東方害悪者   作:ina

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第三話

 もう夜に差し掛かり暗くなった湖の畔に、大量の肉片と血痕がまき散らされていた。その中心には人の様なものがある。人の様な形をしたものは、急に動き始めたかと思うと途轍もない速度で欠損部分が埋まっていき、全身に呪言の書かれた包帯を巻いて、こげ茶色のぼろ布を纏っている人となった。畏徒である。

 

 酷い目にあった、と座り込み、畏徒は先ほどあった事を思い出していく。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 畏徒は巫女服の少女――博麗霊夢に言い訳をしようと話しかけようとし、問答無用で霊力弾に攻撃された。畏徒は霊力弾をナイフで切り裂きながら、再度霊夢に話しかけようとするが、隙が少なく話しかける暇がない。

 

 いっそのこと逃げるかと思案していると、相手から話しかけて来た。

 

「あなたもしかして、弾幕ごっこを知らない?」

「弾幕ごっこ?」

「そう……なら、好都合だわ」

 

 霊夢が言葉言い終わった瞬間、霊夢の雰囲気が変化した。彼女の能力、主に空を飛ぶ程度の能力が発動し、ありとあらゆる存在から浮いた存在になったからだ。

 

 畏徒もその異様な変化に気づき、本気を出した。

 

 瞬間放出される膨大な量の妖力、あまりにも濃いそれは周囲に存在するあらゆるものの動きを阻害する。本来ならばその程度の行為、ありとあらゆる存在から浮いている霊夢には効かないのだが、畏徒の能力の性質上いくらかは緩和されたがしっかりと霊夢の動きも阻害する。

 

 だがそれがいけなかった。霊夢の顔には驚愕が張り付き、畏徒に向けての警戒心が急激に上昇する。一方畏徒はその仕草が理解できずに困惑するが、すぐに切り替え隙無く構える。

 

 そして次の瞬間――空気が破裂した。

 

 霊夢が空中を飛び畏徒に向かい突進し、手に持つお祓い棒を畏徒に叩きつけ、畏徒がそれを受け止めたのだ。その衝撃で畏徒は少し後退するが霊夢は能力の影響で反動を受けず、畏徒に追撃する。

 

 畏徒は霊夢がさらに此方に向かっているのを確認すると、あえて踏んばらず、そのまま妖力を前方のみに噴射し攻撃と回避を同時に行う。しかしまるで霊夢は攻撃が来るのを分かっていたかの様にすれすれで回避し、杖を突いている畏徒の左手側ではなく、右手側に回り込み、至近距離からお札と針と霊力弾を大量に射出する。畏徒は妖力を全体に射出し、右側の弾幕と隠される様に左側から来ていた数発の霊力弾を迎撃する。霊夢は回避をしていたが、僅かに掠ったらしく右手の甲に切り傷の様なものがついている。

 

 畏徒は感心していた。霊夢が、畏徒は妖力を大量に持っているため、長く生きていると推測、よく狙われる杖を突いている左手側では慣れられているので迎撃されると判断し、多少危険ではあるが意表を突ける右側を狙うという冷静な判断力と、危険な場所に飛び込んでいく度胸を持っていることに。

 さすが異変を解決する者だと感心していると、霊夢が畏徒をダルそうな表情で見て話し始めた。

 

「やっぱりあんたは危険だわ」

「……?」

「私にはね、能力の影響で普通は攻撃が当たらないのよ」

 

 それを聞き、あっ、とでも言い出しそうな顔をする畏徒。

 

「それにね、私と幻想郷の周りを囲む博麗大結界は少し繋がっていて、私が死ぬと危ないのよ」

「……」

「だから、悪いんだけど退治されてね?」

 

 そう言い終わると、空が真っ白に染まった。よく見ると膨大なまでの霊力弾を空に浮かせているらしい。そして、霊夢が手を振り下すと畏徒に向かってそれらが殺到する。

 

 畏徒も抵抗として何度か妖力を放出するがまさに焼け石に水、まるで効果が無く、霊力弾に飲み込まれた。

 霊夢はそれを確認するとさっさと紅魔館へと向かって行った。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 畏徒は随分過激な娘だったと苦笑いをし、座り込んだ状態から立ち上がる。

 

 そして目に映る自分の肉片と血痕。先ほどから此方を窺ってきている血の臭いに誘われたであろう下級妖怪達。はぁ、とため息をつき肉片を妖怪達に向けて投げてやる。妖怪達は畏徒を警戒しながら肉片を食らいつくし、さっさと逃げて行った。

 

 畏徒はそれを確認するとこれからの事を考える。

 畏徒は、個人的にスペルカードルールというものを見たいという気持ちをまだ持っていた。しかし同時に、あの巫女服を着た少女に見つかりそうだとも何故か感じていた。今思えば、戦闘中であったのでそこら辺を考えて無かったがあの少女、どこか勘の様なものに頼って戦っているように畏徒は感じていた。

 

 むむむ、という唸り声をあげ畏徒は考えこんでしまった。

 

 そして数分後、どうやら決まった様で何度か頷いてる。杖やナイフなどの確認をした後、紅魔館に向かっていった。

 

 死ぬのはあまり好きでは無いけど、まあ死んでも大丈夫だし、とりあえず行ってみようなどという少々異常な考えを持ちながら門の前に居るチャイナ服を着た女性を見張る。隙を見せたらうまい具合に館に入りこもうというせこい事を考えているようだ。

 

 そうして暫く待っていると、空から魔法使いの様な恰好をした少女が箒に跨り飛んできた。

 畏徒はもしかしたらスペルカードルールを使った戦闘を見ることが出来るかもしれないと判断し、急遽予定を変更、ここを暫く観察してみようとする。

 

 そして何かを話していたかと思うと、二人とも空に飛びあがり弾幕を放ち始める。そして何度か打ち合っていると、魔法使い風の少女が勝った様で、そうそうと館の中に入って行った。

 

 一方スペルカードルールを使用した戦闘を見た畏徒の感想は、綺麗、派手などというものだった。

 そして一度見て満足したのか畏徒が紅魔館から離れようとした時、紅魔館の窓がパリンという綺麗な音がして割れた。そしてそこから出てきたのは、昼間に一度畏徒の事を殺した巫女服の少女、博麗霊夢と、紅魔館の主であり畏徒が少し昔に魔法の森で出会った少女、レミリア・スカーレットだった。

 どうやらこの二人もスペルカードルールを使った戦闘をしている様である。畏徒はレミリアが凄い勢いで飛び回っているのを見て、元気そうだという事を確認できてホッとしていた。

 

 予想外の事とはいえ一度死んでしまったが、達成できるか分からない目的を全て達成できて、畏徒は非常機嫌がよくなっていた。しかし世界は非常に残酷な様で、畏徒に向かって大量の流れ弾、いや、流れ弾幕が向かってきた。畏徒はそれに気づくが、防ごうとすればあの巫女服の少女に勘づかれるかもしれないという可能性が頭をよぎり、弾幕をその全身に浴びた…。




どうせあんまり評価なんて貰えて無いだろうな、と思いながら小説情報を見てみると…。
お気に入りが増えていた。
評価も増えていた。
嬉しすぎて全裸になった。
少したって何やってるんだろうと思って服を着た。
いや、本当にこれぐらいうれしかった。お気に入りしてくれた人、評価つけてくれた人、そして読んでくれた人、ありがとう。これからも良かったらよろしくしてやってください。

※感想で指摘があったので文に間隔をあけました。
変な所があれば、教えてくださるとうれしいです。

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