ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ルパコナ〈邂逅〉

 

 14時間の空の旅は意外と短く感じた。

 

 公安が連絡を取ったのは、警視庁に所属している銭形警部という人物だった。

 なんでも、ルパン三世という国際指名手配犯に関係する場合にのみ、世界中でその捜査権を与えられた稀有な人物。

 

 銭形警部は突然公安に呼び出されて大層訝しげな顔をしたらしいが。

 俺たちの目的が誘拐された女子高生を取り戻すことだと知って、快く協力してくれた。

 

 「ルパンってどんな泥棒なんです?」「うむ…一言では言い表せん。とにかく、油断のならない奴だ」などと軽く会話して、空の旅を過ごす。

 今後のコミュニケーションも兼ね、公安組二人も積極的に会話に加わった。

 

 話してみるとお固い人だが見た目より人情味があって話しやすい人だった。

 

 その後一通り話し終わったところで、俺は到着まで一眠りした。

 その間も降谷さん達の方は積極的に銭形警部と情報交換を行なっていたらしい。

 とはいえ、降谷さんは疲れていたのか二時間ほど寝落ちていたらしいのだが。

 

 俺の方も寝ている間に「ハスターの瞳」から何件か通知が来ていたような気がするが、それは後で見れば良いだろう。

 

 ようやく到着したころには、体はすっかりバキバキになってしまっていた。

 

 そうして飛行機を降りてしまえば、その街の美しさがよくわかった。

 

 全体的にスペインやポルトガルに似た感じの、情緒あふれる街並みだ。

 日本との交流が深く治安もいいからか、ところどころに日本製の自販機の姿が見える。

 

『へぇ、ヴェスパニアってこんなところなんだな。流石に俺も初めて来たよ』

「僕もだ。さっさと毛利蘭を奪還して帰りたいところだ。国境を越えてしまえばこちらのものだからな」

 

 不機嫌そうにため息を漏らした降谷さんが、はっと何かに気付いたように優しい笑顔を作ってこちらを振り向く。

 

「ごめんね、少し言葉が強かったかも」

「えっ、うん、まぁ、……えっ?」

 

 突然のキャラ変に俺は動揺した。

 これはよく彼が依頼人とかにやってるホスト仕草…?何で急に俺に???

 

 俺が目を白黒させていると、前からやってきた男性が鷹揚に両手を広げて歓迎の意を示した。

 どうやら銭形警部をわざわざ訪ねて出てきた人物のようだ。

 護衛と思われる黒服が何名か後ろに付いている。

 位の高い人物なのかもしれない。

 

「ようこそ、あなたがあのICPOの銭形警部ですな」

「はい。銭形です。早速ですがルパンが狙っているという…」

「まあまあ、こんなところで立ち話もなんですので、中へどうぞ」

 

 警察手帳を見せた銭形警部に、男性は破顔した。

 

「私はジラード・ムスカ・ヴェスパランド。そちらの方は?」

「わしの助手です、ジラード公爵」

 

 借りてきた猫のように礼儀正しく、降谷さんは挨拶した。

 「助手の安室透です。ジラード公爵、お会いできて光栄です」と無害そうな笑顔を作っている。

 俺と諸伏さんも続けて挨拶する。

 

 その瞬間、ちらっとだけ諸伏さんから俺に視線が飛んだ。

 念話を繋いでくれという合図だ。

 

 他の合図は難し過ぎて全然身に付かなかったんだが、これだけは二人に叩き込まれたからな。

 テレパシーを繋ぐと、まず冷徹な声で降谷さんが情報を投下する。

 

『この男が日本でのミラ王女暗殺騒ぎを手引きしていた可能性が高い』

『え、どうして?』

『単純にヴェスパニア国内の権力情勢から見て、一番動機があるというだけだ』

『平たく言えば権力闘争って奴だな』

 

 諸伏さんが分かりやすく補足説明してくれた。

 なるほど、権力闘争か。

 ハイパーボリアの神殿でもあるにはあったが、こんな殺人やらが絡む苛烈なものじゃなかったな。

 

 ジラード公爵に案内されて、宮廷の応接室らしき区画へと足を運ぶ。

 どこもかしこも美しい装飾が施され、圧巻の一言だ。

 

『黄衣君、……君はジラード公爵の動きを確認しておいてほしいんだけど、できるかな?』

『で、できますけどぉ。え、本当にどうしたんだよ降谷さん』

『ゼロ、なんかキャラがブレてないか?』

 

 頭の回転の速い降谷さんが言い淀むだけでも珍しいことなのに、途中で声のトーンを変えて優しげにするとか、何が何やら。

 諸伏さんと二人で指摘すれば、降谷さんは少しだけ視線を逸らした。

 

『ああ、その。最近黄衣君に対して当たりが強過ぎたかなと、少し反省しただけだ。気にしないでくれ』

『?????ありがたいけど、俺はそこまで気にしてないぞ?』

『いいんだ。僕がしたいだけだから』

 

 俺も諸伏さんもしばらく無言だった。

 降谷さんの声はやっぱりどう聞いたって甘やかで、俺への慈しみに溢れている。

 

 絶対的に変な気がするが、チラリと見た感じ魂の侵食具合に異常はなかった。

 

 考えてみれば、降谷さんが疲れてフライト中寝落ちするのも奇妙だ。

 ニャルラトホテプの化身である黒い風は、自然現象であるがゆえにCON(耐久力)が存在しない。

 つまり、疲れ果てて意図せず寝落ちるようなことは考えにくい。

 精神的疲労が溜まって、ということがないわけではないから一概には言えないが。

 

 うーん。

 

 「では皆さん、紅茶を持ってきますので」とジラード公爵が言いかけた辺りで、諸伏さんが声を上げた。

 

「すみません、自分たちは先に宮廷内の間取りを確認してもよろしいでしょうか。なにぶんまだ若輩者でして、経路の把握も警部より随分時間がかかってしまい」

「よろしいですかな、ジラード公爵」

「ああ、構いませんよ。邸内のものにも伝えておきましょう」

「ご配慮感謝致します。それでは、自分たちはお先に失礼いたします」

 

 事前に示し合わせていた通り、俺たちは三人で廊下をまっすぐと進んで中庭に出た。

 内緒話には向かないが、最低限三人でルパンの侵入経路を確認しているようには見えるだろう。

 

 様子のおかしい降谷さんのことはひとまず置いておいて、まず俺たちはコナン君と合流すべき

 

 「ハスターの瞳」で確認すれば、ちょうどここから南東の庭園にいることが確認できた。

 

『見えた。コナン君は宮廷内にいるみたいだ。今から向かうから着いてきてくれ』

『よし。あとは蘭ちゃんだけだな。難儀なのは脱出の方だけど』

 

 諸伏さんがややげんなりとした様子を見せた

 複雑な宮廷内をマップ化して、最短経路でぞろぞろと進んでいく。

 降谷さんが平坦な声を出した。

 

『そちらは問題ない。黄衣君に魔術「門の創造」を使ってもらう』

『後で俺たちの出入国履歴に不備が出ないか?』

『もちろん「門の創造」で帰るのは毛利蘭と江戸川コナンだけだ。俺たちは何も不審な点がない状態で、正式に出国するんだ』

『いちゃもんつけて留め置かれるかもしれないぞ?』

『その時は、一緒に留め置かれた名高きICPOの警部殿に暴れてもらうだけさ。数多くの国の陰謀に巻き込まれ、それをその身一つで乗り越えてきたように』

 

 陰鬱に目を細め、降谷さんが吐息を漏らす。

 諸伏さんが思案するように言う。

 

『そんなに上手くいくか?あの陰謀クラッシャーで有名な、生ける警視庁の伝説相手に』

『いくさ。なにせ俺たちは、警部殿の信念に反することは何一つしていないのだから。攫われて殺されそうになっている未成年を助けただけ。その行為のどこに悪がある?』

 

 くすくすと悪辣に笑って見せた後、降谷さんは若干後ろめたいような顔をした。

 

『……まあ、嫌な顔はされるかもしれないが』

『純粋に性格悪過ぎて見捨てられるかもしれないから、今のうちに警部に協力要請しておこう』

『俺もその案に賛成。降谷さんは公安仕草が性根に染みつき過ぎだと思う』

『そんな。言う程非道じゃなくないか?』

 

 降谷さんは憮然としたが、思い当たるところがあるのかそれ以上反論しなかった。

 

 

 

 外周の庭園、そのベンチ付近にコナン君達はいた。

 見慣れぬ大人二人となにやら雑談しているようだ。

 

 「あっ、黄衣さん!」と俺の姿を見つけたコナン君が手を振った。

 かなりの無茶をしたようだが、無事で何よりだ。

 手を振り返し、「コナン君!」と駆け寄りながら隣にいる大人二人を見る。

 

 髭面の黒い帽子のおじさんと、赤いジャケットのサル顔さん。

 

「初めまし……ん?あれ、国民の人?」

 

 俺は思わず赤いジャケットのサル顔さんを二度見した。

 俺の「目」には、実に懐かしい国民を示すタグが浮かんで見えている。

 仮権限だ。

 

 正式権限の取得には「ハスターの瞳」の国民データベースへの登録が必須だから、これは仕方のないことだろう。

 なにせ国民データベースはすでに過去ログに移されてしまっている。

 登録が弾かれ、自動で仮権限になってしまったのだと思われる。

 

 しかしそれ以上に、俺の記憶をくすぐる何ががある。

 

 俺が言葉もなくサル顔さんを見ていると、居心地悪そうに「なんだよ?」と言われた。

 声にも聞き覚えがある。

 

 昔、いや、昔じゃない。つい最近だ。

 あれはそう。たしか、たしか……。

 

「あーーっ!!!寝てた俺の触手ぶった斬った人!!!」

「はいぃ!?」

 

 俺の突然の大声に、サル顔の男は飛び上がって驚いたようだった。

 





・触手ぶった斬り
 寝る前に術式の調整してたら召喚着拒の設定直すの忘れてて、寝てる間に触手の先っぽが極小召喚された大惨事。
 ルパンが以前出会った「怪物」の正体。
 遺跡のシステムや遺跡自体の崩落を利用して触手をぶった斬り、ルパンは見事正真正銘の旧支配者ハスターを遺跡内に閉じ込めた。
 なお、ハスターはじきに目覚めて寝ぼけながら慌てて帰った模様。
  
・洗脳
ニャル「よーしよしよし、良い化身ですね。もうちょっと、もうちょっと優しげかつ親しげに、心を込めてください」
降谷さん「やさしげ…したしげ…」(お目目ぐるぐる)
ニャル「あとなんか将来的には友情とかしたいですね。うーん、もうちょっと仕事減らして探偵事務所に入り浸れません?」
降谷さん「むり」
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