ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ホームズの黙示録〈序章─全然関係ないイゴーロナク〉

 

 お金持ちさんに、ロンドンに招待されたなり。

 

 偶然、俺と諸伏さん、コナン君の3人でポアロで食事をしていたのだが。

 そこに猫が現れたので保護したのだ。

 どうやら脱走した飼い猫だったらしく、猫を追って現れたマダムは大層喜んだ。

 

 幸運にも俺たちは全員英語話者だったのでロンドン在住のマダムとの会話に苦労することはなく。

 スムーズに、ロンドン行きが決まったのである。

 

 マダムの名はダイアナ・キングストン。

 大金持ちらしく、ロンドンで滞在するホテルも飛行機代も全部負担してくれるそうだ。

 

 とことこと3人で帰りの道を歩きながら、振って沸いた巡り合わせを話し合う。

 コナン君がニヤニヤと俺に視線をよこした。

 

「黄衣さんも今は大金持ちだけど、庶民的だよね…」

「俺は額面上の金持ちだから。だって黄昏の館に関しては現場保存でそのままにしてあるんだからな。俺は普通の借金地獄マンだよ」

『でも、もうそろそろいいんじゃないか?あの屋敷解体しても。公安も一通り洗い終えたし』

「だな。解体して溶かして売るが正解なんだろうけど。黄金の屋敷自体、歴史的価値がありそうだし悩ましいところだな」

 

 烏丸蓮耶が母から受け継いだ別荘である「黄昏の館」は、公安によって徹底的に再調査が行われた。

 時間をかけてからくりや地下空間などがないかも調査した。

 しかしそこで見つかったのはひたすらに隠された黄金のみであり、組織に繋がる影は残されていなかった。

 

 それはそうだ。

 だからこそ烏丸も手放したんだろうし、こればっかりは仕方あるまい。

 

 解体……かあ。

 初めは借金返した残りはコナン君に渡そうと思っていたのだが、「僕お金は困ってないし」と断られてしまったし。

 とはいえ、神である俺が金をたくさん持ってても仕方ない側面がある。

 

 今冷静に考えたらすごい憎たらしい発言してなかったかコナン君。

 まあいいか。

 

 降谷さんを通して日本に納めるか。それとも福祉団体へ寄付か。

 黄色の印の兄弟団に渡して恵まれぬ人を助けろとか厳命するのもありだろう。

 

 悩ましい限りである。

 

 俺が悶々と唸っていたら、いつのまにか話題は別な部分へと移っていた。

 コナン君が諸伏さんへ若干首を傾げて問いかけている。

 

「諸伏さん、仕事あるけどよかった?断らなくて」

『俺も迷ったんだが、たしかゼロがロンドンには人類にとって危険なものが潜んでるって話してた記憶があるから。念の為確認にな』

「あー、なるほど」

「えっ!?ロンドンになんかいるの!?」

 

 コナン君がギョッとして硬直した。

 別にロンドンにいるわけでは無いが、まあ、似たようなものか。

 

「俺と同じ旧支配者の体の一部が飾られてるんだ、大英博物館に」

「な、るほど……」

 

 生唾を呑むコナン君に、俺は優しく笑いかけた。

 あれは別に怖いものではない。

 

 旧支配者、イゴーロナク。

 頭のない膨らんだ体を持つ、両手に口がある悪意に満ちた怪物。

 彼は生物が悪行を成す様を好むのだが、どうも解釈の底が浅いというか、B級映画な悪になってしまう残念な御神である。

 

 彼もまた、地球での降臨を狙っていた。

 クトゥルフの件で懲りた俺は、彼とガチバトルして地球降臨を阻止。

 その時千切れた彼の腕の一部が、ロンドンの大英博物館に眠っているというわけだ。

 

 コナン君が「ホームズ、怪物、ホームズ、怪物、ホームズぅ……!」と苦悩している。

 諸伏さんがコナン君を抱き上げて被害者の顔で俺を見た。

 「少年を虐めるのはやめろよな。可哀想だろ」とのこと。

 別にいじめてないのだが。

 

 諸伏さんはコナン君を抱いたまま歩き出す。

 

『ま、知ってるんなら話は早い。具体的な危険性は?』

「んー、わからん」

『はぁ!?分からんって、お前』

「彼の意思による。でもよっぽどのことがなければもう地球には関わってこないと思う」

『いや、いやいやいや…』

 

 正直、彼も旧支配者なのだから腕を通していくらでも悪さはできるだろう。

 だがそれはこちらも同じ。

 腕を通して本体に魔術を通し放題な分、有利は俺にある。

 

 腕を消滅させてしまってもよかったのだが、俺はあえて彼に対して脅しの形としてそれを残した。

 この腕を通していつでもお前を殴り飛ばせるんだぞ、というメッセージだ。

 

 こと地球侵略に関して、俺は冬眠できなかったクマよりも気性が荒いのだ。

 

 コナン君が「ホームズが、待ってるから、ロンドンだから、大丈夫だから」と自己暗示のターンに入っている。

 よほどロンドンに行きたいらしい。

 ホームズへの愛がコナン君を恐怖から立ち上がらせた!

 良い話である。

 

 俺が一人で納得していたのが不満だったのか、諸伏さんがおもむろにスマホを取り出す。

 そして「ああ、ゼロ。うん。そう」などと会話する。

 

 しばらくして電話を切ると、諸伏さんは深く頷いた。

 

『ゼロも来るって』

「なんでや」

『ヤバそうだから』

「俺の言うこと一個も信用されないこの現象なんなの?」

 

 分からん…何故だ……。

 神として俺は広く信じられていたし、国家運営にも深く関わっていたのに。

 

 顔をくしゃくしゃにして俺がもごもご文句を言っていると、諸伏さんが柔らかく笑って「ま、足りないところは俺たちに任せてくれ」と言った。

 コナン君も気合いを取り戻したようだ。

 諸伏さんの腕の中で「俺は負けない…!ベーカー街221Bにも、大英博物館にも俺は必ず行くッ!行って見せるッ!」などと決意を新たにしている。

 少年漫画が始まったらしい。

 

 ともあれ。

 この事務所初めての海外旅行だ。

 

 楽しい旅になりそうで、俺の歩調は自然と大きく、ゆったりとしていた。

 





・イゴーロナク
意味深に名前が出て、今回全然関係ない旧支配者。
矮小な生命で遊ぼうかな、と思って気軽にふらっと地球に立ち寄ったら突然狂神ハスターに横面張り飛ばされた。
泣いても喚いても執拗にバラバラにされた。
あいつは頭がおかしい。
もう二度と近寄らない。

・ハスター
縄張り意識が極めて強い。
敵が縄張りに入ると突然極大火力の魔術で脳天吹っ飛ばしてくる。
加えて、遠目に視界に入っただけで激しく威嚇してくる模様。
とんでもなく気難しい(邪神目線)。
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