カードショップ店員をしている一般JK(転生済み)です。前世のデッキを使ってたら前作ラスボスと勘違いされてました。 作:SSS級侵略者ファンチ=メン
「ボクはヴァルグリムの効果を発動! このモンスターは召喚した時に墓地にあるコスト5以下の魔弾カードをコストを支払わず使うことができる!!」
「なるほどな! それでさっきから手札を捨ててたってことか! 賢いなお前!!」
「お褒めに預かり光栄だよ。ボクは墓地にある【混沌の魔弾】を使用する!」
ヴァルグリムは仮面を被った悪魔貴族という感じのデザインで、二丁のマスケット銃を持っている。
そのうちの一つが目にも止まらない速さで抜かれて、カケルを撃ち抜く!
「……ぐっ!!」
「【混沌の魔弾】には二つの効果がある。一つは相手のライフかモンスターにダメージを与える効果。もう一つは相手の手札を一枚見ずに捨てさせる効果だ」
「な、なんで両方とも使えるんだ!? そう言うスペルは基本的に一つだけだって……」
まるで本当に痛みを食らったかのような仕草をしながら、カケルはそう聞いてくる。【混沌の魔弾】はコスト2の魔弾カード。こういうコストの軽いスペルはどちらか一つの効果を選んで使うのが普通だ。
けれどヴァルグリムはそんな常識を覆す。
「ヴァルグリムがいる限り、魔弾の選んで発動する効果は全て発動できる」
「……そういうことか! すっげぇ効果だな!!」
「ボクの相棒が褒められて嬉しいよ。ヴァルグリムの効果で使用したカードは、使用後山札の下に送られるよ」
ボクは使った魔弾カードを山札の下に送る。ここまで見ると普通の中型モンスターの性能だが、ヴァルグリムの真価はここからだ!
「ヴァルグリムのもう一つの効果! 魔弾カードを使った時、自分の場に魔弾トークンを一体召喚する!」
「魔弾トークン!? で、でもコスト1の小型モンスターだぜ……?」
ボクの場に召喚されたトークンはコスト1でスタッツも0/1と貧弱なものだ。しかし見た目で侮ってはいけない。
どんな魔弾もヴァルグリムの前では致命的な一撃へと変化するのだから!
「さらにヴァルグリムの効果! ボクは魔弾トークンを破壊して、破壊した魔弾トークンの数と同じコストの魔弾モンスターを墓地から召喚する!!」
「何が蘇生されるんだ!? 楽しみだぜ!!」
「その期待に応えるのはいいけど、キミの敗北は近付くよ。ボクは墓地から【魔弾の尖兵】を召喚する!!」
現れたのはコスト1、スタッツ0/2のモンスターだ。小型モンスターの登場にいつもなら笑われるところだけど、カケルは警戒心を緩めない。
流石は主人公といったところだろう。
「そいつはどんな効果を持っているんだ? お前が出すモンスターだ、只者じゃないんだろ?」
まるでボクを知っているかのような口ぶり。バトルを通して人と理解できる能力って本当にあるんだ……。
「うん、今からその効果を見せるよ! 【魔弾の尖兵】の効果発動! このカードが手札からではなく、墓地から召喚されたならこのカードを破壊する!!」
「…………え? せっかく出てきたのに自爆ってマジか!?」
「それだけで終わらないのがこのモンスターさ! 破壊後、【魔弾の尖兵】は自分のフィールドに魔弾トークンを3体召喚する!!」
再び魔弾トークンがボクのフィールドに召喚される。ヴァルグリムの魔弾トークンを破壊して墓地からモンスターを出す効果にはターン制限がない。
「なるほどな。本命は次に出てくるモンスターってところか?」
「ご名答。ヴァルグリムの効果を発動。ボクは魔弾トークンを3体破壊して、墓地から魔弾モンスターを召喚する! 現れよ! 【魔弾の射手】!!」
ボクのフィールドに狙撃銃を持った黒ずくめのスナイパーが召喚される。それは召喚された途端透明になって姿を消す。
「な!? 消えた!?」
「【魔弾の射手】は【隠密】の効果を持っている。このカードが攻撃しない限り、相手はこれを攻撃できないし、効果の対象にできない」
「【隠密】なら全体除去には焼かれるってことだろ? なら問題はないな! 少し厄介だけど!」
流石主人公、【隠密】の対処方法もバッチリだ。
【魔弾の射手】は【隠密】の能力だけでもかなり厄介なモンスターと言える。場にいるだけで相手にプレッシャーをかけられる一枚だ。
「ボクはこのままターンエンド。長いことやらせてもらったね。キミの番だ」
「構わないぜ! そんな強え奴らを見るのはワクワクするしな!! それに混沌のデッキなんてあいつ以外使い手がいねえんだ。せっかくだからちゃんと見ておかなくちゃな!!」
と不敵な笑みを浮かべたので、こちらも意味深な笑みを浮かべて返しておく。
カケルは山札の一番上に手を置く。するとカケルの手に黄金の炎が灯る。
「すげえ〜〜ねえねえあれなに?」
「あの人って勇気カケルじゃない?」
「え!? レガリア初代王者の!? あのドローって決勝戦で見せたあれなのかな?」
この世界のカードバトラーには二種類いる。
頭文字に真がつくかどうかだ。
真のカードバトラーはホログラムではない、本物のオーラを発する。時としてそれはありとあらゆる形となり顕現する。
そして真のカードバトラーの本気のドローは運命や因果すらも捻じ曲げる。
「ああ、感じてるぜお前の鼓動! 俺のターンドロー!!!」
カケルがトップから引いたカード、あれからはヤバい気配がする。
「前世から何度も何度も感じた……この感覚ね」
例えば大型大会の場で、なんでもないカジュアルイベントの場で、あるいは友人とのフリープレイの場で。
今、強いカードを引けたやつの顔が変わることをボクは知ってる。
どれだけポーカーフェイスであろうとも、ちょっとした仕草や表情の動きで理解できてしまうのだ。
カケルは今、そういう表情をした。ここからが本番ってことをこれ以上になく、わかりやすく伝えてきた……!!
「俺は【勇者の継承】を発動! 自分のフィールドのレンと竜の剣、そして手札にある竜剣技を墓地に置いて効果を発動するぜ!」
通常コスト以外に追加のコストを3枚も要求するスペル!! これはビックアクションが飛んできそうだ!
「行くぜ! 俺は【真竜の勇者レン
「大型フィニッシャーの踏み倒し……っ! 中々面白いじゃないか!!」
【真竜の勇者レンX】はアニメにおいて、主人公勇気カケルが使うエースカードの最終進化系だ。
アニメの中盤に登場し、終盤、ラスボス戦まで活躍した最強のカード! カード化された時もあまりにも強すぎて、二年以上も環境トップを走り続けた怪物だ。
百人のE&Dプレイヤーがこのカードを見た時、そのうちの九十人はこう答えるだろう。
『これはぶっ壊れカードだ』……と。
「【真竜の勇者レンX】の効果発動! 俺は【真竜の剣ドラグカリバー】と【真竜カリバーン】をデッキからフィールドに出す!!」
一気に2枚展開! 召喚で使った以上のコストを平気で踏み倒してくるっ!!
さらにそれだけじゃない。ここまでなら強カード。ここからがぶっ壊れカードと呼ばれるスペックを発揮する。
「さらに効果! このカードがカードの効果で召喚されていたら、手札、墓地からコスト6以下になるように好きなドラゴンを召喚してもするぜ!!」
【竜の勇者】というテーマはアニメの主人公が使うデッキなため、そりゃあ公式から優遇されまくった。
多くの踏み倒しカードが擦られ、強カードが擦られ、単体でのカードパワーは群を抜いていた。
大会に出れば【竜の勇者】デッキで埋め尽くされてたなんてことも珍しくない。
前世での出来事を思い出す。
ボクもこのデッキとは何度も戦った。大会に出れば2回に1回は当たるといってもいいほど使い手がいたから。
だから知っている。
そのカードの対処方法を。
「俺は【魔竜ヴォーディガーン】を召喚するぜ! その後レンXの効果で全てのドラゴンに【先駆】を与える! 一斉攻撃だ!!」
「攻撃宣言時。ボクは【魔弾の射手】の効果を発動。ボクの手札が0枚の時、ボクは墓地から魔弾カードを唱えることができる」
「な、なにぃ!? お、俺のモンスターが!!」
ドラゴンたちの攻撃はボクの一歩前で制止する。何故ならドラゴンたちの全身に鎖が巻き付けられていたからだ。
ボクは墓地から発動したスペルをカケルに見せる。
「ボクが発動したのは【鎖の魔弾】。これは相手の攻撃宣言時にしか発動できないけど、相手のフィールドにある全てのモンスターに攻撃不可を与えるというスペルだ」
「そんな強力な魔弾を!? ……ハハっ、すっっっげえなお前!! 本当にあいつみたいだ!! 俺、すんげえワクワクしてきた!!」
自分の攻撃が止められたというのにすごい笑顔だ。心の奥底からE&Dを楽しんでるプレイヤーってのが伝わる。
けれどそれゆえに寂しい。恐らくこれがラストターンになるということに。
「俺はもう何もできねえ。このままエンドだ」
「ボクのターンドロー。ねえ、キミの名前を改めて聞いてもいいかい?」
「いいぜ! 俺の名前は勇気カケルっ! E&Dが何よりも好きだ!!」
「うん、ありがとう。ボクの名前は陰陽アマネ。同じくE&Dが大好きで、このデッキを……混沌属性を愛している」
「へへっ! まるであいつみたいなことを言うんだな」
まああいつってのは十中八九ラスボスのことだろう。ボク、なんも関係ないんだけどなあ。
まあ簡単に解ける誤解でもなさそうだし、時間が解決してくれるだろう。それはまで放置が安牌だ!
「勇気カケル。楽しかったバトルの時間もこのターンで終わりだ。ボクは【魔弾の射手】の効果発動! 手札を一枚捨てて、プレイヤーにダメージを与える!」
「ぐっ……!? でもこれくらいならまだ!!」
「まだまだ終わらないよ。この効果の解決時、ボクの手札が0枚なら墓地から魔弾カードを使うことができる! ボクは【灼熱の魔弾】を使う! プレイヤーにさらにダメージ!!」
畳み掛けるようなバーンカードの連打! 【混沌魔弾】というデッキタイプは回し方次第ではバーンデッキとして機能する。
ボクの場にいる【魔弾の射手】はそのバーンの効率を上げてくれる。
「ヴァルグリムの効果で魔弾トークンを生成! その後射手の効果で魔弾トークンを破壊して、破壊した枚数以下のコストを持つ魔弾スペルを発動! 打ち抜け! 【始まりの魔弾】!!」
一度回り出すと止まらない。
手札を0枚にする、盤面に二体のモンスターを並べるなどの厳しい条件を達成しなくてはならないが。
その分、リターンは多大ということだ。
「……なあ、また今度もバトルしてくれねえか?」
ラスト一発でライフが尽きるとなったところで、カケルがそう聞いてくる。
その答えは決まっている。
「いつでも来なよ。暇なら相手してあげるよ。今度から負けたら店の商品買ってもらうけどね」
「へへっ! ありがとうな、そう言ってくれて。……俺の負けだ」
「一カードショップ店員として、一カードバトラーとして当然のことを言ったまでだよ。対戦ありがとうございました」
魔弾によるバーンと盤面のモンスターによる総攻撃。これでバトルは決着した。
ボクの……勝ちだ。