東方害悪者   作:ina

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第二話

 畏徒は深い森(魔法の森)を歩き続けていた。目的地は魔法の森の西側にある霧の湖だ。

 

 どうやら紫の忠告を聞いていない様で、黙々と湖へ向かっているのだ。しかし、杖を突いている人がただでさえ足場が悪い森の中を、誰かに助けて貰っているわけでもないのにこれだけ進めるのは凄いのではないだろうか。

 

 話を戻そう。何故危険を冒してまで霧の湖に行くのか、理由は二つほどあり、一つは幻想郷に新しく広まるであろうスペルカードルールと言うものを直に見てみたいという好奇心。もう一つの理由は、昔この周辺で会った吸血鬼の住む建物――紅魔館にいる一人のある少女が気になったから。

 

 畏徒は心配そうな、それでいてワクワクしている様な雰囲気を放ちながら、意気揚々と歩みを進めていく。

 

 そうして歩き続けていくと急に森が赤い霧に包まれ始めた。畏徒は少し思案した後、これが異変と言うものかと結論づけ、少し歩く速度を早め少し見えて来た霧の湖へ進もうとした時、後ろから自分の窺う様な気配を感じた。

 畏徒は、何時ものように喉の調子を確かめる様に咳払いをし、後ろの気配に向けて話しかけた。

 

「何か用か?」

 

 少し話かけてみたが全く警戒心が解かれることは無く、むしろ強くなったようにも感じる。

 

 実を言うと、畏徒は持つ能力があまりにも強力過ぎてありとあらゆる存在から無条件で恐怖されるため、こうして警戒されることが多い。例えを言うと、小さい子供やその母親がよく来るデパートに、二メートル越えの完全武装の強面のオッサンが居るようなものだ。そのため特殊な能力を持っていたり、強い胆力を持つ者以外にマトモな知り合いが居ない。ちなみに異変中に魔法の森の中をほぼ丸腰で歩いてたにも関わらず、妖精や妖怪などに襲われ無いのはこの能力の御蔭だったリする。

 

 畏徒は話しかけてみてこれは少しまずいかなと思い歩を進めると後ろから声をかけられた。

 

「あんた……、いったい何?」

「何……か、ただの放浪者さ」

 

 そう言いながら後ろの存在を一瞥すると、そこには水色の髪に水色のワンピースをを着て、背中の辺りに計三対の氷塊が浮かんでいるまだ幼さの残る少女が居た。畏徒は、感覚神経の大部分が麻痺しているこの体でも多少の冷気が感じることから、なかなか強い力を持つ氷の妖怪か何かなのだろうと判断した。

 

 話しかけてきた相手が友好的でないと判断し、湖に歩いていこうとすると、後ろから畏徒の頭に向かって氷塊が放たれた。しかし、それは畏徒が軽く首を傾げることによってかわされ、目標にあたることは無かった。

 畏徒に氷塊を当てようとした張本人は、縄張りに侵入した畏徒に向かって怒気の含まれた声をぶつけた。

 

「この湖から……出て行け!!」

 

 そう少女が叫んだ途端、大量の氷塊が畏徒へと向かっていった。もちろん畏徒もそのままやられる訳が無く、杖を上手く使用した変則的な回避をし、それでも当たりそうになったら右腰につけた爪の様な形のナイフの刃が無い方で氷塊を砕き、すべての攻撃をやり過ごす。

 

 しかし少女も甘くは無く、畏徒が氷塊を避けている最中に空中へと移動し巨大な氷塊を創りだしていた。その大きさおおよそ直径五メートル。ナイフで砕ける物ではない、畏徒が体制を立て直している隙に、少女はその手に掲げた巨大な氷塊を自身の縄張りの侵入者に向かって投げつけた。

 

 勝った、そう少女は確信した。しかし、その確信は次の瞬間に畏徒から放出された莫大な量の妖力によって、氷塊と共に粉々に粉砕された。

 そして、重い、ひどく重いプレッシャーを少女は感じた。

 

 本来、妖力というのはそのまま使用される事が殆ど無い。それは妖怪という存在のありかたによるものが大きい。妖怪とは幻想、つまり事象そのものが具現化した存在だ。人の妄想ともとらえられる。それ故に、妖怪は自身を構成する根本的な恐怖を媒介とした攻撃以外では極端に性能が落ちる。簡単に言ってしまえば、妖力を他のものに変化させないと攻撃力が落ちると言う事だ。まあそれでも人間にとっては十二分に危険なものであることには変わりないが。

 

 だが思い出してほしい、畏徒が今やった事はただ妖力を放出しただけ、つまり少女の全力に近い攻撃を性能の()()()状態で粉々に粉砕したのだ。

 この時点で力の差は歴然、少女はどう足掻いても勝てない事を悟り、せめて相手の顔だけでも覚えておこうと相手を見ると……逃げていた。まるで妖力をジェットの様に噴射し途轍もないスピードで紅魔館の方へ進んでいた。

 

「い、いったいなんだったのよ……」

 

 少女の声だけが、空しく空に響いた。

 

 失敗した。畏徒は、紅魔館がよく見える位置にある茂みへと身を隠し、そう思考していた。畏徒はこの幻想郷に来てから襲われたことはほとんど無かった、偏にその能力と幻想郷に住む妖怪達の平均的な力の低下によるものである。しかし今回は長らく続いた平和と、初めて経験する異変という事で若干警戒心が緩んでいたようだ。

 

 畏徒は気を引き締めなければと深呼吸をし、紫に教えて貰った異変を解決する者が来るのを待ち続けた。

 そして暫く待っていると何やら腋が出ている特徴的な紅白の巫女服を着た少女がやってきた。巫女服の少女はキョロキョロした後、一点―――畏徒が居る場所を見てこういった。

 

「やっと見つけたわ、あんたね?さっきとんでもない妖力をばら撒いた奴は」

「……」

「なるほど、だんまりね……。それなら――こっちも遠慮無しでいくわ」

 

 畏徒は、とっさに弁明しようとしたが急に話しかけて来たため、声が掠れて上手く喋れなかったのだが、それを少女に勘違いされてしまったようだ。現に少女はお札を構え畏徒を一部の隙も無く見ている。

 

 どうしてこうなった。畏徒はそう思い、ため息をついて少女に見える位置に歩いていった。




読んでいただきありがとうございます。
おかしな所は教えてくださるとうれしいです。ちなみに作中の妖怪云々は私のオリジナルです。

あ、昨日萃香食べました、ん?間違えた。
西瓜食べました。美味しかったです。

※感想で指摘があったので文に間隔をあけました。
変な所があれば、教えてくださるとうれしいです。
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