カードショップ店員をしている一般JK(転生済み)です。前世のデッキを使ってたら前作ラスボスと勘違いされてました。   作:SSS級侵略者ファンチ=メン

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6話 主人公がカードショップにやってきました

「陰陽アマネ……彼女は一体何者なの?」

 

 私……ゼクスは拠点に戻り次第、彼女の正体を探った。

 

 陰陽アマネ。調和市(ちょうわし)で生まれ育った普通の女子高校生。両親が地主でカードショップを経営している。

 

 姉の陰陽ソラと共にカードショップ【陰陽寺】の看板娘として働いている。

 

 それ以外の素性は全く割り出せずにいた。

 

「公式大会への出場記録もなし、バトラー検定の受験記録もなし、健康診断は至って正常」

 

 陰陽アマネを探れば探るほど、彼女の背景に何もないことがわかる。

 

 あれほどの実力者でありながら表舞台には一切顔を出さず、健康診断では真のカードバトラーである証明……【バトラー粒子】の保有も確認されていない。

 

 はっきり言って怪しさしかない。

 

 それに調和市では最近、闇のバトラーの出現率増加と、それに加えて討伐数の増加が確認されている。

 

 私たちが所属する『十三騎士団』や『天命機関』、『バトルエージェント』以外のバトラーによる討伐数が増えているのだ。

 

 はっきり言って組織の訓練を受けていないバトラーが、闇のバトラーを倒せるわけがない。

 

 しかし、陰陽寺を襲撃した闇のバトラーはことごとく消息を絶っている。闇のバトラーを討伐している凄腕のバトラーがいるのか、あるいは。

 

「魔王の復活か」

 

 二年前の事件を思い出す。二年前に起きた魔王アズレインとその仲間達によって起こされた『邪神騒動』。

 

 邪神復活を掲げる魔王アズレイン達によって大量の闇のバトラーが現れた。それにより、多くのバトラーや一般人の魂が奪われ、一時は社会麻痺が起きたほどだ。

 

 私たち『十三騎士団』が先導して、『天命機関』や『バトルエージェント』といった各組織を率いて魔王アズレインの討伐を開始。

 

 私たちは多くの犠牲を払って、魔王アズレインを倒すことに成功したというのに……。

 

「まさか生き残っていたなんて。それも次はバレないように転生までして……!」

 

 どのような手段で転生したのか私にはわからない。けれどあんな凶悪なコンボを軽々と成立させ、混沌デッキを巧みに扱えるのは魔王だけだ。

 

「陰陽アマネ……あいつだけは必ず!!」

 

「よっ! ミオっ!。そんな難しい顔してどうしたんだ? わかったぞ! 新しいデッキでも考えてるんだな!!」

 

 急に肩を叩かれて私は驚きのあまり変な声を出してしまう。

 

「ひゃあ!? ちょ、カケル!? い、いたの!?!?」

 

 赤色の髪に、白と黒を基調としたブレザーの学生服。

 

 勇気(ゆうき)カケル。二年前の『邪神騒動』をきっかけに十三騎士団に所属し、今では魔王を倒した英雄である。

 

 私のことをコードネームではなく、神楽坂(かぐらざか)ミオの方で読んでくれる数少ない人だ。

 

 そして私の……い、いや今は変なことを考えるのはやめよう。

 

「ああ、ちょっと前からな! それにしても懐かしいな澪がそんな顔をするなんて! 会ったばかりのことを思い出すな!」

 

「そ、それは忘れてって言ってるでしょ! もう……!」

 

「悪い悪い。つい、な……」

 

 と言いながら謝るカケル。カケルと出会ったばかりのことは私にとっては黒歴史だ。周囲と壁を作り、孤独であることが強さだと思い込んでいたあの頃は……。

 

「ねえ、カケル。一つ相談してもいい?」

 

「お、なんだ? もしかしてデッキのことか!? 付き合うぜ! 俺も新しいデッキを組みたくてな!」

 

「そ、それはまたの機会にね。今回は別のことで……」

 

 私はカケルに相談を持ちかける。

 

 調和市で起きていること、陰陽アマネという混沌デッキを使う凄腕のバトラーがいること、彼女が魔王の転生体かもしれないということ、その全てを。

 

「なるほどなあ。あいつが転生……。だとしたらもう一回バトルしてみてえな!!」

 

「人の話聞いてた……!? そんな呑気なことを言ってる場合じゃないんだよ!!」

 

「分かってるさ! だけど彼女があいつなのかは直接バトルしないと分からねえな」

 

 カケルの瞳の奥で闘志が燃えているのが伝わる。カケルは二年前の騒動の時に、初めてE&Dをプレイし、そこから急激に実力をつけて、魔王アズレインを倒すに至った。

 

 私は完敗だったけど、カケルなら陰陽アマネを倒せるかもしれない。

 

 そして、彼女の正体を暴くことができるかもしれない。

 

 けれど、一つだけ不安があるとするなら。

 

「カケル。魔王を倒したあのカードは封印しちゃったんでしょ? それでも倒せるというの?」

 

 カケルはすごい。けれど魔王を一人で倒せたわけでもない。カケルは魔王を倒すためにとあるカードを十三騎士団の長から渡されていた。

 

 そのカードは魔王を倒し、世界に平和が訪れた時に地下深くに封印してしまったのだ。

 

 あのカードなしで魔王を倒せるかというと……。

 

「大丈夫だ! 俺には相棒や仲間達がいる! 安心しろよ! あそこから修行して俺はさらに強くなったんだからさ!!」

 

「そうね。そうだよね。うん、カケルなら勝てるよ」

 

「よしっ! じゃあ早速行くぞ! あのカードショップならそう遠くないだろ!!」

 

 と言ってカケルは走り出してしまう。カードバトルのことになるとすぐにああなってしまうのだ。

 

 ……ちなみに私たち十三騎士団の本拠地は調和市の地下にある。カケルの言う通り、陰陽寺まではそんなに時間はかからないのだ。

 

 

***

 

 

「ご来店ありがとうございました〜〜。貴方は出禁でーす」

 

「う、うおおおおお!?!? ま、負ける!? こんなはずじゃ……ぎゃあああああ!!!!」

 

 闇のバトラーは平日だろうが関係なく襲いかかってくる。

 

 ボクは学校から帰って早々闇のバトラーの相手をすることになった。ゼクスに比べるとビビるほど弱いな……。

 

「強盗とかするにしてももう少し強くなってから来いっての。ボクも暇じゃないんだから」

 

 ゼクスとの熱いバトルの余韻が薄まったみたいで少し寂しい。

 

 彼女とのバトルはとても楽しかった。あんなに負けるかもと思ったバトルは転生してから初めてだ。

 

「あんなバトル早々……」

 

「たのもー!!!」

 

 ボクがレジに戻ろうとすると、店の扉が勢いよく開かれる。

 

 また闇のバトルか? それにしては声は明るめだし、なんならアニメの主人公っぽい声だ。

 

 でもまあ流石に帰ってもらおう。これ以上相手してたら店番が勤まらない。まあそう言ったところでどうなるかは目に見えているんだけど。

 

「あー、はいはい。言っても無駄かと思うけど、帰ってくれないかな……って、え?」

 

「あんたが陰陽アマネか!? ミオを倒した凄腕のバトラーって聞いたぞ!! 俺と一戦やってくれねえか!?」

 

 ボクは目をこすって確認する。暑苦しい声、全身から沸き立つような熱気、ボクとのカードバトルを楽しみにしていると言わんばかりの輝いた瞳。

 

 そこに立っていたのはこの世界の主人公だ。ある日、ひょんなことでE&Dを始め、多くの戦いや多くの試練、仲間たちとの出会いと別れを経て魔王に勝利した伝説の英雄。

 

 その後を描いた物語では日本で最強のカードバトラーを決める大会――第一回レガリアの優勝者にもなった青年。

 

 勇気カケル。恐らくこの世界でトップクラスに強いカードバトラーがボクの目の前に立っている。

 

 カケルはアニメで何度も言った決め台詞を、アニメと同じ構図で微笑みながら言ってくる。

 

「俺とカードバトルしようぜ!!!」

 

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