ペルソナ3 The second world with You 作:harbor
{緊急事態だ。全員、四階、作戦室に集まってくれ。}
─異常を告げるアラームが鳴り響き、桐条の緊張した声が耳にはいる。
5月 満月戦
─side有里
「……………来たね。」
無駄に緊張する。
手は汗ばみ、なんか足が冷たくて、眠たい。
『緊張してないね。』
………あれ?どっちだろ。
ま、まぁともかく、今日まできっちり準備はしてきた。
タルタロスの敵が戦いを挑んでこなくなるレベルには達してるし、体感的には恐らく去年の夏を越えた位の仕上がりだろう。
ただ───
『いざとなったら、ボクを呼んで。絶対に誰も死なせないから。』
不意に、遮られた。
脳裏に浮かぶ少年は、珍しく真面目な顔で僕の事を見詰めていた。
『生憎、君なら絶対に大丈夫なんて気休めを言えるほど状況はよくないしね。これがボクから贈れる最大の保険だよ。』
「ありがとう、ファルロス。」
『うん。……さぁ─』
「有里。行くぞ。」
ノックが響いた。
「わかった。……今日は頼むよ、サブリーダー。」
─巖戸台駅前
──No side
時刻、0時01分。
駅前には、有里、鳴上、伊織、岳羽、真田の五人が集まっていた。
「桐条センパイ、遅くね?」
やや強張った表情で、ふざけた声を出すと言う荒業をやってのけつつ、伊織が呟く。
「準備がある、と言っていたが…」
「………化粧とか?」
その声を聞き付けた鳴上が眉を寄せて応じ、音の出なくなってしまったICプレイヤーを仕舞い込みながら有里がおどける。
「いや、まさか。美鶴が化粧をしているのは見たことがない。大方、装備の点検だろう。」
「……にしても、遅すぎます。」
幼馴染みで付き合いの長い真田が否定するが、岳羽は不機嫌そうにポツリ、と呟いた。
漂う気まずい沈黙。
「………あれれー?」
それを切り裂くように、地を這うような轟きが聞こえ始め、有里が無邪気な声をあげる。
「まさか…シャドウなの!?」
「…来たか。」
轟音と共に現れたのは、一台のバイク。
ヘルメットをはずしながら、その主─桐条が宣言した。
「今日はここから支援を行う。勝手はいつもと変わらないはずだ。有里、鳴上、岳羽、伊織の四人は、線路を歩いて車両にいるシャドウを速やかに制圧してくれ。」
「了解です。」
有里を先頭に、四人は線路へと向かった。
「…………明彦。ダメだ。」
「………やはりか。」
──車両前
「コレ、だよな?湊?」
「うん、多分ね。僕の目が見えてなくて、今まで他の車両を見逃してない限りはこれであってるよ。」
「じゃあ、行こ。」
そう言って梯子に手をかける岳羽。が…
「覗かないでよ?」
釘をさす。
「覗かねーっての…」
呆れたように返す伊織。しかし、急に厭らしい笑みを浮かべたと思うと、
「見えちまったもんは、仕方ないよな?」
呟いた。
途端に岳羽は目を細め、十分に睨み付けた後で、
「ここに埋めちゃおうか、有里君、鳴上くん?」
要は脅迫である。
「埋めてもいいけど岳羽、少し待って。」
「何?早く終わらせたいんだけど…」
「ここ、どこかな?」
有里は静かに問いかける。
あくまで、淡々と。
「どこって…線路でしょ。」
「じゃあ」
普段は余り表情のない有里だが、ここぞとばかりにおどかすような顔をする。
「なんで、ドア、開いてると思う?」
「え?なんでってそりゃ……あ。」
「気付いた?」
「何?何だよ?俺っちにも教えろよ湊?」
やはり気付かぬこの男。
伊織がおどけながら聞く。
「順平、列車のドアはどこで開く?」
「おいおい、バカにしてんのか?駅に決まって……ッ!」
「おっけ?」
「なるほどなー。罠ってことか?」
「そ。というわけで、あらかじめ方針をきめとくよ。僕と順平で前衛。シャドウを蹴散らしながら進もう。鳴上と岳羽は、僕らの背中をお願い。わかった?じゃあ、行くよ、順平!」
「うっし、了解!」
「俺たちも行こう、岳羽。」
「そだね。よろしく、鳴上君。」
気合いと共に、四人は列車の中へと入った。
─この先の苦難を、彼らはまだ、知らない。