デスノートさえなければ強くてニューゲームなのに!   作:世界三大探偵って実は同一人物ってマジ?

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死遊

 

 月は気がつくと白い空間にいた。

 睡眠薬でも飲まされていたのか、まどろんでいた意識がだんだんとはっきりとしてきた月は、自身が地面に倒れ込んでいることに気づき、今自分が置かれている状況を思い出そうと試みた。

 

 (なんで僕はここにいる?確か……僕は……)

 

 

 

 

 

 月が思い出せる限りの事の次第はこうである。

 

 まず、月は昨年度より特殊な方法による証拠の残らない凶悪犯罪の対策・解決のために設立された国際的な警察組織の一員になり、そこで次々と世界で巻き起こる不可解な犯罪の解明に血道をあげていた。

 対立企業の役員を特殊な薬剤によって接触せずに殺害し、自身の所属する企業(ヨツバグループ)の業績をあげる会社役員。自身に都合の悪い人間を洗脳による行動制御によって自殺させ急速に勢力を肥大化させたカルト宗教指導者。

 世界中の犯罪者をたった3日で百人以上殺害した潔癖すぎる検事。

 これらの難事件を大学在学中から追い、その優秀な頭脳と頼もしい仲間たちとの結束によって解決に導いてきた。

 しかし、その活躍の陰には世界中の人々の勇気ある告発や細やかな協力があることを月は忘れていない。

 忘れていないが……。

 

 「しかし、いくらなんでもこれは流石に……()()のヤツもまた適当なことを」

 

 Lがインターネットを通じて今、テレビ電話をしている相手はある青年実業家を名乗る男(あくまで電子音声が男声であるというだけであるが)。

 

 『エラルド=コイルさん、先ほど説明した通り、私はある『仕組み』を持っています。どんなに遠くに住んでいる人間でも名前と顔さえ分かれば操り殺せる。そんな『仕組み』です。そして、あなたにはこの『仕組み』に興味をもつ組織を探してほしい。名前は分かりませんがその組織と私は交渉したい。探してもらえますね? お金はいくらでも用意します』

 『…ああ、別に金さえ用意できればこっちとしてはどんな仕事でも構わないが……、そんな『仕組み』とやらがあるのならこのエラルド=コイルに頼まなくてもどうとでもなるのではないかね?』

 

 

 月がワタリに小声で話しかける。

 

 「これ本当に竜崎が喋ってるのか?」

「いえ、こういう時は代理の者を立ててることが多いです。たしか詐欺師の……」

 「竜崎って非合法組織に繋がりすぎじゃないか?」

 

 両方とも機械音声、正体不明どうしのやりとりは内実ともに茶番の風であったが、内容も相応にふざけたものである。

 この青年実業家は、人をいつでも殺せる『仕組み』を、あろうことか三大探偵の認める『世界で一番頭のいい人間』との知恵比べに使う勝負の賞品に使いたいとのたまっているのだ。

 月は実に頭の痛い心地であったが、

 

 「まあ無視すればいいだろう」

 

 とここまで気楽に考えていた。

 相手のここまでの言動をそのままに解釈するならば、相手が辿り着けたのは『世界三大探偵』の連絡先まで。その次の段階、『世界三大探偵が実は全員同一人物』ひいては『世界三大探偵がその『仕組み』を求める組織の一員』というところには全く気づいていないということ。

 そもそもさんざん引っ張ってヒントも出さない『仕組み』。こんなものが実在するとも思えない。

 

 (迷惑電話にしては格が高いが……、Lと知恵比べをするレベルには役不足の逆ってわけだ)

 

 月までなんとなく頭脳レベルを下げて思考しているが、実際これを聞いていた捜査本部の総意でもあったはずだ。

 L以外。

 『……では、明日に指定の場所で落ち合おう』

 『さすがは世に名高いエラルド=コイル。明日までなんて素晴らしい!もちろん、あなた自身でもいいのですから…期待してますよ?』

 

「あれ?竜崎。今誰かと会おうとしていたか?新しい協力者か」

 

 ちょうどトイレから帰ってきた月の父であり警察庁刑事局局長である夜神総一郎がハンカチをポケットにしまいながら言った。

 そのあとすぐ、Lへの怒号が響いたのはいうまでもない。

 

 

 

 『いいじゃないですか。その『仕組み』が手に入るなら。どうせ夜神さんなら勝てます、落ちている『仕組み』を拾うようなものです』

 「仕組みは落ちている物じゃないだろ」

 「ちなみにデスゲームだそうです」

 「で、デス?」

 「当日は山上さんとでも行ってください。あの様子、相手は一人でしょう」

 

 Lって実は人の命とかあんまり興味ないんじゃないだろうか、と怒りを態度に出しながらも相手の居城(本当に城!)へと赴き、着いてみればこれだ。

 ルール説明はなし。白い空間と思われたこの場所は、よく見れば月の頭上1m50cm程度までそびえる大きな壁で囲まれていた。

 壁を叩いてみると返ってくる音が存外薄く、四方を囲む壁には自動ドアのようにスライドする扉が開き、それぞれ隣の空間へとつながっている。

 まず間違いなく隣の空間も同じ構造であり、あまりの白さに距離感が掴めないものの、上下左右向こうに2つずつ、すなわち5×5の25部屋が並んでいると思われた。

 大掛かりなような、ちゃっちいような。

 

 

 「まるでさくらテレビのクイズ番組だな……全然笑い事じゃないが」

 

 ははは、と笑った声が虚しく響く。月には珍しくヤンキー座りでしゃがみ込んでため息を吐く。

 足元には小さく『K』の文字が一文字だけ。

 

 「僕は…今年24になるんだよな?本当に何をやっているんだ?こんな世の中でいいのか?」

 

 夜神月、23歳独身、彼女あり。

 社会人真っ盛りの今、同僚の悪ふざけにより、月は初めての()()ゲームに(仕事で)参加させられたのであった。

 自身の境遇に思わず天を仰ぐと、白い天井に相応しい大きな天窓の向こうに白い雲がゆったりと流れているのが非常に目に沁みた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さすがに気を取り直し、周囲の観察を続けていると、壁の向こうから『Beep!』音が鳴る。

 多分、この場から1マス動かなければいけないのだろう。月はひとまず前方向に進み、扉を抜けて次の部屋に入った。すると、背後で動きを感じ月は振り返る。

 通ってきた扉がすうっ、と閉まり、物理的な鍵が掛かった音がした。

 その後、すぐに安っぽいドラムロールとともに『You win!!』というカスカスの機械音声が聞こえ、今度は『ビー、ビー』と警告音がけたたましく鳴り響き、部屋の中心部が両開きで開いて、地面から一枚の正方形の用紙が風で押し上げられてきた。

 

 「普通に手で渡せよ…っと」

 

 それを空中でキャッチし、月が用紙を開くと、内容は想像の範疇をでるものではなかった。

 用紙にはこの空間の地図が書かれていた。

 

 ⬜️⬜️⬜️⬜️⬜️   ⬜️⬜️⬜️⬜️⬜️

 ⬜️⬜️⬜️ ⬜️   ⬜️⬜️⬜️⬜️⬜️

 ⬜️⬜️⬜️⬜️⬜️☆ ☆⬜️⬜️⬜️⬜️⬜️

 ⬜️⬜️⬜️⬜️⬜️   ⬜️⬜️⬜️⬜️⬜️ 

 ⬜️⬜️⬜️⬜️⬜️   ⬜️⬜️⬜️⬜️⬜️

 ※☆は出口の扉の位置。

 

 月はこれを見て、反射的に破り捨てる前に理性を総動員して地面に叩きつけるにとどめた。

 知恵比べっていうか夏休みに地元の公民館とかでやってる体験型のなぞなぞゲームレベルのクオリティであったからだ。

 

 「こういうの父さんに連れてってもらったことあるぞ……!」

 

 いよいよ竜崎に揶揄われている可能性を第一候補にいれつつ、地面に刻まれた文字を読むと『9』。

 また、変わったところとして、地図の一箇所に『ノート』の形をしたマークが自身の現在位置から少し離れた位置に書いてあったこと、地図の裏面には『 ノートは一回ごとに3マス動かし、勝利者は数字を宣言したあと用紙を穴に戻す事』と指示が記載されていた。

 月は少し悩んでから、ノートを自分のほうに引き寄せるように書き加えたあと、『9!』と宣言。その後すぐに用紙を先ほどでてきた穴に再び差し入れる。

 すると、自身の右隣、そして遠くでなにか冊子のようなものが落ちる音がすると共に、明らかにスピーカーを通して鍵が閉まる音が鳴った。

 

 ⬜️⬜️⬜️⬜️⬜️

 ⬜️⬜️⬜️◯ ⬜️

 ⬜️⬜️ K ↓ ⬜️ ☆

 ⬜️⬜️ 9↓ ⬜️

 ⬜️⬜️⬜️ ⬜️

 

 ここまでの一連の動きを経て、月はすでにこのゲームのルールをおおよそ掴んでおり、だからこそ考え込んだ。

 

 (しかし、これでは……)

 

 月は確信した。このゲーム、僕の勝ち目が用意されていない。そしてそれは事ここに至っては些細な問題だろうとも。

 

 

 そもそも、僕がどうしてこのようなゲームを受けているのか?

 

 

 

 

 

 このゲームのルール自体はかなりシンプルだ。月は脳内で情報を整理する。足元のKに9。これらはスートがないものの明らかにトランプの数を表しており、2マス、つまり2枚の数字を手に入れた時点でストップ。

 勝利判定ののちにノートのマークを3つ動かす。

 

 (恐らくこれはカードを一筆書きのように移動しながら何度も再利用する簡易的なポーカー、しかも変則的なテキサスホールデムをやらされているのだろう)

 

 ポーカーの役には最大5枚のトランプが必要だが、それはノートが3()分の人の役割を担っているに違いない。あるいはノートにゲームごとの共通カードが記されていて、動いたマスのカードとチェンジをしているのか。

 そして勝利者はチップの代わりにカードのつながる扉の開閉権を得る。そういうルールのようだ。

 ひとまず月はノートを拾うために『Q、J』と進み、ノートを拾う。

 

 ⬜️⬜️⬜️⬜️⬜️

 ⬜️⬜️⬜️↓ ⬜️

 ⬜️⬜️ K ↓ ⬜️ ☆

 ⬜️⬜️ 9↓ ⬜️

 ⬜️⬜️ Q J ⬜️

 

 

(さて、ノートの中身はどうなってる?流石に最初から勝ち目がない戦いだと、恐らくどこか外部で待機している竜崎たち頼りになってしまうんだが…。)

 

 表紙には既存の言語ではない謎の言語と思われる記号が5つ刻まれていて、ノートにはほとんど印刷機のような神経質な文字でこう書いてあった。

 

 

 

 このノートは悪魔との契約書。

 あなたは救い主である悪魔に

 3つまで質問することができる。

 悪魔を探し、契約書を携え脱出せよ。

 もしも負けを認めないならば。

 ここに名前を書き、悪魔に魂を捧げよ。

 

 

 「せめてもう少し内容を捻ってくれよ」

 

 あんまりな内容に自分自身にはなかったはずの”あの頃”を思い出してむず痒い気持ちになりつつも内容について考えるが、正直現段階でこの文章で分かる部分は一切ない。

 

 「悪魔っていうのはなんだ?比喩か?…独り言が多くなってダメだなここは」

 

  

 

 「…ん?今、視界の端に何か…」

 

 

 

 

 

 

 そして。

 

『You win!『lose』『lose』『draw』『lose』 

 

何度かの繰り返しの後、ついにその時は来た。

 

 

「さ、最新のCG…ってわけじゃあないだろうな…」

 

月はあまりの驚きに腰を抜かしていた。ていうか、

 

「悪魔っていうか死神じゃないか…?」

 

「おいおい、警察のお偉いさんがそんな腰抜けでいいのかぁ?あと俺死神だし」

 

悪魔って何?と惚ける『死神』。月の一つ隣の部屋に、巨人のような異形が、さらに大きな鎌を持って宙に浮いていた。

 

「ぼ、僕のことを知っているのか…!」

「ん?ああ。お前は有名人だからなあ夜神月」

(何だと?)

 

 何というか、こいつ、口が軽いな?その恐ろしげな印象に反してフレンドリーな男(?)だ。

 

「お前は相手の味方か?」

「おっと、それは質問か?質問なら…」

「いや待ってくれ、それは質問じゃない」

「3つまでだぜ」

 

 

 ここからは発想の飛躍が必要になると月は直感で感じた。

 

 まず、自分がしなければいけないこと、それはこの勝負に勝つこと、ではなくそもそもここを脱出することである。

 このルールで月が勝負に勝つことはできない以上、そのためにしなければいけない3つの質問とは何かは重要だ。

 

 次に、聞く必要がある内容が何かを切り分けることにした。決めうちしなければいけないことは数多くある。

 まず、あのノートがあの男のいう『仕組み』であることは疑う余地がないが、これだってミスリードの可能性はある。

 次に、あのノートは脱出に必要か?それとも、単なる小道具か?

 

 ビープ音。

 

「ちっ、移動するか」

 

 『You win!』勝利音声が虚しい。

 

そして、ノートをまた自分の方へ引き寄せると、そのノートに向かって死神が月を避けて5マスで向かってくる。

 

 (たまに予測が外れて負けるとき、逆に勝つ時があったが、共通カードになってるのはノートではなくて死神の機動だったのか……)

 

 そして月の敗北率が高い理由もわかった。カスみたいなイカサマである。

 

 「で?聞くことは決まったか?」

 「ああ…」

 

 月は死神に言った。

 

 「1つ目の質問だ。このノートに僕が名前を書いたら、どうなる?」

 「そりゃあ死ぬだろう」

 (やはりこれが『仕組み』…!なるほど、あの男があれだけ粋がるわけだ…名前を書くだけで人を殺せるノート!)

 

 普段はこんな与太話を信じるなどもってのほかだが、目の前の光景と、そもそも信じなければ始まらないという状況を鑑みて全面的に月はこの回答を信じることにした。

 

 「2つ目の質問だ。このノートのルールを教えろ、できる限り詳しく」

 「全部は無理だな。最大2つまでなら答えるぜ」

 「じゃあ一つだけ。このノート。記憶に関するルールはあるか?…いや、言い直す。ノートにかかわる記憶を書き換える力があるか?」

 「!」

 

 (この反応……ビンゴだ!)

 

 「…つまり、僕は今、『この殺人ノート』を手にいれるための賭け事をするにあたって一時的に記憶を無くした状況にあるってことか。これは質問じゃないぞ」

 「おいおい…いくらなんでも」

 

 つまり、本当の事の次第はこうである。

 大筋は同じだが、ここに来させるまでの行動にこの死神、あるいは月自身と関わりのある死神、そしてデスノートを話の流れに程よく絡ませた上で、ルールとしてこのノートを(恐らく)手放させる。

 そうすると、死神かノートが関わった部分の記憶がすべて都合のいいものに書き換わり、本来受けるべきでなかったゲームを僕が受ける羽目になっているということだ。

 

 そして、それにより相手が行なっているイカサマも(一応)分かる。

 例えば偽のノートを用意するなりして、相手はノートを手放したふりをする。するとノートの記憶が残るので、この壁の向こうから普通にはみ出た死神の動きを見るだけでカードが分かるというわけだ。

 実際のルールは恐らく、ノートの位置が相手参照になっているのだろう。

 

 (よく僕はこのルールで勝負を受けようと思ったな…いや、このルールで記憶がない僕でさえ簡単に勝てると踏んだってことか?…もしかして、立ち位置を()()()にしたのもわざとか?)

 

 考え込む月に、死神が

 

 「おい、3つ目についても聞かせろよ、どうやってお前はここから勝つのか?お前は俺に何を聞けば勝てると思っている?」

 「3つ目は聞かないよ死神、2つで十分だ」

 

 ビープ音。僕は移動する。

 そして、死神が死角に移動したのに合わせ、ノートを根本から数枚破りポケットに隠し、ノートに残ったページの枚数を数えた。

 

 

 

 

 

 

 何で勝てるのか?と話を聞きたがる死神に月はノートを取り出して、

 

 「何か書くもの持ってるか?」

 「……まあペンくらいならいいか」

 

 「そもそも、このゲームは僕に勝ち目が絶無なんだよ」

 「そうか?意外と勝ってたように思えるんだが……」

 「小学生でも分かる簡単なロジックだよ」

 

 月はこの部屋でたびたび与えられる用紙のように、25部屋を◯と×で表してみせた。

 

 × ◯ × ◯ ×

 

 ◯ × ◯ × ◯

 

 × ◯ × ◯ × ☆

 

 ◯ × ◯ × ◯

 

 × ◯ × ◯ ×

 

「いいか?上の絵で僕は最初×の位置に立っていたわけだが。どこでもいいから2マス進んでみろ」

「(絵?)えーと、真ん中の×から進むから…」

「絶対に×にしか進めないだろう」

「……ああ!」

「僕がゴールである☆に進むためには、最低限☆の隣の×に辿り着いたタイミングで勝利して、扉を出ていかなければいけないわけだから」

 

 月は自分で書いた図の上に数字を上書きしてみせる。

 

 × ◯ × ◯  ①

 

 ◯ × ◯ ② ③

 

 × ◯ ④ ⑤ ⑥ ☆

 

 ◯   ◯ ⑦ ⑧

 

 × ◯ × ◯  ⑨

 

※△は今のノートの位置

 

 

「結局、相手としてはこの①から⑨までのカードの組み合わせでできる役に負けなければ問題がない。右隣の扉を好きに閉められるんだからな。」

「え?じゃあ今までの勝負は?」

 

 ほかの数字をつけていない部屋はまあ、雰囲気作りのブラフだろうと月は首を振って答えに替えた。

 いや負けると賭け金として設定されている部屋ごとの扉を閉められてしまうからここで負けると追い詰められてしまうんだが、と説明を続けようとしたタイミングでまたビープ。

 月は2マス進んで引き分けになったことを確認、デスノートの位置を3マスずらす指示を出す。

 

 「そして、僕はもう自分と相手の床の数字を全て暴き切っている。相手と自分の数字の組み合わせが同じで場所だけが異なるという前提に立ってだが…」

 「そうなのか?」

 「①から⑨で絶対に勝てない組み合わせを前提に考えれば簡単なもんさ」

 

 また2マス進むと、死神がデスノートに向かって進み、月が勝負に引き分けたことを知らせるブザーが鳴り響く。少し位置が遠くなった月に向かって死神が大きめの声で言う。

 

「でもお前、その割に随分と遠回りな動きしてるじゃないか、さっきこの辺りで勝ってなかったか?」

「ああそうだな。だがこの動きが重要なんだ。ちょっと見てろよ」

 

 2マス、2マスと進んでは負け、勝ち、引き分けになり続けた月はグネグネとパネルの中を蛇行し、重複しながら進んでいく。すると、死神とデスノート、月が一箇所に集まってしまった。

 状況の意味が分かった死神がまるで漫画のようにコミカルな動きでびっくりした!と全身で表現している。

 

「お前器用だな!」

「まああんまり意味はないが、一応この場所が一番マシだからな」

「マシ?」

「このゲームはさっき説明した通り絶対に僕が勝てないルールだ。それもすぐ考えれば分かるようにしたうえでかつ延々と繰り返される仕様、ちょっと性格が悪い仕掛けだな」

「ちょっとかよ」

「ああ。ちょっとだね、これ、相手が勝てるのにわざと勝たないのは僕が負けるのがわかっていて降参するのを待っているか、もしくは」

「ノートか?」

「そうだろう。僕に随分執着してるみたいだな」

 

 確かに、と言わんばかりのジェスチャーがあまりにもわかりやすいので思わず月は顔が引き攣った。この死神、絶対僕をここに誘き出す役目を与えられてるだろ。

 

 

 月が足元にあるノートを拾い上げ、ページを開く。わざわざ本物のノートをゲームの小道具に使っている理由はこれに違いない、と月は思った。

 

「どうしても負けを認められないなら、ここに名前を書け、そういっているんだろうな」

「ギャハハ、あいつ性格悪ッ」

 

 そーいうこと!と死神が下品に拍手をしながら笑うのをみて、朗らかな笑顔になる月。

 死神はこいつおかしくなっちゃったのかなと敵でありながら月をつい心配してしまう。

 

「お、お前は笑っている場合じゃなくないか?大丈夫か?心とか」

「心配するべきは相手の方だよ死神。このゲーム、僕の最も大きい失点は間違いなくゲームを受けてしまったことそのものだが、それ以上の失点がここにある」

「つって言ってもよお、それはただのノートだぜ?相手の名前でも聞き出すってのか?」

「こうするのさ」

 

 月は足元にノートを置いてページを全て引きちぎり、ページの全てを開いている扉の奥へと投げつけた。

 死神がはわわ、と震える。

 

「お前やっぱり恐怖で頭が」

「スマートじゃないやり方なのは僕もそう思う」

 

 行動を促すブザーが鳴り、月はさっきと同じ動きを一周分繰り返し、またノートと自分が固まったタイミングでブザーがなるまでページを破り増やし続けた。

 これを何周も、何周も続けていると、ついには⑥の位置にノートのページが堆く、腰の位置まで積まれるほどの量となった。

 

「あとはこれを出口の扉が開いているうちに挟んでだな」

「ええ…?そんな無茶な解決するのか?もっとこう……そんな裏ルールがあるなんて知らなかったみたいな、えーと、あるだろうお前流の裏をかくみたいなのが!」

 

 漫画の読みすぎだろ。 

 

「うーん、そしたら死神に一瞬だけしゃがんでもらってこっちから相手の知能テストをしてやる、とか色々やれることはあるけど……これが一番面白いだろ?だって『これ』、相手が自分で持ち込んでるんだろ?それで負けちゃあな」

 

 はあ、と気の抜けた返事をする死神を横目に、月は意気揚々と紙が詰まって閉まらない扉を半身になって出ていき、そのまま隣の部屋へと歩いていった。

 月が勝つことなど最初から想定していなかったのか、それともこういう勝ち方を考えついていなかったのか。部屋を出た時に鳴ると言うファンファーレは一切鳴ることはなかった。

 

 「お前、性格悪いな」

 「僕ほどの善人はなかなかいないよ、死神」

 

(さて、このままだと一番の問題は普通に実力行使されることなんだが……)

 

 「なあ、死神、これは提案なんだが……こっちにつかないか?何か要求があるなら叶えるよう努力するが」

 「あっそれは無理。そういうルールじゃねえし、見てるだけで十分だしな」

 「ふーん……」

 「で、これを頼まれてるんだな」

 

 

 「なっ」

 

 死神がノートを僕の頭に触れさせ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりこういうことか?もうLが先に敵は倒しちゃってて、単に僕ならどうやって切り抜けるか見てみたかったって?」

「ええ、相手はそもそも月くん目当てだったみたいですし、なんか永遠に全国2位だったことが許せなかったとか何とか」

「…ん?それって本物の五七川ってことか?そんな偶然あり?」

 

 目の前で安っぽい刑事ドラマでも今日日しない簀巻きにされた男がガムテープを貼られた口で何かを主張している。たぶん鼻までテープが貼ってあることについてだろうが普通にやったことが悪質なので剥がしてはやらない。

 

「竜崎はどうやってこいつに勝ったんだ?」

「普通に死神を買収しました。りんご13個です」

「……」

 

 じゃあ見てるだけで十分ってお前の賄賂のせいじゃねえか。月は拳を振りかぶった。

 

 

 

 




 なんで部屋のパネルが25枚埋まってないのかはちゃんとした理由があってそれは私が何も考えてないからです。
 一応、ビンゴカードみたいな形式のものを何枚も作って一筆書きで役を作って出し合うルールにすればパーティゲームとしては成立すると思います。
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