まるっと解決!………。
えーっ、今回は、
『生徒会の一存』です。
二巻冒頭の暴投。
なんかすみません。アホなんです、ウチ。
第三五問 実行委員の一存
桜並木は坂道から徐々に姿を消して、代わりに新緑が芽吹き始めたこの季節。
文月学園では、新学年最初の行事である『清涼祭』の準備が始まりつつあった。
学園祭準備の為のLHRの時間は、どの教室を見ても活気が溢れている。
そして、
「阿部! こいっ!」
Fクラスはというと───
「相手になったげるわ、須川」
「おまえの球なんか、場外まで飛ばしてやる!」
こんな感じ。校庭での野球に勤しんでいた。
「言ってくれるじゃない。ただの球を投げるとでも?」
「何っ!? 卑怯だぞ!」
「何を喚いているのかしらねぇ? 勝利への常套手段じゃない」
「可愛いは、正義って事か」
ミットを構えている坂本のサインを待つ。
『次の球は、カーブを……バッターの頭に』
解ったわ。
坂本にこくり。と頷き返す。
「くらいなさい! 僅かな衝撃で爆発する魔球を!」
「「ちょっと待てぇ!」」
慌て始めた二人の声を聞き流して、振りかぶる。
「無に還れっ!!」
なかなかの豪腕。急ぎ離れようとした二人の間にあったホームベースを黒煙と砂煙が包んだ。
「虚しい戦いだったわ………」
「貴様ら、学園祭の準備をサボって何をしている!」
「うげっ、にしむーじゃない」
「聞こえているぞ、阿部! 誰がにしむーだ!」
「…………〈ぴっ〉」
「指をさすな。言葉で伝わらなかったって意味合いじゃあない! いいから全員教室へ戻れ! この時期になってもまだ出し物が決まっていないなんて、うちのクラスだけだぞ!」
とか言われて教室へ戻ってきたワケよ。
「阿部よ。さすがに、ふてぶてし過ぎんか?」
「五月蝿いわ。木下、いえ……淫行変態ヤリタインジャーのスケベェピンク」
木下が膝を抱えて、“の”の字を書き出した。
「………今日は……早退してもよいかのぉ……?」
「よーしよし、秀吉くん大丈夫だよ〜」
「愛子、甘やかさないで。秀吉も、男ならウジウジしない!」
木下姉と工藤だけじゃなくて、翔子はもちろん、久保や律子と真由美も来ている。もうほとんど終わってるらしい。あらゆる、やる事成す事が上位クラスなワケね。
「阿部もほどほどに」
「須……ブラックは黙ってなさい」
因みに、赤→坂本(代表)。青→土屋(貧血)。黄→明久(明るさ)。緑→久保(爽やかさ)。っていう構成。
「とりあえず、議題進行並びに実行委員として誰かを任命する。そいつに全件を委ねるので、後は任せた」
「アンタやんなさいよ」
「パス。面倒だ」
それを押し付けるつもり? 全く。
「そ。
因みに、Bクラスの実行委員は、ここにいる岩下律子と菊入真由美のふた」
『俺に任せろ! 実行委員と言えば、この俺だ』
『バカな! 実行委員は、代々俺の家系が受け継いできたものだぞ?』
『言ってろ。“実行委員”の“じ”の文字すら理解に及べないカス共が!』
『なら知ってるってのか!?』
『ふっ……。語るに落ちるな。そう言っている時点で知らないと言っているようなものだ』
『しまったぁっ!』
最後まで言わせなさいよ。
で、坂本は?
「うぐぐ……」
唸ってるわ。いつまでもこうしてたって仕方がないし、さっさと終わらせましょ……。
すっ。と手を上げた。
「阿部と須川か」
「「ぇ?」」
これは予想外だった。ま、いっか。
「んじゃ、それで」
「俺もか?」
「ああ。おまえらに任せる。……ふぁ〜っ……」
ヤル気の欠片も無いわね。
「真由美と親密になりそうもなくて一安心した?」
「ばっ!? 違ぇ!」
「ふぅん……。だってさ、真由美」
「そっかぁ。結構嫌われてるみたいだしぃ、週末にうちへ呼ぶのは木下“くん”達だけでいいかなー」
「ちょっ! あいや……、他のヤツ呼ぶくらいなら、俺を呼んでくれた方が嬉しい」
「春も終わり、初夏に突入かのぉ」
「黙ってろ秀吉。おまえだけ御盆に突入させてもいいんだぞ?」
珍しい組合せねー。明久の役目かと思ってたけど、翔子の相手でいっぱいっぽいし……。
「ハイハイ、静かに。とっと決めてしまうわよ。意見があるなら挙手して。
須川、書記」
「わーかったよ……。仕方ねぇ、俺の華麗なるテクニッ」
「はい、土屋」
「聞けよ」
「………〈スクッ〉
…………写真館」
「無視か。おまえら無視か」
「土屋、健全ならば許可するわ」
打ち拉がれた須川は、放置して。
「……俺は健全な物しか世に出した事など無い」
「ほら……〈ちらっ〉」
スカートをちらり。
パシャパシャパシャパシャッ! という連続したシャッター音と机の脇を縫って頭から滑り込んでくる土屋。バカ共がそれに気づき、モーゼの如く机の群れが左右に退いて道を作った。
親指を力強く突き立てて後ろを振り返り、道を作った者達も笑顔でサムズアップ。
その時には既に上着の内ポケットから一口大サイズの小玉を取り出しながら土屋の鳩尾に蹴りを入れる。差し出された頭に踵の照準を定めて、その他大勢を爆。
「どの口が、ほざいたのかしらねー? 土屋、言い遺したい事は?」
「……ブラも見せてくれ」
この状況でも7:3で下着を見るのには驚く。
脚を振り抜き、土屋を沈めてから見回す。
「っていうか、他のヤツらも見たでしょ? 今。駄賃は、高くつくわよ?」
久保も木下も顔反らしてんじゃないわよ。『逸らす』じゃなく『反らす』。鯱ばりに反った。
「須川、板書と提出する用紙にも書き込んで」
「あいよー」
【候補① 写真館『笑顔のゲンキ』】
(裏)『秘密の覗き部屋』】
「じゃ、木下」
「単純にメイド喫茶もよいかと思ったのじゃが」
「……木下、私達のとこメイド喫茶」
「あ、いや、既存の可能性を考えての……。その、阿部よ。執事喫茶などどうじゃろうか」
翔子の言葉にしどろもどろになってたけど、結局流したわね。木下、口笛吹いて誤魔化すな。むしろ腹立つ。
「でも、あなたが芝居したいって言わないだなんて……、どういう風の吹き回し?」
「うむ。もっと早よぉ言えば良かったのじゃが、ワシも部活があったしの」
【候補② 執事喫茶『precious memorys』】
「ふぅん……。次は……」
「阿部、俺もいいか?」
そう言った須川に目で促す。
「俺は中華喫茶を提案する」
「中華喫茶? チャイナドレスでも着せようっていうの?」
「いや、違う。俺の提案する中華喫茶は本格的なウーロン茶と簡単な飲茶を出す店だ。そうやってイロモノ的な格好をして稼ごうってワケじゃない」
指を一本立てて続け出した須川。長くなりそうねぇ……。
「そもそも、食の起源は中国にあるという言葉があることからも分かるように、こと『食べる』という文化に対しは中華ほど奥の深いジャンルはない。近年、ヨーロピアン文化による中華料理の淘汰が世間では見られるが、本来食というものは───」
あ、うん。これ以上言われてもね。情熱は伝わって来たわよ? 同じく薬学にのめり込んでいる身としては、仲間を見つけた気分だわ。
【候補③ 中華喫茶『黄龍小』】
何でこれだけ真面目? ん? 違うわね。……ウォンロンシャオ。小
「他は? はい、久保。……久保?」
「ああ。せっかくだから思いついた意見を言わせてもらえるかな?」
何だか自信満々に見える。そんな面白い事考えたの? いいわ、聞こうじゃない。
「許可するわ」
「では失礼して……。この学園ならではの、召喚獣を使った催し物は面白いんじゃないだろうか?」
確かにね。何をするつもりかしら?
「うん、そうね。でもどのような事をするつもり?」
「お客様にも召喚獣を使ってもらおうかと思っている」
「ほぅ……。続けなさい」
「ああ。まずお客様に簡単なテストをしてもらって、その採点データを元にプログラミングしてかかるだろう時間を告げて、再度来店していただき、召喚獣操作を体験してもらう。
但し、今のは対戦してみたい人向けで、ただ操作するだけでいいというのならば、5〜10問の小テストで操作してもらえばいいかと思う。
小さな子もできるように一桁算、ひらがなやカタカナでの文字の読み書きなどしてもらえばいい。
長々と話してしまったんだが………どうかな?」
「悪くないわね。これで集計を取るわ」
【候補④ 召喚獣操作+対戦『あなたでもなれる召喚士(サモナー)』】
いや。ツッコまないから。さすがにもうツッコまないから。
「皆、清涼祭の出し物は決まったか?」
「てつむー、候補はこの4つです」
【候補① 写真館『笑顔のゲンキ』】
(裏)『秘密の覗き部屋』×?】
【候補② 執事喫茶『precious memorys』】
【候補③ 中華喫茶『黄龍小』】
【候補④ 召喚獣操作+対戦『あなたでもなれる召喚士(サモナー)』】
「………まぁいいだろ」
「この候補の中から一つだけ選んで挙手なさい」
挙げられた手の本数を数えた結果、
「Fクラスの出し物は召喚獣操作体験に決定。全員、働きなさいよ?
というワケで、当日召喚の事とかお願いしますね、てつじー」
「“てつじー”でも“てつむー”でもないが、協力しよう。もとより、そのつもりだったがな」
そう言って教室を出て行った先生に後を任されて、大まかな事を決めていく。
「簡単にだけど決めていくわ。意見があれば、また挙手でお願い。
はい、律子」
「なんか一応、お茶菓子とかの用意はある方がいいかも。大袋のお菓子とかバラエティーパックなんか買えばいいんじゃない?」
「そうね」
須川が書き込み終えたのを見て、真由美を指す。
「理科〜、衣装とかはぁ?」
「んー………衣装、か……。制服のままでも、いい気がするんだけどね」
衣装までは「ま、いいか」と考えあぐねていると、土屋が立ち上がった。
「……俺に考えがある」
「任せていいのね?」
「……ああ」
「男子の分も」
「………………………任せろ」
その間は何。まぁ、土屋一人に押し付けるのは、よろしくないわね。
「姫路、裁縫はできる?」
「あ、はい。大丈夫です」
「じゃ、姫路は土屋と衣装係って事で」
「解りました。よろしくお願いしますね、土屋くん」
「……こちらこそ頼む」
土屋が握手を求める。
「はい! あ、」
それに応えようとした姫路が、机に足を引っかけて倒れそうになったところを透かさず土屋が支えた。
男子にしては、かなり小柄な方である土屋だが、その実、鍛え上げられた肉体を持っていた。だから、影では女子人気が結構あったりするんだけど、知らぬは本人ばかりってね。
「あの、す、すみません!」
「……気に……するな」
耐えてるわね、土屋。姫路を抱き抱えているっていうのに。
ここで、姫路が爆弾を落とした。
「土屋くんって、結構おっきいです」
「……っ!〈かっ!〉」
いつまで保つかしら?
「それに……、〈くんくん〉いい臭いがします」
「………………」
バストを押し付けた状態からの、首筋の臭いを嗅ぐだと!? さすがの土屋も、声を出せないみたいね。
「はわっ!? すみません! 変な事しちゃいましたっ……。えっと、その……よろしくお願いします」
腕の中で上目遣い! これは土屋もダメでしょう。
「………よろ、しく……………〈ガクッ〉」
メーターを振り切ったにも関わらず、意識を失ってまで堪えきったっていうの?
「感動した。あなたの根性に感動したわ」
ぱちぱちぱち……。教室内から疎らに音が聞こえる。それが次第に大きくなり、
ぱちぱちぱちぱちぱちぱち!!
割れんばかりの拍手で包まれた。
忘れ物を取りに戻って来てた西村先生から一言。
「バカか、おまえら」