ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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みんな近畿地方って言うからせっかくなので買って読んで書いた。
怖くて夜一人でトイレ行けなくなった。呪呪。
短編。箸休め。


番外編:近畿地方のある場所について〈美味い柿〉

 

 もらった柿を食っているなり。

 

 段ボール箱一杯に詰められた柿だ。

 少し黒ずんでいるものもあるが、滋養があって結構美味しい。

 

 むいた柿を皿に盛って、やや固めのそれをしゃくしゃくと口に入れながら事務処理を続ける。

 すると、探偵事務所の玄関扉が開いた。

 

「ただいまー。あれ、その柿どうしたの?」

 

 コナン君が学校から帰ってきたようだ。

 もうこんな時間か、と俺は書類から顔を上げて伸びをした。

 

「貰い物。コナン君も食べる?」

「うん。ありがと黄衣さん」

 

 爪楊枝を後ろの棚から出して渡せば、コナン君は柿を一口放り込んだ。

 「これ、甘くて美味しいね!」と笑みを浮かべる。

 良いことだ。

 

「これ送ってきてくれたの、依頼人さん?」

「いや。俺の知り合い。近畿地方に住んでるんだけど、柿がたくさん取れたから是非にって」

「えっ」

 

 俺の知り合い、というワードにコナン君は凍りついた。

 

「それって人間?」

「……あえていうなら猿…?猿っぽい旧神?」

「やっぱり!!!これ僕食べて大丈夫なやつ!?!?」

「コナン君は大丈夫だよ」

 

 そのブレスレットがある限り、何があろうとコナン君の無事は保証されている。

 この柿だって、コナン君にとっては単なる美味しくて滋養のある柿に過ぎない。

 

 コナン君は真っ青な顔で震えながら爪楊枝を下ろした。

 「僕…もういいや……」と吐き戻しそうな様子で呟く。

 美味しいのに。

 

 「また猿…また猿…」とコナン君はブツブツ文句を言っている。

 あの冬名山に居た猿とはまるで格が違うんだが、まぁ猿であることに違いはないか。

 

「ああ、それでね。かの旧神に柿をもらうときに相談されてさ」

「…何を?」

「『嫁を貰うにはどうしたらいい?』って。そりゃこっちが聞きたいよ。俺の方が独身歴は長いんだから」

「はは…」

「で、俺も嫁居ないから分からんって答えたら、柿をもう一箱くれた」

「同情されてんじゃん」

 

 俺はむっとして柿を口の中に放り込んだ。

 

 奥の冷蔵庫の横にもう一箱の柿が保管してある。

 神代の柿だ。

 唯人が食えば、あまりの美味に自我が溶かされ廃人になるだろう。

 

 結構いい味してるし、ニャルにも分けてやろうかな、と俺は思案した。

 沢山あるし、今度降谷さんが来たらお裾分けしよう。

 

 

 

 近畿地方に住む彼は、俺が日本に来てすぐに知り合った。

 

 手に入れたばかりのスマホでショート動画を眺めていたら、コメント欄で手当たり次第に求愛している彼を見つけたのだ。

 彼はネットの使い方をよく分かっていなかったらしく、「こしいれしろ」だの「柿あるぞ」だの美女の動画に連投していた。

 界隈では完全に荒らし扱いだった。

 

 あまりに悲しい旧神だ。

 流石の俺も同情を禁じ得ない。

 

 それで彼に話しかけてみれば、彼は悲痛な胸の内を明かした。

 

 近所の村でも同じように妻を探していたのだが、最近では住民もそれを分かってきて妻でないものばかりを掴まされる、と。

 彼は己の神域の中に女の子っぽい藁人形をたくさん抱え、途方に暮れていた。

 

 柿たくさんあるのに……とは彼の言だ。

 真っ白な大きな猿のような体を丸め、彼は体操座りをしていた。

 俺は彼の隣に座り、ポンと肩を叩いてやった。

 

 ただし、彼の嫁になるということは。

 魂を引き抜かれて神域に監禁され、残された身体は自然と動いて自殺するということ。

 避けられて当然である。

 しかも妻はすぐに精神崩壊して魂が溶解するため、彼はまた次の妻を娶りに奔走するのだ。

 

 別にこのまま人命のため無理やり捻り潰してもいいが、対策がはっきりしているのでそこまで脅威でもない。

 俺は優しく声をかけた。

 

「気分転換に趣味とか見つけたらどうだ?柿を品種改良してもっともっと美味しくしたら、嫁も来てくれるかもしれない」

 

 彼はふむ、と考える仕草をした。

 俺は書店で売っている一般的な果樹栽培指南本を取り出し、その場で魔術的に加工した。

 

 彼は人間の言葉に堪能ではないようだから、そのまま渡すのは酷だろう。

 魔術で概念的に中の理論を抽出し、彼へと渡す。

 

 彼は果樹栽培指南本の冒頭を少し確認し、目を輝かせた。

 気に入ってくれたようだ。

 最近は嫁が取れなさすぎて人界を彷徨いていることが多いが、元は山と豊穣の旧神っぽいし。

 この手の最新の情報は好きなのだろう。

 

「じゃ、俺はこれで。また成果が出たら教えてくれよ。俺も遊びにくるから」

 

 彼は大いに頷き、その日は別れたのであった。

 

 

 

「というわけで最近は現地でもぱったり『ましろさま』の噂は途絶えたらしい」

「それ、根本的解決になってなくない?」

「柿が旧神の納得できるレベルに美味しくなるなんて、人類が滅んだずっと後のことだよ」

「……そんなタイムスパンなんだ…」

 

 今回もらった柿は彼の試作第1号らしい。

 彼は美味い柿つくって嫁に来てもらう、と息巻いていた。

 騙して悪いが、これも彼と人類両方の幸福のためだ。

 

「コナン君も今度一緒に行く?危険はないし、顔見せしておけば何かあったとき役に立つかもしれないし」

「…………いく」

 

 かなり迷った末の返答だった。

 次の旅行は近畿地方で決まりである。

 大阪に寄って服部君に挨拶して、またグルメ観光してもいいだろう。

 

 そんな、ある日のことである。

 





・ましろさま
背筋氏著『近畿地方のある場所について』より。
旧神。妻募集中。
最近農業と林業にハマり出した。
コナン君を見てちょっとおっかなびっくり。


・降谷さん
美味しい柿を貰った。
安室透の自室に金庫を置いてその中に厳重に封印してある。
ニャルラトホテプがこれを使って柿プリンを作った。

降谷零がふと気がつくと、手元には火にかけた鍋があって、その中に容器入りのプリンが一つ鎮座していた。
見た目は普通のプリンに見えた。
プリンを見ていると、だんだん自分は嫁にならなければならないと思い始めてきた。
誰の?
『それはもちろん、ハスター、僕の親友とですよ』
なるほど、と降谷は納得した。
輿入れせねば。すぐに。お山に向かわなくては。違う。探偵事務所に向かわなくては。

そうしてプリンを持ったまま降谷は探偵事務所に突貫した。
黄衣に盛大にチョップされ、プリンは取り上げられ黄衣がぶつくさ言いながら完食した。

我に帰った降谷は、ひとまず近場にいた諸伏を鯖折りにした。
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