ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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黒き13の暗示〈ナイアーラトテップの伝承〉

 

 本日は米花百貨店のスポーツ用品店に来ている。

 

 昨日来た依頼だ。

 なんでも毎週送られてくる赤いTシャツの謎を解いて欲しい、とのこと。

 

 しかし依頼人はボイスチェンジャーで声を変えていて怪しいどころの話ではない。

 いたずら、で済ませても良かったのだがポストに10万円の入った封筒まで投函されては無視するわけにもいかなかった。

 

 普通に犯人が依頼の体をとって予告状出してるとも限らないし。

 

 依頼料はありがたく所員全員で近所の寿司に行った。

 米花いろは寿司での豪華寿司三昧だ。

 昔ながらの名店なだけあり、実に美味しかった。

ただし、降谷さんだけは「今日は幸運にも良かったんだが、次からは絶対ここは避けよう」などと供述していた。

 

 わからんが、なんか怖いものでも出るのだと思われる。

 

 

 

 さて、そんなわけで現地で捜索を続けたのだが、一時まで待ってみても依頼人は現れなかった。

 

 今回は久しぶりに降谷さん、諸伏さん、コナン君、俺のフルメンバーでの捜査だったのに拍子抜けだ。

 やっと彼らの仕事がひと段落ついたのと、息抜きのために今回事務所の依頼に来たのだとか。

 

 ふむふむと自分用のスポーツ用品店を見て回る降谷さんに、俺はおずおずと声をかけた。

 

「それなら普通に休暇取れば良くないか?過労死するぞ」

「僕が過労死なんざするわけないだろう。ヒロもだ。あ、このウェア良くないか?どう思うヒロ」

『いいんじゃないか。似合ってるよ。……それに、ボイスチェンジャーで黄衣探偵事務所に依頼が来てるって段階で相当きな臭いぞ』

「事件吸引機のコナン君までいるんだ。先回りした方が傷は浅い。そう判断した」

 

 なるほど。俺は深く頷いた。

 コナン君が「それは名誉毀損だと思う」と不満気にふくれている。

 事実陳列罪ってやつか。

 

 降谷さんがスポーツウェアの会計をしながらのおもむろに口を開く。

 

「ところで、これは単なる雑談なんだが」

『どうしたゼロ?』

「デスクの上に置いておいた松田から腕が生えてな。六本。デスク上のものを勝手に分解して困ってるんだ」

『なにから突っ込んでいいか分からない』

 

 今神話的恐怖の話してる???

 思わず降谷さんを二度見したが、正気度は結構あった。

 素面での発言のようだ。

 コナン君は素早く後ろで耳を塞いで聞こえないフリをしている。

 

 俺は顔をくしゃくしゃにしながらひとまず詳細を聞くことにした。

 

「えっと、ともかく松田さんの精神は大丈夫?」

「そっちは元気だ。以前より魂も精がついてふっくらとしたし、睡眠時間も減った。本人も喜んでる」

「何故」

「分解が捗るらしい。もうあのデスクに精密機器は置けなくなってしまった。風見のスマホも無惨な姿になった」

「なるほど???」

 

 なるほど???

 分からん。分からんが本人が幸せならそれでいいんじゃないですかね。

 

 諸伏さんが若干視線を逸らしている。

 

『その、松田が変なことになってる心当たりとかはないのか?』

「多分だが俺がデスク横に保管してた黄衣君作の漬物を盗み食いしたんだと思う。アイツは否定しているが、明らかに内容量が減っていた」

『ああうん。なるほど。それはゼロが悪い。松田は前から腹が減ったって唸ってたのに』

「それは俺も悪かったと思ってる」

 

 なにやら一応の解決の目は見たらしい。

 

 あくまで雑談ということなのだろう。

 それでいいのだろうか。

 

 コナン君に「もう怖い話終わったよ」と声をかける。

 

「ホントに?まだ実は続いてるとかない?」

「ないない。大丈夫」

 

 恐る恐るコナン君が耳から手を離す。

 でも、ニャルラトホテプがちょっかいをかけてきた件を踏まえてブレスレットに対策も加えたし。

 コナン君なら本気で怖いことなんてなにも無いのに。

 

 などと雑談すること30分。

 

 一向に依頼人は現れず、もう帰ろうか、と話をし出した頃。

 

 コナン君がエレベーター横の紙袋を見つけて、「これ、なんだと思う?」と声を出した。

 見覚えのないデザインの紙袋だ。

 その中は四角い箱のようなものらしく、がっちりとガムテープで封がしてある。

 

「………この百貨店内の店の紙袋じゃないな。ヒロ」

 

 降谷さんがすうっと目を細め、公安モードに移行する。

 というか百貨店内で使われてる紙袋全部把握してるの怖ェよ。

 

 諸伏さんが険しい顔をして頷き、ゆっくりと、揺らさないように開封する。

 トラップを警戒してから、口の部分ではなく袋の横から開けたようだ。

 

 小さく諸伏さんが息を呑む。

 覗き込むと、中は不明な機械とコードで満載だった。

 

「その、それは爆弾ですから、あまり、触らない方がいいですよ…」

 

 背後からか細い声が聞こえて、降谷さんと諸伏さんが振り返る。

 コナン君はじっと、紙袋の中をのぞいているようだ。

 

 俺が前へ出てにこやかに対応する。

 

「失礼、貴方は?」

「わ、私はこのビルに買い物に来ていた一般人で、トイレに入っていたところを後ろから襲い掛かられて、気付いたら、その」

 

 上着のボタンをゆっくりと外していく。

 顕になったのは、体にロープでしっかりとくくりつけられた爆弾らしきものだ。

 

 アニメとかでテロリストがやってるやつ!!

 

 俺は思わず硬直した。

 こんな怖いことあるか!?!?

 

「気付いたらこんなことになってて、爆死したくなければ言う通りにしろと脅されて、これと同じものをこの階にいくつか仕掛けました…」

「ひぇ」

「警察に連絡したり、客がこの階から逃げたら爆発させると!た、助けてください!!お願いします!!」

「ひえぇ…」

 

 すっかりちいかわになってしまった俺を見かねて、降谷さんが前に出る。

 

 話を聞いていたお客さん達が遅れて事情を理解し、あちこちから悲鳴が上がる。

 

「ヒロ、黄衣君、一般客を誘導しろ。黄衣君の知名度なら客達のパニックも最小限に抑えられるはずだ。聞き取りはこちらで行う」

『了解』

「はひぃ」

 

 指示されるがまま客達の誘導にあたる。

 警察へこっそり連絡するのは諸伏さんに任せて、俺はひとまずパニック状態の客達を落ち着かせねば。

 

「落ち着いてください。私は黄衣ハスタ、探偵です。非常事態ではありますが、ゆっくりと、冷静に私の話を聞いてください」

 

 聴衆から「安心できる要素」を素早く抽出して声に取り入れ、わずかな沈静化魔術を声に乗せて放つ。

 思わず一般客の人たちがこちらを見た。

 成功したようだ。

 

 その間にも、降谷さんがニコニコと冷静に爆弾おじさんから話を聞いている。

 

「それはそれは、災難でしたね。それで、犯人の目的は?」

「あ、あの。それが、赤いTシャツの送り主を特定しろと、指示されまして」

 

 おずおずと爆弾おじさんが持っていたバッグを床に下ろす。

 中には紙袋が沢山入っていて、その一つ一つに赤いTシャツが入れられているようだった。

 

『……謎を解け、ではなく。送り主を特定しろ、か』

 

 諸伏さんがポツリと言う。

 コナン君も「詳しく分解しないとわからないけど、爆弾は偽物の可能性が高いよ」と諸伏さんに耳打ちする。

 INT高い人たちがどんどん話を進めているようだ。

 

 俺は爆発しそうな群衆の制御で手一杯なのに、悲しいことだ。

 すれ違いざまに降谷さんが俺に声をかけてくる。

 

「君が人類種の害意に軽くパニックを起こすタチなのは分かっているが、しっかりしてくれ」

「……うす。精進するっす」

 

 俺はしょんぼりと肩を落とした。

 

 事件はまだ始まったばかりのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『間違いありやせん。その百貨店に死んだはずのスコッチが現れたとかで!今車で向かってやす!』

 

 電話口から聞こえるウォッカの声に、ジンは僅かに安堵した。

 

「ウォッカ、そちらの判断は任せた」

『あ、兄貴は帰ってこないんですかい?裏切り者がこそこそ生きてたんですぜ。もしかしたら死体処理報告したバーボンも』

「俺は忙しい。それと、バーボンには手を出すな」

 

 強く言いふくめ、電話を切る。

 

 一旦倉庫に籠城したが、いつ「奴ら」に見つかるか分からない。

 ミネラルウォーターで喉を潤し、サブマシンガンをそばに置いて荷物を椅子に休憩を取る。

 

 放たれた化物は透明で、くすくすとこちらを嘲笑していた。

 

 それを呼び出したと思しき狂人共はそのまま血を根こそぎ吸い取られてミイラになった。

 だが幸いなことに、吸い取った真っ赤な血で、奴らは赤く色づいた。

 見えるようになればこちらのものだ。

 

 サブマシンガンで牽制しながら必死で逃げて。

 誘き出したところを対戦車地雷で仕留めた。

 

 それでひとまずは逃げおおせることができたが、「奴ら」は数が多くすばしっこい。

 ジンも肩から出血していて、追いかけっこは不利だ。

 

 

 死んだはずのスコッチが蘇った。

 昔なら「ネズミがこそこそ死んだふりをして逃げ延びた」と思うだろう。

 だが、バーボンが関わってくるなら別だ。

 

 遺跡を聖地と崇める狂人どもの教団は、多くの書物を抱えていた。

 

 黒き神が死者を蘇らせ、我らに恵みを与える。

 黒き神が魂を掌握し、我らに永劫を与える。

 燃える三眼と黒い翼を携えた神よ。

 

 ギリ、とジンは我知らず奥歯を噛み締めた。

 

「なにを企んでいやがる、バーボン」

 

 

 公安の犬を蘇らせて。

 警察でも手中に収めようと言うのだろうか。

 

 それとも、日本そのものをか。

 





・ジンニキのこれまで(ダイジェスト版)
アブダビ近郊の遺跡に到着。
嫌な予感が背筋を駆け巡り、直接乗り込むと死ぬと直感。
手がかりを求めて街をさまよううち、海外よりきていた有名な遺跡研究者が怪死している件に関わることになる。
どうやら、研究者はこの街に蔓延る秘密教団によって殺されたらしい。
きな臭い。
だが、遺跡の手がかりを得る好機だ。
ジンはひとまず秘密教団に乗り込み、情報を得ることにした。

驚くべきことが判明した。
そこは古代、黒き神への贄を捧げる場所だったらしい。
かつてそこに放り込まれながら、啓示を得て書を記した狂人がいた。
アブドゥル・アルハザード。
有史以来最も外宇宙の真理を知ったもの。
遺跡最奥には、当時彼が己の皮を剥いで書き残した書が、そのまま残っているのだという。
それならば、あるいは。
おぞましきルルイエに眠る怪物を止められるかもしれない。

ひとまず対戦車地雷をいくつかとサブマシンガン、十分な弾薬を用意する。
近場の倉庫を借りて爆薬も詰め込んだ。
これなら万が一の場合は逃げ出してすぐに遺跡ごと爆砕できる。
ジンは緊張に身を固くしながら、遺跡に乗り込んだ。

・降谷さん
遺跡とか黒き神とか全然知らんけど日本は手中に納めたいタイプ。
いや、純粋な日本愛ゆえのことよ。
愛ですよ、愛。
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