カードショップ店員をしている一般JK(転生済み)です。前世のデッキを使ってたら前作ラスボスと勘違いされてました。   作:SSS級侵略者ファンチ=メン

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2話 ヒロインに勝負を仕掛けられました

 カードショップ店員兼高校生の一日は早い。朝は六時前に起きて、店舗の掃除やなにやらをやらなくちゃいけない。主に深夜にカードの盗難が起こりやすい。

 

 お店のセキュリティはガチガチにしているけど、それでも盗難は起こりやすい。前世の現代日本ですら、カードゲームバブルが到来した時には盗難被害が相次いだ。カードゲームの価値が高いこの世界ではより盗難は起こりやすい。

 

 なので早朝のチェックは大切だ。監視カメラや在庫の確認、それら諸々を済ませる。どうやら深夜に潜りこむような不届き物はいないみたいだ。

 

「よし、次は……!」

 

 ひとまずお店で盗難が起きていないことを確認したら、次は家事の準備だ。

 

 ボクの実家は表がカードショップと家が合体した建屋になっている。郊外の土地の安さをフルに活用した店舗と言えよう。

 

 通勤時間はないに等しいので、カードショップでやることが終わり次第、ボクはそのまま実家のやることを済ませてしまう。主に朝ごはん作りなどだ。

 

 朝ごはんや自分の弁当を作ったら、朝で一番難敵とも言えることをやらなくちゃいけない。

 

「姉さん、起きなよ。起きなよ姉さん。今日、日直でしょ」

 

「う~~ん。アマネちゃん? もうちょっと寝かせてえ~~~」

 

「駄目だよ姉さん! それで何度も寝坊しているんだから! 早く起きて!!」

 

「うえーん。アマネちゃんが虐める~~~!!」

 

 そう、寝起きの悪い姉さんとの格闘だ。姉さんは寝起きがとても悪い。というか、いつもベッドの上でぐずったり、スマホを弄っていて中々起きてこない。

 

 姉さんはいつもギリギリに起きて遅刻しかけている。ボクが起こさないと中々起き上がろうとしない。

 

 ということで朝の五分から十分近くは姉さんとの格闘が始まる。姉さんを起こしてリビングに向かう頃にはお父さんもお母さんも起きて、朝ごはんを食べている。

 

 ボクと姉さんもそれに続いて朝ごはんを食べて、その後、高校の制服に着替えて登校する。これが毎朝のルーティーンだ。

 

「カードショップでの盗難相次ぐだって! うちは大丈夫だった?」

 

「特に問題なし! まあ盗まれたところでICチップで場所探れるから問題はないと思うけど」

 

 カードショップでの盗難はこの世界ではかなり重大な社会問題として扱われている。

 

 何せこの世界では金、権力、カードゲームの強さみたいな感じだ。つまりカードゲームの強さが社会的地位に反映されると言ってもいい。

 

 だからカードのシングル価格は資産価値が付くほど高く、それを専門に取り扱うカードショップは狙われやすい。

 

 だけどカードショップ側も黙ってはいない。日々盗難対策を講じたり、ある大手ショップでは警備員や用心棒を雇っているところもある。

 

 うちなんか二重でシャッターが閉まるし、なんならショーケースは耐爆、防弾ガラス製だ。ちょっとやそっとのことじゃ壊せないようになっている。

 

 それに万が一盗難されたとしても、カードにはICチップが内蔵されている。これは公式がカードショップ向けに展開した盗難防止策であり、いつでもどこでもカードの位置を確認することができる。

 

「でも本当に盗難する人達が多くなったよね。大してカード強くない癖に」

 

「あははは。アマネちゃんに比べたら殆どの子は弱く感じちゃうんじゃない? アマネちゃん、全国レベルだし」

 

 と言われてボクはあははと笑う。

 

 前世では良くて大型大会優勝レベルだ。それも64人規模の。

 

 この世界ではカードゲーマーのレベルは前世に比べると落ちている。その理由として、シングルの高騰、それに加えて情報の封鎖にある。

 

 シングルが高すぎて、前世のように動画配信者がぽんぽんと動画を出せる環境ではないのだ。それに加えて前世のように同じデッキが多くの人間によって開拓されることもない。

 

 色んな事情が重なり、前世の知識とプレイヤーレベルを引き継いでいるボクはこの世界ではそれなりの実力者らしい。

 

 それにボクの使っているデッキは前世使っていた相棒とも呼べるデッキだ。このデッキの運用はボクが一番上手い。

 

 ということで案外ボクは勝てたりするのだ。ボクのデッキが初見殺しマシマシってのもあるんだけど。

 

「じゃあお姉ちゃん、日直だから先急ぐね! またね〜〜アマネちゃーん!!」

 

「姉さん足早……。それに胸めっちゃ揺れてる」

 

 眼福、眼福と心の中でつぶやく。姉さんはダイナマイトボディに加えてかなりの身体能力の持ち主だ。足早いし、走るたびに胸がばるんばるんと揺れる。

 

 おかげさまで通り過ぎる男達は姉さんに釘付けだ。わかるぞその気持ち。女のボクですらあれはすごい光景だと思ってしまう。

 

「あれでスポブラ、スカート下に短パンだからな。男の子の性癖歪むで」

 

 何人かの性癖を壊していてもおかしくないだろあれ。

 

 そんなダイナマイトボディの美人女子高校生が姉なんだ。性転換ってのも悪くねえ。

 

「おはようアマネっ! 相変わらず朝早いのね!」

 

「おはよ〜〜コトネちゃん。コトネちゃんこそ」

 

「新弾の発売直後だったからね! 朝早起きしてデッキ組んでたのよ。放課後、お店に行ってもいいかしら? 欲しいカードがあって」

 

 と言いながら金髪の女子生徒が駆け寄ってくる。彼女の名前はコトネ、天道(てんどう)コトネ。

 

 彼女は俗にいう社長令嬢というやつで、うちのお得意様だ。よくパックやシングルを買ってくれる。

 

 コトネはバチバチのカードゲーマーだ。コトネの会社はプロチームも結成しており、またプロ育成クラブも運営している。コトネはそこの生徒であり、プロ候補生という立場だ。

 

「ちなみに新弾で何を組んだの? コトネが使うデッキと相性いいカードはいくつかあったけど……」

 

「それは秘密よ。今日こそはアマネ、貴女に勝ってみせるわ!! 楽しみにしておきなさいっ!」

 

「ああ、楽しみにしているよ」

 

 ボクはよくコトネの練習相手として対戦している。ボクが勝ち越しているせいか、コトネはボクへライバル心を強めている。

 

 こんな美少女女子高校生と対戦できるのもこの世界に転生した特権というやつだ。いや〜〜転生生活楽しいな!!

 

 そんなこんな話していると、高校に到着する。ボクらが校門を通り過ぎた時、真っ先に目に入ったのは学校のグラウンドだ。

 

 そこに人だかりができている。どうやら誰かがカードバトルを行なっているようだ。

 

「こ、この強さ……! わたくしをここまで追い詰めるそのスキルっ! 一体どこで身につけたというの!?」

 

「私のターンドロー。これで終わり。スペル【魔女の反逆】を発動。盤面にいる私の魔女達は強化される。魔女達で総攻撃」

 

「きゃ……きゃあああああ!!!!」

 

 上がる女子高校生の悲鳴。

 

 カードバトルをしていたのは金髪の縦ロール……うちの生徒会長と見慣れない姿の女子だ。

 

 見た感じうちの制服じゃなさそう。というか、この辺の高校の制服じゃない。けれど、どっかで見たことあるんだよな、あの黒色の制服。

 

 長い紫がかった黒の髪。すらりと伸びた手足に白い肌。やはりどこかで見たことある……。

 

 それにしてもうちの生徒会長を負かすなんて中々の実力者だ。生徒会長はプロデビューも決まっている凄腕のプレイヤーだ。ボクがちょっと冷や汗かくくらいには強い。

 

「さて、教えてもらうわよ。陰陽アマネという少女はどこにいるの? 答えてちょうだい」

 

「そ、それは……」

 

 生徒会長は言い淀んだ後、目線をあちこちへ動かす。するとボクを見つけたのか、逃げるように視線で訴えてくる。

 

 生徒会長に言われるまでもない。面倒ごとはごめんだ。ここはおとなしく退散を……。

 

「ハイハイっ! アマネちゃんはここよ!! あんたなんかボコボコにしちゃうんだから! ね? アマネちゃん」

 

「こ、コトネちゃーん……!! なんで名乗りあげちゃうのさ!!」

 

 コトネに首根っこを引っ掴まれて、ボクは前に突き出される。ちくしょう、体格差と運動神経の差で何一つ抵抗できなかった。

 

 黒髪の少女が振り向く。真紅の瞳に中央には黒色の紋様が見える。幾何学的な模様が瞳に浮かんでいる。

 

 それを見て、ボクの中でこの人物が何者なのか理解する。それと同時に何故この人がここにという驚きが出てしまう。

 

「へえ、貴女、私の紋章が見えるみたいね」

 

「え? それ、見えるもんじゃないの? そんなに派手なら……」

 

「残念だけどそうじゃないわ。この紋章は闇のカードバトラー、あるいは真のカードバトラーにしか見えないものよ」

 

 クール美少女のような佇まい。おまけに話し方。

 

 ボクはこの子を知っている。何故ならこの子は前世で見ていたE&Dの販促アニメの登場人物だからだ。名前は……。

 

「コードネームゼクス。それがキミの名前でいいかい?」

 

「なんで私の名前を……!? やはり、貴女はこっち側の人間のようね」

 

 いや、こっち側じゃなくてあっち側なんだが。

 

 コードネームゼクス。そんな大層な名前があり、販促アニメのヒロイン。彼女は俗にいう裏社会の人間だ。

 

 闇のカードバトルを仕掛ける闇のカードバトラー。それらと戦い、世界の平和を守る組織がこの世界には存在している。

 

 けれど一番の謎は一般人に過ぎないボクが、そんな大層な組織に狙われているということ。なんで? 闇のカードバトラーボコってたから目をつけられた?

 

 いや〜〜可能性ありそうなんだよな。なんなら今のところ無敗だから、ボクが仕掛けてる側って見られてもおかしくないかも……。

 

「陰陽アマネ、私とバトルしなさい。貴女の正体、私が探ってやるわ!」

 

「あ〜〜いや、いいんだけど後からでもいい? 昼休憩とか」

 

「そう言って逃げるつもり? あいにく様。私は簡単に貴女を逃すほど甘くないわよ」

 

「いやそうじゃなくて。もうすぐ始業なんだよね。流石に授業をぶっちするわけにはいかないからさ」

 

「…………それは、ごめんなさい。貴女が正しいわ」

 

 人聞きのいい子で助かった。

 

 これだけ人聞きがいいとなると、あれか? もしかして彼女は販促アニメの本編後である可能性が高い。

 

 販促アニメだとこういう状況でも容赦なくバトルを仕掛けていた。同じようなことを主人公にもやったのだ。

 

 その時は主人公はあしらわれていたけど、今では自分で聞き分けがつくようになったらしい。

 

 ということで昼休みにヒロインとカードバトルをすることになった。

 

 変な勘違いとか起きないといいな……。

 

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