ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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幽霊ホテルの推理対決〈RUMの考察〉

 

 杯戸ホテルで、本日はケーキ食べ放題である。

 

 ゲンナリした顔のコナン君を添えて。

 2Fのカフェでケーキバイキングがやっていたので、せっかくなのでコナン君を引きずってやって来たのだ。

 ホテルならではの凝ったケーキが並び、その他口直しのおかずも含めれば充実度はピカイチ。

 

 早くから並んだこともあり、俺たちは無事にお腹いっぱい食べることができたわけである。

 

「あー良かった良かった。美味しかったな!」

「黄衣さんホントこういうの好きだよね…飽きないの?」

 

 ウェップと言った様子で顔を顰める

 そういえば飽きるとかの機能は付けていないなと思い返すなど。

 昔人間に似せて感覚を作り直したが、完璧にとはいかなかったからな。

 

 俺はふるふると首を振った。

 

「飽きる機能実装し忘れた。満腹中枢もだけど」

「それはかなりまずいのでは」

「困らないから良いんだよ」

「僕今困ってるよ」

 

 鋭い指摘にぐうの音も出ない。

 「何か買ってほしい本ある?」と聞いたら「この後本屋行こうね」と返事があった。

 和解が成立したようだ。

 やはり袖の下こそ最強に違いあるまい。

 

 そんなふうにして汚い取引を終わらせてカフェを出ると、入り口で蘭ちゃんと園子ちゃんの二人組に出会った。

 蘭ちゃんがパッと笑顔になって「お久しぶりです、黄衣さん!」と駆け寄ってくる。

 

「お、蘭ちゃん達じゃないか。君たちもケーキバイキング?」

「いや、それが……」

「あたし達が来た時にはもう品切れで入れなかったのよ!あーもう!バイキングなんだからケーキぐらい潤沢に用意しときなさいよね!」

 

 園子ちゃんがプンスカと怒り散らしておられる。

 どうも蘭ちゃんの大会優勝を祝してのケーキバイキングでもあったようだ。

 ふむ、それは流石になんとかしてやりたいが…。

 

 片眉を上げた園子ちゃんが俺の顔をまじまじと見て破顔する。

 

「それにしても、黄衣さんすっかり垢抜けたわね!前も意外とイケメンだったけど、こう、素材の良さが発揮され出したというか」

「そ、そうかな?そうだと嬉しいけど」

「ジャンルとしては中性的文学系儚げ美青年?眼福ではあるのよね。中身はゆるゆるポンコツ感あるけど」

「悪口やめて」

 

 「園子ったら!」と蘭ちゃんに窘められているが、蘭ちゃんの表情は内容を否定していない。

 ちくせう。本気を出せば神様もできるのに。

 振り幅がデカすぎて実用性がないというのはその通りではある。

 

 コナン君が隣でぷすぷすと笑っているのが見える。

 良かろうならば戦争だ。

 

「コナン君、帰りの本屋無し」

「なんで!横暴だ!」

「なんとでも言いたまえ。あ、蘭ちゃん。これ新しいペンダント」

「ありがとうございます!」

 

 ジャラリと一袋、1ヶ月分の詰め合わせだ。

 色が黒くなったら替え時で、物理攻撃には無敵の「被害を逸らす」魔術がかけられている。

 初めて会った時から幾らか改良を施しており、現在ではこうして定期的に袋入りを渡す仲である。

 

「毎回いいの?こんなに貰っちゃって。黄衣さん忙しいのに手作りだっていうし、デザインも凝ってるし」

「いいよいいよ。趣味だし。園子ちゃんもいる?」

「うーん、欲しいけど京極さんが嫉妬するかもしれないし。やめとく」

「ラブラブだね」

 

 へへへ、と園子ちゃんが恥ずかしそうにした。

 

「蘭ももしかしたら旦那に誤解されるかもよ?」

「そんなことないわよ、これただの厄除けだし、アイツそういうのに疎いし!」

 

 かあっと赤くなって蘭ちゃんがパタパタと手を振る。

 俺はニヤニヤと笑い、コナン君に耳打ちした。

 

「旦那としてはどう思われますか」

「うっせ。真面目な話ガチで命を守るペンダントだし、すげーありがたいっつの」

 

 と、そんな感じにカップルをつつき倒していた頃である。

 

 不意に外から生々しい悲鳴が響き渡った。

 ただ事でない叫びだ。

 

 素早くコナン君が走り出したので、俺もその後を追う。

 悲鳴の元は駐車場のようだ。

 

 駆けつければ、そこには頭から血を流し絶命した男の遺体が一つ、転がっていた。

 HPは0。魂も既になく、蘇生の目はないだろう。

 

 コナン君が振り返って俺を見る。

 毎度恒例の神話生物チェックだ。

 俺は少し逡巡してから、ゆっくりと答えた。

 

「いる。けど、事件に関係あるかはわからない」

「分からない……?」

 

 コナン君が困惑して聞き返した。

 これは何と言って良いものやら。

 

 このホテルにいるのは幽霊だ。

 その霊が犯人に語りかけたとして、復讐を希ったとして。

 果たして霊のせいと言えるのかどうか、という話である。

 

 するり、と背後から近寄ってきた帽子の女性が話しかけてくる。

 

「何がいるんだい?」

「うわぁああ!?誰!?」

 

 中途半端に推理に集中していたコナン君が仰天して飛び上がった。

 帽子の女性が「悪い悪い」と肩をすくめる。

 

「さっきアンタ、ホテルを見て『いる』って言ってたろ?何かなって思って」

 

 女性の視線は鋭い。INTもかなり高いようだ。

 あんまり変なことは言えそうにないが、俺では上手い言い訳も思い浮かばない。

 観念して、俺は正直に答えた。

 

「あのホテル、幽霊がいそうだなって話だよ」

「へ?」

「それより、警察と救急車に早く連絡しないとな。電話するから、その間その子と一緒に現場を見ておいてもらえるか?」

「お、おう…いいけど」

 

 気勢を削がれた女性が死体へと寄っていく。

 

 何者かよく分からないが、何処となく似た人を見たことがあるような。

 そんな気を覚えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 深夜のアジトはしんと静まり返っていて、人の息遣いすら聞こえてきそうな静寂に満ちている。

 

 あまり使われていない小さなアジトだ。

 倉庫の一角を改装したもので、ごちゃごちゃと物も多く埃っぽい。

 

 打ちっぱなしの床を踏み締め、RUMはゆっくりと高く積まれた棚の脇を通る。

 その先に、男がいた。

 

「もう来ていましたか、ジン」

「ああ」

 

 RUMの声に振り返り、銀の長髪を靡かせた男が少しだけ息を吐く。

 

 その顔に常にない苦悩を読み取って、RUMは眉間に皺を寄せた。

 

「報告書は読ませてもらいました。記載されていた内容に間違いはありませんか?」

「そうだ」

「トリック、何らかの幻、薬物の影響下にあった等もありませんね」

「フン。それなら楽だったんだがな」

 

 ジンの様子に嘘はない。

 彼を呼び出してこうして問いただしているのは、到底信じられない非科学的な内容が満載だったから、というのももちろんあるが。

 

 RUM自身、僅かばかり身に覚えのあることでもあったからだ。

 

 若き日に映像記憶能力(フォトグラフィックメモリー)を利用して活動していた頃の話だ。

 時折あり得ないものを見て、それを忘れられず苦しむこととなった。

 

「………分かりました。貴方に現在任せている仕事は全て別のものに引き継ぎます」

「!」

「貴方はその絵巻物の謎に専念してください。組織の人員、金は必要に応じて使っても構いません」

 

 ジンをまっすぐに見て、RUMは含むように言葉を続ける。

 

「もちろん。その代わりに出来る限りの情報を持ち帰りなさい。危険だと思われるものは手をつけなくて構いません」

「……何に使う気だ」

「あの方の望みが、叶うやもしれないので」

「ッ」

 

 ジンがわずかに息を呑む。

 科学にて様々な分野に手を出して、組織が限界を感じていたのは確かだ。

 とするなら、危険を冒してでも新たな道を開拓するのは悪い手ではないだろう。

 

 問題は。

 その危険が、制御可能なものかどうか、だが。

 

「聞いていましたね、バーボン」

「ええ。もちろん」

 

 あらかじめ呼んでいたバーボンに声をかければ、反射でジンは拳銃を取り出したようだった。

 困ったように肩をすくめ、倉庫の更に奥まった暗い部分に腰掛けたバーボンが立ち上がる。

 ジンの体が強張っている。

 その激しい緊張を見て、RUMもじっくりと言葉を選んだ。

 

「それで、僕に何か?」

「まずスコッチの件ですが。アレは本物ですか?」

「魂という意味では本物ですねぇ。肉の体は焼いてしまってもう無いですけど」

 

 にこり、とバーボンが笑った。

 悪意のない優しい笑みに見える、薄っぺらい笑いだ。

 

「偶然幽霊が手に入ったので、僕のものにしました。いけませんか?」

「……誤報の元になります。次からは報告を入れるように」

「分かりました」

 

 RUMはつぶさにバーボンを観察した。

 未だジンに銃口を向けられているというのに、まるで緊張していない。

 子供がアリの巣穴を覗くような、無邪気な好奇心だけがチラチラと瞳に映り込んでいる。

 

「次に、何故ジンにおかしな事を吹き込んだのか、ですが」

「ただの趣味ですよ。でも、役に立ったでしょう?もし教えてなければ人類丸ごと海の底だったんですから」

 

 ニマニマと悪質な笑みを浮かべ、バーボンはふふふと笑い声を漏らした。

 心底面白そうな、喜悦に満ちた声だ。

 

「今度もきっと大きな仕事になりますから、楽しみにしていますね」

「……テメェ」

 

 ジンが銃を握り直す。が、発砲しない。

 どうも発砲する事を恐れているように見える。

 いや、これは決定的に敵対する事を恐れているのか。

 

 RUMは激しく思考を巡らせ、最後の一手を決めた。

 慎重に、慎重に口を開く。

 

「最後に。これは敵対的な意味を含みませんが、少々貴方を試したいと思います。よろしいですか?」

「構いませんよ」

 

 バーボンがゆったりと両手を広げた。

 

 次の瞬間。

 バーボンの両脇上に仕掛けられた機銃が火を吹き、彼を蜂の巣にする。

 毎秒100発の機関砲M61バルカンによる攻撃だ。

 もちろん人間なら一瞬で血飛沫に変わるだろう。

 

 あらかじめセットしてあった銃弾を射出し終え、銃声が止む。

 

「煙たいなぁ。これ、配置に問題があるんじゃありません?」

 

 バーボンはパタパタと土煙を払い、嫌そうに顔を顰めた。

 バーボン自身も、その座る椅子も、全てが無事だ。

 他の全てが穴だらけの粉々になっているのに。

 何かに守られたかの如く、彼はゆったりと笑みだけを浮かべていた。

 

 唯一一番新しいと思われる肩の傷口から、黒々とした風の渦巻く様子だけが確認できた。

 

「それで、どうです?お気に召しましたか?」

「ええ。協力感謝します。こちらも組織で動いてますから、ただ闇雲に信じるというわけにもいきませんので」

 

 RUMとて分かっている。

 この男が人間では無いことぐらい、触れるべきでは無いことぐらい、報告を聞いてすぐにわかった。

 

 このバーボンと呼ばれる男が、本当に以前から組織にいたバーボンと同一人物かすら定かでは無い。

 なにせ今年に入ったあたりから、ある時期を境に発言の細かな癖、所作、重心の取り方などあらゆるものがガラリと変わってしまったのだ。

 他のものが気付かなくとも、RUMの観察力からすれば一目瞭然であった。

 

 とするなら。

 

 

 バーボンはタチの悪いものに「入れ替わられた」と考えるのが筋だろうと。

 

 RUMは驚愕を隠し、そのように結論づけたのであった。

 





・バーボン
成り代わられてない純正の降谷さん。
ただニャル成分が混入したためちょっと挙動がおかしいだけ。
この辺りの不自然さは諸伏さんも感じている模様。
ニャルの化身としては驚くべき大人しさ。
機関砲叩き込んでもある程度納得してくれるタイプ。

・ジン
機関砲の一斉掃射が始まった時「神格相手にそれは…!」と一瞬かなり焦った。
やばいの相手に物理は牽制にしかならないとの知見を得ている熟練者。
ニャルがこっそりハスターを蘇らせるよう警察を扇動してるんじゃないか疑惑を抱いている。

・RUM
話が通じるならやり方はあるだろうと思ってる初心者。
間違いではないのだが、癇癪ポイントを見抜くのが尋常でなく難しいので口で分かりあうのはやめた方が無難。
ニャル谷さんの場合一ミリでもスコッチの件で変な話が出たら暴れ出す模様。
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