一部の生徒に激重感情を抱かれる偽物たちのブルーアーカイブ   作:ヒッキーn世

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ユメノ編終幕です……2話しかありませんけどね……
精神崩壊したホシノは復活することができるのか
それではご覧ください


夢との別れと出会い

 

 日本生まれ日本育ちの女の子、梔子夢はよく不思議な夢を見ることがあった。

 それは砂まみれの校舎の中、可愛い後輩と一緒に過ごした日々の夢だった。

 それは朧げで、はっきりとしない虚像のようなもので、それでも確かに誰かの思い出なのだと私にはわかっていた。

 それでも、彼女の日常がごく普通の女子高生の域を出ることはなかった。

 なぜなら、その誰かは私にとって別人であったから。

 私は夢で、あの子はユメで、だからそれはきっと誰かが見た夢に過ぎないのだと、そう思っていた。

 その認識が変わったのは、私があるゲームを始めた時だった。

 少女たちが当たり前のように銃を持つ世界観。

 空に浮かぶ光輪。

 そして……砂漠に建つ1つの学校。

 その全てに既視感があった。

 ああ、私はここにいたんだ、なんて思った。

 とはいえ、私がその後何かしたわけではなかった。

 そもそもキヴォトスの存在を確信していても、そこに行く方法を知っていたわけではない。

 それに私はもう梔子ユメではなかったのだから。もう死んでいるのだから。

 だから私は特になにもしなかった。ただの一プレイヤーとしてゲームを楽しんだ。彼女の後輩だったキャラを推しにはしたが。

 そして私はもう一度死んで……再びキヴォトスに舞い戻った。

 私の記憶が戻ったタイミングの関係上、私だった存在を救うことはできなかった。

 その事に必要以上に悲しむことも気落ちすることもなかった。私が思ったよりも薄情だったのかは、自分でもわからなかった。

 そして、私は彼女たちと出会った。

 私と違って2回目ではなかったみたいだけど、同じく転生した同志の存在に、確かに私はゆとりを覚えた。

 彼女たちは原作に関わらないと言いつつも、結局自分の誰かと似た容姿を巡る騒動に巻き込まれていった。

 ティーパーティーの狐ちゃんによく似た彼女は、前世の自分の状態を教えてくれた。その上で彼女は本当の自分を曝け出し、お姫様を救った。

 人助けに疲れてしまった委員長によく似た彼女は、その気質すらも本物とよく似ていた。そんな彼女には私たちとの関係が癒しになっていたらしい。余裕を得た彼女は本物と、あるいは己の不満と向き合い、怪談の力を得た彼女たちと心を通わせることに成功した。

 だから私も、この過去に向き合うべきだと思った。私が……梔子ユメであったという事実に、私が残して来てしまった足跡に、小鳥遊ホシノという後輩に。

 だから会いに行こうと思った。"私"として。梔子ユメとして。

 でもそんな私を、私の心を裏切ろうとした自分を、セイカちゃんは止めてくれた。本人にはそんなつもりはないのだとしても嬉しかった。私は私でいいんだと言ってくれたようで。

 だから私は私なりに頑張ったんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿か君は!馬鹿なのか⁉今までこれほどにそう思ったことはないよ!」

「あれはやりすぎだって!ほら見なよホシノが呆然通り越してなんかやばいことになってるじゃん!」

「え…………しん……あ?」

 

 うわごとを言いながら立ち尽くすホシノ。

 憐れみすら誘う見た目である。

 

「いや……こんなことになるとは思わなくて……」

「もうこれ精神崩壊してないかい?ユメノ、ちょっと話しかけてみてくれないかい?」

「う、うん……ホシノちゃん?」

 

 愛する先輩の声を聞いても反応がない。末期である。

 

「これは流石にまずくない?」

「まずい以外の何物でもないね……さてどうするか……」

「え……ホシノちゃん元に戻るんだよね?」

「「……」」

 

 そっと目をそらす2人。

 それを見てようやく事態の深刻さを理解したらしい。

 

「ええ~!ごめんねホシノちゃ~ん!謝るから戻ってきて~!」

 

 泣きついても反応は変わらない。

 

「実際どうするの?原作でこういうことなんてあった?」

「ここまでの拷問じみたことをされた生徒はなぁ……」

「え、まって私拷問みたいなことしてたの?」

「まあ自己の否定という意味では……」

「ひぃん~!」

「自己の否定……あ、アリス!」

「彼女がどうかしたかい?」

「パヴァーヌ編の最後の方で心の中に入るシーンみたいなのなかった?」

「……ああ、精神ダイブ装置か!そういえばあったね。だがあれ今使えるのかい?」

「うーん……ヒマリちゃんなら使えるかも……」

「ならばユメノ、連絡してもらえるかい?」

「うん、わかった!」

 

 ユメノが連絡を取っている間に、セイカたちはホシノを車に乗せる。

 

「……正直これでどうにかなるの?」

「私たちにはそう信じるしかないさ。彼女のことをよく知るのはユメノだけだからね」

「セイカちゃん、いけるってー」

「ならばミレニアムに急ごうか」

 

 車は砂煙を上げミレニアムへと向かう。

 

 

 

 

 

 

「あら、ユメノ。待っていましたよ」

「こんにちはヒマリちゃん。それで頼んでおいたのは……」

「ええ、準備できていますよ。このミレニアムが誇る超天才清楚系病弱美少女の私にかかればこの程度すぐに終わります。……ですがいいんですか?他人の精神にダイブするのには危険が伴いますよ?こればっかりは私にもどうしようもできません。もちろん可能性を下げることは可能ですが……」

「うん、大丈夫。大事な子のためだからね」

「……そう、ですか。ではこちらへ。お連れの方たちも」

「ああ、そうさせてもらうよ」

 

 歩いていくと、やがて大きな機械のある部屋へとやってくる。そこに設置されたベッドのような機械にアヤが抱えていたホシノを横たわらせる。

 少し機械をいじると、ヒマリがこちらを向いて言った。

 

「準備ができました。そちらは大丈夫ですか?」

「うん。じゃあ行ってくるね」

「ああ、君なら大丈夫だとは思うがくれぐれもドジは踏むなよ?」

「ほんとにね。まあ、ちゃっちゃと帰ってきてよ?」

「わかった……ヒマリちゃん、お願い」

 

 その言葉を受けたヒマリが何かの操作をすると、ユメノの意識は何処かへと潜って行った。

 

 

 

 

 

 

「……ホシノちゃん?どこー?」

 

 気づけばユメノはとある校舎の中を歩いていた。

 そこには見覚えがあった。恐らく昔のアビドスの校舎だろう。

 

「あ、ホシノちゃん!」

 

 その内の1つの教室……生徒会室に彼女はいた。

 

「……ユメ先輩、いえ、今は違うんでしたっけ?」

「そうだよ、今の私はユメノ。ホシノちゃんと同級生のただの女の子」

「そうですか……私のせいですよね」

「え?」

「”ユメ先輩”が死んだのも、ユメノさんたちに迷惑をかけたのも、全部私のせいです。こんな私なんて……」

「……駄目だよホシノちゃん。そんな風に自分を責めたら」

「でもっ!全部私のせいって!そう思わないと!私のこの気持ちはどこに向ければいいんですか!」

 

 机を思いっきり叩くホシノ。

 その顔には強い後悔が滲みだしていた。

 

「ホシノちゃんは悪くないよ」

 

 ユメノはホシノに抱き着く。

 

「結局悪かったのはドジしていろいろ忘れたユメなんだから。ホシノちゃんが気に病む必要はないの」

「でも……でもっ……!」

「じゃあホシノちゃん……ありがとう」

「……え?」

 

 突然のお礼に何を言われたのかわからない。

 

「私のことをずっと覚えていてくれてありがとう。私の大事だった場所を守り続けてくれてありがとう。私の死を悲しんでくれてありがとう。みんなみんな……ありがとうっ!」

 

 そんな言葉に、ホシノの目から涙が溢れる。

 

「わ、私、わたしっ、頑張ったんです!1人で戦って、大事な後輩もできてっ、幸せで……でもこんな私が楽しんでいいのかって不安になって!」

「うんうん、そんなことないよ。ホシノちゃんは幸せになっていいんだよ」

「ユメせんぱっ、ゆめせんぱぁい……」

 

 泣きじゃくるホシノ。

 ユメノはその背をただ優しく撫で続けていた。

 

 

 

「……すいません、いろいろと」

「いいよ、私とユメのせいだからね……」

「……それでも私は、ユメ先輩といて楽しかったです」

「私もだよ、ホシノちゃん!」

「ええ……さようならユメ先輩」

「うん、さよなら……そしてはじめまして、ホシノちゃん!」

「はじめまして、ユメノちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

「……お、起きたみたいだね。調子はどうだい?」

「んん……おはよぅセイカちゃん……だいじょうぶだよ~」

「寝ぼけてない?これ」

「それで済んだのならいいだろうさ。さて、そっちはどうだい?」

「……うん、大丈夫だよ。……いろいろとごめんね?」

「その言葉は君の後輩にかけてやるといい。君のことを心配していたよ」

「いやぁ~そっか~みんなにも謝らないとね~」

「そうだよ!みんなホシノちゃんのことが大事なんだからね?」

「はい、じゃなくてう、うん、そうだね?」

「どうしたの?ホシノちゃん」

「その辺にしてやってくれないかい?彼女の気持ちがわかってしまうものでね」

「……ああ、演技してる同士か」

「……わざわざ言わないでくれ」

 

 

 

 

 

 

 そこからは特に語ることもない。

 ホシノはみんなのところに戻っていつも通りの日々を過ごすことになった。

 そしてまた彼女たちも落ち着いた日々を過ごすこととなった。

 

「これでみんなが本物との確執にけりがついた、か」

「これでしばらくは落ち着けるっていうことだね」

「ああ……その言い方だとしばらくの後にまた何かに巻き込まれるようじゃないかい?」

「まあいいんじゃな~い?こういうのもキヴォトスって感じがしてさっ!」

「まあそれは否定しないが……」

「結構人脈も出来たしねーほんとに何か起こるかもね?」

「しばらくは勘弁してほしいものだね。友と過ごす時間をもう少し味わっていたい」

「セイカも大概私たちのこと好きだよね」

「……?そうだぞ?君たちがいなければ今の私がいたかはわからないからね」

「お。おう……」

「アヤちゃんカウンターくらってる~」

「いいよね好きって気楽に言える性格のやつらはさ!」

「好意は伝えられる時に伝えておいた方がいいからね」

「言葉の重みが違うね……」

「そうかい?……ともかく私たちはハッピーエンドをつかみ取ったんだ。ご褒美をもらっても罰はあたるまい」

「それもそうだね~」

「変な騒動が起こらない様に祈っておくかな……」

「そうしておいてくれ。まあそういうのも私たちの青春の日々(ブルーアーカイブ)と呼ぶにはふさわしいのかもしれないけどね」

 

 

 一部の生徒に激重感情を抱かれる偽物たちのブルーアーカイブ 




 鬼灯ユメノ

 梔子ユメ→梔子夢→鬼灯ユメノの順に転生してきた人
 前世は前世、今世は今世という考え方
 ホシノとの決別と出会いを行った


 小鳥遊ホシノ

 ユメと別れ、ユメノと出会った
 彼女は新たな一歩を踏み出していく





今章ではユメノとホシノの関わりが書けたのではないかな……と思います
これにて終わり……ではなく後日談兼エピローグもある予定です
なので完結おめでとう、はまだストップです
あ、普通の感想はいつでも大歓迎です
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