カードショップ店員をしている一般JK(転生済み)です。前世のデッキを使ってたら前作ラスボスと勘違いされてました。   作:SSS級侵略者ファンチ=メン

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 今日はこの後18時に2話投稿します!
 よろしくお願いします!


1話 強盗がカードゲームを仕掛けてくる世界

 パックを買う。

 

 子供の頃は1パック、高校になったら1ボックス、大人になった時は1カートン。

 

 パックを開ける回数は大人になればなるほど多くなった。けれどレアカードが出た時の興奮はいつまで経っても同じだった。

 

 どんなカードが出るんだろう?

 

 どんなデッキを組もうか。

 

 あるいはどんな絵違いカードが出てくるんだろう。

 

 そんな楽しみはいつまでもある。

 

 ボクはカードゲームが大好きだ。子供の頃からやり続けたそれがとっても大好きだ。

 

 だから、ボクは生まれ変わってもカードを握る。

 

 けど、今はプレイヤーとしてではなく、店員として。ボクは大好きなカードに没頭するのだ。

 

 

***

 

「お買い上げありがとうございましたっ!」

 

 ボクは客に商品を渡して、笑顔でそう告げる。客はそれを見て、こちらこそありがとうと言って、満足げな表情を浮かべていた。

 

「はあ、疲れたッッ!! なんで、こんなにいつも客が来るのさ!!」

 

 早朝から昼過ぎまで、休憩なしのぶっ続けで接客していたせいで汗だらけだ。

 

 ノリでネクタイを緩めてボタンを外そうとして、手首を掴まれてそれを止められてしまう。

 

 ボクよりも身長が高くて、顔立ちが整った女店員が慌てた表情を浮かべていた。

 

「ちょちょ、何やってんのよアマネっ! まだお店やってるのよ! 少しは女としての自覚を持ちなさいっ!」

 

「ごめんごめん、ついつい癖で。でもいいでしょ、ボクの絶壁に需要とかないじゃないか。姉さんの胸に比べたら」

 

「だからと言ってボタンを外すのは禁止よっ! 全く、前世は男だったのかっていうくらい無防備なんだから」

 

 まあ前世は男だったんだけどボク。

 

 低身長、絶壁なボクとは似ても似つかないボクの姉。姉の名前は陰陽ソラ。高身長に巨乳という凄まじいボディの持ち主だ。

 

 それに比べると僕の身体は実に貧相だ。本当に同じ血が通っているのか心配になるくらいには。

 

 ボク——陰陽アマネはタブレットで在庫確認しながら呟く。仕方ないからネクタイを軽く緩めて、第一ボタンを外すくらいに留めておいた。

 

「新品の在庫は全部はけたよ姉さん。追加の受注と相場の調査はやっておいたよ」

 

「我が妹ながら手慣れているわね。なんで妙に仕事が早いのかしらこの子……」

 

 そりゃあ前世もカードショップの店員でしたから。

 

 ボク達姉妹はカードショップの店員だ。カードショップの名前は【陰陽寺(おんみょうてら)】。都会から離れた僻地にあるそこそこの敷地面積を誇るカードショップだ。

 

 今日はこの世界に唯一存在するカードゲームの発売日。普段の開店時間よりも早く開店し、昼過ぎになるまで行列の接客に追われていた。

 

 今はその最後の客がはけて、別の仕事に取り掛かったところだ。

 

「しかし毎回毎回すごいね〜〜。カートンたくさん仕入れたのにすぐに無くなったよ」

 

「そうねえ。アマネちゃんがいてくれて本当に助かったわ。お父さんも喜んでるわよ。最近では美人姉妹のカードショップって言われてるらしくって!」

 

「やめてよもうっ! 恥ずかしいんだからっ!」

 

 姉さんは慣れた手つきでショーケースの中にカードを並べていく。

 

 ボクは近隣ショップの相場や全国的なカードの相場をタブレットで調べる。この世界ではカードゲームは一つしか存在しないため、カードの値段が凄まじく高い。

 

 トップレアなら一枚十万以上、少し強いレアカードなら数万以上、弱くてもレアなら数千円のレベルだ。

 

 現代日本の相場感覚ではあり得ないほど高い。

 

 けれどこの世界ではこれが正常で、何もおかしいことはない。

 

 何故ならこの世界では、権力、金に並んでカードゲームの強さが人間の価値を決めるのだから。

 

Epic&Duelist(エピックアンドデュエリスト)】、通称E&D。

 

 それがこの世界に唯一存在するカードゲームの名前だ。

 

「姉さんって新しいデッキ組むの? 新弾、結構強いらしいけど」

 

「うーん、私はねぇ。私はアマネちゃんがやる姿を見るだけで満足かなぁ」

 

「えー! 勿体無いっ! 絶対楽しいのに!!」

 

 このE&Dは前世でも存在していたカードゲームだ。ボクは前世、これを死ぬほどやりこんだ。

 

 この世界ではE&Dの価値が高くなったことに驚いたけど、それでもボクは実家の手伝いをしながらデッキを組んでいた。

 

 ということでボクは常にデッキを身につけている。ベルトループに鎖で金属製のデッキケースを括り付けている。

 

 前世からしたらあり得ない重防備だが、これくらいでもしないとリアルに身の危険がある。

 

 何故なら……。

 

「ギャハハハハッッ!! おいお前らっ! ありったけのレアカードを俺様に寄越せえ!!」

 

 こんな風に強盗が入ってくるから。

 

 強盗が武器かのように突き出してきたのは銃でもナイフでもない。

 

 金属製のデッキケースだ。それをまるで凶器のように突き出してくるのだ。

 

「お前らどちらでもいい! 俺様の言うことが聞けねえなら、魂を賭けた闇のバトルを申し込むぜ!」

 

 まるでカードゲームの販促アニメかのようなセリフが出てくる。

 

 ボクはそれを聞いて小さくため息を吐く。全く、この手の輩は後をたたない。

 

「残念だけど貴方に渡すものはないわ。だって、このお店には最強の用心棒がいるもの。ねえ、アマネちゃん」

 

「そうだね姉さん。ねえ、そこの人っ! そのバトル、ボクが受けて立つよ」

 

 ボクは腰のデッキケースを突き出しながら強盗へそう告げる。

 

 チンピラはボクを見て、ぷっと吹き出す。

 

「ギャハハハッッ! お前みたいなガキが俺様に勝つだと!? 随分と無謀な挑戦だが、受けて立ってやるよっ!!」

 

「御託はいいよ。表に出なよ。このお店を汚したくないからさ」

 

 ボクと強盗はお店の前に出る。大袈裟かもしれないが、この世界で本気でバトルする場合、開けた場所じゃないと悲惨なことになってしまう。

 

「ギャハハハッッ!! さあ、バトルバングルをつけな!」

 

「早く始めよう。まだまだ店番でやらなくちゃいけないことが沢山あるんだ」

 

 ボクと強盗はバングルをつける。すると目の前にバングルから投影されたホログラムみたいなものが映し出される。

 

 ボクらの前にはそれぞれ対戦台。対戦台の前には大きなフィールドが展開されていた。

 

 ボクらは対戦台にデッキを置く。デッキは自動的にシャッフルされて、その後ボクらは五枚の手札を引く。

 

 これでバトルの準備は整った。

 

「これから始まるバトルは魂を賭けたバトルっ! 負けて生き残れると思うなよ! バトルスタートっ!!」

 

「バトルスタート。早く決着をつけよう」

 

 ボクと強盗は対戦を始める。一見するとこの世界では常識的な対戦だ。

 

 実体化したモンスターが召喚され、モンスターの派手な攻撃、破壊演出など、販促アニメで見たような光景が繰り返される。

 

 けれど忘れてはいけない。これは魂を賭けた闇のバトル。これに負けたものには悲惨な結末が用意されている。

 

 対戦はボクの有利で続く。強盗のモンスターをうまく捌いて、的確にダメージを与えていく。

 

 アニメと違う点があるとするなら、このバトルに劇的な展開はないということだ。強盗に逆転の目を与えないように、徹底的に反撃の芽を潰していく。

 

「【ロストメモリー】を発動。キミの手札を全部墓地に置いて」

 

「な……! お、俺様の手札が一瞬で0枚に!?!?」

 

「フィールドの【メモリーバーン】の効果発動。キミは今捨てた手札の枚数の二倍のダメージを受ける」

 

「や、やめろぉ!! こ、この俺様がこんなガキに何もできず……い、いやだああああ!!!」

 

 相手の手札を全部捨てさせてから、それに応じたバーンで相手の体力を焼き切る。

 

 強盗に無数の炎が降り注ぎ、強盗の全身を焼き尽くす。それで相手の体力が0になって、ゲームセット。ボクの勝ちだ。

 

「や、やめろ!! 俺はこんなところで……ぎゃああああああ!!!?!?」

 

 強盗の全身が黒い炎で包まれる。

 

 闇のバトルの敗者は死亡する。アニメだと重要な場面で起きているんだけど、なぜか知らないけどこの世界だと頻繁に発生する。

 

 特にカードショップは狙われやすい。ボクはいつもこうしてやってくる強盗やチンピラを撃退している。

 

 心が痛まないのかとよく言われるが、カードショップにとってカードは命と同じくらい大切なものだし……、なんなら大体命懸けの闇のバトルを申し込まれるから手加減してる余裕とかないしとか思っている。そのため心はあまり痛まない。

 

 それにこう言う闇のバトルっていうものは元凶を倒せば死んだ人も生き返るというギミックだ。アニメでもそんな感じだった気がする!

 

「さ〜〜て、取り敢えず残った仕事を片付けようかな」

 

 オリパを作ったり、デッキを作ったり、在庫切管理したりなどやることは盛り沢山だ。

 

 今日の強盗はこれくらいにしといてほしい。新弾発売直後なんか、ひどい時は十人くらいやってくる。

 

 十人も流石に相手してられないので、これ以降は平和に終わってくれることを願うばかりだ。

 

 と思いながら店に戻ると……。

 

「ヒャッハーッッ!! ありったけのカードを出しな!! 言うことが聞けねえなら闇のバトルだ!!!」

 

「アマネちゃーん、お姉ちゃん特価品の値札シール貼るのに忙しいから、お客さんの対応おねがーい」

 

「お客さんじゃなくてこれは強盗だよ姉さん。まあいいや、ほらほらさっさと外に出て、とっとと済ませるよ」

 

 という流れでやってくる闇のバトラーをちぎってはなげ、ちぎっては投げを繰り返す。

 

 結局、閉店時間まで強盗の相手をする羽目になった。これが、この世界におけるカードショップ店員の一日というやつだ。

 

「平和なバトルがしたいな〜〜。あ、無限コンボねこれ。キミのライフがゼロになるまで同じこと繰り返すから」

 

「ば、バカなアアアア!!! お、お前、その凶悪なコンボ……まさか魔王の……!! う、うぎゃああああ!!!」

 

 なんか強盗が意味深な言葉を吐いた気がするけど気のせいだよね?

 

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