ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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犯人との二日間〈親切なナマハゲ〉

 

 コナン君を迎えに行ってからの展開は早かった。

 

 ようは、犯人と目されていた人物は真犯人ではなかったとかそういう話らしい。

 拳銃を使ってコナン君達を殺そうとしていた人物こそが、今回の真犯人。

 

 いや、コナン君を人質にとって警察の封鎖を正面突破したのは普通に犯罪なので、そちらは大人しく裁きを待ってもらうことになるが。

 

 大嶺とかいう札付きワルの誘拐犯は、俺の事務所に連れてこられて完全に困惑していた。

 目眩しの魔術をかけた車で警察の捜査を掻い潜り、俺が彼らを回収したのだ。

 ようやっと推理に集中できる状態になって、コナン君もほっと一息ついているようだ。

 

 誘拐犯さんがおどおどと部屋の中を歩き回っている。

 

「どういうつもりだよぉ、オレを助けたりして!俺は殺人犯だぞ!?」

「コナン君が、あなたは真犯人じゃないって言ってるからな」

「はぁ!?恩田を俺が撃ったのは間違いねぇーって!!」

 

 彼は目を剥いて怒鳴った。

 自認:殺人犯は本当のことらしい。ほな警察に突き出すとするかぁ。

 

 俺が頷いたら、コナン君がジト目で俺を睨みつけてきた。

 冗談だって。

 

「ネットで買ったのは空砲だったはずなんだよね?なら先に捨てた拳銃を探しに行かないと」

「んなもんおまわりが信じるわきゃねーだろ!早く東都から逃げねぇと!」

 

 なるほど、札付きのワルというだけあって、警察への信頼度が地の底だ。

 確かに彼の経歴からすれば警察官は証言など碌に信じてはくれないだろう。

 とはいえ。

 ここにはコナン君がいて、その推理のもと警察協力を幾度もしている俺がいる。

 心配するようなことにはならないはずだ。

 

 俺は誘拐犯さんに笑いかけた。

 睨みつけたと言ってもいい。

 

「逃げるなら、できるだけ罪を軽くしてから逃げたほうが得じゃないか?コナン君を誘拐した罪に、殺人罪まで着るよりさ」

「うっ………」

 

 いくら俺とて、突然コナン君を誘拐されて根に持っていないとは言っていないのである。

 すかさずコナン君に「大嶺さんにガン付けない」と怒られたのですごすごと退散する。

 

「ともかく使った拳銃の確保に、撃った現場の茂みの調査。そのあたりだね」

「ん。高木刑事に言って調べてもらおうか」

「僕は高木刑事についてくよ。全て証拠が揃ったあたりで『大嶺容疑者は自ら警察署に出頭した』という感じで」

「オーケー」

 

 後ろで「はぁ!?冗談じゃねーぞ!!」と誘拐犯が怒っているので、再び睨みつけておいた。

 これでまだ喚いていたら俺本来の目で軽く睨みつけようと思うなど。

 

 もごもごと文句を言いながら誘拐犯が大人しくなる。

 なんというか、野生的直感力と生存能力に優れるお方である。

 

 

 そんなわけで、証拠が揃うのはすぐだった。

 

 コナン君と別れて3時間後のことだ。

 夕日の中、最後まで困惑したままの誘拐犯は街中に消えていった。

 

 もちろん俺は自首するように言いふくめたが、これからの選択は自由意志に委ねられている。

 

 そのまま東都を離れるもよし。自首するもよし。

 それを選択するのは彼の意思である。

 意志が伴ってこそ、これからを己を選び取ることができるのだ。

 

 

 

 

 

「とかなんとか言って、普通に子供を誘拐する凶悪犯罪者を放流しただけだよな?」

「あっあっあっ、すみません降谷さん違うんですこれはその」

『まあまあゼロ。少年の指示だったんだし、そんなに怒るのも酷だろう?」

 

 コナン君の帰りをぼんやりと待っている中。

 探偵事務所にやってきたのは、降谷さんと諸伏さんの公安二人組であった。

 

 このクソ忙しい時に二人揃ってとは、かなりの非常事態だと思われる。

 

 俺がコーヒーを出そうとすると、「結構。先に本題に入らせてくれ」と降谷さんに止められた。

 大人しくソファに座って、彼らの様子を見る。

 

 俺は少し眉を上げ、降谷さんに問いかけた。

 

「カルコサ新党のことで何かわかったのか?」

「そちらはまだ調査中だ。気狂い連中の割には上手く隠れているようだ。小賢しいことにな」

『そうじゃなくて、先週提出してもらった怪異報告資料で、少し問題が起きてな』

「問題?」

 

 俺は諸伏さんの言葉に鸚鵡返しに首を傾げた。

 抜け漏れは無いはずだし、危険度判定も降谷さんの厳しい差し戻しにより改善したはずだが。

 

 降谷さんが細く長い息を吐いて、無感動にこちらを見た。

 

「秋田で先月発生した連続殺人事件を覚えているか」

「ああ。ナマハゲに扮して関係者を殺してったあれ。めっちゃ凝ったトリックが使われてて捜査が難航したやつ」

 

 無事コナン君が全部解決したが、俺もスピーカーしてて何を言っているのかよくわからなかった。

 科捜研とかが頑張るタイプの科学的トリックだ。

 

 ともかく、手品じみた手法で被害者を攫うから、地域ではかなり恐怖と共に話題になったらしい。

 

「そうだ。あくまで人による事件だったが。事件範囲とさほど離れていない同地域に、怪異報告があっただろう」

「うむ。そだね。犯人が幼少期に見た『怪物』はこれのことだとは思うけど」

 

 諸伏さんが肯定するように頷いている。

 連続殺人事件の犯人は、この怪物を見てトリックを思いついたと供述していたはずだ。

 SAN値もたくさん残っていたし、別に天啓とかではなく普通に人怖系の話だとは思うが。

 

 降谷さんは憂鬱さを瞳に滲ませながら、目を細めた。

 

「一部の人員が、怪異報告書の事案を、通常の殺人事件が紛れ込んだだけと誤認したようだ」

「ちょっ、変なことしてないよなそれ!?」

 

 俺は思わず目を見開いた。

 流石にそれはまずかろうに。

 

 俺は一応、降谷さんを通じてこの怪異報告を提出するにあたり決して警官のみで現場に赴かないようにと伝えてあった。

 不幸な事故を減らすためだ。

 特にものによっては伝染性の呪詛に侵される危険性が非常に高い。

 ミイラ取りがミイラどころか、エイリアンを調査に行ってエイリアンになって帰ってくることがあってはならない。

 

 降谷さんは苛立たしげに眉間に皺を寄せ、髪を乱雑にかき上げた。

 

「調査した警官三名が現在、行方不明となっている」

「あっちゃあ……やってしまったか。一応聞くけど、怪異の事例番号は?」

「C185-6A。彼らの救助は可能か?」

 

 天を仰いで、のっそりと「ハスターの瞳」を起動する。

 秋田の山奥を根城とする非常に弱い怪異だ。

 人呼び猿より少し強い程度。ギリ神話生物と言えるかな…ぐらいのもの。

 

 それでも、なんの装備もない警官が抵抗するのは不可能だったようだ。

 ハイパーボリアの神兵なら、どれほど新米だったとしても怖い思いもせず無事に帰ってこれただろうに。

 降谷さんの言うとおり、装備の薄弱さを痛感せざるを得ない。

 

 瞳が映す視界の先では、警官三名の見るも無惨な姿が映った。

 残念ながらもう救助は不可能だろう。

 これでは死体を回収することもできない。

 

 残された遺族のことを思うと胸が痛んだ。

 

「無理だね。死んではいないけど、うん。死んでないだけだ」

「悪行を成していない人間に対して、この怪異は基本的に無害だと報告していたが」

「それは間違ってない。彼らは悪行に義憤する怪異だから」

「ではなぜ警官に危害を加えた?」

 

 降谷さんの鋭い視線が突き刺さる。

 諸伏さんが「おい、ゼロ」と窘める。

 

 連絡ミスか過小評価か「現地調査に行かないこと」という禁を犯した公安のミスでもあるが。

 同時に危険度を過小評価した俺のミスでもある。

 

 この事例の危険度は10段階中の2。

 非常に軽く設定されていた。

 

 この怪異は悪人以外に対して非常に温厚だ。

 悪人に対しても諭す動きが強く、大量殺人犯とかでも無い限り人に危害を加えることはない。

 罪に対する基準も対象種族の法を読み取って動くため、危険度の判断も容易である。

 

 ではなぜ、警察官は失踪したか。

 

 彼らが実は不正を働いていたか。

 いや、それは違う。

 警官達は善良で職務に忠実だった。

 

 俺は深くため息をつき、俯いた。

 

「彼らは、警官に危害は加えていない。ただ、彼らなりにもてなしただけだ」

「………」

 

 彼らは悪行を嫌い勤勉を良しとする。

 正義感を美徳として称揚する。

 だからやってきた警官達を仲間だと思って、怪異は彼らを丁寧にもてなしたのだろう。

 

 諸伏さんは俺の言葉の意味を理解したのか、沈鬱に顔を伏せた。

 降谷さんが長い沈黙のあと、喉の奥から声を絞り出したようだった。

 

「……彼らは今、どうなっている?」

 

 伝えるかどうか、俺は少し迷った。

 人間の末路としてあまりにも哀れだったからだ。

 だが伝えないわけにもいかなくて、俺は重い口を開いて言葉を紡ぐ。

 

「たくさんに分裂して、山を這っている」

「………」

「あー、うん。新しい怪異情報として追加したほうがいい?」

「………頼む」

 

 思うに。

 警官の一人が「忙しくて手が足りない」とでも言ったのだろう。

 親切な怪異は、正義を遂行する警官達に喜んで力を授けたはずだ。

 「手が足りる」ように。

 

  降谷さんが硬い声で俺に指示を出す。

 

「悪いが、もう一度怪異報告の危険度を全て判定し直してくれ。急ぎだ。それと、怪異の内容は把握のみに努め、裏取り、再調査、他部署への伝達は厳禁として徹底する」

「おう。うーん、危険度の基準を手直ししたら一回降谷さんに見てもらっていいか?」

「ああ。これは単純な危険度という形じゃなく、最大値と最小値、平均といった形で作り直したほうがいいか…」

「なるほど。その方向で少しまとめてみる。あと、勉強会は前倒しにするか?」

「できれば早めてもらえると助かる。はぁ…」

 

 今日の降谷さんは幸運が尽きそうなほどため息をつく。

 無理もないか。出だしからつまずいてしまったんだし。

 

 その辺で松田さんが昼寝から覚めたらしく「んぁ、ヒロの旦那?来てたのかよ」と大欠伸をした。

 

 降谷さんは少し考えた後、ペンダントをむんずと掴んで懐に入れた。

 

『おわぁあ!何しやがるテメェ!』

「今は光る苔玉の手も借りたいほど時間が惜しい。お前も来い松田」

『ぶっ飛ばすぞ!揺らすな止めろ吐く吐くって!!!』

 

 降谷さんと諸伏さんがソファから立ち上がる。

 次の現場に行くようだ。

 ここには道中寄ったに過ぎないのだろう。

 

 諸伏さんがぺらりと一枚、A4の紙を渡してくる。

 

『コナン君が帰ってきたらコレを渡しておいてくれ』

「了解。読み終わったらいつも通り燃やせばいいんだよな」

『ああ。頼んだ』

 

 それだけ言って、二人は足早に去っていった。

 

 まったく、儘ならぬものである。

 





・秋田の怪異
人に親切。危険はほぼ無い。
「手が増えて」元気に仕事をしだした警官達の姿に、力になれて良かったと純粋に喜んでいる。
ナマハゲの元ネタのような気がするが、姿も性質も全然違う。

・公安猫
「ヨシっ!」

・降谷さん
ヨシじゃないが???(ガチギレインシデント対応)
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