ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ルパコナ〈ニャルテンション〉

 

 コナン君の紹介で、見知らぬ男性2名の正体がなんと、かのルパン三世一味であることが分かった。

 

 俺もTVで見たことがある有名人物、神出鬼没の大泥棒だ。

 なんでも怪盗アルセーヌ・ルパンの孫らしいとかそうではないとか。

 俺の前世知識だとアルセーヌ・ルパンって小説だったような気がするのだが、まあ違う世界だしそういうこともあるだろう。

 

 ふむふむと頷いていると、ルパンはこちらを警戒するように目を細めた。

 

「んで、黄衣サンとやらは俺と前に会ってるみてぇだけんども?触手、と言ったら俺も心当たりぐらいはあるが……」

「あっ」

 

 皆の視線が集中する。

 特に降谷さんの視線が生ぬるい。

 お馬鹿な犬の動画を見たみたいな優しげな表情だ。

 

 最近は皆と仲良くなって完全に気を抜いてしまっていたが、これはまずい。

 流石の俺も、正体が馬鹿でかい触手の化け物だとバレて嫌われるのは嫌だ。

 

 俺はすっとぼけるなどして、何回か咳払いした。

 

「え、何のことだ?ちょっとよくわかんない」

『それは俺の目から見ても無理筋だと思う』

「黄衣さん隠す気あるならもっとちゃんとして」

 

 諸伏さんとコナン君が、同時に俺を責め立てた。

 冷たい視線だ。呆れているともいう。

 

 俺は両手で顔を覆ってしくしくと泣いた。

 コナン君だって割と頻繁に蘭ちゃんの前で工藤新一をお漏らししてるじゃんかよ!!!

 

 毒気を抜かれたのか、ルパンはやや戸惑った様子で肩をすくめた。

 奥のベンチで様子を見ていた次元大介が口を開く。

 

「おい、心当たりって何だ」

「俺が駆け出しの頃の話だよ。あれだけヤバかったのはマジであの時ぐらいだろってぐらいの。具体的には触手のバケモンが古代の遺跡からお出ましって感じなんだけども」

「勘弁してくれ。その手の話はもう懲り懲りだ」

「いや次元が話振ったんじゃんかよぉ」

 

 次元大介はさっさとタバコをふかし、聞こえないフリに戻った。

 ルパンはムスッとして、挑戦的な眼差しをこちらに向ける。

 

「まぁ、黄衣サンがよく分からないっつーんなら、そうなのかもな」

「めっちゃありがとう。そうです。俺はよくわかんないです。話を本題に戻したいんだけど良い?」

「……普段、察しが悪いけど素直でいい奴って言われたりしない?」

「もしかしてすごく罵倒されてる?」

「いんや、褒めてるぜ」

 

 ルパン三世の感想に、俺は思わず憮然とした。

 何が含むところがあったらしいが、INT(知性)が低くて気付くことができなかったようだ。

 ごめんね!これ以上恥をかく前に本題に入らせて貰うね!!

 

「ええと。俺たちはコナン君を引き取りに来たんだ。なんかルパンさん達も用事があるみたいだけど、俺たちもこれからの予定があって。いいかな?」

 

 「それは…」とコナン君が話し出す前に、次元大介が口を挟んだ。

 タバコの煙がゆっくりと燻り、宙に解けて消えていく。

 

「そいつは困るな。王族二人の死亡事件について、俺はこのガキと調査を依頼されているんだ」

「───関係ないな」

 

 凍えるような声を出したのは降谷さんだ。

 羽虫でも見るような、という形容が相応しい蔑むが如き極寒の眼差しで次元大介を睨め付ける。

 

「それはヴェスパニア王国のくだらない身内争いだろう。僕たちが考慮する必要があるのか?」

「この坊主が事件の解決を望んでてもか」

「現在の情勢下で事件の再調査などすれば、下手をすればジラード公爵一派に命を狙われかねない。そんな危険な真似をコナン君にはさせられないよ」

 

 心配のように聞こえる甘やかな響きで、降谷さんは眉を下げた。

 しかしその瞳だけは冷徹で、予測できない要素を管理統制したいという思惑が透けて見えるような色が浮かんでいる。

 

 次元大介もそう感じたのか、降谷さんの言葉を鼻で笑ったようだった。

 

 しかしながら。

 降谷さんは管理を言い訳にして護りたいだけの、理解してしまえば非常に臆病かつ素直なお人である。

 後ろで諸伏さんもあちゃー、と言う顔をした。

 普通に心配している旨を伝えた方が物事もスムーズに進むと思うのだが、ままならないものだ。

 

「話にならねぇな。公安が動いたとは聞いていたが、とんだはずれくじを引いたらしい」

「………なんのことかな?」

「こんな陰険な公安野郎が保護者か。坊主も苦労するな」

 

 絶妙に否定しづらい言葉をかけられて、コナン君も答えに窮したらしい。

 「お話は難しくてよく分かんないけど、安室さんは陰険なんかじゃないよ?」とぎこちない言葉を返す。

 

「無理してフォローすんな。あの顔を見ろ、性根が捻じ曲がってるのが良くわかる面構えだ」

「そ、そうかなぁ?安室さんはとっても優しい人だよ?」

 

 降谷さんはそろそろ生来の激情家の側面が顔を出してきたらしい。

 「ふざけているのか、犯罪者如きが」とマジトーンで呟きながら青筋を浮かべている。

 

 それを煽るような次元大介の仕草もあって、どうも場は穏便でない雰囲気に包まれる。

 敵対的というか、ピリピリとした空気感が肌を打つ。

 

 仕方ないので、俺は強引にでも話を進めることにした。

 

「ええっと、コナン君の望みなら王族の死亡事件の調査は任せたよ」

『!良いのか、予定は確実に狂うが』

「仕方ないさ。コナン君は探偵だから、目の前の謎からはテコでも動かないだろうし」

 

 そう言うと、コナン君が「えへへ…」といつもの誤魔化し笑いを浮かべた。

 降谷さんが大きなため息をつく。

 コナン君の強情さは降谷さんだってよく分かっているのに、なぜ変に意地を張るのか。

 俺は最近、降谷さんは根本的にはひどいコミュ障なのではないかと疑っているくらいである。

 

 ルパン達の方に向き直って俺は軽く言葉を紡いだ。

 

「俺はその間銭形警部に付いてクイーンクラウンを保護するから、あんた達は諦めてコナン君と事件の方に注力してくれ」

「……へぇ。ずいぶんとまぁ自信満々じゃねーの。俺がルパン三世だと知ってて、何か秘策でもあるのか?」

「うん?え、普通に俺が守るから盗むのは無理って話だけど…?」

 

 ルパンがぴくりと眉毛を吊り上げる。

 

 非常に単純な話だ。

 俺たちは銭形警部の助手としてこの国に入国している。

 その状態でルパンにクイーンクラウンを盗まれてしまえば、いらぬ仕事が増えて非常に困ってしまう。

 それを防ぐため、クイーンクラウンには俺が責任持って専用に構築した魔術をかけた。

 

 だから単純に、純粋に、人類に盗難は不可能だ。

 

「ふーん。挑発だとしたら結構センス良いぜ」

「挑発って何さ。ともかく、不可能だからどうしても盗みたければ俺たちが帰ってからにしてくれ」

「へぇそう。なるほど。俺様にそーゆーこと言っちゃうんだ」

 

 ニヤニヤといたずら小僧のように、ルパンが笑う。

 しかしその実燃え上がる情熱を奥に秘めた瞳で、俺を真っ直ぐに見た。

 何かスイッチが入ってしまっているのは一目瞭然だ。

 

「オーケーオーケー。明日の朝、盗みに入るからよろしく。予告状はちゃんとした奴を今日中に送るから」

「なんでそうなるの!!!無理って言ってるのに!事件捜査してくれよ!!!」

「おいおい、こんなに俺を煽ってくれちゃって、収まりがつくわけなくない?まったくもー、情熱的なんだから!」

 

 おちゃらけた口調だが、眼だけはギラギラと剣呑な光で輝いている。

 

 後ろで諸伏さんが「これがチャート崩壊ってやつか」などと冷静に頷いている。

 何故こうなったのか全然分からない。

 本当に無理なのに何故勝手に盛り上がるんだ。

 コナン君も「黄衣さんわざとやってる?」じゃないんだよ。

 わざとも何もないよ。

 

 そのとき。不意に。

 

「あはははははははははは!!!」

 

 降谷さんが大笑いし出した。

 無邪気に笑っているようで、その実、悪辣な意図と愚かな下等生物を見下すような傲慢さに満ちている。

 めちゃくちゃ露骨にニャルラトホテプである。

 

 ルパン三世がストンと表情を落っことし、ニャルを注視した。

 さりげなく次元大介は己の懐に手を入れている。

 

「あーおかしい!あはは、中々に笑わせてもらいましたよ!」

「へぇ、何がおかしいんだ、公安の兄ちゃん」

「コウアン?ああ、羽虫の群れの種類のことでしたっけ。まあそれは別に良いんですけど」

 

 笑いすぎたのか、涙を拭いながらニャルラトホテプは至極上機嫌に体を揺らした。

 めちゃくちゃ嫌な予感がする。

 こういうテンションの高いニャル野郎はいつも碌なことをしないからだ。

 今のうちに飛びついてでも止めるべきか、と若干思案する。

 

 でも、楽しそうな奴を見るのは俺も嫌いじゃないので、どうしても強く出ることができない俺である。

 つくづく、俺も奴には甘い。

 この流れで散々酷い目に遭ってきたのに。

 

 ニャルラトホテプはルパン三世をひたと見据え、微笑んだ。

 ルパンがやや重心を落とし、警戒の姿勢を取る。

 

 どうでもいいが、ルパンも次元もニャルが現れた瞬間臨戦態勢を整えたのはどんな直感力なのだろうか。

 外見的な情報は降谷さんと一ミリだって変わらないのに、野生の勘だとしたら凄すぎる。

 

「貴方、羽虫にしては実に面白い。これがレアモノってやつでしょうか」

「そりゃどーも」

「旧支配者を相手に啖呵を切るところも、実に愚かで勢いがあっていいですね。好感が持てます」

「………」

 

 ルパンが小さく「旧支配者?」と呟いているのが見えた。

 ニャルラトホテプは仄暗い光を瞳に灯し、ルパンへとゆっくり歩み寄る。

 

「そこで、今回は特別に僕からのプレゼントです。旧支配者に挑む貴方を讃え、ちょっとした加護を授けてあげましょう。喜び、咽び泣いてください。この僕が羽虫に加護を授けるなんて、滅多にないことなんですよ?」

「……それ、断ることはできるやつか?」

「うん?流石に反抗的な羽虫はこの場で潰しますが。でも、せっかくなので記念に魂は瓶詰めにして取っておきましょうね。僕ってば優しすぎません?」

 

 ふふ、と嬉しそうに笑うニャルラトホテプは、確かに本人の言うとおり普段に比べて格段に優しい。

 だがそれは邪神の優しさ、羽虫を甚振る傲慢な神の気まぐれだ。

 邪悪と嘲笑とが混ざり合い、もう俺の感性では悪い言葉しか列挙できない。

 

 俺はため息と共にニャルラトホテプへと声をかけた。

 

「あのな、ニャルラトホテプ。事態を混沌とさせるのはやめてくれないか?どうしてくれんだよこれ」

「え…?でも僕が出てきた時点ですでにめちゃくちゃでしたよね?」

「急に真理をつくのもやめて。俺を虐めて楽しいか?」

「めちゃくちゃ楽しいです。でも、僕もっと構ってほしくて…ねぇ、昔みたいにもっといっぱい遊びましょうよ」

 

 なんか急に面倒臭い彼女みたいなことを言い出した。

 キュルキュルと甘えるような仕草をするが、残念ながらガワが逞しい降谷さんなので怖いだけだ。

 せめて美女の姿になってから……いや、これ以上ニャル野郎の化身が身近に増えても困るだけだな。

 

 俺は腕を組んでニャル野郎を睨みつけた。

 

「本音を言えば許されるわけではないでーす。すぐ退去しなければ一週間後のユゴス観光はキャンセルしまーす」

「は???あまりにも理不尽なんですけど。本当にあの羽虫に加護を授けますけど良いんですか?」

「うん?それはもう授ける方向性で話は決まったんだろ?そうとわかればこっちも全力でやるから、お前も覚悟しとけよ」

「!!!………まったく!そんなだから貴方は羽虫にたかられるんですよ!分かってます!?」

 

 ぷりぷりと怒りながら、ニャルラトホテプはひどく嬉しそうな顔をしながら腕を組んで文句を言った。

 そしてバシバシと俺の肩を叩いてくる。

 降谷さんの腕力でそれをやられるとかなり痛いのだが。

 

 相変わらずよく分からんやつである。

 

 そしてニャルはルパン三世へとチラッとだけ視線を向け、興味のなさそうに言い放った。

 

「ああ、もう行っていいですよ。羽虫らしく、僕たちを楽しませてくださいね」

 

 降谷さんの体が僅かに揺らぎ、すぐに体勢を立て直して苦しそうに手で頭を押さえた。

 どうやらニャルラトホテプは退去したようだ。

 

 ルパン達は身じろぎもせず、こちらの様子を窺っている。

 降谷さんが眉間に皺を寄せて少しだけ頭を振った。

 

「う……相変わらず、君とアレは仲がいいな。アレのテンションが高過ぎて頭がおかしくなる」

「迷惑かけて申し訳ない。ともかく、話はまとまったし解散するか。俺たちもこれ以上ここでのんびりしてるとジラード公爵に不審がられるし」

『纏まった話って何かあったっけ?』

 

 諸伏さんの素直な質問が俺の胸に突き刺さる。

 でもここで引くことはできない。

 またニャル野郎が出てきたらもはやどうにもならなくなってしまうからだ。

 

 パンパンと手を叩いて、俺は大声を張り上げた。

 

「はい、解散!解散!各自行動を開始しましょう!」

『無理に解散させた……もういいや。なるようになるだろ』

「ははは、僕はパパとサクラ女王の死について調べておくから、よろしく」

 

 コナン君は次元大介の手を引っ張って、「行こうパパ」と愛らしい声を出す。

 パパis誰。

 

 そう聞けないまま、俺たちは宮廷へと戻ったのだった

 





・ニャルラトホテプ
テンション爆上がり。有頂天。
どうやって迷惑そうな顔をする親友と遊ぼうか想いを巡らせている。
羽虫は途中で爆ぜて死のうがどうでもいいが、親友が悲しむのは解釈違いのため多少は丁寧に扱ってやろうと思っている。

・ルパン三世
テンション爆下がり。激萎え。
「ニャルラトホテプ」が古代の邪神の名であることを知っている。
せっかくの世紀の大仕事が代理戦争のコマになってしまった。
コナン君にぶつぶつと不満を漏らしながらその辺の草を引っこ抜いて投げるなどしている。
なんかあの邪神を出し抜く方法ねーかな。

・次元大介
バリバリなオカルトの気配を感じ取って仕事を降りようとしている。
そっと帰ろうとしたらルパンにへばりつかれて逃走に失敗した。
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