元バカと黒髪美少女と薬師   作:暁 巧

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 なんか、ドイツ語とか使ってますが、文法おかしかったらすみません。
 今回のタイトルは、
『テガミバチ』。
 はてさて、今回も自由な理科。色気ならぬエロ気が……。




おべんといべんと→Bクラス戦へ
第十四問 なくしたテガミ


 

「たっだいまー」

「じゃないでしょう? 早く帰りたいんだから」

 態々付き合ってるっていうのに。忘れちゃうから。

「はやくぅ、…して?」

「ちょっ!? 理科、待って! 僕らにはまだ早いと思うんだ! それに場所だって、家(うち)の方がいいし」

 何を言っているのかしら明久は。うちに帰るのなんて当然じゃない。というより、さっきから言ってたつもりなんだけど……伝わってなかったのかしらね。

「よ、吉井君!? 阿部さんっ」

 あら、誰もいないと思っていたけど。後半部分、若干テンションが落ちた気がしないでもないけど、明久と二人でいたってのが気に入らなかったんでしょうし。

「あれ? 姫路さん?」

「っどどどどどうしたんですか?」

 なにやら慌てている様子。何?

 姫路が座っている席(?)をちらりと見やる。卓袱台の上には可愛らしい便箋と封筒が置いてあった。

 ああ、そゆこと?

「あ、あのっ、これはっ……。これはですね、そのっ」

 吃り過ぎよ、姫路。

「うんうん。解ってる。大丈夫だよ? 誰にも言わないから」

「えっと……ふあっ」

 コテン、と卓袱台に躓いて転ける姫路。さらには慌て過ぎだから。

 その拍子に隠そうとしていた手紙が目の前に飛んできて、その一文が目に入る。

 

《あなたのことが好きです》

 

 たぶん………。けれど応援はできない。翔子にも明久にも幸せになってもらわないといけないから。

 飛んできた手紙を綺麗にたたみ、明久が姫路に返してあげてる。

 姫路を気遣うように笑顔で一言。

「頑張ってね、僕応援してるから」

「でも吉井君には──さんが…」

 今、呼んだわよね?

「ん? どうかした? 姫路さん」

「あ、い、いえっ」

「その手紙」

「は、はい」

「良い返事が貰えるといいね」

「はいっ。…そう、ですね」

 姫路は複雑そうな顔を僅かに見せて返した。

 

 

        ☆

 

 

 朝から船越女史らしい。というのに随分な余裕………あ、立ち上がった。今度は頭抱えて震え出した。…忘れてたのね。ん? スゴい勢いで出て行ったけど……

 

『こらぁっ! 貴様、教室に戻らんか!!』

『後生ですから! 今日だけは、今日だ───いやぁぁっ!?!?』

『船越先生、教室はこっちですよ!』

 

 両手を合わせて合掌。

「何をやってるの? 理科」

「須川の冥福を」

「まだ生きていると思うのじゃが…」

「鉄人も苦労するね」

「ね?」

 首を傾げてみた。

 明久と目を合わせたがやはりというか落ち着き払っている。ただこくり、と頷き合って意志疎通を終える。長年の付き合いだからこその応対。

 

 

        ☆

 

 

 机に突っ伏す須川に声をかけた。

「須川、お疲れ様」

「ああ……。悪いが休ませてくれ」

 「はい、コレ」と言って物を差し出す。

「何々だ、コレは?」

「労いの品よ。大したものではないけど、美味しくいただいて頂戴?」

「もしかして!?」

 立ち上がった須川の周りから声も立ち上がる。

 

『諸君。ここはどこだ?』

 

『『『最後の審判を下す法廷だ!』』』

 

『異端者には?』

 

『『『死の鉄槌を!』』』

 

『男とは?』

 

『『『愛を捨て、哀に生きる者!』』』

 

『宜しい。これより──2−F異端審問会を開催する!!』

 

『今目の前に原罪を侵した者がいる』

 大きく出たわね。

『罪状を読み上げたまえ』

『はっ! 被告、須川亮。(以下、この者を甲とする)は我が文月学園第二学年Fクラスの生徒であり、この者は我が教理に反した疑いがある』

『甲の罪状は女性、阿部理科(以下、この者を美額公(びでこう)とする)から手作りの物品の押収を行った背信行為である。

 理解しやすく言いますと、この者は、アダムとイヴばりのきゃっきゃウフフを堪能しようと目論んでいた疑いがあります』

『御託はいい。結論だけを述べたまえ』

『女子の、しかも手作り弁当をもらっていたので、羨ましいであります!』

『うむ。実に解りやすい報告だ』

 あ、逃げた。

『異端者が逃亡を図った! 決して逃がすなぁ!』

 

『『『はっ!!!』』』

 

「くっそぉぉ! 死んでも死守するからなっ!!!」

 須川も器用ね。是非とも見てみたいものだわ。

「明久、とりあえずお昼にしましょ」

「冷たいよ、理科。態々争いの種を撒かなくてもいいのに…」

「はい、明久。おべんと」

「うん、ありが…あ…、もしかして……。理科、…恐ろしい娘……!」

 …うん? どういうことかしら。

 ま、いいわ。いつも通り屋上で食べるとしますか。

「持つよ」

「ありがと」

 そうこうしているうちに屋上へと辿り着いた。

「ん〜っ。いい天気ねぇ」

 思いっきりのびをした。節々が気持ちいいわ。

 フェンスの前…先客?

「はろはろ〜。吉井も阿部もこっち座りなよ」

「島田さんに、姫路さんも? どうしたのさ、みんな揃って」

「本日の戦争の話をするからと思ってたからな。どうせだからメシも一緒にってことになった」

「それにしてもスゴい量だね」

 確かに。半端ない。ナニ? 重箱って。お正月は数ヶ月も前に終わったはずだけど。

「姫路がみんなにってな」

「……かなりラッキー。今日死んでも悔いは…………………………………………ない」

「結構あるよね…」

「ムッツリーニがムッツリーニ足る所以じゃの」

「も、もしよろしければ、吉井君も如何ですか?」

「あー、ごめんね? 姫路さん。今日も理科の弁当があるから」

「そう、ですよね…」

 あーもう…。何でここまで気を揉まなきゃならないのかしらね。

「明久、少しくらいいただいたら? みんなでってことなんだし」

「んー……、そうだね。じゃあ姫路さん、僕も少しもらってもいいかな?」

「はいっ! もちろんです!!」

「それじゃ、いただくとするか」

「……俺も」

「二人共フライングじゃないか、〈パクッ〉まったごぱぁっ!?!?」

「明久!?」

「ホント、行儀の悪〈バタン〉」

「坂本っ!? irgendwie!?(どうしたの!?)」

「in ruhiger Weise, gesammelt, gelassen, mit Gleichmut Simada(島田、落ち着いて)」

 ドイツ語で喋る必要はなかったわね。……思わず。島田の動揺が感染ったかしら。

 明久? 起きたのね、良かっ…何をぶつぶつと………

「──川原で石なんか積んで楽しいの? ようし! 僕も手伝ってあげるよ」

 

「「Aufstehen, Aufwachen Puh!, Uff!(起きなさい!)」」

 

 島田と同時に声を張り上げた。すると、今度は後ろから、

「…………〈バタン〉…黒の下着も…見たかっ……た」

 土屋の最後だった。

 仕方ないわ。蘇生の秘術を使おうかな。

「明日、黒の下着を着けてくるから。頑張った人には見せてあげる」

 倒れていたはずの3人がもぞもぞと蠢いた。

「はっ! こんなところでくたばってらんねーだろ」

「……まだまだ死ぬワケにはいかない!」

「そうだよ。まだ見ぬ明日の為にも負けられないんだぁぁっ!!」

 ……………大丈夫かしら?

 〈プチップチッ〉。

「褒美をとらせるわ〈チラッ〉」

 

「「「ぐはっ!〈ブシャァァァッ!!!〉」」」

 

「「はわわっ!?」」

 

 姫路も島田も何を言っているの?

 で、男子はブラジャーがお気に召したのかしら。ん? なんか…

「やん、パンツ食い込んじゃってる」

 

「「「「かはっ!?〈ブシャァァァッ!!!〉」」」」

 

「阿部!?!?」「阿部さんっ!?!?」

 

「桃源郷か……悪くねぇ」

「アルカディアがこんなところに」

「……ザナドゥ、俺は見つけた」

「ここがアヴァロン…ワシも本望じゃ……」

 一人増えているわ。なにそれこわい。

 

 ──さて。屋上での会話をなんとか終え(死屍累々だったから)、教室へと戻ると……。

 先に帰ってたはずの姫路の様子がおかしい。何かあったのかしら。

「姫路? どうかした?」

「え? い、いえ、何でもありません」

 何でもないって顔じゃないけど、本人が言うんだから仕方ないわ。

 「そ」と短く返事して手をひらひらと振る。Bクラス戦は目前だってところで不安は抱えたくないんだけど……コレばかりは、もうどうしようもないわね。

「ふぅ…」

「どうしたの、理科」

「テスト」

 チラリと横目で明久を見やる。

「本気でやるってこと?」

 明久の言葉に頷いて、腰に手の甲を当てる。

「そうよ。何か嫌な予感がするし…、不安要素が生まれたから」

「解った。僕は得意科目だけは全力を尽くすよ」

 言葉もなく、首を縦に振るだけ。

 席に着いてテストの準備をしながら愚痴を零していた。

「ホンット。儘ならないわね、全く」

 視界の端に映った姫路の、少し俯き加減なその表情が妙に気になり、頭に焼き付いた。

 

 

 

 

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