元バカと黒髪美少女と薬師   作:暁 巧

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 初春(ういはる)は、
『とある科学の超電磁砲』。
 今回は色々ってか理科のターン。




第十五問 青い春。初春は関係ない。

 

「さて皆、総合科目テストご苦労だった」

 教壇に立った坂本が机に手を置いてみんなの方を向いている。きっと阿部理科という天才の背中も見えているはずだ。顔じゃなく背中というのがポイント。しかも後ろの席(?)だから誰もいない空間が広がっている。

「どれだけ坂本の話を聞く気が無いのかというと」

「ああ、よく伝わっているぞ、阿部」

「やめてっ! 想いが伝わっているだなんて勘違い…………ストーカー……?」

「なっ!? 違っ!」

 

『諸君。ここはどこだ?』

 

『『『最後の審判を下す法廷だ!』』』

 

『美少女がストーカーされているみたいなんだが、どうすればいいと思う?』

 

『『『死刑!』』』

 

『よし、解った。坂本、死刑!』

 

『『『ヒャッハァーー!!!』』』

 

 執行までの早さが有り得ないわね。とりあえず………

 美少女祈祷中?…

 猿共戦闘中…

 

 

「はぁはぁっ……少しは熟考しろ!

 とにかく、午後はBクラスとの試召戦争に突入する予定だが、殺る気は充分みたいだな」

 お茶を飲み終わっても続いてたけど、漸く終了。

 

『はぁっはぁっ…、おうよ!』

 

 一向に下がらないモチベーション。Fクラスの武器の一つね。士気は結果に影響されることもしばしば。

「今回の戦闘は敵を教室に押し込むことが重要になる。その為、開戦直後の渡り廊下戦は絶対に負けるわけにはいかない、解るな?」

 

『おおーっ!』

 

 本当に理解してるのかしら? 適当に返事してない?

「そこで、前線部隊は姫路瑞樹に指揮を取ってもらう。野郎共、きっちり死んで来い!」

「が、頑張ります」

 ムリに乗ってるってわけでもないのかな? 周りに必死で合わせようとしているようにも見えるけど………

 

『うおおーっ!!』

 

「………はぁ…」

 前線部隊の叫びに紛れるほどに小さなため息。

 姫路の事みんな気づいてないみたいだけど、明久も気づき始めているわよ。

 何より、陰りが見えるのよね…あの笑顔。

 

 

 〈キーンコーンカーンコーン♪〉

 

 

 昼休み終了のベルが鳴り響く。これでいよいよBクラス戦開始だ。

「よし、行ってこい! 目指すはシステムデスクだ!」

 

『サー、イエッスァー』

 

 敵を教室に押し込むのが目的なので、とにかく勢いは必要になる。

 今回の此方の主要武器は数学。Bクラスは比較的文系が多いのと、なぜか長谷川先生は召喚可能範囲が広いというのが理由。他にも英語のライティングの山田先生と物理の木村先生もいる。理数系メイン───まさしく独壇場。

「いたぞ、Bクラスだ!」

 開戦の声を背中に受けながら布施先生を伴って階段を降りていく。

 渡り廊下の中ほどまで来たところで、前から二人の少女と西村先生が歩いて来た。

「あなたが…阿部さんね?」

「さぁ、知らないけど? 何方かと勘違いなさっているんじゃない?」

「白々しい。西村先生、Bクラス岩下律子です。Fクラス阿部理科さんに総合科目で勝負を申し込みます!」

 どの阿部さんを呼んだのか知らないから、別の誰かと勘違いしているのでは? という意味合いを込めて言ったのだけど。

「別ルートには、鉄巨人が配置されているだなんてEXステージ突入。って?」

「何を訳の解らない事を……」

 相手の目を覗き込んで言う。

「ねぇ。階段のところにも配置しているんでしょう? 呼んだら?」

「はい?」

 先ほどよりもさらに声色を低くする。

「呆気なく散りたいの?」

 その言葉に反応してか、それとも、岩下ってのがびくっと慄(おのの)き始めたのがきっかけか……

「律子、私も手伝う!」

 階段の方から一人駆け寄って来た。

 さぁ、

「戦いましょう? 楽しいことは、これから始まるわ」

 

「「「試獣召喚(サモン)!」」」

 

 喚声に応えて魔方陣が展開。

 敵の二体は、フランベルジェという波状の剣を持った岩下とギサルメという斧槍を体勢低く構えた菊入。

 相対する召喚獣は、バンドをした髪に白衣と実験用滅菌手袋を装備したどっからどう見ても科学者然としたいつもの姿。それに加えて目につくのが、手首に巻かれた腕輪。

「そ、それって!?」

「私たちで勝てるわけないじゃない!」

「努力をすれば、届くかもしれないわよ?」

 

 

『Fクラス 阿部理科

 

  総合  5051点

 

  VS

 

  総合  2063点

  総合  1889点

 Bクラス 岩下律子

 Bクラス 菊入真由美 』

 

 

「ちょっと待ってよ!? 何、その点数っ!」

「律子! 落ち着いて! とにかく戦わないと」

「えいっ」

 召喚獣がチビ菊入の口内に黒い丸薬を放り込む。

 

「「えっ?」」

 

 爆発。

 

「「えぇーっ!?」」

 

 点数は一気に1000は削った。

 さすがに内部破壊は強力ね。けど、口内に入る程度の薬品じゃああの程度か。

 二体いるし、腕輪で一気に片付けるかな? 消費が大きいから気をつけないと……。あの先と…、さらには近衛の排除。

 すっ…、と。一人、召喚範囲の外側ギリギリに立った。

「面倒ね、かかってらっしゃい」

「それが終わったらな。

 ったく。根本の言った通りか。厄介だな」

 根本って確かBクラス代表、よね。……時間稼ぎ? それほど警戒されているってこと? 情報は漏らしていないはずなんだけれど───あ。去年の事を知っているってこと? それとも翔子との関係性から? どちら共確証は得られない。ん〜〜…………

「とりあえず、目先の目標を駆逐するか。

 【火炎放射(フレイムスロアー)】」

 キーワードを紡ぐ。

 この武器の点数消費量500点。中距離武器っていうか兵器。放ち続けている間1点ずつ消費していく。当たるとダメージ+火達磨になって相手にダメージを与え続けるもので、短期決戦には持ってこいなんだけど、明久並に操作の上手い人だと避けられて此方がキツい、使い辛い兵装ね。

 この腕輪の能力は、科学・化学の武器、兵器を生み出す力。

 何そのチートって思ったヤツは大間違い。使う兵器、使う兵器にデメリットがもれなくついてくるワケ。腕輪を使わない方が強いけれど、それはカヲルさんとの契約に違反するからね。

「ハァ……」

「真由美、行くわよ!」

「えぇ!」

 早速の弊害。なんて面倒くさい。思わずガシガシと頭を掻いた。デカくて重そうな【火炎放射】のせいでさっきよりも動きが鈍くなっているのだ。

 岩下の召喚獣が右から回り込み、菊入の召喚獣が左寄りに真っ直ぐ突っ込んで来た。

 よくコンビを組んでいるのか、他の人間よりも操作が上手い。

 が、明久や翔子の攻撃を捌いているので、捌けない事もない。けど、近接戦闘が得意ってワケでもない。

「当たれぇっ!」

 剣が奮われる。大振りな袈裟斬りから、刃が股下の地面にぶつかって跳ねた反動を利用し、そのまま地から天へと真っ直ぐに斬り上げた。

「イヤ、よ!」

 何とか避けられたところで、

「このっ!」

 菊入が、視界外から左膨ら脛を貫いた。岩下に集中し過ぎたっ。

「くっ!…」

 フィードバックの事を忘れてた。ちりちりと痛む。激痛は無いけれど、指にトゲが刺さった時のような痛みが攻撃を受けた箇所にある。

 ただの刹那、思考が乱れた。

 その僅かな透きを逃すまいと、岩下が突きを繰り出す。難なくそれを躱した瞬間……

「もらった!」

 声と共に気がついた。“躱させた”んだと。

 脇腹辺りにある剣を、咄嗟に右手で抑え込もうと刃に手を伸ばした。と同時に上体は、軌跡を描くであろう場所を予測して無理矢理体を反らして急所を遠ざけた。それでも、

「っあァッ!?」

 焼けるように右腕の内側が痛んだ。

 さっきよりもフィードバックが大きい!

 腕を一本持ってかれた。

 受けるダメージによってフィードバックも変わってくるの?

「ハァ、ハァッ……」

 もしかして、疲労も? 体力が落ちて防御力も下がるって? 冗談じゃない。

「……遊びは終わりよ」

 刺さった槍はそのままに、斬り上げ終わっていない状態の剣の下を潜り抜けざまにシリンダーを地面に叩きつけ、槍を離そうとしていない菊入を岩下へとぶつける。

 で、砕けたシリンダーに入っていたのは、気化性爆発物。さぁ、避けられるものなら避けてみなさい。

 振り返りながら左に抱えていたそれのトリガーを引く。

「灯蛾の如く燃え尽きなさい」

「ちょっ!?」

「そんなっ!?」

「答えは聞いてない。バイバイ」

 一直線に火線が伸びる。途中から二体を包み込むように炎が動いたのは、気体に触れたせいね。

 爆炎が包んだ。

 渡り廊下の窓ガラスを揺らす轟音。

 

「「キャァァッ!!!」」

 

 さらに二人の近くまで炎が迫っていったんだもの、悲鳴を上げるのもムリはないわね。

 

 

『Fクラス 阿部理科

 

  総合  1473点

 

  VS

 

  総合    0点

  総合    0点

 Bクラス 岩下律子

 Bクラス 菊入真由美 』

 

 

 油断してた。何処かで見下してたのかもしれないわね。

 岩下と菊入に手を差し出した。

「あなた達かなり強いわね。Aクラスにも通用するわよ?」

「お世辞でも嬉しいかな」

「そうだね」

 順に握手を交わす。それと訂正も。

「お世辞なんかじゃないわ。さっきの点数見たでしょう? あなた達は、それだけスゴいの。だから、勉強ももうちょっと──」

「努力をすれば、届くかもしれない?」

「真由美、それって…」

「うん。さっき阿部さんが言ってた言葉」

 そこまで思って言ったわけじゃないのにね。頑張ってほしいとは思ったけど……。

「過程があるからこその結果。努力無くして成果無しよ。

 ま、頑張んなさい」

 

「「はいっ!!」」

 

 何だか……

「青臭い上に照れ臭いわね」

「あははっ、そうかも」

「ふふっ…。いいと思うけどな、十代なんだし?」

 青春? まぁ、悪くは無いかもね。

「そうね」

「じゃ、私たち補習だから」

「またね。阿部さん、頑張って」

「お互いに」

 

 

 

 

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