生体宇宙艦『プロトコル』は進化する 作:いくら
私は自身の通信機能のレベルを2p分上昇させた。
これにより通信の発生元の角度と距離を把握することができる。
宇宙海賊が三隻、そしてこの信号を送っている私船《プライベートシップ》。
合計で四隻だ。
このような状況を人間は『そそる』と表現するのだろう。
幸いなことに件の私船は常に通信を垂れ流している。
相手の座標は把握できているし、その進む方角から宇宙海賊の三隻と私船との位置関係も分かっている。
私は私船の進行方向へ先回りすることにした。
私は宇宙船の中ではかなりの小型だ。その分全体的な出力が低い。
だから直線距離の移動速度で大型船に勝利するのは難しい。
しかし旋回速度や短距離での勝負では、動き出しという面で先行できる。
故に『待ち伏せ』という作戦は小型船が大型船に勝つために有用な手段である。
そしてそれは、機能を停止させて廃船と誤認させる私の戦術と組み合わせることで強力な戦術となる。
それは今まで食った三隻の船で検証済みだ。
私は自身の機能の内、『思考』『レーダー』『通信』のみを稼働させ他を停止。
小惑星の岩陰から目的の船が到着するのを待った。
20分程度で目的の船は到着した。
今もまだSOS通信は垂れ流され続けている。
しかし不可解なことがある。
後ろから追ってくる海賊船は、逃走中の私船の数段上の性能を持っているように思える。
最高速度や兵装に関しても海賊船の方が上だ。
私が通信を最初に拾ってから今までの一時間以上、海賊船は私船を捕らえられていない。
私の眼には海賊船が全力を出さずに追っているように見える。
レーザーやミサイルも敢えて命中させず、掠らせる程度にとどめているような……
そんなことを考えながらこちらに近付いて来るのを待っていると、新たに二つの通信を拾った。
通信範囲を限定した彼等が互いと喋っている音声通信のようだ。
「助けてくれ! 頼む、見逃してくれ!」
「ははっ、逃げろ逃げろ! もっと俺たちを楽しませてくれよ!」
「金ならやる。だから頼む! せめて家族だけでも!」
「バーカ、お前らが持ってるモンは全部俺たちのモンだ! 財産も人間もその船も、全部俺たちに奪われるんだよ! それが嫌ならもっと惨めに命乞いしな!」
なるほど、どうやら海賊の目的は『楽しむこと』のようだ。
娯楽、快楽、趣味趣向……人間という生き物には様々な楽しみがあるのだろう。
いや、私も『食べる楽しみ』のために今から四隻の船を撃沈させるのだから同類と呼べるのではないだろうか?
ともすれば、もしかすると私を造った何者かは、私を人間らしく設計したのだろうか?
そろそろだな。四隻の船が私の真横を通り抜ける。
その瞬間、私は全ての機能を解放した――