元バカと黒髪美少女と薬師   作:暁 巧

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 今回のタイトルは、
『ゼノサーガⅡ ─善悪の彼岸─』から。
 銃キャラであるJr.も言う「go ahead.make my day.」は、ダーティハリーっていう古い映画の有名なセリフ。そして使っている銃がS&W M29の44マグナム弾。なのです。
 後、今回の理科は、連合軍第501統合戦闘航空団「STRIKE WITCHES」(504でもいいけど)とか、伊隅戦乙女中隊とか、第13航空団ソニックダイバー隊とか、帝国華劇団とか所属してもいけそう。
 知ってる作品ありました? 答え合わせは次回。




第十七問 善悪の彼岸

 

「昨日言っていた作戦を実行する」

 翌朝、登校してすぐに坂本から開口一番にそう告げられた。

 ふぁ〜っ……、んっ…眠いわね。

「理科、大丈夫?」

「えぇ、悪いわね」

「おい、おまえら。作せ──」

 

「「大丈夫。予想がつくから」」

 

「ぐっ…! ならば言ってみろ」

 あらあら。頭が固いんじゃない? ま、お望み通りにしてあげる。明久が。

「作戦っていうのは、おそらくはCクラス相手のもの。

 その表情を見る限り、間違いじゃなさそうだね」

 坂本は、苦々し気に「ああ」と呟いていた。全く。どうしてこうも素直になれないのかしら。

「Cクラス? して、何をするのじゃ?」

「まずは、秀吉のお姉さんの優子さんの姿に変装する」

「それは別に構わんが、ワシが女装してどうするんじゃ?」

 男として見られるつもりは無い、と。

「木下優子さんになりきって、Aクラスの使者を装ってCクラスへと行ってもらう事になるかな」

「どうかしら、坂本?」

「相違ねぇよ」

 不貞腐れないの。あなたが堕ちた事実に変わりは無いんだもの。

「と、いうわけだ。秀吉、用意してくれ」

「う、うむ……」

 坂本が“自身”の鞄から取り出したのは、この学園の女子の制服。

 大丈夫よ。引いたりしないわ。いつでも迎撃準備は万端だから。

 木下がその場で脱ぎ始めた為、明久に目を塞がれた。

 気にしないんだけど?

「…………!!〈パシャパシャパシャパシャッ!〉」

 指が擦り切れるんじゃないかというくらいの凄い速さでカメラのシャッターを切る様は、ムッツリというよりは寧ろオープンよね? ムッツリーニという真名は返上した方がいいんじゃないかしら。

「よし、着替え終わったぞい。ん? 皆どうした?」

「さぁな? 俺にもよく解らん」

「おかしな連中じゃのう」

 オマエモナー。

「んじゃ、Cクラスに行くぞ」

 あ、そうだ。メールしとこっ。……送信っと。

 計画は、着々と進行中。あとは結果を御覧じろ。ってね?

 

 

『静かにしなさい、この薄汚い豚共!』

 

 

 酷いってレベルを超越してない?

「流石だな、秀吉」

「入っていきなり暴言吐くなんてめちゃくちゃだけど、これ以上ない挑発だね……」

 甘いわ。これから、抑えるんだから。

『な、何よアンタ!』

『小山さん、話かけないで! あなた豚臭いわ!』

 

「「酷っ!?」」

 

 そう仕向けたのは誰よ。

『アンタ、Aクラスの木下ね? ちょっと点数が良いからっていい気になってるんじゃないわよ! 何の用よ!』

『私はね、こんな臭くて醜い教室が同じ学園内にあるだなんて我慢ならないの! 解る? 貴女達なんて豚小屋で充・分だわ!』

『なっ! 言うに事欠いて』

 ────来た!

「…失礼します」

「翔子!?」

『っ!? だ、代表、どうしたんです?』

 声が上ずってるわよ。木下。

『…優子こそどうしたの?』

『Aクラス代表の霧島さんね』

『…そう。Aクラス代表霧島翔子。お邪魔してる』

『あなたも、私達にはゴミ溜めがお似合いだとでもいいに来たの?』

『……ゴミ溜め?』

『巫山戯てんの!? Fクラスに決まってるじゃない!』

『…………。Fクラスをバカにしてる?』

 声のトーンが2段階は下がった。視線も冷たくなった。

 明久と目が合い、「あーあ」と小さく零す。

『バカにしてるも何も事実でしょ? Fクラスには屑やゴミが“ある”っていうのは』

『……──科には感謝する』

 使ったようで悪いとは思うけどね……。

『何? まだ何かあるの?』

『ある』

 凄く怒っているわね。アレは。

『…Aクラスは、Cクラスに試召戦争を申し込む!!』

 

 

        ☆

 

 

「ドアと壁をうまく使うんじゃ! 戦線を拡大させるでないぞ! そこ! 危ないぞい!」

 木下の指示が飛ぶ。

 あの後午前九時よりBクラス戦が開始され、Fクラスは昨日中断されたBクラス前の位置から進軍をし始めた。

 窓からの奇襲の為、坂本は「敵を教室内に閉じ込めろ」という号令を出していた。

「勝負は極力単教科で挑むのじゃ! 補給も念入りに行え!」

 副司令の木下は、問題無いわね。

 問題は、司令官であるはずの姫路ね。昨日の午後から姫路の様子がおかしい…。

「………。ぁ…」

「左側出入り口、押し戻されています!」

「古典の戦力が足りない! 援軍を頼む! 誰かっ!」

「姫路さん、左側に援護を!」

「あ、そ、そのっ……! ぁっ…の……」

 ちっ! 姫路、何をやっているのよ。…仕方ない。

「阿部理科が受けます。

 姫路! 何もする気がないなら退きなさい! 邪魔で迷惑よ!」

「す、すみません……阿部さん。次こそは、私が行きます!」

 そう言って姫路が戦線に加わろうと駆け出した。が……

 「あ……」と小さく漏らした後、急に動きを止めて俯いてしまった。

 ダメね。

「明久っ、…明久……?」

 明久が怒ってる?

 つい、と明久の目線を辿って理解した。

 「くくっ…」といやらしく笑う根本が目についた。その手には手紙らしき物があるわ。おそらく昨日の午後の時点でか。

「……なるほどね。そういうことか。理科、潰すよ」

「えぇ、潰しましょうか。表は引き受けるから」

「うん、横っ面に食らわせてやるよ」

「姫路は、後ろに下がってなさい」

「……はい、すみません」

「あのさ、姫路。こういう時はさ、“ありがとう”なんじゃない?」

「! はい!! ありがとうございます!」

 素直でよろしい♪

 

 

        ☆

 

 

 ドンッ! ドンッ! ドンッ!

『あー? 何々だよさっきから』

 そろそろ頃合いかしらね?

「須川、近藤。頼むわよ?」

 

「「ああ!」」

 

『おまえらいい加減諦めろよな。昨日から教室の出入り口に人が集まりやがって。暑苦しいことこの上ないっての』

『どうした? 軟弱なBクラス代表サマはそろそろギブアップか?』

『はァ? ギブアップするのはそっちだろ?』

『無用な心配だな』

『そうか? 頼みの綱の姫路さんも、隠し珠の阿部さんもどうやら調子が悪そうだぜ?』

 そう。卑怯なことに、動いたら手紙をみんなの前で読み上げるなどとほざいたのだ。

『……おまえら相手じゃ役不足だからな。休ませておくさ』

 さ、Fクラスにガソリン…いや、ニトロを注入よ。

『けっ! 口だけは達者だな。負け組代表さんよぉ』

『負け組? それがFクラスのことなら、もうすぐおまえが負け組代表だな? 根本』

 教室内の声を聞きながら呼び掛けた。

「FFF団並びに神風隊の猛者達に告げる」

 

『『『何だ何だ?』』』

 

「Bクラス代表根本は、異端者である!」

 ぴくっ。と一斉に反応して眼窩を暗くする。

 

『『『詳しくご説明を』』』

 

「まずは、Cクラス代表の小山友香と付き合っているという事」

 

『異端者だ!』

『制裁を!』

 

「静まれ! それだけではないの。姫路の大切な物を奪い、今なお脅しつけこの場から遠ざけている事実!」

 

『『『何ィッ!?』』』

 

 猛る炎の勢いを緩めない為の火種を放る。

 ぎゅっと自身の体を抱き締め身震いして見せた。

「しかも………汚され…ちゃっ、た」

 

『『『■■! ■■■■■■ーーー!!!』』』

 

 ドンドンドンッッ!!!

 先ほどまでより大きく壁が揺れてる。あら? 明久も怒った?

 すぅーっ……深く呼吸をして部隊指揮を開始する。鼓舞と言った方が近いかしら。

「…さて。皆の者、ヤツの行為は許されるものか?」

 

『『『否! 否!! 否!!!』』』

 

「そ。ならば」

 

『『『to the war! to the war!』』』

 

「えぇ、戦争よ。

 ヤツはこの世にいてはならないと思うのだ! では、何処へとやるべきか!」

 

『『『go to hell!! go to hell!!』』』

 

「そうだ。ヤツを…いや、それに加担する者共をも地獄へと送ってやろう。……総員、直ちに構え!」

 バッと、素早く腕を上げていつでも命令を下せる準備。

 

『『『はっ!!』』』

 

 よく見なければ解らないほどではあったが、Bクラスの壁が音を立てて崩れ始めていた。

『さっきからドンドンと、壁がうるせぇな。何かやっているのか?』

『さぁな。人望の無いおまえに対しての嫌がらせなんじゃないのか?』

『けっ。言ってろバカが。どうせもうすぐ決着だ。おまえら、一気に押し出せ!』

 「おおおおおぉっ!!!」壁から地鳴りのように声が響いた。

『……態勢を立て直す! 一旦下がるぞ!』

 それを聞いた坂本が退却する。

『おいどうした、散々ふかしておきながら逃げるのかカス共!』

 

『あとは任せたぞ、明久』

 

「だぁぁーーっしゃぁーっ!」

 雄叫びを上げて飛び込んで来た明久とほぼ同時に兵を動かす。

 上げていた腕を勢いよく振り下ろした。

「───ヤツらを喰らい尽くせぇっ!!」

 

『『『ウォォォッ!!!!!!』』』

 

 やべっ、楽し過ぎるコイツら。

「ンなっ!?」

 すぐ隣の壁が壊れたことに驚いて引きつった顔の根本。

 向こうの戦力は、坂本率いる本隊を追って教室から出て行った。

 坂本の本隊には、近藤と十名ほどつけたから安心してられる。

 っ! と思ったんだけど、坂本を追いかけて行く先頭の二人と目が合った。──岩下と菊入だ。

 他の人間が二人を守り、坂本までの道程を作っていく。

 やるわね。岩下が指示を? 不味いわ。坂本じゃ保たない……。時間が無い、急がないと!

「くたばれ、根本恭二ぃーっ!」

「Bクラス野中長夫が世界史で吉──」

「させないっ! Fクラス島田が」

「Bクラス山本が受けます! 試獣召喚!」

「──世界史で、吉井明久に勝負を挑みます! 試獣召喚!」

「くっ! 近衛部隊か!」

「は、ははっ! 驚かせやがって! 残念だったな? おまえらの奇襲は失敗だ! っほ?! ごほっ! 何だこの煙りは!?」

 油断大敵。

「窓を開けろ! っ、がはっ!」

 それを教えてくれたのは……

 

 ダン、ダンッ!

 

 保健体育担当教師の特性は、教科担当が体育教師であるが為の並外れた行動力。

「……Fクラス、土屋康太」

「き、キサマ……!」

「……Bクラス近衛に保健体育勝負を申し込む」

「は? バッカじゃねぇの!? 勝負を見誤ったな!」

 「ふっ…」とニヒルな笑みを零し、いつの間にか根本の懐に入り込んでいた。さらに取ったことを気づかせることなく根本の眼前で手紙を一瞬だけひらひらとさせて、土屋は先ほどの根本の動作を辿る。「くくっ…」という笑いも忘れずつけて。

「ムッツリーニィーーッ!」

 近衛も隠し珠も全て剥がして丸裸の根本。

「油断大敵よ」

 それを教えてくれたのは……

「あなた達だったのにね。

 ───試獣召喚」

 けど、惜しかったわ。岩下律子、菊入真由美。

「負けるかよ! Fクラスのキサマらなんぞにぃぃぃっ!!」

 今回出したのは、S&W M29の44マグナム弾(直径11.2mm)。リボルバー式のダブルアクション。本来は狩猟用に開発された物で、威力は折り紙付き。最高の威力の座は50AE弾などに譲ったが、未だに使われる至高の一品。

「ha! you've got to ask one question:"Do I feel lucky?" Well do ya, punk!(はっ。じゃぁ、賭けてみたら、“今日はツイてるか?”どうなんだクソ野郎!)」

 言葉と共に放ったが、

「くぅっ!」

 弾かれた! 腐ってもBクラス代表かっ!

 しかも、フィードバックで態勢が──

「焦っただろ、今」

「ぇ?」

「前見とけ、阿部」

 召喚獣も含めた両方を須川が支えてくれていた。

「なかなか素敵じゃない。いい男よ? アナタ」

「ありがとよ。っていうか、ダーティハリーの真似事か? 昨日も言ってたろ」

「あら、その年で知ってるのね」

 確か、1971年の映画だったはずだけど。

「人の事言えんだろ」

「ま、いいじゃない。

 それよりも……そのまま支えてなさい。片付けるから」

「解ったよ」

 銃を構えて、

「are you happy? もし幸せだったのならごめんなさいね。

 アナタに不幸を届けに来たわ」

 戦争を終わらせるべく、引き金を引いた。

 

 




 もうこの時くらいだったのだろう。アイツに目をつけられていたのは…………。
 後から思い返して、そう思った。



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