一部の生徒に激重感情を抱かれる偽物たちのブルーアーカイブ 作:ヒッキーn世
なんで作者は戦闘描写が苦手なのにこんな話の流れになってしまったのでしょうか
砂漠で過ごす者たちの激闘
目の前で咆哮を上げているのは、彼女たちにとっても少なからず憎しみを抱いている存在、ビナー。アビドスに生きる以上何度も出くわし、そして何度も退けてきた怪物を前に、少女たちは慣れた手つきで攻撃を開始した。
「いきますよ〜☆」
「ん……!」
「喰らいなさいっ!」
ミニガンによる弾幕が、ドローンによる爆撃が、アサルトライフルによる銃撃が、それぞれ鯨と大蛇が混ざりあったような機体を攻撃した。
それに苛ついたのか、ビナーはその口を大きく開き口内を光らせる。しかしそれが熱線を放つ前兆だと知っている彼女たちは冷静に回避体制を取った。
「レーザー、きます!」
「オッケ〜、じゃ、今がチャンスってことだよねッ!」
装備を本気で戦うための臨戦式のものに変えていたホシノは、その隙を見逃さずショットガンと拳銃による連続攻撃を仕掛ける。その波状攻撃に怯んだのを確認したアヤネは、残りのメンバーに指示を飛ばした。
「皆さん、今の内です!」
「ん、了解」
「やっちゃいますね〜!」
「とっとと倒されなさいよっ!」
複数の方角からの攻撃に晒され続けるビナーだが、当然ただやられ続けてくれるわけもない。ビナーはその体を身震いさせると、背から無数のミサイルを全方位に発射した。
「うわっ!?」
爆撃によるダメージと、舞い上がる砂煙によって有利だった戦況が怪しくなってくる。だが本格的にこちらが不利になる前に、アヤネが手を打った。
「爆風弾、投下します!」
爆風のみに特化させた爆弾を空中で起爆させることで視界を晴らした彼女は、そのまま攻撃を続けるように指示を出した。
「皆さん!そのまま……」
「いや、ちょっとまって。逃げられる」
ホシノの目は確かにビナーが及び腰になり地中に潜っていくのが見えた。砂漠とは違い硬いはずの地面だろうがお構い無しに逃げ去ろうとするビナーの姿を確認したホシノは、即座に追い打ちをかけに動いた。
「悪いけどさ、今はこっちがそっちを足止めする番なんだよね。だから……逃さないよ」
ホシノが自信の持つ神秘をふんだんに盛り込んだ弾丸を雨のように浴びせ続け、無理矢理ビナーを地上へと追い出す。そしてそのまま彼女は不完全な体勢のまま地上でのた打ち回るビナーに対して全力の攻撃を叩き込んだ。
「こっちは弱点も対処法も大体知ってるんだよね〜、だからさあ……そう簡単に行くと思ったら大間違いってこと。わかった?」
動きを鈍らせ段々と弱っていくビナーに攻撃を続ける後輩たちのアシストをしながら、ホシノはこの場を見ているであろう彼女たちに向けてそう言った。
「……ビナーはもう駄目ですかね」
「まだ大して経ってないのにもう?せっかく蘇らせてあげたっていうのに」
「は、薄情者さん、ですね」
「まあたかが預言者の一体が落ちたところで、どうにもなりませんよ。簡単に勝つ方法は、既にこちらの手にはあるのですから」
裏社会で生きる者たちの策謀
便利68と相対するは、機関砲やミサイルで武装した多脚の戦車のような機体を持つ預言者・ケテル。市街地のような地形をワイヤーを駆使して機敏に動き回る厄介な相手だ。
「それじゃ、作戦通りいこっか」
それでも、彼女たちにはカヨコが立てた作戦があった。それも必勝の策といえるようなものが。
「オッケー!それじゃあムツキちゃんは行ってくるね〜!」
「わ、私も行きます……!」
「頼んだわよ、ムツキ、ハルカ」
ムツキはその姿を建物の影に消し、ハルカは無謀とも思えるような行動、すなわち単身でケテルの前に躍り出た。
「それじゃあ、私たちは……」
「ええ。刺激しすぎない程度にハルカの援護よね。わかってるわ」
改めて確認するまでもないとでも言うように、アルはハルカを狙う機関砲の砲身に狙撃を命中させていく。それを見たカヨコもまた、ケテルの気を散らすために影に紛れて射撃を行っていく。
「死んでください死んでください死んでください……!アル様の、依頼の邪魔をするあなたたちは全員死んでください!」
苛烈な言葉に違わぬショットガンの射撃がケテルの身を襲う。しかしいくらハルカが一般的な生徒より優れた能力を持っていようが、相手はそれを遥かに上回る預言者。その程度の攻撃では大した傷を付けることなどできない。ハルカだけではない。アルの狙撃も、ムツキの爆弾も、カヨコの射撃も、ケテルにとっては有効打になり得ない。
だが、そんなことは始めからわかっていた。
『アルちゃん、こっちは準備オーケーだよ!』
『こっちも仕込みは終わったよ』
「了解よ。ハルカ、思いっきりいくわよ!」
『はい……っ!今度こそ……死んでくださいッ!』
アルの神秘が込められた爆発する狙撃とハルカの広範囲に及ぶ弾丸の群れがケテルに僅かな、だが無視はできないダメージを与える。それを感知したケテルは即座にこの場を離脱し、体制を立て直そうワイヤーを伸ばし……
「くふふ?邪魔な機械はぜーんぶさあ……ぶっ壊すに限るよね!」
その先で、大規模な爆発に飲み込まれることになった。
彼女たちが狙ったことは単純。大量の爆弾という罠を仕掛けた先へのケテルの誘導、そして逃げ込んだケテルを爆発によって倒壊した建物の下敷きにすることだ。そう簡単に傷付かないその機体も純粋な質量の暴力の前には成すすべがないことを、カヨコは読み切っていた。
「見るに耐えない姿ね。ならせめて……一撃で終わらせてあげるわ」
露出したケテルのコアを、アルが遠方から撃ち抜く。それだけで、ケテルは機能を停止させた。
「ふぅ……なんとかなったね」
「わ、私もお役に立てたでしょうか……」
「ムツキちゃんは爆弾いっぱい使えて大満足〜!」
「みんな、よくやってくれたわ。……見ているかしら、黒幕さん?我が社の社員は優秀なのよ。作戦立案から破壊工作、時間稼ぎまでこなせるような、ね。そしてそんな私たちの専属パートナーである彼女もまた有能な人物よ。それを甘く見ているようじゃ……いずれ痛手を負うわよ?」
ケテルの残骸に向けてそれだけを言い捨てると、アルたちはすぐさま次の戦場に向かった。
「言ってくれるじゃん。たかが預言者を一体倒しただけの分際でさ」
「彼女が有能……生徒なりの冗談か何かですかね」
「ど、どうせ私たちの勝ちは揺るぎませんからね……」
青春の日々を生きる者たちの宣言
各所で戦闘が行われている中、最も不利な状況に陥っているのがここ、補習授業部たちの受け持った戦場だった。だがそれも無理のないこと。なぜならここにはケセドの軍勢の大半とゲブラ本体がおり、それはすなわち二体の預言者を相手にしていることを意味するのだから。
「もうっ!全然数が減らないじゃない!」
「際限なしって感じですね……」
「……くっ!こっちも中々厄介だな」
「攻撃が多彩で近寄れません……!」
コハルとハナコがケセドの軍勢を、アズサとヒフミがゲブラをそれぞれ相手取っているのが現状なのだが、片や無限の敵影によって、片や無数の武装によって、どちらも苦境に追い込まれていた。
「……ヒフミちゃん、ここは一旦撤退するべきでは?」
「……ハナコに同意だ。この規模の相手はこの少人数では難しいと言わざるをえない」
「でも……」
「私たちがその……し、死んじゃったら元も子もないのよ!?それはあんたの目指すハッピーエンドなの!?」
仲間からの撤退の提案に揺れるヒフミ。確かに戦況は厳しいを通り越して実質的に敗走状態だ。このままでは命にも関わる。それでも、彼女は諦めきれなかった。ここで背を向けられない理由があった。
「駄目です……ここで私たちがケセドを抑えられているからこそ、他の皆さんが有利な状態を作り出せています。ならその役目を放棄するわけにはいきません」
「でもじゃあこいつらをどうするって言うのよ!私たちは別に他の人たちと比べて戦うのが得意ってわけじゃないのよ!?」
コハルの叫んだそれもまた事実だった。彼女たちはあくまで補習授業部。補習をするために集まっただけの、本来戦闘とは縁遠い集団だ。
「それでも……です!」
だがその逆境に逆らうように、彼女もまた叫んだ。
「確かに私たちはただの補習授業部です。それでも私たちは好きなものを守るためなら絶対に譲れない!そんな集まりだったはずです!」
「それは……」
正義を、友情を、居場所を、青春を、各々が抱える大切なもののためなら全力で抗える。彼女たちはきっと、そんな志を持っていた。
「……そうだな。今の撤退の判断はあくまで戦術的なものだ。ならば次は……感情に任せてやってみるというのも悪くはない」
「うふふ♡なら私も、
「ここでがんばればみんなが助かるって言うなら、私だってやってやるわよ!」
「いきましょう!私たちの
彼女たちの目に再び闘志が宿る。その勢いのまま投げつけられたペロロ様人形は、彼女たちの神秘に呼応するように限界を超えた大きさへと巨大化し始めた。
「ちょっと!?何よあれ!?」
「とっても大きいですね♡」
「あれは……まさか!」
「ペロロジラですか!?」
ゲブラやケセドの本体を遥かに超える大きさへと進化したペロロ様、いやペロロジラは奇妙な音楽と共に咆哮を上げる。それは鋼鉄大陸中に響き渡り、そして……
「……なんだ?」
「こいつら、あれを見てる?」
「これはどちらかというと魅了されている、と言った方が正しい気が……」
誰もが困惑するような状況を前に、ただ一人ヒフミは最適解を導き出した。
「わかりました!なるほど、そうだったんですね……!」
「ひ、ヒフミ?何がわかったんだ?」
「あのペロロジラが、ペロロ様の魅力をこの場にいる皆さんに教えてくださったんです!つまりここにいるオートマタさんたちは、もうみんなモモフレンズ好きの仲間です!」
「そ、そんなことあるの……?」
「でも実際攻撃は止まりましたし……まさか本当に?」
「ありがとうございますペロロ様!モモフレンズは世界を救うんですね!」
トンチキとしか言い様がない、それでも実際目の前で起きた預言者たちのモモフレンズファン化という類を見ない、というか類似例があってたまるかな現象を前にして、ヒフミは興奮したようにそう天に叫んだ。
「な、何が起きてるんですか……?」
「ケセドとゲブラがジャックされたとでも言うのですか……!?よりにもよってあのよくわからないマスコットに?」
「これじゃケセドが精製したオートマタたちが使い物にならないじゃん……」
怪しきを宿す者たちの共闘
本来ならば燃え盛る炎と熱気を発する溶岩で満たせれているはずのコクマーの領域は、今現在奇怪な様相を呈していた。
温度計があったならば激しく上下を繰り返すような熱量の奪い合いが発生し、辺りには炎と氷が転がっている。そしてコクマーの機体にも無数の触手のようなものが絡まり付き、変形機構の発動を含めて動きを阻害していた。
「……そっちは大丈夫?」
「大丈夫……でもちょっと、熱い……」
その光景を作り出しているのは、雪女が如き力を振るうナグサとヒトツメと同化したアヤメ。だが怪談の力を宿す二人にとっても、コクマーは一筋縄ではいかない相手だった。
(このままだと先にナグサの方がへばるか……ならここは私がどうにか……!)
「アヤメ!?」
一人前に出たアヤメがコクマーの表面に触手を叩きつけ、銃撃を浴びせるもそれでは大したダメージは出ない。それどころかそのお返しとばかりに放たれた火炎放射をマトモに喰らいかけた彼女は、ナグサの援護によって事なきを得た。
「……チッ、流石に硬いか」
「アヤメ、今なんで一人で……」
「……その方が早そうだったってだけ」
ぶっきらぼうにそう言うアヤメ。今までだったらナグサもその言葉を信じ切っていただろう。だが今の彼女は違う。
「嘘。……私のことを気にかけてくれたんだよね」
「そんなこと……」
「ありがとう。でも私は大丈夫。だから、二人であいつを倒そう」
まっすぐな瞳でアヤメにそう告げるナグサ。今まで見たことのなかったその姿に、アヤメは一瞬動きが止まる。
「……わかった。いくよ、ナグサ」
「うんっ!じゃあ……凍って」
言霊一つで溶岩を冷え固まらせる程の力を得たナグサの援護を受け、再びアヤメが前に出る。その背に彼女からの想いを背負って。
「これでも……喰らえっ!」
背後に浮かぶ無数の瞳から放たれたのは、感覚を惑わせるような光を纏ういくつもの怪光線。それらは全てコクマーの一点に集中し、その機体に風穴を開けることに成功した。
「行って!ナグサ!」
「任せて!」
その穴に向けて攻撃を仕掛けるナグサが放った氷結は、コクマーの内部で膨張し稼働に必要な機構の大半を破壊していく。その身に宿す炎すら凍りつかされてしまったコクマーは、そのまま動きを止めることとなった。
「やったよ!アヤメ!」
「……いい援護だったよ」
「……! ふふっ、ありがと」
満面の笑みとかすかな微笑みを浮かべる少女たちは、そのまま別の友人たちの下へと駆け出していった。
「コクマーまでやられちゃうなんて……」
「あっちもちょっとはやるみたいだね」
「それでも私たちの勝利という未来は変わらない、とだけ言っておきましょうか」
愛に生きる者の羽ばたき
「ミカの攻撃でも大した痛手にならないか……!」
「これは……少しまずい展開ですね」
預言者の中でも規格外の大きさを誇るイェソドとの戦いの最中、ティーパーティーの名を冠する彼女たちは苦戦を強いられていた。
「もうっ!セイアちゃん運転荒すぎだよ!落っこちちゃうよ」
「君なら多少の融通は効くだろう?信頼の上に成り立っている動きというものさ」
「……まあセイアちゃんがそこまで言うなら許すけどさ。でもこっちも攻撃しづらいんだよ?」
「しかしこちらも回避で手一杯で……っ!?まずいですセイアさん!」
「くっ!?」
通信による作戦会議すらも許さないイェソドによる猛攻撃を前に、回避に手一杯で攻撃に転じることができない現状は、彼女たちの精神をじわじわと削っていた。
「……なんとかなったか」
「しかしこのままでは依然として不利なままです。どうにか対策を立てなければ」
「私が思いっきり突撃するのじゃ駄目なの?」
「君の攻撃を一度や二度当てるだけではどうにもならないのは証明済みだ。ならば何かしらの隙が必要になる。しかし……」
そこで言葉を切ったセイアの様子に、ミカも大体の状況を察した。現状、
「なら私が行くよ」
「駄目です。ミカさんが単騎で突撃するのは流石に見過ごせません」
「同感だ。それはせめて勝機を見出してからにしてくれ」
勝機が薄いどころかほとんどない中で友人を死地に飛び込ませることなどできない。そんな想いが伝わったからこそ、ミカは口をつぐんだ。
(でも実際このままだとまずいよね……もう、早くセイカちゃんのところに行きたいのに。せめて私が空でも飛べたらなぁ)
今のミカはジェットパックという空中移動用の装備こそ身に着けているが、それはあくまで最終手段に過ぎない。それを使用してもなお移動速度は戦闘機に劣り、燃料といった時間の制限もあるのだから当然のことだ。それでも三人の中で一番余裕のあるミカは、自分の頭が足りないことを自覚しながらもどうにかいい作戦がないかを思案していく。
(……あ、そういえば空って言えば、あんなこともあったなあ)
そんな時、寄り道した思考の中で、ミカはある日の思い出を振り返っていた。
『そういえばミカ、君は空を飛ぶことはできるのかい?』
『うーん……流石に無理かな。鳥みたいに飛べたら気持ちよさそうだけどね。ちょっと練習でもしてみよっかな』
『……ふふっ』
『えー?なんで笑うの?』
『いや、ただ思っただけさ。君が優雅に空を舞う姿はきっと、天使のように可憐なものだろうとね』
(そんなことも言ってくれたっけな)
結局がんばっても空を飛べはしなかったけれど、それでもその会話は何気ない大切な思い出の一つだ。
(やっぱり私はセイカちゃんが好きなんだなあ)
大好きで、愛していて、可愛くて、カッコいい、私をお姫様にしてくれる私にとっての大切な王子様。そんな彼女にあそこまでの覚悟で頼まれておきながら、こんなデカブツ相手に手間取っているなんて……
「……そんなの、全然可愛くないじゃん」
彼女の隣に並び立つためには、この程度の障壁くらい安々と超えていかなければ。そう決心を固めた時、ふとミカは自身の羽が疼くのを感じた。
「これは……セイカちゃん?」
一緒にいるだけで心がポカポカするような、そばにいるだけで安心するような、そんなセイカが放つオーラのようなものを感じる。彼女との繋がりを、強く感じる。きっと彼女も今全力で戦っているのだろう。なら私も。
「よーっし!ナギちゃん、セイアちゃん、私ちょっと行ってくるね!」
「待てミカ!話を聞いていたのか!?」
「大丈夫。今ならなんか……どこまでも行ける気がするから!」
「ミカさん!?」
戦闘機の機体から飛び降り、そのまま重力に任せて落下していくミカ。当然そんな隙を晒している彼女をイェソドが放っておくわけがなく、その巨腕を叩き潰す勢いで振るった。しかし、
「無駄だよっ☆」
その攻撃はミカの拳一つで砕かれた。
「一体何が起きているんだ……?」
「ミカさんから光が……あれはまるで……」
天使のようだ。ふわふわと宙に浮かぶミカを見て、二人はそう思った。
「覚悟してよね、イェソドさん!今の私はとっても強いから!」
ミカがそう宣言するのと同時に、煌めく隕石が、否、無数の流星群がイェソドを襲った。そしてイェソドがそれに怯んだ隙に、ミカはさっきまで見上げることしか出来なかったイェソドの頭部に向けて飛び立った。
「……今はただ、その魂に祈りを、哀れみを、そして解放を。……はぁっ!」
神秘を纏った、渾身の一撃。それはイェソドの頭部を砕き、その衝撃を全身に伝播させていく。たった一度の攻撃によって、イェソドの巨体は崩壊することとなった。
「イェソドの反応、完全に消失しました……」
「……ミカ、なんだったんだい?さっきの力は」
何が起こったのかまだ理解できていない二人の質問にミカはこう返した。
「何って言われたら……愛の力、かな?」
「イェソドまでやられましたか……」
「ただの生徒が神秘を使いこなすなんてね」
「うぅ……そろそろ準備はしておいた方がいいのかもしれませんね」
転生した者たちの闘い
「くっ……中々厄介な……!」
「面倒くさい相手だねっ、ほんと!」
「きゃっ!……ま、まだまだ!」
鋼鉄大陸最奥に到達することに成功した青春部の面々の前に現れたのは、通常のものとは異なる色合いをしたホドだった。
(クソッ!インセイン以上の難易度は確定か。殺意が高いな!)
その目のような部分から放たれる光線も、鞭のようなアームによる叩きつけも、こちらを妨害してくる柱・インベイドピラーの生成も全てが厄介極まりない攻撃だ。ユメノの防御を貫く攻撃力、アヤの触手による妨害を物ともしない耐性、神秘を活性化させることによって威力の上がったセイカの攻撃を受け付けない防御力。その全てを兼ね備えていたホドを相手に、三人は悪戦苦闘していた。
(偽アインたちはどこかに行ったようだが、彼女たちを放置しておくのもまずい。どうにかこいつを倒さなくては……)
冷静にそう判断するも、自分自身の実力が追いつかない状況に歯噛みするセイカ。それでも必死に喰らいつこうとするその姿に鼓舞され、残りの二人もまた何度でも立ち上がる。
「セイカ!行って!」
「ここは私たちがなんとかするから……っ!」
「……了解した!」
アヤが生やした触手を足場にホドの正面へと駆け上がっていくセイカ。そしてそのままナイフを振りかざそうとしたところで……
「ぐはっ!」
放たれた光線の餌食になってしまった。
「セイカ!」
「セイカちゃん!」
体制を崩し落下していくセイカ。このままではそれなりの傷を負ってしまうことは確実だった。
「仕方がない……頼む!
だからこそ彼女は切り札を開示する。隠し持っていた最強の手札を。
「……ん、任された」
虚空に穴を空け、神秘的な雰囲気を纏って現れたのは、別の世界線の反転したシロコだった。
「もう少し早く呼んでほしかった」
「すまないね。できることなら君の存在はもう少し隠蔽しておきたかったんだが……あれ相手は流石に骨が折れる。手伝ってもらえないかい?」
「もちろん。ホシノ先輩を助けてくれた恩は返す」
セイカを地面に下ろすと、そのままシロコはドローンを召喚し銃撃と爆撃を同時に浴びせにかかった。さしものホドのそれを喰らい続けることはできず、アームを防御の回す羽目になった。
「今ならいける……!アヤ!もう一度頼む!」
「もうやってる!行って!」
シロコの参戦によって出来た隙を活かさない手はないと言わんばかりに即座に行動に移すセイカの声に、それを読んでいたアヤが応える。先程の焼き直しのようにホドの機体を足蹴にしながら、セイカはホドの急所を狙った。
「今度こそ、決める!」
トドメの一撃を放つため跳んだセイカに、ホドのアームが迫る。しかしそれに気付いていながらも彼女は止まらなかった。
「てやぁっ!」
ユメノが投擲した盾がアームを弾きあらぬ方向へと吹きとばす。これで邪魔はなくなった。
「はぁぁぁあっ!」
ナイフを突き刺して出来た亀裂に銃弾をぶち込む。マガジンを一つ空にするほどの量の弾丸を打ち込んでやっと、ホドはその動きを停止させた。
「ふぅ……これでステージクリアといったところか」
「おつかれさま!セイカちゃん。シロコちゃんも!」
「ん、このくらい余裕」
「俺もお疲れって言いたいところではあるけど……むしろここからが本番だよね」
「その通りだ。さあ、決着を着けようじゃないか、偽物共」
セイカが崩れ落ちるホドの後方を睨みつける。すると、その闇の中から音もなく三人の少女たちが現れた。
「ひ、ひどい言い様じゃないですか……」
「まあ預言者を倒したことは褒めてあげてもいいけどさ、ちょっと調子に乗りすぎじゃない?」
「まあまあ。ソフ、彼女たちは下等な生物なのですから、もう少し優しくしてあげてはどうです?」
「言ってくれるじゃないか。もう君たちの手駒はいないと言うのに」
「別にいないわけじゃありませんが……それはそうとあなたたち、何か忘れていませんか?そうですね……例えば私たちがあの偽物の命を握っていることとか」
その偽オウルの言葉に、ユメノはハッとした表情を見せ、アヤはちらりとセイカを見やった。
そう、ここまでさもこちらが優勢のような雰囲気ではあったが、まだ最大の問題であるアイムたちが実質的な人質となっている問題は何一つ解決していない。セイカだけは唯一その対処法を把握している様子だったのでアヤはここまで黙ってついてきたのだが、流石にこの場面で出し惜しみをする理由も思いつかない。一体どうなっているのだろうと彼女が思考していると、セイカが口を開いた。
「やれるものならやってみればいいさ。それ自体がそうでもしないと私たちに勝てないと悟ったという証明になるがね」
「ほう……安い挑発ですね。ですがまあたまには乗ってあげるのも……悪くない、と言うとでも?」
偽アイン・ソフ・オウルが手元にコンソールのようなものを出現させ、何か操作を行う。だがたったそれだけの動作で彼女たちが何をしたのかがわかってしまった。
「これであの偽物たちは死にました」
「あっけない最期ってやつだね。今頃お姉様のところで無様な亡骸を晒してるんじゃない?」
「お姉様、可哀想ですね……」
あっけらかんとした顔でえそう宣う彼女たちに、三人の怒りが爆発する。
「あなたたち……なんで……!」
「……絶対に許さない」
「とりあえず一回シバくのは確定として……セイカ、いい加減ネタバラシしてくんない?」
「……もう少し得意気な顔を見てからでもよかったんじゃないかい?」
「それじゃああいつらと同類だよ?」
「それは嫌だな。では種明かしをするとしよう。ユメノにシロコ、そもそもアイム、ソウ、オウンは死んでなどいない」
セイカがさらっと言った事実に、偽アインたちの言葉を信じていた二人はポカンとした顔になった。
「何?強がり?それとも現実を受け入れられなくなっちゃった?」
「それは哀れな……ん?この反応は……っ!?」
「あっちの反応的にも本当に死んでないっぽいけど、どうやったの?」
「なに、簡単な話さ。私は三人の母親だろう?」
「……うん。そうだね」
「だからあの子たちを狙った干渉はまず先に我が子を守る義務のある私のところに来る」
「……うん?」
「そしてあいつら、というか無名の司祭は恐らく『生徒』にマトモに干渉する術を持たない。結果彼女たちは娘たちにも私にも何もできずにいるのだよ」
一連の説明を聞いてなお納得のいかなそうなアヤたちを横目に、セイカは堂々とこう宣言した。
「というわけだ偽アイン・ソフ・オウル!君たちは他でもない親子の愛に負けたのだよ!」
少しの間沈黙が漂う空間。その中で一番始めに口を開いたのは偽オウルだった。
「……ふざけるのも大概にしてください。愛で人を救う?そんなもの人間が考えた誇大妄想に過ぎません!」
「そうだよ。そんなくだらない感情なんて……圧倒的な力の前に押しつぶされるだけだよ」
「そ、そうですよ……!そんなことができるなら、できる、なら……」
どこか尻すぼみになっていく偽アインのセリフを聞いて、セイカはとある事実を理解した。
「なるほど。それが君たちの核か。屈辱、絶望、諦観。そういった本物の彼女たちが死に際に残した無念の感情を核として無理矢理作り変えられたのが君たち、というわけか。全く持って人の心がない所業だ」
死者の心残りを利用し、あまつさえその想いに反することをさせる。度し難い行為だとセイカは吐き捨てた。
「わかったような口を聞かないでもらえますか?まあどうせ今から死ぬのですから、それを遺言にしてもらっても構わないのですが。では頼みますよ、
唐突に無表情になった彼女たちが次の手として打ってきたのは、本来この鋼鉄大陸の主だった者。それは無言でこちらに歩み寄ると、何の感情も見せずに攻撃を開始した。
「っ!」
流石の盾役意識というべきか、ユメノが即座に前に出てその攻撃を受け止める。しかしそれは彼女が今まで受けてきたどれよりも重く、耐え続けることは困難だった。……彼女が一人だったのならば。
「いきなりやってくれるね!」
「ユメノ先輩はやらせない……!」
「もう少し堪えろユメノ!後少しで……」
アヤが触手で防壁を作り、シロコが援護射撃で勢いを削り、そしてセイカが解禁されたもう一つの伏せ札を切った。
「……マルクトたちが来る!」
「我の妹たちを、返してもらいますよ。デカグラマトン」
天高くから舞い降りてきたのは、妹を取り戻さんと覚悟を決めた姉、マルクト。彼女の援護によって、デカグラマトンの攻撃を完全に相殺し切ることに成功した。
「私たちも来ましたよ!お母様!」
「そっちは大丈夫?お母さん」
「大丈夫だとも。そっちは平気だったかい?」
「はい……ママに守られてましたから……!」
そして彼女に抱えられて今の今まで空の上にいた少女たち、アイム・ソウ・オウンもまた、セイカたちと合流を果たした。
「さてと……それでは第二フェーズといこうか」
「ここからは全員救うターンか」
「私たちでみんなを助けようってことだね!」
「さあ、始めようか。ハッピーエンドを掴み取るための闘いを」
「本当にデカグラマトンの信号が……一体何が起きているんですか?」
「わからないわ。ただ、彼女によれば何が起きてもおかしくないとだけ」
「つまりこれは、アリスたち勇者パーティーの出番ですね!アリス、がんばります!」
「……まあそうですね。見過ごすこともできませんし……先生にこのことは?」
「伝えていないわ」
「何故です?その方が合理的、というか確実では?」
「今回の黒幕の狙いが先生である可能性が高いから、だそうよ。……そうでなくとも、あまりトラウマを刺激するような真似はするものではないでしょう?」
「それもそうですね。では私たちはその……例の集団の援軍として向かうと?」
「ええ。鋼鉄大陸跡地……あの戦いがあった場所へとね」
砂漠で過ごす者たちの激闘
アビドス対ビナー戦の話です
実は今回の預言者は諸事情でやや弱体化しているため、ビナー相手に慣れている彼女たちには楽な相手でした
裏社会で生きる者たちの策謀
便利屋68対ケテル戦の話です
作戦立案がカヨコ、破壊工作がムツキ、前線での時間稼ぎがハルカ、全体の統括指揮がアルといった布陣でした
便利屋のカッコよさを表現できたでしょうか
青春の日々を生きる者たちの宣言
ケセド・ゲブラ対補習授業部戦の話です
いい話風に見せかけたトンチキです
やはりペロロ様……ペロロ様は全てを解決する……!
怪しきを宿す者たちの共闘
コクマー対アヤメ・ナグサ戦の話です
少し改善した彼女たちの仲を表現できた……かな?
ちなみにナグサは普通に今でも怪談の力が使えます
愛に生きる者の羽ばたき
イェソド対ティーパーティー戦の話……に見せかけた実質ミカの話です
なんか愛の力で覚醒してミカ(天使)になりました
実はこの現象には例の羽飾りが関わっている裏設定があったりします
転生した者たちの闘い
ホド対青春部、そして偽アイン・ソフ・オウルたちとの対面の話です
母の愛の力ってスゲー!……と思ってくれたら嬉しいです
ここから先マジでどうしよ……アイデアのピース自体はあるけど間を埋めれる気がしない……
ただでさえ今回の最後の方もなんかあれだったのに……
とかいう作者の嘆きは無視して今回もシンプルに感想をください ペコリ