元バカと黒髪美少女と薬師   作:暁 巧

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 年賀イラストまだ未完なのにタブが反応しなくなった……orz.
 ま、それは置いておいて、
 今回のタイトルは
『けんぷファー』
 読んだことないけど、臓物アニマルの名前考えてみたw




第三六問 ツブレドブネズミに選ばれた戦士たち

 

「あ」

「お?」

 向かい側から坂本が歩いて来た。坂本がわざわざ学園長室へ来るのは普段ならば有り得ないと思っただろうが、このタイミングで鉢合わせたってことは……。

「あなたも化石に呼ばれてたのね?」

「ああ。つまりは、おまえらも天然記念物にってことか」

「何をさせたいのやら」

「全くだ」

「しっ!」

 今何か……

「何々だ、阿部」

「黙ってなさい」

 

『……賞品の……として隠し……』

『……こそ……勝手に……如月ハイランドに……』

 

 声を殺したところで、学園長室の中から誰かが言い争っている声が聞こえてきた。

「どうした、明久」

「いや、中で何か話をしているみたいなんだけど」

「そうか。つまり中には学園長がいるというわけだな。無駄足にならなくて何よりだ。さっさと───」

「しっ!」

 「中に入るぞ」とでも続けるつもりだったのだろうが、それを遮って耳を澄ます。

 

『………と、………間に契約……いたんだい?』

『……て? ……に……と……り、……はずですがね』

 

 何の事? それにこの声は、……教頭? 何かあって痛い懐を探られないように呼んだってことか。

 カヲルさんの事だから、それだけじゃないんでしょうけどね。

「何をやってんだ、おまえら」

 っ! 不味い! 振り向いた先に根本がいた。

 あいつは、卑怯なだけじゃなく空気も読めないの?! 急ぎドアノックして、返事を待つ。数秒と待つことなく、部屋の中から声をかけられた。

「誰だい」

「Fクラス代表と他数名です」

 坂本が「何でおまえが答えてんだよ」と目で訴えかけて来ていたが、無視して入室する。

「失礼致します」

「ガキ共、何勝手に入って来てんだい。誰が入室を許可した」

 長い白髪の剥製が藤堂カヲルさん。口がかなり悪いけど、この文月学園の学園長っていう偉い立場だったりするからね。何とも……。そして試験召喚システム開発の中心人物で、研究第一の自己中心的な人。……人?

「これが人なら、海洋生物でさえ人になるね」

 最後のが漏れてたらしい。

「明久、魚が食えなくなるから悍(おぞ)ましいことを言うな」

「ゆーじくん、シーマンに失礼だぁから」

「真由美。……せめてウーマンにしよ?」

「人魚が穢れそぉでヤダ」

「アンタら馬鹿にしてんのかい!? アタシゃ人間だよ! 本当に失礼なガキ共だねぇ」

「……立てば山婆、座れば魔女、歩く姿は深き者共(ディープ・ワンズ)」

 クトゥルフの醜い魚人だったかしら。翔子……。スッゴい毒吐いてるわ。

「やれやれ。取り込み中だというのに、とんだ来客ですね。これでは話を続けることもできません」

 ふぅ……。っと息を吐いた後に、眼鏡を弄りながらカヲルさんを睨み付けたのは教頭の竹原先生だ。

「……まさか、貴女の差し金ですか?」

「馬鹿を言わないでおくれ。どうしてこのアタシがそんなセコい手を使わなきゃいけないのさ。負い目があるというわけでもないのに」

「それはどうだか。学園長は隠し事がお得意のようから」

 何か知っているっていう事? 学園長と教頭の話し合いということは、学園の経営について? ずぼらなカヲルさんなら、教頭に全部任せて自身は研究に没頭してそうだからね。

 だとすれば、何でさっき……

「何度も言っているように隠し事なんて無いね。アンタの見当違いだよ」

「……そうですか。そこまで否定されるならこの場はそういう事にしておきましょう」

 そう告げると、竹原先生は部屋の隅に一瞬視線を送り、

「それでは、この場は失礼させて頂きます」

 踵を返して学園長室を出て行った。あの視線は何? 何かを気にしてた? ……解らないわね。

「んで、ガキ共。随分とゆっくりだったじゃないか」

「竹原先生との会話を中断させたかったのかしら?」

「さて、何の事やら」

「耄碌(もうろく)するにはまだ早いわよ? カヲルさん」

「余計なお世話だよ。それより、オマケが多くないかい?」

「本気で言っているの? 腐っても天才と呼ばれる科学者でしょうが」

「理科、額に御札貼らなくて大丈夫? 道術が切れないかな?」

「バカか明久。御札が無く動いているんだぞ? キョンシーじゃないってことだ」

「じゃぁ何さ」

「死霊術に決まってんだろ。

 いやまさか、ネクロマンサーが実在していたとはな」

「勝手に殺すんじゃないよ! アタシゃ生きてるよ!」

 どっちも前提条件が死体だからね。

「カヲルさん、そろそろ話してもらえませんか」

「話逸らしたのは、誰だい」

「どっちもどっちって思いますけど?」

「清涼祭で行われる召喚大会は知ってるかい?」

「えぇ、まぁ」

 丁度話題に出てたものね。

「じゃ、その優勝賞品は知ってるかい?」

「え? 優勝賞品? 理科知ってる?」

 明久の問いに首を振って返した。出場するつもりなんて欠片も無かったから見向きもしてなかったわ。

「学校から贈られる正賞には、賞状とトロフィーと『白金の腕輪』、『黒銀(クロガネ)の腕輪』、副賞には『如月ハイランド プレオープンプレミアムペアチケット』が用意してあるのさ」

「それが何だってんだ、翁」

「誰が翁だい! ったく、話は最後まで聞きな坂本。慌てるナントカは貰いが少ないって言葉を知らないのかい?」

「老化した人類に限りなく酷似した老朽化した人のような何かである今目の前にいるアンタのことだろ? 慌てるナントカって、急に痴呆が進行したか?」

「何さね、それは!?」

「雄二、言い過ぎだよ。でも少し心配だね。後で僕が性質・体質・品質と、質(たち)の悪い葬儀屋を紹介して生命保険の契約を取り付けるから安心して?」

「アンタも、何を爽やかな笑顔で宣ってんだい! 驚きの余り尊敬するよ!!」

「有難き──くない、不幸せ」

「中途半端に言い直してんじゃないよ! バカにしてんのかい!?」

「明久がそこまで言うなら、仕方ないか………クソッ」

「何でそんなにも嫌そうな顔して───吉井と阿部も一緒にやってんじゃないよ!!」

「さ、学園長老、話の続きを」

 明久が無理して作ったような笑みで先を促す。健気だわ。

「あ゛ーっ! こいつらと話ているとストレスでどーにかなりそうだよ! 阿部だけ話な!」

 さて、マジに真面目にいきますか。

「明久も坂本も、これ以上は止めて頂戴」

「続けるよ。この副賞のペアチケットなんだけど、ちょっと良からぬ噂を聞いてね。できれば回収したいのさ」

「回収……ね。賞品に出さなければいいって話ではないと?」

「そうさ。この話は教頭が進めたとは言え、文月学園として如月グループと行った正式な契約だ。今さら覆すわけにはいかないんだよ」

 やっぱりか。経営に関して教頭に全部一任したツケが回ってきたと。

「契約する前に気付かなかったの? だとすれば、自業自得もいいところでしょ」

「うるさいねぇ。白金の腕輪の開発で手一杯だったんだよ。それに、悪い噂を聞いたのはつい最近だしね」

 カヲルさんが眉を顰める。責任感じてますよーって見せて、何か腹に据えてるわね。……あ。

「それで悪い噂ってのは、如月グループは如月ハイランドに一つのジンクスを作ろうとしているのさ。“ここを訪れたカップルは幸せになれる”っていうジンクスをね」

 その程度で問題にして騒ぎ立てたりしないだろう。つまり、

「まだ続きがあるんでしょう?」

「ああ。そのジンクスを作る為に、プレミアムチケットを使ってやって来たカップルを結婚までコーディネートするつもりらしい。企業として、多少強引な手段を用いてもね」

 卒業するまで無理でしょうが、どー考えても。それに気がつかないカヲルさんじゃぁない。っていう事は、本命は別に……? 如月ハイランドの話の後に出ていた話題の方が重かった気がするんだけど、それも関係している?

「………………………」

 がしがしっ。頭を乱雑に掻きむしる。あ゛ーっ! 解らないわね、もうっ。

「………科! 理科!」

「何?」

「何? じゃないわよ。なんか引っ掛かる事でもあった?」

「……くすっ。律子は、スゴいわね? 正解よ」

「何言っているんだい」

 嫌な予感でもしたのか、カヲルさんが余裕ぶっていた相好を崩す。そして、その予感は的中よ。

「シロガネ」

 ビクッ。と反応した。

「副賞の腕輪……でしょう? 不具合でもあったのかしら」

「何の事さね。そんな事実は無いよ」

「ま、いいです。けれども、対価無しにっていうのはいただけません。カヲルさん、等価交換」

「はぁ……。解ったよ。とりあえず、吉井も阿部も霧島も優勝は困る。それを補助する形で出場しておくれ」

「解ったわ」

「その三人は、お金もあるし進学も就職も困らないだろう? 他の奴らには、半年分の学食無料チケット……で、アンタらは何が欲しいんだい?」

 明久や翔子はどうか知らないけど、頼む事はもう決まってる。

「この……『白黒の腕輪』を頂くわ」

「なっ!?」

「んじゃ、僕達は」

「……『白金』と『黒銀』両の腕輪を頂きます」

「馬鹿言うんじゃないよ! 何勝手な……」

「知り合いの伝手を使って、卒業までに腕輪を作り上げますのでお気になさらず」

「くっ……! 好きにしな」

「言われるまでも無く。あ。デモンストレーションとかあるんでしょうか? あるとすれば“誰でも”いいんでしょうか?」

 まだ隠し事するのかしらね? カヲルさん。

「………はぁ。態々Fクラスに頼んでいるっていうので、察しておくれ」

 だとすれば、坂本も微妙かしら? 最近、点数が伸びて神童を取り戻しつつあった。

 召喚大会の形式はトーナメント方式で、二対二のタッグマッチだったわね。そして、一試合ごとに教科が変わっていく。ん〜……。

「……優勝させるのは、木下と須川がベスト……か。ベターは坂本と土屋かしらね。それ以下に翔子や明久、律子と真由美にも協力お願いするわ」

 

「「えっ?!」」

 

 揃って声を上げている律子と真由美に、指差し言ってやった。

「ここまで話聞いておいて、“はい、無関係です”なんて罷り通るワケ無いでしょ?」

「ですよね〜……。なんか解っちゃいたんだけどね」

「理科はぁ?」

「ん? 恐らく教室に付きっきりになるわよ」

「何でぇ?」

 顎に人差し指を添えて首を傾げ、真由美は可愛く尋ねてきた。

「Fクラスの出し物、さっき決まったでしょう? それで召喚獣のプログラムに不具合があった時、対処できる人間が必要になってくるのよ」

 坂本が一歩前に出て、

「ババア、こちらからも提案がある。対戦表が決まったら、その科目の指定を俺達にやらせてもらいたい」

 カヲルさんに提案を持ち掛けた。今さらカヲルさんがこれを断る理由は無い。

「ふむ……。いいだろう。点数の水増しとかだったら一蹴していたけど、それくらいなら協力しようじゃないか」

 一間を空けて、カヲルさんが念を押してくる。

「さて。そこまで協力するんだ。当然召喚大会で、優勝できるんだろうね?」

 ふっ……。一つ貸しよ。

「今まで期待には応えてきたつもりなんだけど?」

 坂本が不敵な笑みを浮かべて続く。

「無論だ。俺達を誰だと思っている?」

「……私も協力する」

 翔子は揺るぎない心を表すような力強い瞳で。

「絶対に優勝して見せます」

 お人好しなのは相変わらず。何だかんだ言って、カヲルさんにも明久は気を遣うみたいね。

「私達は、準優勝狙おっかぁな」

 いつでもマイペースな感じの真由美が強かに宣言して、

「結局は、なんか勝てばいいだけでしょ?」

 律子が事も無げに言う。

「それじゃ、任せたよ」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

「…おう」

 

 ズルッ! 総転け。

「翔子、ワンテンポ遅い」

 頬の辺りの黒髪を指先に絡ませて遊び、

「……うん。………照れる」

 この発言にはやられた。

「翔子可愛いわ」

 

「「「「うん」」」」

 

 今度は、ズレることなく満場一致。

 これは仕方のないことだと思った。

 

 でも何だか……嫌な予感が収まらない。

 

 何事もなければいいんだけど………。

 

 

 

 





 薬師は、ここまでが投稿してた分です。
 やっとこさ………

 他作品も一時避難として投稿しようか迷ってます。
『バカとドアホと凶悪な顔』
『とある忘却の水支配者(ヒュドラー)』
バカテス、マブラヴ短編とか
 妄想ネタで書いたプロットは、ゼロ使、恋姫、東方。オリジナルも幾つかプロット書いてネタ放置。書きたいけどね(苦笑)

 次回更新は、遅くなるやもしれません。
 マブラヴは、一回更新するかな?
 感想が増えれば睡眠削って書くやも(笑)

 とりあえず、『元バカと黒髪美少女と薬師』の今年更新は、ラストです。
 皆様、来年もよろしくお願いします。
 良いお年を。
(≧▼≦)ノシ

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