それいけ念能力者ちゃん 作:まるかいてちょん
私はこの世界に生まれた時から自意識があった。だからこそ分かる。この世界はクソだ。ある人は「人の夢は終わらねぇ!!」と言うが、そんなものここではまやかしだ。
人が夢を見るには様々なものが必要だ。余裕に、知識に……限りない探究心。それは何よりも広い世界でこそ発揮される。だがこの世界は広いというほど広くない。人類の生存圏など極限られたものだ。
外を見てみろ……などとすら言えないあまりにも狭い世界。それがこの世界なのだ。それでもまだ理解できない場合、結論この世界は夢を見れない世界なのだと記憶してもらえればいい。
分かったかな新入社員くん?それとも無駄な説明だったかな?
「い、いえ!大変ためになりました!ありがとうございます!」
そう、それは良かったよ……じゃあ、夢のない世界で、矛盾しているようだけど良い人生を送れることを願っているよ。
・二十二世紀初頭
世界の大気は汚染され、環境破壊問題も今までの警鐘も虚しく末期に到達した時、人類はいよいよ自然に頼った第一次産業を保てなくなっていた。
そのため世界各地では飢餓に耐えきれず政府に革命を促すクーデターが病のように流行っており、もはや国というものはかろうじて形を保っているだけの木偶の坊と化した。人類絶滅の危機と言えるだろう。
そんな時に立ち上がったのが時代を経て膨れ上がった巨大複合企業である。この一目見て人類絶滅の危機に見える事態で立ち上がった彼らはまさに英雄と言えるだろう。
彼らの勢いは凄かった。民衆がクーデターを起こしている理由は資源不足が主な理由であるはずなのにどうやってか巨大な権力を持つ彼らはその民衆の魔の手から逃れ、少しずつ事態を収めていった。
そうして彼らは順当に機能していない政府機能を掌握していき、復活させていく。その手腕はさも狙っていたのではないかと勘違いさせられてしまうほどのものであろう。しかしそんな証拠は企業が環境破壊を推進していたマッチポンプラスボスじゃないかという暴論くらいには全く存在しない。
そして、政府機能諸々が復活した訳だが、先述の大気の汚染と環境破壊は既に人類の対処出来る範囲を超えており、それは巨大複合企業であっても同じだった。
そのため彼らは次善策としてある形をとる事にした。何故か事前に用意してあった完全循環型環境都市アーコロージーへの移住。それはこの大気が汚染され、人体すら犯される空間では楽園への道そのもの。
だがアーコロージーへ入れる切符は数が限られていた。ならば当然初めに移住するのは巨大複合企業の英雄たち。次にこの袋小路のような状況を打破するための知識人。あとは少しの力を持つもの。それ以外は大気が汚れた外で暮らす事を余儀なくされた。
だからこういう概念も生まれたのだろう。アーコロージーの人間、あるいは外で生きるしかないもの達は自虐を込めてこう言った。
『下層民』……と。
そして私はそんな下層民として生まれた。
そこは環境も何もかも最悪の場所だった。下手をしたら古の糞尿だらけのスラムの方がマシではないかと思えるほどだ。何せ食事はまともな食べ物を育てる環境がないので不思議なペースト状の食べ物がデフォ。外出には大気から肺を守るガスマスクが必須で外せば基本即死亡。
そんな環境なので一見文明があるように見えてもそれは外観だけ、実際の所は皆生きることにだけしか集中できず、教育なんてものを施す余裕もないので外から這い上がる事も出来やしない。
いっそ諦めて死んだ方がマシな世界だ。しかしそんな場所でも、私にはまだ僅かな希望とも言える特別な力があった為、死のほんの少し前で留まることが出来た。
私にはふたつの特別な力がある。ふたつとも形はないが妄想ではなく確実に私の中で存在している力だ。それはもしかしたら世界を覆せるかもしれない。壊せるかもしれない……なんて事はないが、境遇をましには出来るかもしれない力だ。
一つ目の力はこの過酷な環境でも健康を維持し、這い上がる事も可能かもしれない力。
『念能力』
二つ目の力は純粋なパワーという感じではなく、生まれた瞬間から別世界の人間の記憶があるという……一種の前世知識。そしてその知識の中に含まれているもの。
『原作知識』
これらふたつの力がどうして私の手にあるかは重要では無い。どうせ原作知識に言わせるならどっかの竜帝がやらかした結果のバグとかだろう。だから肝心なのは、私は既にこのふたつの力を十分に行使できる環境にあるということだ。
念能力はともかく『原作知識』と名言したように。この世界は物語の世界であり、その物語の知識を原作知識とするならば、私は未来を知っているも同然なのだから。
故に、私がやるべき事は決まっている。未来の知識を知っていて、それを活用できる
そう決意した私だったが、ここで問題が発生した。考えていなかった訳では無いが、まさかこのタイミングでこの事態が起こるとは……読めなかった……この私の目を持ってしても……!
まさに青天の霹靂だ。ちょうど決意した所で知らされるんだからたまったものではない。いくら温厚な私でもちょっと許せないかもしれない。決意するまで育てて貰ったとはいえ、まさか五歳にも満たない年齢で今更捨てられるとは。
しかも大気汚染真っ只中に捨てられたので念能力者といえども死にかけた。幸い善意の協力者を念能力の気配を隠す"絶"によって追跡し、汚染されていない屋内に入れたため何とか生き残れたが……いやはや、念能力がなければ即死だった。
とまあそんな事があり念能力の有用性を実感すると共に、善意の男性の賃貸をさらに借りながら、そこを起点に今後どうするか考える事にした。
それから数日間、私はかなりかなり悩んだが、その末にひとつの答えを出した。それは「念能力で解決してしまえばいいじゃない」というものだ。我ながら大雑把すぎるが、まあ結局念能力がなければ今生きていないので、ここまで来れば全力で利用することにした。
念能力には"発"というものが存在する。まず念能力とは
分かりやすく言うと個人の適性による制限はあるが、自由に作れるある種の固有能力(発)だと考えれば比較的簡単に理解しやすい。
そして、私はその発を早速作る事にしたのだ。できれば発を作る数にも能力強度によって限界があるのでじっくり能力内容を考えたかったが、ここまで来てしまえば仕方ないだろう。早速私は能力の作成に取り掛かった。
そうして作った能力は間違いなく今後役立つものになるだろう。どれくらい役立つかは未知数だが……。何気なく善意の男の家に入ってから数日。しばらくして能力が完成した。
能力は単純だ。行動の結果を
それに程度の低い能力だとは言うが、有効に使えれば私の思う通り十分に成り上がれる力を持っている。
もっとも本音を言えばどちらかというと特質よりの白黒能力より、物体を操作できる系統の操作系の方が好ましかったが、具体的に操作系が何をどこまで出来るか分からなかったので操作系は断念した。
だから現状ではこれがベストの選択なはず。そう思って私はこの能力を行使していくことに決めた。
私が作った白黒能力……適当に名付けるなら『
これがすごい有用だった。正直生まれた時点から曖昧な原作知識よりもよっぽど未来を見ている力かもしれない。複数回の試行でそう判断することが出来るほどこの能力はリソースの割に強力だった。
お陰で食い扶持を稼ぐあても出来た。このご時世知能さえあれば使える判定されるので、年齢のハンディキャップも特に問題なく潜れたのだ。
避難した男の家にあるインターネットをちょいと拝借して企業を白黒能力で占ったかいがあった。これで男の世話になるのも終わりだろう。それとせめてものお詫び混じりに、初の給料は男に渡すことにしよう。
それから、私は働く場所を見つけて生活ができるようになり、この世界で最低限の地位を確保することができるようになった。と言っても下層の下請け企業内の一社員程度に留まるものだったが、幼児にしては悪くない滑り出しなのではなかろうか?
しかしこの下請け企業、それはそれとしてとんでもなくブラックだ。私の中にある前世の世界ではとても考えられない程の。
その証明として第一に幼児未満を働かせているというのは当たり前だが、同じく当たり前のように勤務時間はフルタイムオーバーと当然の権利のように人権侵害を行ってきている。
これはもう前世以前に生命が危ぶまれるレベルだ。しかもこの会社、私の気の所為でなければ現在の電子法にも反するような業務も行っている。有り体に言ってとんでもない所だと言えるだろう。
だから気に入った。
とんでもない場所だからこそいいのだ。正直環境で言えばもっといい所があったが、最新の英雄巨大複合企業が政府を乗っ取ったように、荒れているからこそいい。それでも実際どうなるかは分からないが、それは数年後に分かることだろう。
…………。
一年目、平社員のまま。
二年目、白黒能力の応用を探りつつ平社員で終える。
三年目、白黒能力で学習効率を最大限活かせる応用を使い、自身の能力を向上させる。同じく平社員で終える。
四年目、なんとなく念能力の修行をしてみる。この時点で八歳。念能力者としては多分それなりの位置に到達する。依然平社員。
五年目、現在の周囲との関係はほどほど。スキル磨きを続ける事に上司には気に入れられている。平社員で終える。
六年目、転機が訪れる。上役の一人が死亡したことで上の席が空き、私には出世した前上司の勧めで主任の席が与えられそうになった。だがここでは方弁で出世を交わした。前上司にさらに気に入られる音がした。平社員のまま。
七年目、そろそろ成り上がりについて考える。六年目では出世する元上司の機嫌取りを優先したが、果たしてここからどうするか。依然平社員のまま。
八年目、平社員からどうするか悩んでいたら元上司が一晩でやってくれました。
なんと元上司が退職するとの事で、どうせなら後釜は信用できるものがいいと気に入られていた私が次の課長に指名された。もちろん課長直行ではなく係長を経験してからということだったが、大変朗報である。そうして八年目は係長で終えた。
……もうそろそろいいだろう。九年目13歳に突入した私は、いよいよ成り上がりを始めることを決意した。
私の手の中にはさながらデスノートなこの会社の役員一同が行った犯罪行為について書かれている。しかも重いものは結構重い。だからこれが表に出れば結構な騒ぎになるだろう。
しかし私はこれを表にはリークしない。そんな事をすれば私の働き口が消えてしまう。だからこれの利用方法は表ではなく、裏への取引条件としてだ。
私の目的は初めから一貫している。当座の目標として成り上がる事。それだけだ。それだけで諸々の問題を解決できるからこの目標を掲げている。そしてそれももう達成される。
裏のものは表を支配しているものとして強い権力を持つが、繋がっている場所で犯罪が露呈するのは権力があっても避けたいだろう。だからと言って私程度の為に排除に動くのもやる気にならないはずだ。そこで私は折衝案として犯罪の証拠を裏に渡す代わりに、私が働いている会社の上役を排除し、私に社長のポストを渡すように提案した。
するとこれは大成功。地位で縛れるならと、下層民にいちいち構ってられない裏の上層民はその提案を承諾した。これで私は成り上がりをある程度満足に達成することができる。
そのためにまずは上の役員の排除からだ。
1・部長犯罪記録【社内情報改ざん、横領、社員を使った電子実験、etc】
以下役員は全て同文かそれ以上。
………。
そしてこれらの情報を上位企業に告発した功績を持って特別的措置として本件の企業立て直しのため私を社長に任命するとの事が極秘で私に対して通達された。なお、社長までの出世は次長クラスから少しずつ報告して排除していったので、出世にはおよそ二年を掛けた。
この時点で私は15歳。西暦は2126年だった。
そしてその年はあるものが始まる事を意味する年である。
そう、あのDMMORPG・『ユグドラシル』の開始。
『
・行動の結果などを白(YES)か黒(NO)で予測できる
・精度はあまり良くない
・例えば「私は今日死ぬ」などの判定は白黒でできるが、「どうやって死ぬ」「どこで死ぬ」は万以上の選択肢の中から最適解を選ばない限り白黒で判定できない。良くも悪くも大雑把な能力
・価値の大きいものを占う時は答えが出ない時がある
こんな適当な無双でいいのか……まあもうしばらく執筆できないから意味ないんですけどね()