元バカと黒髪美少女と薬師   作:暁 巧

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 今回タイトルは、
『アタックNo.1』
 苦しくったってぇ♪ ってヤツです。

「さ、決着よ」




第三○問 だって涙が出ちゃう。女の子だもん!

 

 

『Aクラス 霧島翔子

 

  総合  0点

 

  VS

 

  総合  0点

 

 Fクラス 吉井明久 』

 

 

「引き分け……?」

 表れた結果を見て誰かが漏らした。

「勝者……」

 だけど高橋先生の声を聞いて、先ほどまで誰もが想像しただろうものが打ち破られた。

 曖昧にしないのねー。っていう事は、どちらが先に倒れたかを既に確認し終えているってワケか。

「Fクラス、吉井明久!」

 

『『『うぉぉーーっ!!!』』』

 

 Fクラスが勝鬨を上げて、Aクラスは沈み込む。

「よっしゃぁー! これでボロ教室ともおさらばだ!」

「ヒャッホーゥ!!」

 

「「俺達の時代だ!」」

 

「よ、吉井っ」

「うん?」

「これで、ウチらの卓袱台が……」

 

『『『システムデスクに!』』』

 

「最下層に位置したワシらの、」

「………歴史的な勝利だ……!」

「……………」

 島田に、木下,土屋も盛り上がっているが、坂本だけが憮然とした顔をしている。

 落胆したいのは、こっちだわ。“何に”っていうのも理解できちゃうからなおさらにね。

「ったく……。はぁ……」

「理科? なんかあった?」

 機微を察して心配してくれた律子に、ひらひらと手を振って返すだけで、何も言わなかった。

「律子。たぶん、このFクラスのこともあるんだよ」

 正解。律子も真由美の言葉で気づいたんだ? 頭の回転と空気を読むことに長けているのは素晴らしいわね。ただ勉強してなれる知識人では頭でっかちと変わらない。知恵も必要だからね。

 にしても、バカ共が付け上がってるわ。……全く。躾けが必要みたいねー? こいつらは。

 人の話は最後まで聞くっていうのを習わなかったのかしら。

「三対二でFクラスの勝利です」

 そう。Fクラスの勝利。だというのに……。ほんっと、

「時化た面してんじゃないわよ、アンタ」

「……るっせぇ」

「確かに、やりたかったこととはかけ離れたと言っていいんでしょうね」

「……何が言いたい? はっきり言えよ」

 解んないのね……。

 ふぅーっと一つ息を吐いてから、落ちてきた前髪を掻き上げた。

「世の中勉強だけじゃないって証明がしたかったのだったかしら?」

 少し待ってみたけど、言葉は返ってこない。

 だんまりを決め込むつもり? 沈黙は肯定と取るわよ。

「まず、第一戦。ここからして予想外だった。瞬殺。二戦目の土屋は、予想を裏切り、敗北」

 指折り解説するように話していく。片時も目線は外してなんかやらない。

「土屋自身も学年トップの実力。……でも負けた。そして、次の姫路も同じく、姫路の方が点数は高かったが久保に屈する。

 この時点で既に、相手の方がアンタのやりたかったことをやってるわね。……どこで屈折しちゃったのかしら……?」

 坂本は、悔しそうに下唇を噛み切っていた。

 何て言えばいいのか……、子供のまま大きくなってしまって素直になれなくなったんでしょ。

 うん。憶測だけど、当たってそうね。

「まだまともに撃破したBクラスの岩下律子,菊入真由美でさえ、Aクラス上位の点数を持っていた」

 そして坂本が何より驚いたのが、

「最終戦。あなたの一番予想外だった……いや、心の何処かでは薄々気がついていて、見逃すことにした明久。

 ───結局、全てにおいてAクラスを上回る人材ばかりだっ た」

 結果は結果。きちんと、しかも最上と言ってもいいほどのものが出たはずだ。つまりは、

「私情を挟み込んだワケだ」

「は?」

「クラスが勝とうが何しようが、どうでもよかった。ってね」

「んなわけあるか」

「あぁ。負けるよりは、勝つ方がいいんでしょうよ。それでも、翔子とやりあって負けるなら……それで良かった。

 ───違う?」

「それ、は……」

 とりあえず、確認してすっきりしたところで後は翔子に託しましょう。

「坂本、話は此処まででいいわ。ある程度理解できたから」

 けれども、そ・の・ま・え・にっ。

「戦後対談、始めましょうか」

 翔子や坂本、高橋先生等と集まって来たところで会話を始める。

 予め高橋先生と鉄じ…じゃない、ぇ〜………………………………………ぁ。

「西村先生!」

「何だ阿部、どうした?」

「あ、いえ。やっと名前を思い出したってだけで」

「おまえなぁ」

 米噛みの辺りを指で揉み解し始めた。あら? 疲れてるのね。なるべく早く切り上げましょうか。

「なる早で済ませます」

「いきなり略して言っても、伝わらないよ!?」

 そう? それなりにニュアンスは伝わると思うんだけど。

「いや、もう大丈夫だ。

 吉井。……苦労してるんだな」

 ほらね? って言おうとしたらいつもの雰囲気は在らず、西村先生が明久に対して今まで見たことの無いくらい優しい眼差しを送るって……どんだけ?

「先生、どんなことでも慣れてしまえるんですよ……」

 

「「はぁ……」」

 

 思わず首を傾げる。

 どうして明久も揃って、西村先生とため息なんかついてるの?

 ま、良いけれども。

「コホン」

 一つ咳払いをして戦後処理を行う。

「まず始めに言っておくけれども、FクラスはAクラスと設備交換しないわ」

「……ぇ?」

 誰かしら声が漏れ聞こえた後、

 

『『『何ィィィィィッ!?!?!?』』』

 

 Fクラス主催による、汚いオーケストラ。ホンット、勘弁してほしいんだけど。

「はっきり言って、アンタら何もしてないってのにシステムデスクがもらえるとでも思ったワケ?」

 

『『『うん!』』』

 

 ……はぁ〜〜〜〜〜〜っ。頭痛くなってきた。

「アンタら、バカぁ?

 さっきの見てたんでしょうが。

それでも解らないってんなら、

 『人のお話は、ちゃんと聞きましょうねー?』

 ってとこから、きっっっちりと教えてくれる幼稚園を紹介状付きで紹介してあげるから入園してらっしゃい」

 くいっ。と袖を引っ張られた。

 そちらを見てみると、明久が首を振って言外に「ダメだよ」って伝えられた。

 何が? と問う前に耳障りな雑ぉ、…いや、騒音? あー、害音? うん、害音。それが聞こえてきた。

 

『イヤッホォォォィッ!』

『待て。大人数で押し寄せるのは、エプロンの先生に迷惑がかかる』

 少人数でも迷惑どころか、害悪になると思うんだけど?

『そうだな』

『その通りだ』

『だったらまずは、俺が様子見としてエプロンの保母さんに』

 保父さんもいるっていうの理解して……

『待て待て待て! 俺がエプロンの保母さんと』

『何をっ!? 俺のがエプロンの保母さんを』

 ……ないのね。保母さんと何しようっての。次のヤツは、保母さんにナニする気?

『抜け駆けか! 俺が裸エプロンの保母さんと』

 風俗じゃないんだけど……。

『バカっ! 裸エプロンは俺のだ!』

 もう、保母さんですらないじゃない。

 

「……………あーあ、滅ばないかなぁ?」

 

「「「理科っ!?」」」

 

「ごめんごめん、悪いわね。律子と真由美も。

 あ、西村先生。アレらに再教育が必要なようですので、此方を先生から親御さんへ渡しておいてください」

 懐から出した物を手渡す。

「何だ、これは?」

「睡眠教育用の音源です」

 西村氏は、「ほぅ……」と目を細めて興味を示した。

 続けて、声音高く説明する。

「これさえあれば♪ 寝る間も惜しんで勉強、食事を惜しんで勉強、水分補給惜しんで勉強。という将来有望な」

「待って待って待って! 過労死するし餓死するし渇死するし!」

「淀み無く言って見せたのに、何が不満だって言うの?」

「言うならば、全部なんだけど」

「テレビショッピングばりに、お得感をアピールしたんだけど?」

「むっ。何だ? 俺にも振るのか。さすがに困るんだけどな」

 存外にノリがいいな鉄ちゃん。とか言いつつって?! 態々小突かなくてもいいのに。

 顎に人差し指を当てて「むぅっ……」なんて唸って考えてみたんだけど、結局さっきのことにはまるっきり心当たりは無い……はず。……たぶん。………きっと。…………may be.

 

 

 

 なぁんて。やってから、高橋先生と共に説明していった。

 箇条書きにすると───

 

・設備交換はしないがEクラス程度の設備に直す。(勝敗に関わらず、直す予定だった)

 

・以下の数名は、週の半分をAクラスで授業を受けることができる。

【阿部理科,岩下律子,菊入真由美,坂本雄二,須川亮,土屋康太,姫路瑞樹,吉井明久】

(木下秀吉は須川より点数が悪く、Fクラスで補習も含めて基礎からやり直し)

 

 ───だいたい、こんな感じかな。不承不承だったFクラスのヤツらは、結果(テスト)で示せ。って言ってある。

 因みに。

 反抗的だったヤツらは、「水分補給ならぬ水銀補給するから」と輸血パックに並々入った銀色の液体に、顔を引きつらせていた。

 みんな見てれば、結構傑作だったこと請け合い。

 あ、さらに余談。

 それを見た西村先生のでこぴんにて、沈められた。

 でこぴん。って、文字や音の響き、動作とかによって可愛く見聞こえするけど、余りの痛みに呼吸ができなかったんだから。

 

 ふぅっ……。

 

 最後、翔子が坂本に大事な話があるって出て行った。

 何を勘違いしたのか、島田は明久を誘ってデートに行くと言い(本人は、否定している)、それに便乗する形で、温和しそうな姫路までもが声をかけたけどやんわり断られている。

 しつこく食い下がるレッドクリフ、じゃなかった。島田に今度ははっきりバッサリ断られ空気が一気に重さを増した。

 苦笑している明久に、戻って来た翔子が手じゃなく腕を取って会話し出した。もたれかかるように、時折上目遣いで明久の瞳を覗き込む。

 「ん?」と明久が聞けば「……ん」とそれだけ返す。余計な言葉なんて要らず、強い繋がりが見て取れた。

 姫路は、「そうですか……」と笑みを浮かべていた。

 何だか触れてしまえば壊れるんじゃないかと思わされるのは、姫路が必死に泣くまいと堪えているからでしょうね。

「……カッコいいわね……姫路」

 そして明久は翔子のやることに対して嫌がる素振りを欠片も見せずに、自然な仕草で翔子の頭を撫でやる。

 そう言えば誰かが言ってたわね。恋愛は戦争(たたかい)だ。……って。

 そう……。

「───敗者に言えることは無いのよ……」

 眩しいものから目を少し反らしていた今の表情(かお)は、上手く笑えて………ぁ。

 

 何だか、

 

 

 ………………痛い。ああ、うん…。痛いわね……。

 

 あーぁ。

 

 ……ぁーぁ………。

 

 ほんとっ、もう……、

 

「………バカ」

 

 寂し気な音が空に消えた。

 

 

 

 

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