構良い出来だろ」

「本当に!?じゃあここでかけてる別の曲も?」

「俺作でーす。崇めよー讃えよー」

 

 俺が鼻高々に胸を張ると「凄いんだけどそういう反応するから軽く見られるんだよなぁ」などとコナン君がつぶやいた。

 うるせぇわい。

 

 一応、作った曲はY◯UTUBEでミュージックビデオとして投稿済みだ。

 

 ここ1ヶ月ほど前からテツチャプトルという名義で活動を開始したのだのだが、再生回数はどれも100ちょっと。

 一番最近投稿した「黄色の帳」はヒーリングミュージックとして作ったので、特に再生数が控えめである。

 

 でも、この地味さが実力を評価されたようで嬉しかったりもする。

 

 三億年前とか何作ってもフロアが爆沸きするバグに見舞われてたからな。

 扱いはほぼ国歌であった。

 今週のテツチャプトルの音楽をチェックしてないやつは非国民ぐらいの勢いだったし。

 流石にあれはな、どうかと思うんだよ。

 

 

 と、二時間ほど車を運転すれば依頼人の家へと到着した。

 

 家というか屋敷だ。

 本館と別館に分かれていて、見上げるような洋風の立派な造りはその財力を感じさせる。

 

 まあ俺の持ってる別荘の方が豪華だがな!

 なんてったって壁から調度品までほとんど純金でできてるし!

 俺が無駄に張り合っているのを察したのか、コナン君が隣でジト目をしている。

 

 あの屋敷、コナン君が仕掛けを解いたら壁全部に純金が隠されてたことが分かったんだよね…。

 流石に仰天ってレベルじゃなかった。

 一瞬で俺の総資産がバグり散らかしてしまわれた…。

 

 その場は魔術で目眩しと盗難避けをかけて撤退したが、俺は終始顔面真っ青であった。

 これ、コナン君達は組織の痕跡を調査するため、そのまま所持していて欲しいって言ってたけど。

 固定資産税とかどうなってしまうんだ…?

 

 閑話休題。

 屋敷に着いたら、そのまま依頼人である設楽蓮希さんから詳しい依頼内容を聞く作業に入る。

 

 彼女は設楽家の孫娘で、ヴァイオリニストをしているらしい。

 三男の弦三朗氏は有名な指揮者で、甥の羽賀響輔氏は名の知れた作曲家。

 まさに音楽一家、エリート集団と言った感じだ。

 

 俺たちは本館へと案内されながら、若き蓮希さんから挨拶を受ける。

 

「こんなところまで来ていただきありがとうございます!本当に来ていただけるなんて、私思ってなくて!」

「あはは。ご縁があったということでしょう。それにしても、流石、素晴らしいヴァイオリンの腕でしたね。庭まで聞こえてきていましたよ」

「ありがとうございます。あ、この部屋です」

 

 蓮希さんに案内され、応接室と思しき部屋に腰を落ち着ける。

 屋敷の外まで響いていた彼女のヴァイオリンの腕は実に美しいものだった。

 

 流石にトルネンブラさんに見初められるほどとは行かないが…それでも、若くして相当な腕であることは間違いない。

 

 コナン君が椅子から身を乗り出し、蓮希さんを見上げた。

 

「それで、依頼って何なの?」

「うん。依頼っていうのはね。このストラディバリウスの呪いを解いて欲しいの」

 

 部屋に入る時一緒に持ってきた大きなバッグをパカリと開けて、それを俺たちの前へと見せてくれる。

 

 中身は一挺のヴァイオリンであった。

 

 覗き込めば、それが間違いなく本物のストラディバリウスと一目で分かった。

 音楽的積み重ねが、歴史として確かに俺の瞳に映っていたからだ。

 

 というか、その手の真贋判定を音楽神の側面もある俺が間違えたら普通に恥である。

 

 ちなみに、実は本物のストラディバリウスは俺も持っていたりする。

 

 俺とトルネンブラさんを交互に崇拝してた発狂音楽家の仕業なのだが。

 自分のストラディバリウスで演奏しながら、自分に火をつけて焼身自殺したという意味不明な事件がかつてあり。

 焼けたストラディバリウスと音楽家さんの魂を引き取った、という経緯がある。

 

 どうやら彼は俺とトルネンブラさんに音楽を捧げたかったらしいのだが…こんなダイナミックなお焚き上げされても普通に迷惑以外の何者でもないからな。

 トルネンブラさんはまるで興味がなさそうだったし。

 このまま亡霊になって自宅凸されても迷惑だったので、俺が保護したのだ。

 

 まあともかく、今は依頼内容に話を戻そう。

 

 コナン君が事件用の鋭い瞳で蓮希さんへと聞き返す。

 

「呪い?どういうこと?」

「……毎年同じ日に、このストラディバリウスを使った人が一人ずつ亡くなってるの」

 

 一昨年は設楽詠美。このストラディバリウスを演奏した直後に階段から足を踏み外して死亡。

 去年は設楽降人。同じくストラディバリウスを演奏した直後、腐った手すりに寄りかかって墜落死。

 

 コナン君が俺とチラリと視線を合わせた。

 

 俺は静かに首を振って、コナン君の疑念を否定した。

 魔術や神話生物の類は確認できなかったし、話を聞く限り事件の可能性は低そうだ。

 

 だが、この家の人間がどこか皆大きなストレスを抱えているのはよく分かった。

 それが本物の事件に発展する可能性は、確かに否定できないだろう。

 

 俺は努めて明るい声を出して、蓮希さんに声をかけた。

 

「ええと、ここにこれ以外のヴァイオリンはありますか?」

「ありますけど」

「ちょっと弾いてみたくなっちゃって。借りても良いですか?」

「え、……ううん、わかりました」

 

 困惑した蓮希さんは、それでも根が優しいのか立ち上がり、ヴァイオリンを取りに部屋の奥へと向かった。

 コナン君がヒソヒソと俺に声をかけてくる。

 

「急にどういうつもり?」

「ん、メンタルケア。この屋敷陰気臭くてさぁ」

「ふーん」

 

 コナン君は全然信じてなさそうだが、本当にこれはメンタルケア以外の意味はないのに。

 

 奥に置いてあるヴァイオリンを持ってきて、蓮希さんが俺へと手を出す。

 

「これ、私がよく練習用に使っているヴァイオリンです。弾いたことはありますか?」

「いんや。初めて」

「えぇ…?」

 

 初めてだが、それがどういう使い方をすれば最も良い音楽を響かせるかということぐらいは分かる。

 めちゃくちゃ心配そうな蓮希さんを置いて、俺はヴァイオリンを構えた。

 

 演奏する曲は……普通に汎用ヒーリングミュージックでいいか。

 つい先日Y◯UTUBEに上げたもので、できるだけ多くの人の心を癒す、を標語に作曲したものだ。

 タイトルは「黄色の帳」。

 

 ヴァイオリン用に適当に脳内で調整し直して、ゆっくりと弾き始める。

 

 柔らかなヴァイオリンの音色が、ゆったりと部屋に満ちていく。

 深みのある音色はよく使い込まれた、良いヴァイオリンである証拠だ。

 

 蓮希さんが目を見開いて、ただ茫然と息を呑んだ気配がした。

 

 

 一分半程度。

 曲が終わると、コナン君が半目で俺を責め立ててきた。

 

「黄衣さん、初めてって真っ赤な嘘でしょ」

「ホントだって」

「安室さんから嘘つきがうつったんじゃない?」

 

 初めてや言うとるやろがい!!

 俺作曲する時は魔術的DTMばっか使ってるから生演奏とは地味に縁が遠いんだよ。

 

 まだ呆然としている蓮希さんにヴァイオリンを返せば「あ、え…?」と俺とヴァイオリンとを交互に見たようだった。

 

 気恥ずかしくなって、なんとなしに窓の方へと寄って外を見る。

 美しい月夜が見られるかと思ったのだが、なんだかやけに空が赤く明るい。

 

「……燃えてる」

 

 思わず窓を開けて、外を覗き込んだ。

 コナン君が同じく異常を理解して駆け寄ってくる。

 

 弾けた火花が宙を舞う。

 目の前では。

 屋敷の別館が、ごうごうと燃えていたのだ。

 




・テツチャプトル作「黄色の帳」
強い憎しみ、怒り、悲しみなどの負の感情を解きほぐし、人の心をゆっくりと癒す音楽神の慈悲。
Y◯UTUBEで無料視聴できる。

・狂信者の皆様
まだ公式Y◯UTUBEチャンネルの存在に気がついていない。
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