元バカと黒髪美少女と薬師   作:暁 巧

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 バレンタインに甘酸っぱい話をば。(今年の話だったんですw)
 今回タイトル
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』
 こち亀の映画主題歌です。

 迷って書いた回。。。
 一応、一巻終了。長いのか? 短いのか? 一話短いしなぁとか思ったりも……
 そんなんですけどどうぞ。




第三一問 語れ!涙!

 

 今は使われていない空き教室から声が聞こえてきた。

「話って、何だ」

 一方は、坂本くん? もう一人はぁ……

「……雄二。薄々気づいているはず」

 そーっと……。教室を覗いて見たら、霧島さんが坂本くんの目の奥を覗き込むようにまっすぐ見据えて話していた。

「逃げないで……!」

 ! びっくりしたぁ。

 静かで、けれども力強い。凛とした声。

 ………違う。心の奥底を覗き込むんだ、きっと。だから見ていられなかった。

「……雄二……。聞いて。

 ……私は、大丈夫」

「っ!? ………何言ってんだ?」

 離れていても解った。坂本くんが動揺してるんだって。肩が少し動いて強張った感じがした。近くにいればもっ!? ヤバいっ! 霧島さんと目が合っちゃったぁっ! これはさっさと……ん?

 霧島さんが何か……『あ っえ』? ──あ。“待って”だね! でもぉどーして……。

 むっ、今度は『おえあい』。……うん。これはすぐ解ったよぉ。

 “お願い”。

 どーしてかは、解らないけどぉ……。アレだけ真剣な目をしてるんだから大切なことだよねぇ。うん。

「……雄二、私はあの時の事をちっとも恨んだりしていない。……だから、いつまでも過去に囚われないで」

「俺、は……、別に……」

「雄二。雄二は、あの頃のまま時が止まっていない?」

 「うっ!」と坂本くんが言葉を詰まらせた。

 図星……なんだろうねー……。

「………あの頃。私が憧れていた雄二じゃなくて、───その後の“失敗”に傷ついた。……友達を……私を傷つけた。そう思ったままズルズルとここまで来た」

「………」

「……あの頃は、どうか知らない。けど、今は私の事……友達だって言える?」

「ったりめぇだ!!」

 うん。よいね。友達思いのぉアチィ、よい男子(おのこ)だ。

「…………それ以外……それ以上の気持ちは───無かった?」

 うぉっ!? とぉ! そーなのか、そー来るのかぁ。

「でも、何かを考えたり答えたりする前に言っておく。……私は、明久が好き」

 霧島さんの綺麗な瞳に映り込んだ、坂本くんの唇をキュッと結んだ顔が見えた。

 あー……、うん。

 奥歯を強く噛んで、音を漏らさないよう口を閉じているその姿は、そうしていないと決壊するかもしれない自身の感情を押し殺しているのかもしんない。

 なんて言っちゃうか解んない、坂本くん自身でさえ戸惑う感情があった。

 そしてそれを理解しよーとしていなかった。……かなぁ? 霧島さんは、それを突き付けて理解させようと………、うぅん。きっと、その先の───

「あ の……だな、翔子」

「雄二」

 ビクッ! 坂本くんは強く反応する。

「この結果(きもち)は、覆らない。

 でもね………」

 「言うなっ!!!」って、坂本くんから心の叫びが聞こえてくるようだった。

「……私達は、友達。大切な、友達。

 ……もちろん、この先どうなるのかなんて解らない」

 『誰と』とは言わないんだねぇ。

「……けれど、きちんと言っておこうと思った。いつまでも留まっているアナタに。前に進んでもらえるように───」

 坂本くんの目をまっすぐ見て、霧島さんは視線と同じく言葉を告げた。

「───雄二。大好きだった。……ありがとう」

「……おう。……そうか………」

 “だった”かぁ〜。スゴいね、霧島さんは。

「………俺もだ。……好きだったよ、翔子」

 坂本くんもスゴいなぁ。本当に。本っ当、に……っ、はっ…ぁ、う゛ぅー……、もうっ、もうっ! あーもう、止まらないょぉ!

「……ありがと、雄二」

 頭を下げた霧島さんが教室を出て、態々こちらに回って来た。

「……お願いします」

 霧島さんが深々と御辞儀をするので、慌てて声をかけた。

「顔上げて、霧島さん。それに畏まらなくてもいーよ」

「……解った。お願い」

 それでも、また軽く頭を下げた。しかし、真剣に。

 それを軽く受け取って、ほんのり赤身がかった目を曝しつつも柔和な笑みを浮かべて返したんだぁ。

「おっけぇ♪ んじゃ、いってくるょ」

「あの」

「うん?」

「翔子。って呼んで」

 「いきなり何を……?」なんて思っていたら、

「……関係無いのに、泣いてくれたみたいだから……友達として託したい」

「託しされた。だからさぁ……、翔子。

 自分のせいだなんて思っちゃダぁメ」

「あうっ……」

 ちょこっと、小突いてやった。んだけど、可愛いなぁ全く。

 

 

 ってな感じで可愛さに頬が緩んだところへ、坂本くんとご対面さぁ。

 なのに、

「………」

「………」

「………………」

「………………」

 あー、気まずいよぉ。かなり重い沈黙してぇ……。はぁ……。

 どう切り出そうか迷っていると、坂本くんの方から声をかけてきた。

「……見てたのか」

 それでも目線は合わしてくれないんだけどさぁ。

「……うん。まぁ……ね。最後の方ちょろっと聞こえた感じ」

 誤魔化すように頬を少し掻いた。こんな不器用だったぁ? なんて思ってしまうほど私は戸惑っていた。

「……………」

 また黙ってしまった坂本くんとの間にできた空気に堪えきれず、

「あのさぁ、」

 声をかけたけど、

「放っておいてくれるか………頼む」

 冷たく、……違う。切実なんだ。苦しいんだ。悲しいんだ。どうしていいか解らないんだ。

 うん、だったら……

 だったら、放っておけないなぁ。

「たははっ。ムリ言っちゃぁダ〜メ」

 後ろからそっ…と抱きしめてあげる。

「だから! おまえはっ!」

 ただ、ぎゅぅっって。

「男の子だってぇ、泣いていぃんだよぉ?」

 ビクッ! って“また”なった。

 ああ、そっか。坂本くんは、臆病なんだ。傷つくのも傷つけるのも……コワイんだ……。

 大丈夫なのに。うぅん。大丈夫だよ。

「……私は見ないし見えないし誰も見てない」

 かなり手加減して振り払おうとするけれど、私はそれを許さない。でないと、また溜め込んで坂本くんが傷ついちゃう。

「ね? 大丈夫だからさ。吐き出しちゃえ☆」

 

 ………ぽたっ。

 

 前へ回した手の上に温かい水気が感じられた。

 

 ………ぽたぽたっ。

 

 決壊した……。一度零れてしまえば、そこからどんどんと溢れてくる。

「……ぅぅっ……、ぉ、れっ、今さら! 今、さらっ……こんなにも好きだったんだって気づいた」

「そっかぁ……」

「ぐちゃぐちゃに、何も考えられないくらいいっぱいの気持ちでっ、っはぁっ……ぅっく……」

「うん……」

 片手を背中に持ってきてゆっくりと擦る。

 嗚咽が収まるまで、ただ傍にいた。

 

 

 

「あ゛ー、……悪ぃな」

「おっ、スッキリした顔だわ」

「おかげさまでな」

「……えらく素直じゃない?」

「あれだけのもん見られたら、どうって事ねーよ」

 それだけの笑顔で言えるんなら、本心でしょーねぇ。うん、もう大丈ぉー

「おーぃっ!? 何すんのぉ! わしゃわしゃしないでってぇ! ちゃんとセットしてるのにぃっ!!」

「もう放課後だろうが」

「そぉんなの、関係無いからね? いつだってぇ、可愛くいたいんだからぁ」

「……とにかく、帰るか」

 坂本くんは、すたすたと教室を出て行く。もうっ。

「はぁいはい。歩幅違うんだからガンガンわぶっ?!」

 ひたたっ。急に立ち止まった坂本くんにぶつかった。鼻赤くなってないかなぁ?

 顔を上げてみると、首を少しこっちに向けてぶっきらぼうな声で言った。

「………サンキューな」

 夕陽に染まる校舎以上に赤く見えたのは、夕陽のせいだけじゃないよね。

 くすっ。

「惚れんなよぉ?」

「ふっ……、バァカ。

 でも、まぁ……いい女だわ」

 っ!? くそぉっ。さすがに照れるってぇ。

「今さら気づいたんだぁ?」

「違ぇよ。今、気づけたんだよ」

 ん? どーゆーことぉ? 疑問符を浮かべていたのが表情に出ていたんだな。ちょっと笑い止めてってぇ。

「なぁ、」

「何ぃ? どったの?」

「雄二だ。改めてよろしくな」

 手を取って返した。

「うん、真由美だよ。よろしくねぃ? ゆーじくん♪」

 

(「救ってもらった存在を手放したくないって思うのはいけないことか……? なぁ、翔子……」)

 

「うん?」

「いや。……本当に────」

 続く言葉は、聞こえなかった。

 ただ、笑顔でいてくれて「ほっ」とした。

 

『いい女だわ』

 

 そう言ってくれた気がして、「でしょ?」ってこっそり胸張ってみた。

 

 

 

 

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