それいけ念能力者ちゃん 作:まるかいてちょん
DMMO-RPG『ユグドラシル』──言わずと知れた架空のゲーム名である。このゲームはオーバーロードという前世に書籍やアニメなどで人気を博した創作物の中の設定の一つだ。作品を成立させる上で「こんなゲームが土台にあるよ〜」なんてやつ。それがこのユグドラシルである。
さて、そんなユグドラシルというゲーム。あくまで別世界で生きたことのある私の中では創作物扱いだったが、本日2126年のこの日。今確かに存在するものとしてこの世界に産声をあげた。
これを受けて一番喜んだのは多分私だろう。何故ならユグドラシルがあるというだけで今後の選択肢が増える。いくら社長になってアーコロージーの端っこに出入りできるくらいになったとはいえ、この世界は根元からかなり腐っている。
だから創作物特有の幻想……一定条件下でこの世界から逃げれる異世界転移に現実としてあやかれるなら、これ以上なく良いことなのだ。
そして今私の目の前にはユグドラシルのアプリがある。本当に異世界転移できるかは疑問だが……可能性があるなら少しは掛けてみるのもありだろう。
私はユグドラシルのアプリを押し、ゲームをスタートする。ユグドラシルは現実にほど近いVR型のゲームなので少し変な感触だ。
それからしばらくして、ユグドラシルのロゴが書かれたゲーム画面が表示され、それが暗転するとキャラメイク画面に移っていた。設定できるのは名前と容姿、最後に種族だ。
名前は適当にソウラ・ボナパルト二世でいいだろう。
なんだか私の本名混じりという事もあって辞書に不可能の文字が多そうだ。
容姿についてはベースとなる種族によって変わるので後回しにして、先に種族を決定しよう。何がいいだろうか?原作知識を考慮するなら異形種系がもっともマストだが、異形種だからと言って必ず原作に相乗りできるとも限らない。
それにもし念能力を引き継げるなら生命活動を行っていないアンデッドではありえない。異形種に分類される亜人系の種族たちは防具などを装備できなかったりするのでゲーム的にもあまり選択したくはない。とするとここは天使系が無難なのではなかろうか?なんとなく天使なら赤い血が通っている気がする。
よし、そうするとしよう。最後に容姿設定だが……こんなもの白髪赤目の厨二女神様スタイルにしていれば格好がつくだろう。
そうこうしているうちに0時の時間帯になった。サービス開始の時間である。なので私は早速視界の端にあるログインボタンを押した。
意識が引っ張られるような感覚。2126年の技術で身体中に注入されているナノマシンが駆動しているのだろうか?意識と身体の感覚が分断されていく。そしてその果てに、私の意識は新しい身体に押し込められた。
キョロキョロと辺りを見回す。見える景色は美しい中世風の街並みだ。環境破壊で人類も大混乱だったのによく中世のデータが残っていたものである。
次に天使は自前で飛べるらしいので「飛ぶぞ」とダメ元で念じてみる。すると地面が視界から離れ、思ったよりも簡単に飛ぶことが出来た。せっかくなのでこのまま移動してみる事にする。
プレイヤーらしき影の数は思ったよりも少ない。店などもあるが今はまあいいだろう。飛びながらゲームメニューを確認するというなかなか器用な事をやりながらミニマップやステータス画面を確認するものの、簡易的な操作の説明があるだけでチュートリアルとかはないようだ。
そして今も尚飛んでいる私は、ついに街の境界線を出て探索エリアへと突入する。天使の飛行能力はとっても便利だ。ここまで飛んでもスタミナ切れもない。弱点デバフも聖書印の天使なだけあり異形種の割には少ないと言える。我ながら天使は悪くない選択だった。
そう思考しているうちにモンスターエリアに入ったようだ。見える限り存在するモンスターは小悪魔というらしい。せっかくなので近くの一体に攻撃を仕掛けてみよう。
まずは上空から急降下攻撃で頭部に一撃。それは当たるがしかし………急降下と言いつつも全然急降下ではない。例えるなら絶妙な感じな前世の実写ロープアクションみたいだ。
とにかくそんな感じで私は小悪魔を上からしばき倒した。そしてそれに伴って通知がなる。
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Lv1→2
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レベルが上昇したらしい。サブカル系の中でMMOは触ってこなかったが、レベルが上がるという事はこれでいいのだろう。正直念能力者はオーラを扱う上で当然のように身体能力が爆増するのでこのアバターのロープアクションっぷりはストレスだが、ゲームのビジュアルは好みなので何とかやって行こう。
とりあえず当座はこの小悪魔を狩り続けるのが最適解だろうか。私は少しばかりユグドラシルが自分とは合わなそうだと考えつつ、自分が飽きるまで狩り続けることこにした。
数時間後。思ったよりもステータスの範囲で全力を出すという行為が楽しくなった私は、想像していたより長い時間ユグドラシルをプレイしており、現在もプレイを続けていた。
どうやらあのロープアクションは低レベルのステータスだったことと、最初から飛んでいる状態で空中殺法を行うプレイヤーの存在を運営が想定していなかったかららしい。考えてみれば当然だが、現実の人間に空中殺法を行うような人間はそういないからだろう。
そしていよいよ、この数時間で狩場の移動もしながらレベルは25になった。初心者にしては上出来なのではなかろうか?あとは種族レベルも天使15Lvになって中位種族を一個と職業一個を取得した。
その結果現在のステータスはこんな感じだ。
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種族レベル
天使Lv15
大天使Lv8
職業レベル
ソードマンLv2
種族Lv23.職業Lv2.合計25Lv
ステータス : 基本100上限
HP : 20
MP : 0
物理攻撃 : 25
物理防御 : 15
素早さ : 20
魔法攻撃 : 0
魔法防御 : 10
総合耐性 : 5
特殊 : 0
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このステータスがいいのか悪いのかはいまいち判断に困るが、まあ後12年も時間があるのだし、多少の寄り道をしても構わない。
素手格闘だったのに生えているソードマンについては途中でレッサーデビル・ソードマンが下級の剣を落としたためそれを使って生えたものだ。
RPGなんだしチュートリアルがないなら適当に敵を倒してれば武器のひとつでも入手出来るだろうと思っていた予想が当たった形になる。まあ実際の所は街で装備を貰えたのだろうが、構わないだろう。
そしてここまで来て天使の扱い方も分かってきた。基本的に天使はアンデッド確殺要員らしいが、近接でも普通に強い。特に飛行能力が特質するべき点だろう。
私にとっての天使は分かりやすく言うと回避盾だ。そこら辺の知識はなんとなく分かるので言えるが、ダメージを敵に与えまくってヘイトを稼ぎ、それを先述の飛行能力で確実に回避していく。
飛行能力の活用法は飛ぶだけじゃいなのだ。飛行能力はいくら体勢が崩れていても発動する。だから人間種が確実に当たる攻撃でも、飛行能力があれば避けることも可能という訳だ。
現在はその練習をしている。何分飛行能力は現行のものだとそんなに早くないのだ。そのため回避のタイミングは結構シビアで、攻撃を事前に予測しないと避けられないくらいにはピーキーだった。それでも要素を発見できたのは嬉しく、MMO初心者ながら遊べるオモチャを手に入れたのでそれに集中している。
目の前にはレベル25程度のヘルハウンド系上位種、グレーターヘルハウンドがいる。遭遇した中では最速の敵だ。これを飛行で避けられるなら立派な回避盾になれるだろう。
「グルァァ!!」
迫真のボイス付きでグレーターヘルハウンドが突っ込んでくる。聞いた感じは結構犬に近い感じだ。仕掛けてきた攻撃は右前脚の鉤爪による攻撃。それ自体は普通に予測していたので犬の左手の方向に避けてグレーターヘルハウンド……犬の脇腹に蹴りを加える。
犬はそれによって吹っ飛び、再度の睨み合い。しかし私は練習をしているので膠着状態を嫌い、犬の攻撃範囲に入っていく。そうなれば当然犬も反応するので、その攻撃を予測して避けようとするのだが、なんと犬は身体を大きく開いて突進してきた。
これでは左右に避けるのが犬のスピードもあって間に合わない。でも大丈夫。異形種にはまだ入れる保険があるのだ。近づいてくる犬の顔を眺めながら少し飛行で後退し、上体を後ろに逸らす。
そして地面と平行状態で浮かんだのだが……。
「うげっ……」
なんとこの犬畜生、ユグドラシルの低レベルAIの癖に空中で身を捩ってきて鉤爪をこちらに振り抜いてきた。
やはり賢い相手には普通に対応される飛行能力……微妙に強いのか弱いのか分からない技である。
私はそのまま犬の攻撃に引き裂かれた。
普通に殺られた。防具をつけてなかったとはいえ上に陣取られた勢いのまま滅多打ちだ。ついでにデスペナルティとしてレベルも数レベル没収された。飛行回避の練習だからと防具ない方が危機感持てるなどと思っていたのが間違いだった。今度からは素直に防具を買おう。
どこかで見た展開。一応この後展開自体はまったく違うものになる予定です。ただし2chなどが出てくることはその存在の便利さからちょくちょくありますのでそこは申し訳ない。なお、例により(以下略)