カードショップ店員をしている一般JK(転生済み)です。前世のデッキを使ってたら前作ラスボスと勘違いされてました。 作:SSS級侵略者ファンチ=メン
「ボクのフィールドにあった【混沌の卵】と【混沌の円環】の二つの効果が発動したんだよ」
「二つの効果……? それは一体?」
「【混沌の卵】は自らの効果ではない効果で破壊されると自身に置かれているカウンターの代わりに墓地のカードの枚数を参照するという効果が発動した」
ゼクスはハッとしてボクの墓地を確認する。ボクの墓地には大量のカードが置かれていた。
けれどすぐにその墓地の違和感に気が付いたのか、ゼクスは慌てて反論してくる。
「け、けど! 貴女の墓地に15枚もカードがあるのはおかしいわ! いつの間にそんなに捨てて……あ」
「もう一つの効果は最初のターンに置いた【混沌の渦】の効果だ」
【混沌の渦】は手札を捨てることで魔力ブーストする以外にもう一つ別の効果を持つ。それは破壊時に誘発する効果だ。
「【混沌の渦】が破壊された時、山札の上10枚まで好きな数墓地に置くことができる」
【混沌の渦】の効果は墓地肥やしだ。山札の上十枚を墓地に送ることで【混沌の卵】のカウンターを一気に進めた。
「複数のカードの発動タイミングが同じの場合、好きな順序で効果を使うことができるのは知っているよね?」
「【混沌の渦】を使って墓地を増やし、【混沌の卵】の効果を使い、増えた墓地を参照してモンスターを召喚したと」
「そう。ボクの墓地は15枚。よって、【混沌の卵】の効果でコスト15までのモンスターをデッキから召喚することができる」
それによって登場したのが、ボクの盤面にいる【混沌龍アポカリプス】だ。
これはラスボスが使ってたエースカードで、どでかいコストを要求する代わりに、強力な効果を持つ一枚。
ただそのコストは大体の場合、真っ当に支払われることはない。前世ではありとあらゆる手段を使って、このカードをコストなしで召喚するギミックが開発された。
【混沌の卵】と【混沌の渦】を使ったコンボもその一つだ。置いておくだけでアドを稼ぐこれらを相手に同時除去させるか、あるいは自分で全除去を撃つことで能動的に起動させるかをして、大型モンスターを踏み倒しする。
そのため、盤面を全部除去できる【混沌の円環】をフィールドに置いたんだけど、発動条件が達成していなかったため、使う機会を逃してしまった。
「【混沌龍アポカリプス】の召喚時効果発動。このカード以外のフィールドのモンスター全てのパワーを0にする」
「なっ!? 私の魔女達が!!」
【混沌龍アポカリプス】には強力な効果がいくつも搭載されている。一つ目は召喚時にこれ以外のモンスターのパワーを0にする。
どんなにパワーが高いモンスターでも、こいつが現れた瞬間に無力と化す。
そしてそれに付け加えてもう一つ登場時効果。
「さらにこのモンスターが相手ターン中に召喚されたら、相手のターンを終了する」
「ターンスキップですって!? そんな効果、アポカリプスには……!」
「あの時は自分のターンに出現していたから使えなかっただけさ。けれど今は違う」
アニメではこのモンスターはラスボスが自分のターンに召喚している。
そのため、第二の効果が使われることはなかったが、その後カード化される際にターンスキップ効果が追加された。
強制ターンエンドはかなり強力な効果だ。なにせ攻撃を中断させることもできるし、ありとあらゆる効果を発動させないこともできる。
「これでボクのターンだ。ドロー」
ボクはデッキトップから引いたカードを見て少し笑う。
アポカリプスの真の姿を引いたんだけど、これを使うことはないだろう。アポカリプスが出た時点で僕の勝ちはほぼ決まっている。
「ボクはパンデモニウムの効果で手札を捨てて、魔力ゾーンに魔力カードを置く!」
「手札が再び0枚に……! 来るっ!!」
「【混沌龍アポカリプス】で攻撃する時、効果発動っ! 攻撃時、ボクの手札が0枚なら相手のフィールドのカードを全て破壊し、相手のライフを半分にする!!」
「わ、私の魔女達が……!」
【混沌龍アポカリプス】はコスト15という大型モンスターであるため、パワーも高い。それに加えて手札が0枚の時に発動する二つの効果。フィールドの全除去と相手のライフを半分にする効果。
これによって、アポカリプスのみで相手のライフを0にすることが可能だ。もっともアポカリプスは召喚酔いしてしまうので、そこは相手ターンに出すなど工夫は必要だが。
黒と黄金の龍が口を開く。次の刹那、巨大な熱線がゼクスを薙ぎ払う。ゼクスのライフがゼロになり、ホログラムが消滅する。
「くっ……! その力! そのデッキ! 普通の人が持っていい力じゃ……!!」
「ボクは極々平凡な一般人だよ。平和な高校に通う、平凡な女子高校生だ」
ゼクスは膝をつき、ボクを睨みつける。ちなみに本当にボクは一般人だ。転生したこと以外は。
「……信じられないわ。そのデッキ、そのカードは私達が倒したあいつの物!! それをどこで手に入れたの!?」
「……さあね。敗者であるキミにこれ以上語る義理はないかな」
ゼクスが勝ったらボクのことを話す。そういう約束だから、これ以上何か言うことはない。
もっともボクは大したことない一般人なんだけど。
「ただ、キミとのバトルは久しぶりに心が踊ったよ。楽しかったとも言える。再挑戦は受けてたとう。次は学校ではなく、ボクのホームでだけどね」
ボクはそう言って踵を返す。少し長く遊びすぎた。お昼ご飯を食べる時間がなくなっちゃう。
それにこれ以上学校のグラウンドを占領するのはみんなに迷惑だろう。早いとこ退散しなくちゃ。
「覚えておきなさいっ! 貴女の正体は絶対に突き止めてみせるわ! もし、貴女が次にあの時と同じことをするようなら、その時は私達が止めてやるわ! 何度でもね!!」
「……ん? 何を言ってるんだい? ボクはただの一般人だよ? 変なことを言わないでもらえるかな?」
な、なんか盛大に勘違いしていないかこの子? ボクを誰かと間違えてるんじゃ……。
いや、まさかな。偶々前作ラスボスと同じデッキを使ってて、偶々前作ラスボスよりも凶悪なコンボを使ってるだけで、偶々圧勝しちゃっただけで。
こんなふうに言われる覚えないよ? いや、バトル中、ちょっと興奮しすぎて何か変なことを口走ったような……。
「とぼけるのはやめなさい! 今のバトルで確信したわ! 貴女は魔王アズレインの生まれ変わりということは分かっているのよ!!」
「……なんでそうなった」
あ〜〜〜そういうふうに勘違いされたのか〜〜〜!!
ちょ、ちょっと冷たくあしらいすぎたかな!? いやいや先ずはこんな、カードゲームアニメ独特の勘違いを解かなきゃ!!
「あ、いや、ボクはそんな大層な……」
「次は貴女の正体を暴いてみせるわ! 次こそ私達が勝つ!! その時まで待ってなさい!!」
ゼクスがカードを掲げると煙が出てきて、ゼクスの姿がかき消される。カードゲームアニメでしか見ないような撤退方法だ……。
「というか!! この状況どうすんだよ!?!?」
ボクはゼクスが所属する部隊に目をつけられてしまったということだ。
これから碌でもないことが起こるだろう。こればかりは確信がある。
ボクの平和な日常とやらは崩れ去ったということだ。まあだけど、そんなものは闇のバトラーとの戦いでないようなもんか……。
これから忙しくなるかなあ……。それはちょっと嫌だなあ……。