ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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黄色の印の兄弟団

 黄色の印の兄弟団、訪問当日。

 庁舎前には迎えのリムジンが止まり、ものものしげな空気に包まれている。

 

 俺はハイパーボリアで謁見時着ていた正装の上に、大きめのコートを羽織って人目を誤魔化している。

 諸伏さんは一般的なスーツ姿。

 登庁する時と同じものだろう。

 

 ちなみに、顔通しも兼ねてコナン君も連れてきている。

 変なちょっかいはかけないでね、と念押しを兼ねてのことだ。

 いつもの子供用の群青のややかっちりとした服装で、俺の足元に不安げに寄り添っている。

 

「本日はお越しいただき恐悦至極に存じます」

 

 公安信者さんが深々と頭を下げ、挨拶した。

 彼女もスーツ姿だが、心なしか上等そうなものに見える。

 俺はちょっとだけリムジンに視線をやってから、恐る恐る聞いてみることにした。

 

「ええっと、これは俺ら、このリムジンに乗って黄色の印の兄弟団日本支部に行く的な?」

「はい。このようなものしかご用意できず申し訳ございません。追加で車体には防弾の魔術等を施し、運転手も信のおけるものを選定しております」

 

 別にリムジンの格を心配しているわけじゃなかったんだが。

 たしかに俺は命を狙われてるし、用心として間違ってはいないのだろうけど。

 

 俺は案内に従って、そーっとリムジンに乗り込んだ。

 

 ふと見ると、明らかに窓もドアもめちゃくちゃ分厚い。

 最後に乗り込んだ諸伏さんが扉を閉めると、この車の中が完全に密閉空間になったことが感覚的に理解できた。

 風の神としての感覚だ。

 どうやら化学兵器対策だと思われる。

 

 うーんこれは大統領専用車と同系統のリムジン。

 

 コナン君が「凄いね、超VIPだ」と茶化してくる。

 草生やしてる場合とちゃうやで。

 

 車が緩やかに走り出す。

 後ろからもう一台来ているのは、どうやら別車両に乗った公安信者さんのようだ。

 警察庁から黄色の印の兄弟団日本支部までそう距離もないというのに、あまりにも大袈裟なことである。

 

『なあ、その中に着てる服なんなんだ?見たことない形だけど』

「これは昔俺が着てた一張羅的な?」

『へぇ。ちょっと着物にも似てるな』

 

 前で合わせて腰で縛るタイプの白い衣装だ。

 正式顕現の時の黄色の衣ってただの皮膚でしかないから、実質全裸なんだよな。

 流石に全裸で公共の場を歩く度胸はないし、となるとハイパーボリアの謁見の時の服が安牌かなと。

 

「でもみんなスーツっぽいし俺もスーツで来れば良かったな…凄い浮くじゃん…」

「教団の中はとんでもない格好の人ばかりかもしれないよ?」

「もしそうだったら俺は回れ右をして帰るしかない」

 

 コナン君が恐ろしいことを言い出したので、俺は思わず恐怖に震えた。

 

 さて。

 そんなことを言っているうちに教団前へ到着だ。

 広い整備された庭の奥に立つ不可思議な形状の建物が本部棟だろう。

 ハイパーボリア時代の形状になるべく近づけようとしたのか、俺は少しだけ懐かしい感覚に囚われた。

 

 入り口前に立つのは白いローブのようなものを羽織った男女だ。

 ハイパーボリアの神官服に似てるような、そうでないような、やっぱり似てないパチモン臭い形をしている。

 おそらく正式な神官服がどこかで失伝して、なんとかそれを後世に再現しようとして作られたものだろう。

 

 男女はリムジンが止まるなり、一斉に地面へ五体投地した。

 

「こいつァヘビーだぜ…あ、諸伏さんは先どうぞ」

『こういうのは一番偉い人が先に出て向こうの偉い人と握手するのが相場だろ?』

「変な言い争いしてないで早く行って黄衣さん」

「うす………」

 

 コナン君に冷たい目を向けられ、俺は渋々もぞもぞと体を動かした。

 コートを脱いで亜空間へしまい、正装姿で外へ出る。

 

 全員が車を降りて歩けば、そこには中央で五体投地する、一番の権力者と思しき男がいた。

 

 その前まで歩いたら、そこで「───顔を上げるがいい」と静かに厳かに俺は言い放つ。

 老齢の男は恍惚とした表情で顔を上げた。

 

「おお!神よ……!その背後より見据える巨大な真実の瞳よ!今、この瞬間の私より幸福なものなど、この世におりますまい!」

「………」

「貴方様を迎えるため、ささやかながら席を設けさせていただきました。どうか我らの信仰をお受け取りください」

「善い。案内しろ」

 

 老齢の男が奥へと進んでいくので、それに合わせて俺達も後に続いた。

 

 

 

 案内されたのは大ホールだ。

 元々大きなイベント用であろう空間が改造され、簡易的な神殿のようになっている。

 中には後付けと思しき大きな柱がいくつも立ち、一段高い場所に白い巨大な玉座が見えた。

 

 「あ、ここ……ハイパーボリアの黄衣さんと会った場所にそっくりだ」とコナン君が思わずと言った様子で呟いた。

 そういや、ニャルに誘拐されてコナン君は当時の俺と神殿で会ったんだっけか、と思い返す。

 

 とすると、俺も半分体をはみ出して触手を垂れ流した方が良いのだろうが。

 そうすると無差別SAN値チェックを避けるための特殊な魔術をこの部屋に刻む必要がある。

 魔術師の敷地に勝手に魔術を刻むわけにはいかないし……ふむ。

 

 俺はコナン君に耳打ちした。

 

「なあ、コナン君の方からあのお爺さんに『魔術を部屋に刻んで良いか』って聞いてくれないか?」

「良いけど…自分で聞いちゃダメなの?」

「俺が直接声をかけたらあのお爺さんどうにかなっちゃいそうだし」

「ハハ…」

 

 それもそうだと思ったらしく、コナン君がてけてけとお爺さんに近寄っていく。

 コナン君の言葉に、お爺さんは目を丸くして「もちろんでございます神子様!この場も我ら信徒も皆、神の所有物。異論などあるはずもございません!」と声を上げた。

 

 コナン君は神子様らしい。

 まあ、この際危害を加えられなければなんだって良いだろう。

 

 許可も得られたことだし、あとはこの神殿を少しばかり改造するだけだ。

 

 コナン君をおもむろに抱っこし、ホール中央をゆったりと歩いてゆく。

 両側には信徒達が黒いローブを着てひしめきあい、皆揃って息を殺して五体投地している。

 異様な緊張感。僅かな疑念。

 俺への好奇の瞳がちらりちらりとよぎっている。

 

 予備動作。

 歩み一つ一つ、手の動き、僅かな服のはためき一つに魔術的意味を込めて、この空間を掌握していく。

 後ろから諸伏さんがついてくる、その足取りも利用して。

 

 術式の配置。

 古エイボン式全12万層。ホール全域に単一の術式を張り終え、定着させる。

 俺、旧支配者ハスターが人の魂に与える悪影響を限りなく小さくする術式だ。

 かなり複雑だが、これ自体は昔に作った術式そのままのため貼り付けて展開するだけ。

 

 発動。

 玉座に腰を下ろすとともに、魔術式を起動する。

 荘厳な光を伴って部屋中を魔力の渦が駆け抜けて、術式が美しく有機的に組み上がっていく。

 その完成と同時に俺は折りたたんでいた空間から触手を幾らか伸ばし、とろりと部屋を満たした。

 天井からは無数の瞳をもって信者達を睥睨する。

 

 俺自身はつまらなさそうに玉座で足を組んで、コナン君を手慰みに撫でた。

 ハイパーボリア神様モードである。

 INTだけは据え置きだが、ほとんどハイパーボリア時代と同じ感じに近づけた。

 

「え、黄衣さん……?」

「気にするな。俺は求められるよう振る舞っているに過ぎない」

 

 コナン君が困惑して俺を見つめたので、そのように言っておいた。

 いわゆるTPOってやつだ。

 

 諸伏さんが狼狽えながらも玉座のそばに設えられた貴賓席に座っている。

 お、さらっと公安信者さんもいるではないか。

 

 諸伏さんはしきりに周囲を見渡して、天井に浮かぶ俺の瞳と目があって「うわっ!?」と声を出した。

 なんやワレ。文句あんのかコラ。

 ギョロリと睨み返したら、諸伏さんが怯えて小さくなった。

 

 信者達は無言……というか、驚愕だろうか。

 ざわめきひとつない。

 もしかしたら、今日俺が来るということについても、信者の間で認識の差があったのかもしれない。

 

 まあ3万年姿を現さなかった古の神が突然やってくるって言われても、ホンマかいなと思うのが人のサガだろう。

 この魔術を見てただ事ではないと思ったか、あるいは俺の姿を見てか。

 

 分からないが、どちらにせよ黄色の印の兄弟団に正気の人が多い証拠だ。

 喜ばしいに違いあるまい。

 

 よろよろ、と幽鬼のような足取りで前へ出た責任者らしきお爺さんが、俺たちの前までやってきて五体投地した。

 幹部、だろうか。

 入り口にいた幾人の服装の違う男女もそれに続き、頭を床につけて平伏する。

 

 お爺さんがダバダバに泣きながら「おお神よ!神よ!神よ!!我らの祈りに応じ再び地に安寧を授けたまえ!!!」と叫んだ。

 幹部達も「神よ!神よ!」と後に続く。

 それは信者らにも伝播し、大合唱となってホールを揺するような地響きとなった。

 

 俺は声帯に少しばかり魔術を加え、声を通らせて言った。

 

「俺は見ている。お前達の行いを。安寧は、不断の努力の先にある。力を尽くすがいい、弱きものよ」

 

 つまり具体的には警察に力を貸せって話だけど。

 ああ、俺も降谷さんに毒されて汚れちまったもんだ…。

 

 お爺さんが「おおおおお!!!はい、御心のままに!我らは神の眼差しの元にある!!」と叫び。

 それは信者の歓喜の叫び、絶叫となって部屋中を満たしたのであった。

 

 

 

 

 

 それから、いくらか幹部と俺らのみの話し合いが設けられたが、俺は玉座でコナン君と座ってるだけで話には殆ど加わらなかった。

 

 まあ、公安と黄色の印の兄弟団が手を結ぶとかそういう話だから、俺が加わっても意味がないとも言う。

 だが俺が見ている場で取り交わされる掟は神前の契約となる。

 黄色の印の兄弟団としても安心感は桁違いだろう。

 

 やややつれた様子の細身の男が、公安信者さんから書面を受け取って小さくため息をついた。

 話ぶりからするに、彼はアメリカにある黄色の印の兄弟団本部との調整役も担っているようだ。

 

 この動きが本部の知るところになったら当然、揉めに揉めるだろうと胃を痛めているのだろう。

 

 全ての打ち合わせが済んだので、あとは帰るだけだ。

 コナン君を下ろして俺も亜空間からコートを取り出して羽織る。

 

 そして見送りのため後ろに着こうとする細身の男に、一枚のポストカードを手渡した。

 

「……神よ、これは…?」

「精神の疲れを和らげる音楽を作っている。信仰に厚い汝の行いに敬意を表そう。皆と分かち合うのも良いだろう」

 

 ポストカードは先程魔術で具現化したもので、Y◯UTUBEのURLとともにQRコードが記されている。

 再生回数稼ぎが狙いだ。

 最近再生数が伸び悩んできているから、もしかしたらちょっとは皆聞いてくれるようになるかもしれない。

 そのような悪どい下心の滲む祝福である。

 

 最初は再生数100とかでも新鮮で良いなとか思ってたけど。

 やっぱり自己顕示欲は抑えきれなかったよ…。

 

 

 

 とまあ、そのようにして本日の黄色の印の兄弟団との会合は終わりである。

 帰りの間際に「あの凄まじい魔術!ああ!ああ!感動いたしました!!」と号泣に近いノリで公安信者さんとお爺さんが頷きあっていたが、それは気にしないものとする。

 

 コナン君がムスッと俺を見上げ言う。

 

「なんで僕をずっと抱っこしてたの」

「だって緊張するじゃん」

「意気地なし」

 

 軽く罵倒され、俺はしょんぼりともう一度暴れるコナン君を無理やり抱っこしたのだった。

 





・Y◯UTUBEチャンネル「テツチャプトル」
最近では「沈みがちな気分が上向く音楽」とか「聞くと穏やかに眠れる音楽」とかを投稿している。
どれも音楽魔術であり、波長とタイミングなどから人の精神を癒す効果がある。
なお、もうすぐ再生数が爆発する模様。

・ジンニキ近況
「青仏」の謎を調べるうち、それが護身のお守りであることを知る。
つまり、社長の死には別の何かが関わっていると言うことだ。
「青仏」のお守りを作る群馬のとある寺に行くと、社長らしき人の記録が見えてきた。
社長は全国各地の曰くつきの事物を集めていたらしい。
「これが、その方から渡された巻物になります」
僧が持ってきたのは、怪しげな絵巻物だった。
自分が帰らなかったら、次に自分を調べて訪ねてきた人に渡してほしいと言われていたらしい。

これ以上踏み込むべきではない。
だが、放置していいのか。あの時のような大惨事が裏で起きていないとどうして言い切れる。
ジンは奥歯を噛み締め、電話を取った。
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