ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ホームズの黙示録〈ホームズ実装?〉

 

 やってきましたシャーロック・ホームズ・ミュージアム!

 

 入り口にはスコットランドヤードの服を着たドアマンもいて雰囲気たっぷりだ。

 一緒に記念撮影もできてコナン君もホクホクである。

 

 中はビクトリア朝時代のイギリスが満載、といった感じで実に美しい。

 ただ、そこに込められたホームズネタの小道具はほとんど俺には分からなかった。

 

 コナン君に勧められて俺もホームズはさらりと読んだが、イマイチハマれなかったたんだよな。

 

 が、そこはコナン君。

 一個ずつマシンガントークで解説してくれたので、思わず降谷さんも諸伏さんも聞き入っていた。

 それも、作中描写から歴史的経緯まで完璧に説明してくれるのだ。

 すげーな。生きる音声案内かよ。

 

 降谷さんが冷静に「すごくためになって面白いが、それを蘭さんにしたら引かれないか」と言うと、コナン君はきょとんとしたようだ。

 

「え?いや、蘭こういうのいつも嬉しそうに聞いてくれるし……」

「なるほど。お似合いのカップルというわけだな」

 

 降谷さんはくすりと笑ったみたいだった。

 

 話した限り、蘭ちゃんはさほどシャーロック・ホームズには興味はない。

 というか彼女は三国志オタクだ。

 だから蘭ちゃんが嬉しそうなのは、間違いなく工藤君の楽しそうな顔を見てのことだと思われる。

 

 うーん、まったく。青春青春。

 

 降谷さんはそのままうろっと部屋の中を見渡して、つまらなさそうに半目になった。

 分かりづらいが、表情の使い方がニャルである。

 

 ニャルはおもむろに俺を見て口を開いた。

 

「ところで、シャーロック・ホームズが実在したら嬉しいですか?」

「ニャル、お前不穏な話しかできない病にかかってないか?」

 

 手持ち無沙汰なのか無意味にコナン君を抱き上げて、ニャルはよしよしとコナン君を撫ぜはじめた。

 コナン君が目を白黒させている。

 諸伏さんはじり、と若干距離をとったようだ。

 

「前に貴方、言ってたでしょう?僕が昔ばら撒いた有害なオモチャを何とかしろと」

「うん。酷いことになる前に片付けとけよ」

「でも正直面倒臭いし」

「おい」

「シャーロック・ホームズが大冒険の末に回収したということにしようかなと」

 

 ほう、ニャルの割にはまともなことを言い始めたではないか。

 

 ようは、過去改変の辻褄合わせを楽にする手法だ。

 シャーロック・ホームズの物語は架空の創作ではなく、実在する人物を元にしたモノだったとする。

 そしてシャーロック・ホームズという人物を作成して、かつて19世紀に生きた名探偵が世界各地に散らばる怪異を回収した、ということにしておくのだ。

 それなら辻褄合わせは非常に楽になる。

 

 いやでもニャルだしな…やっぱ止めるか…?

 

「それ、さらに碌でもないことになる気がするしやめた方が良くないか?」

「えぇー、そうですかね。良い考えだと思うんですけど」

「僕も降谷さんの中の人の意見に賛成!」

 

 不意に口を挟んだのはコナン君だ。

 ちょっと予想外で、俺もおもわずぱちくりと瞬いてしまう。

 

「え、どないして?」

「だって、その、ホームズは実在していて何もおかしくないし、彼なら沢山の怪異を人知れず処理していたとして説得力があるし!中の人のアイデアはとても良いよ!」

「なるほど、コナン君がそこまで言うなら…」

 

 俺は溢れんばかりの熱意を受け、渋々頷いた。

 ニャルがパァッと笑顔になる。

 

「そ、それで、僕も話に一枚噛んでいい…?いやあくまで一ファンとしての助言、助言だけどさ」

「うん?」

 

 コナン君が震える声でニャルを見る。

 目がキラキラと輝いている。輝いている通り越して凄まじい執着でドロドロしている。

 ニャルはほよ、という顔をして首を傾げた。

 

「構いませんよ。僕も羽虫の小説とかあんまり知りませんし。齟齬が少なくなるなら僕としても大歓迎です」

「ヨシッッッッッ!!!僕頑張るよ!本当に!僕はやる、かなりやるよ!!」

 

 ちょっと怖いほどテンションが高い。

 というかシンプルに怖い。

 諸伏さんがコナン君とニャルを交互に見て「あちゃー」と天を見上げた。

 組ませていいタッグだったのか、確かに疑問が残る。

 

 すごく乗り気なコナン君に、ニャルも満足げに頷いている。

 

「実に良い子ですね。ハムスターぐらいの愛らしさでしょうか。なるほど、我が親友が気にいるだけのことはある」

「羽虫からすごいレベルアップしてる件」

 

 なんと哺乳類に格上げになったらしい。

 多分哺乳類相当のちょっかいも同時にかけられると思われるため、コナン君の更なる防衛強化を今後検討する必要があるだろう。

 忙しくなってきたな…これは……!

 

 ニャルが素早く退去すると、正気に戻った降谷さんが片手で顔を覆った。

 「コナン君、君、なんてことを…」と呟いている。

 こうなってはもう覆せない。

 俺らも腹を括るしかなかろう。

 

 降谷さんにギロっと睨まれ、「そもそも君もコナン君に甘すぎる!」と怒鳴られた。

 それはそう。

 

 さて。

 キラッキラに輝くコナン君の説明が一通り終われば、あとは各自中の見学だ。

 そこまで広いわけではないため、見学が終われば入り口外に集まる約束になっている。

 

 俺も様々な美しい装飾たちを眺めてから、ふらりと外へ出た。

 

 コナン君はどうやら外で金髪の男の子と話をしているようだ。

 何やら真剣な表情をしている。

 謎の気配だ。

 

 歩いて行くうちに話が終わったのか、金髪の子供が走り去って行く。

 俺はコナン君に後ろから話しかけた。

 

「どうしたんだ?もうホームズ博物館はいいのか?」

「……少し、やらなきゃいけないことができたみたいで」

 

 手に持っていたのは紙が一枚。

 怪しげな詩のような文章が書かれている。

 

 受け取って、俺も少し文面を確認した。

 

 轟く鐘の音で私は目を覚ます。

 私は城に住む鼻の長い魔法使い。

 腹ごしらえは死体のように冷たくなったゆで玉子。

 仕上げにピクルスを丸かじりすれば十分だ。

 そうそう、祝いのケーキを注文しておこう。

 再び鳴る鐘の音が私の憎悪を掻き立てる。

 全てを終わらせろ、白い背中を2本の剣で貫いて。

 

 俺は紙をコナン君に返して腕を組んだ。

 

「ふむ。魔術的意味合いナシ。神話生物の影なし。ただの人間が起こした事件だな」

「事件と関係がないけど、この近くにいる怪異は?」

 

 そう聞かれれば、答えは一つだ。

 

「たくさん」

 

 コナン君が真っ青になった。

 大英博物館もあるし、大英帝国時代に世界各地から運び込まれたヤバいものの宝庫だからな、ここ。

 組織立った魔術師の管理体制が出来ているから爆発していないだけで。

 

 気合いを入れ直して「ロンドン、ホームズ、これからハイドパーク」と呪文を唱えて、コナン君が己を奮い立たせた。

 今日のコナン君は一味違うぜ。

 

「ひとまず、目の前の事件に集中するしかねーってことか」

「うむうむ。その通りだ!」

 

 そのあたりで二人連れ立って諸伏さんと降谷さんもやってくる。

 コナンくんの手にある紙を見て、同じように眉間に皺を寄せた。

 

 二人を見上げて、おずおずとコナン君が口を開く。

 

「これをこれからスコットランドヤードに届けに行きたいんだけど、いいかな?」

 

 どうも、これをもらった子供が男から言われたらしいのだ。

 君の目の前で人が死ぬ、と。

 

 降谷さんもこれには難しい顔で小さく唸り声を上げた。

 

「犯行予告の可能性あり、か。なら無視するのも不義理か」

『タクシー捕まえてスコットランドヤードに行けばいいな』

 

 全会一致。

 というわけでささっとスコットランドヤードに行ってみたわけなのだが。

 

 中は子供達とその保護者でいっぱいであった。

 どうも受付がパンクしているらしく、俺たちの順番を待っていたら日付が変わりそうである。

 

 どの子供も「目の前で人が死ぬ」と男に言われて渡されたらしい。

 諸伏さんが息をついて目を細めた。

 

『大量殺人、テロの疑いあり、か。これは面倒なことになったな』

「羽虫がどれほど死のうが知ったことじゃないが…罪のない日本人観光客が亡くなるのは避けたい。面倒だが、動くとするか」

『ゼロ、ラディカルな発言は控えて』

 

 いつもの降谷節を全開だが、一応は乗り気のようだ。

 ならばやることは決まっている。

 

「じゃあ、ひとまず手分けして手がかりを探すとするか。念話を繋ぎっぱなしにするから、それで連絡をとりながら動こうか」

「うん。ありがと黄衣さん。本当に黄衣さんの念話むちゃくちゃ便利だよね」

「口に出さず秘密裏に情報をやりとりできるのはこれだけの利点だな。『目』と合わせて、俺も最優先で取得したいところだ」

『俺もマジに欲しい能力』

 

 皆にベタ褒めされて、えへへ、と頭をかく。

 でもグループ念話も「目」も、見た目によらずめちゃくちゃ高度な術式だからちょっと習得は難しいかもしれない。

 

 単純な念話とか遠見ならそこまで難しくもないんだけど。

 これは利便性を追求して改造してあるから、火打石と火力発電所ぐらい違うからな。

 普通に習得するには大天才でも100年はかかると思われる。

 

 いや、エイボンとかだとたぶん10年でモノにできたと思うから、もうちょい難易度は低いか。

 ただ奴はほとんどバグの域で魔術特化だったから、例外かも知れんが。

 

 ともかく、情報収集をせねばなるまい。

 コナンくん一人だと大人に制止されて動きづらいだろうから俺が付くとして。

 そのほか諸伏さん、降谷さんはバラバラに行動した方が早かろう。

 

 念話で雑談感覚で互いと情報をやり取りできるし、あとはロンドンに繰り出すだけだ。

 

 

 そうして、俺たちはこの怪しげな詩の謎に取り組むことになったのであった。

 





・コナン君
シャーロック・ホームズ近々実装予定に沸く。
コナン君は関連書籍の爆増を予想して今から自分のお小遣い残高の勘定をしてる。
ニャルラトホテプとは「ニャル」って呼んでいいと許しを受けた仲。

・ニャル
ハムスターが思ったより可愛かった。
つつけば鳴くし喚くし。反応も良い。
化身が最近すごい熱心に恋愛指導してくる。困惑。

・ハスター
ニャルが突然仲良しを増やしてちょっともやもや。
今後コナン君とニャルが二人で相談会開くのでよりもやもや。
デート(?)で予想外に美女ニャルが来てドギマギする予定の旧支配者。

・諸伏氏のコメント
なるほど、少女漫画ってやつか。
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