デスノートさえなければ強くてニューゲームなのに!   作:世界三大探偵って実は同一人物ってマジ?

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棄教

 五七川が死んでから7年。

 そして、Dキラが悪名高い『Dキラ事件』の犯人として逮捕されてから4年。

 Lと月は、警察にすら詳細な場所が秘匿されている『デスノート対策本部』の一室に持ち込まれた巨大なモニターを食い入るように見つめていた。

 薄暗い画面には、実動部隊のボディカメラを通して、ある宗教施設の玄関先が映し出されている。

 

 この施設を所有している宗教法人は、主に南半球で『表向きは』一般的な布教活動を行なっていたが、ここ1年でその信者数を急激に増やしたことで、当事国の警察機関から監視対象となっていた。

 その折に、ここ数週間の間に警察機関のうち世間の評判のいい捜査員が事故で死亡。それのみならず当該国で現在行われている選挙において、宗教法人が()()している候補者の対立候補の妻と息子が持病の悪化で相次いで病没し、選挙から降りるなどのアクシデントが多発。そして『本拠地では()()を召喚する儀式に成功し、教主が人間の運命を操れるようになった』と警察に馬鹿げた投書が投げ込まれたことを決め手として、月が本事案を『デスノート関連事案』と断定。実動部隊を外交チャンネルを通して秘密裏に派遣することに成功。現在、施設周囲を現地捜査員含め40人体制で取り囲んでいた。

  

 「人数が一桁足りないんじゃないか?敷地含めると東京ドームくらいでかいんじゃないかここ……」

 「無茶言わないでくださいよ部隊長、結局ここの地下に親玉がいるんだから人数揃えてもしょうがないですって」

 「技官、全員配置につきました。次の指示をどうぞ」

 

 部隊員たちは建物の死角に素早く移りながら、(技官)の指示を微動だせずに待っている。

 了解、と返答したあと月は一度通信を切り、彼の隣に立って机の前に並べられた数枚の写真を見つめている『女性』に短く声をかける。

 すると、すぐさま女性の目が赤く輝き、そして力無く首を振った。

 

 「どうだ?」

 「ダメ、全員名前も見えない」

 「……そうか」

 「やはり幹部はいざというときのフェイクでしたか」

 「くそっだからあのとき様子見などせず強行逮捕するべきだったと……いや、捜査員の命を危険にさらすべきじゃなかったとはわかってる、すまないミサ」

 「いいよライト、じゃあミサ向こう行ってるね」

 「ええ、ここからは映像が少々刺激的になりますので別室で待機していてください。相手の名前自体はほぼ把握できていますから、また必要な時はこちらから呼びます」

 

 死神の目では、すでに死んでいる人間の顔を見ても寿命と名前を確認することはできない。

 写真は現地の捜査員が『Hキラ』に気取られないよう慎重に入手したものだったが、相手もこと人脈・裏工作については専門というわけだ。

 捜査員の中に悪魔崇拝者(サタニスト)が混ざっていたとは思えないが、名前と顔を先んじて知られ、不自然じゃないシチュエーションを提供されればデスノートに人間が抗うのはかなり難しい。

 

 「幹部全員の名前と寿命は確認できない。おそらく一人を残して全員殺害され、誰がデスノートの所有者なのかを撹乱したと思われる、突入時は留意するように」

 「了解」

 

 事務連絡の途中、わざわざ扉を通って白い死神が月たちに声をかけにきた。

 

 『ミサを呼ぶならその血生臭い場面は消してから呼ぶんだね』

 「レムはどうする?」

 『見るわけないだろ』

 

 ちょっとした注意だけ言ってすぐ別室に帰っていた死神、レムにLが「自由ですね」と言うのを無視して月は号令をかけた。

 

 「ーー突入ッ!」

 「突入!」

 「突入!」

 

 どれほどの金を注ぎ込めばこれほど絢爛な建物を建造できるのだろうか、と実動部隊が脳の片隅で思ってしまうほど広く煌びやかなエントランスを怯える信者(一般人)を制圧しながらクリアリングし、内部からのリークによって手に入れた地図通りに建物を進んでいくと、捜査員たちは隠し部屋、地下通路、厳重な物理ロックのかかった扉へときな臭い方へどんどん入り込んでいく。

 そして、地下室とは思えないほど広い空間への扉を蹴破った瞬間、彼らに濃密な血と鉄の匂いが銃弾をともなって迫ってきた。

 

 「教主さまの召喚した悪魔の言った通りだ!相手は天使が連れてきた異端者たちに過ぎん!撃て撃て撃て撃て!」

 「情報にあった現地の傭兵部隊だ、デスノートの力と引き換えに護衛を引き受けてるのか!?」

 

 「天使ってまさか私か?」

 「いいじゃないですか天使。白いですし」

 「人間の考えることはわからん……」

 

 お互い怒鳴っているせいで音が壁を抜けてくるのか、ミサと一緒に別室にいたはずのレムが、顔だけ出してちょっと引いた表情をする。

 

 敵の士気は例になく高いが、実力と装備の差は如何ともしがたい。実動部隊は銃弾の波を大楯でいなしながら、ついに全員が室内に入場した。

 ……室内はおそらく何かしらのサタニックな儀式に使われていたのだろう。広い床には何度も書き直しているだろう血の魔法陣が染み付いており、その中心にある祭壇に置いてあるものが何であるのかは全く想像したくない。その向こうで豆電球だよりのわずかな明かりに照らされた6人の傭兵、首からかける聖ペトロの逆十字に『改宗』した彼らが守っている扉の向こうからわずかに誰かが宗教的な説教をしている声がかすれて漏れ聞こえてくる………。

 

 「教主まであと一息だ!イカれた殺人鬼を捕まえてさっさと帰るぞ!」

 「教主様こそ世界の救世主!預言者に世界は平定されるべきなんだっ!なんとかあいつらのヘルメットを吹き飛ばせっ!顔さえ見れればあとは教主様から賜った”贖宥紙”でどうにでもなる!」

 「相手は”デスノート”を持っている模様!おそらくページだけだ!怪しい動きをしたやつから優先的に制圧しろっ」

 「無知蒙昧な愚民どもがっ!悪魔をも従える教主さまこそ来る新世界の神なのだっ!」 

 

 「”新世界の神”ですって月くん」

 「……」 

 月の指が一瞬音声を繋いでいるボタンから離れかけるが、強靭な精神力で耐える。

 

 傭兵たちが泡を吹いて檄を飛ばすが、気合いだけで現代戦がどうにもならないのは自明の理であり、じりじりと前進する部隊。

 その最後尾の人間が天井からの灯りの中へ入り、傭兵たちに認識された瞬間その『顔』を見た傭兵たちの射線が集中する。

 

 「え゛っ!うわっ」

 「あの顔が丸出しの奴!『ラッキーマン』だッ!ノートに名前を書いても意味がないぞ!普通に撃ち殺せ!」

 「ひえ〜〜っ!」

 「Mr.マツダ!私の後ろに!」

  

 松田がビビりながら大盾を持ったほかの部隊の後ろに回るが、隠れる直前に傭兵たちの銃口に銃弾を当てる曲芸のような射撃によって一人無力化することに成功した。部隊長が口笛を吹く。

 すでに何人かがやられ、情勢の不利を悟った敵のまとめ役らしき男が、逡巡の後、虚空を向いて怒鳴りだす。

 

 「奴らの大半が敢えてデスノートに触ってないのは今までの情報でわかっている!例の粉を投げる!行けっ悪魔め!」

 「死神が協力してるのか!?」

 

 『俺が言うのもなんだがよくこの見た目の生き物に上から目線で命令出せるよなこいつら』

 

 傭兵たちが腰にくくりつけた袋を中空に下手で投げつけるのに合わせ、死角に隠れていた死神『ギオローザ』が双方から降り注ぐ銃弾の雨に構わず、まるで部隊員を守るかのように両手を広げて躍り出てくる。

 

 「なんだ火薬か!?」

 「いえ、おそらく例のデスノートを粉にしたものです!視界が消えるのに備えてください!」

 「死神だっ!」

 

 しかしながら、当然銃弾はすべてギオローザを通り抜け、そのこと自体すらデスノートに触っている一部の部隊員と一人を除いた傭兵以外は認識できない。部隊員の警告とインカム越しのLの声が重なり、部隊員たちが緊張する。

 そして、粉の入った袋が飛び交う銃弾に撃ち抜かれて数瞬、部隊の大半の視界がブラックアウトした。

 死神が、部隊員の顔に自身の体をめり込ませる形で視界を塞いでいるのを全員が理解しきる前に、顔面のヘルメットがその下の防弾目出し帽ごと傭兵に槍のように投げられた銃身に弾き飛ばされ、半分以上の露出を許してしまう。

 だが、その事実が死神の体を飛び出たヘルメットでわかっても、傭兵も死神が見えているせいで顔を確認できない。

 

 「まずい、ヘルメットが……」

 「俺が悪魔をみせてもらえないのはこの時のためにあった!へへへっ!名前どころか顔もわからなくしてや………があっ!?」

 「迂闊だな、こっちはプロだぜ」

 

 部隊長と松田が、視界が覆われる前の記憶と声の反響を頼りに銃を撃ち、射撃のためにノートに触っていなかっただろう男の胸、さらにいえば肺に衝撃を与える。防弾チョッキを着ているとはいえ極限状態に呼吸困難、骨折が加われば大の男であっても気絶は免れない。ヘルメットをとりに行こうとした瞬間、死神が勢いよく横に逃げ、部隊員の顔が露わになってしまう。瞬間、いつの間にか銃を投げ出していた傭兵の一人が手のひらに貼り付けていたらしいノートの切れ端に血で文字を書いていた。

 

「間に合えっ!」

 

 フォローに入った部隊員の一人がデスノート要員であろう男の手首をぐちゃぐちゃに撃ち抜くと、その赤い目が車のテールランプのように光り残像を残しながら背後に倒れ込む。だが、傭兵の意識はその痛みには向いていなかった。

 

 「名前は書き終えたんだっ!裏面にも心臓麻痺で1秒後に即死って書いてある!死なねえはずがねえ!まさかこいつも『ラッキーマン』なーー」

 「いい加減寝てろっ」

 

 部隊長が銃床で傭兵を殴りつけその意識をいくつかの歯と一緒に吹き飛ばした。幸運なことに、傭兵たちの意識が消えるのは一時的であり、次に目が覚めたときには牢屋にいるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そして、このワタシ自らが我が力(デスノート)によって昇天することを拒み、人間の力によって死ぬことでぇ!」

 

 最後の扉の向こうでは、教主(Hキラ)の周りを選りすぐりの信者たちが輪になって囲み、教主がほとんど狂って説教をしていた。

 いや、完全に狂っているのだろう。男は壇上に立ち上がり、信者たちは全員がその場で自殺し事切れ、その服についた鮮血を振り乱し目線は置き所なくふらついている。

 その首には天井から吊るされた縄がかかっており、壇上から飛び降りれば必ず死ぬ。

 

 「もう何言ってるかわかんねーよ、特にサタニズム的でもないし」

 「おお目撃せよ天使の使徒どもよ!天国も地獄もない世界で輝く人間のぉ命を!」

 『天使ってあれレムのこと言ってるんだぜ』

 「お前がダリル=ギロオーザか?」

 「やっぱあの粉やべーな、あとで燃やしといてくれないとゲームがカスになる」

 「ならもう一生やめてくれてもいいんだぞ」

 「まあ俺は”これ”が目的だから別になんでもいいんだけどよ、みてくれよこのダイヤ、100個全部輝きが一緒でなんの不純物もないんだぜ?」

 「それ人工ダイヤだぞ」

 

  死神と世間話をする部隊長をよそに、松田たちはなんとしても男の自殺を止めるため縄に向かって銃を撃ちながら走っていたが、男はよだれを垂らしながら袖のしたで何やら手を動かす。

 

 『今から行っても無駄だぜ、あいつ今デスノートに自分の名前を書きやがった』

 「そして神はワタシを裁き地の獄の扉を開くのだ……ッぎぃ〜〜〜〜!」

 

  勢いよく男が飛び降り、縄が頚椎を破断するために絡みつく。が、その体型のせいなのだろうか。男を殺すはずの縄はなぜかそのまま千切れ、男は足から地面に叩きつけられる。

  骨は折れただろうか、しかし無事であった。状況を理解した男の顔が恐怖に歪み、バタバタと地面を這いずり回る。

 

 「いやだ!死にたくない!ワタシは地獄で裁かれなければいけない魂なんだ!」

 『だから天国も地獄もねーんだって』

 「こ、この悪魔め早くワタシの名前を消せ!何のためにお前に貢いできたと思ってんだゴミがぁ!……ひぃっ!ぎっげ、ダイヤだって金塊だってあぎゅっ!」

 『おせーし人工ダイヤだろ?……ま、俺はこっちの方が好きだけどな。最初の頃のお前を見てるみたいで』

 

  ギオローザは暴れる男の袖からデスノートの切れ端を引き抜き、泡吹き尿染み出す男の横に立ち、人工ダイヤに透かして歪む名前を楽しげに見ていた。

  鏡面の向こうでミドルネームの”lifikile”の文字が歪んで伸びる。

 

 男がギオローザを貫いて手をのばす。

 

 「神様……」

 「俺も神なんだがな、一応」

 

 ギオローザが笑って言う。

 

 

 

 

 

 『降参しまーす』

 

 ギロオーザが随分と豪勢になった宝石細工をジャラジャラと鳴らしながら両手を上げて部隊員の前にでてくる。教主の服に隠してあったデスノートも一緒だ。

 実動部隊のメンバーたちは死神たちの軽さにいつもながら強い怒りを覚えるが、死神相手に怒っても無駄ということもよく熟知していた。

 

 「はいじゃあノート引き渡してー」

 「ちぇっ。まあ収支はプラスかな〜」

 

 高かったんだよなこれ、と言いながら部隊長にデスノートをあっさりと投げ渡す。

 

 『ゲーム』においては、敗者は勝者にデスノートを1冊引き渡すルールである。今回の『Hキラ』事件の解決によって人間界にあるデスノートの数は5冊になり、実質の最大数を手に入れたことになる。

 各々の事務処理をしているなかで山本がギロオーザに先ほどから気になっていたことを聞く。

 

 「勝利条件なんだったの?」

 「ああ、確か『信者の全員がこの世に天国も地獄もないことを信じること』だったな」

 「いやそんなん誰にもわかんないでしょ、よくゴネ無かったね」

 「()()見りゃわかるだろ」

 

 汚物に塗れ、恐怖に歪んだ顔のままの男を見もせずに言う。死神は名前も見えない人間に興味がない。

 

 「肝心の本人が地獄を信じ込んじゃってたら世話ないよ全く」

 

 その後もぶつぶつと文句を言っていたギロオーザが突如松田に向かって振り返って詰め寄る。

 

 「しかし、『ラッキーマン』だったか?あれズルだろ!本当に名前を4回書き間違えられた人間なんかいるのかよ?」

 「いやあ、ボクって昔から強運っていうかぁ、ハハ」

 

 ギロオーザに詰められ、初めて見た死神の恐ろしげな見た目にビビりまくりの松田が何とか誤魔化していたところに、

 

 「おいギロオーザ、今回のゲームのことなんだが」

 「何者だ!」

 

 突然玉座に座った化け物が地面から現れ、現地メンバーに緊張が走る。

 

 「お?全員俺のこと見えるようになったのか」

 (あんた全員に去年あたりノートこっそり触らせてたじゃん)

 

  実は立っていたヌがツッコミを入れるがノートを持ち込んでいないので人間に気づかれることはなかった。

  ギロオーザがびっくりしながら言う。

 

 「え……なんかダメだったか?」

 「お前も死神、なのか?」

 「あ?お前らジャスティンも知らねーのか?このゲームのルール決めてんのジャスティンだぜ?」

 

 松田たちはその言葉を聞いて驚いた。ゲームと称して死神が人間にノートを渡す行為に一定のルールというか紳士協定が人間との間に存在することはよく承知していたが、この男がそのルールについて決めているという。

 つまり、この男の機嫌一つで人間界の混沌度合いが決まってしまうということだ。

 

 「アラモニア=ジャスティン=ビヨンドルメーソンだ、よろしく」

 「あ、あらら?」

 (1回で覚えられなかったか……松田)

 

 ジャスティンは狼狽える松田がメンバーに怒られているのを横目にギロオーザに通達する。

 

 「どっちにしろ負けてんだから関係ないけどよ、お前が人間の前で急に見えるようになって射殺の補助をしたやつ。あれマジでやばいルール違反だから」

 「マ……マジ?」

 「その場で砂になりてーのかな〜って感じでみんなで見てたわ、今回はギリセーフだったみたいだが、命が惜しかったらもうやめとくんだな」

 「つ、つまりセーフなんだな?」

 

 ジャスティンがたっぷりとためたあと、野球でいうセーフのジェスチャーをし、ギロオーザがその場にへたり込む。

 じゃらじゃらときらびやかな細工が地面に擦れる音がまるで汗が流れ落ちるときのように山本には感じられた。

 

 「……た、助かったぁ〜!」

 

 部隊のメンバーたちは常に飄々としている死神が死に怯える、という珍しい姿に目をまんまるにして驚く。それを知ってか知らずか、ジャスティンが全員に話し始める。

 

 「で、このルールを次回から組み込むかどうかなんだが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現地の様子をモニター越しに月たちは油断なく観察しつつも、別室で待機していた捜査員たち、特にLと同じ孤児院出身の子供が作って寄越した組織『SPK』に向かってスピーカーで事態の収束を宣言する。

 

 「皆さん、ご協力ありがとうございました、これでHキラ事件は収束に向かうと思います……特にジェバンニさんたちは本当にお疲れ様です」

 

 その声を聞いて、4冊のノートから切り取った紙の切れ端にひたすら松田と山本の名前を書いていたSPKメンバーたちが倒れ込むようにして力を抜く。

 

 「ええ……全く……いや本当に……。作戦のためとはいえ、マツダさんの命を預かっている身としては生きた心地がしませんよ……」

 

 『ラッキーマン』は作りだせるのか?これは、ルールの検証を始めた当初から『デスノート対策本部』が考えていたことであり、何人かの死神も憑いた人間たちに試させていたことであった。

 だが、人間、死神ともにかなり初期の時点でラッキーマンを人為的に作ることは不可能という結論に達した。

 たとえば、強度の認知症で初期の失語症を併発した老人にページを渡し、自分の名前を書かせようとした『キラもどき』がいたが、結果としては『人為的にノートに名前を間違えて書かせた』という判定になったらしく心臓麻痺で死亡した。

 そこでSPKにニアが命令したのが『0.06秒ルール』の悪用、カメラを通して相手に名前を書かれそうになったら相手の手元に合わせ捜査員総出で名前を書くという力技であった。

 

 『ジェバンニ、明日までに捜査員全員と手元を見ずに0.06秒以内に捜査員全員の名前を書けるようにしておいてください』

 

 理不尽な上司(ニア)の命令がジェバンニの脳内にこだまする。仲間を自分の手で殺してしまうかもしれないというプレッシャーから解放された捜査員の口からさまざまな安堵の言葉がまろび出てきた。

 

 「(Fワード)、(Fワード)、戦術的にもヘルメット以下だろ(Fワード)」

 「ガキが(Fワード)、天才だからって何してもいいわけじゃねえぞ」

 「(Fワード)の嵐」

 「なんというか……本当にお疲れ様です」

 

 いつの間にか部屋まで来た出向先の上司(ライト)が若干引きながらも彼らに声をかけた。月には珍しい、真情からのねぎらいの言葉がジェバンニの胃に染み、その日、ジェバンニは涙をひとつぶだけこぼした。

 

 

 

 

 

 

 実は、このマンションには隠し部屋がある。月は本部の部屋を出ると、誰にも見られてないことを確認し、Lと合流した。

 Lはちょうど電話を受けており、用件もまさに今、Lと話そうとしていたことそのものであった。向かいに座って待つ。

 

 「ああ、ああそうですか、やはりですか……はい、また何か分かったらお願いします」

 

 Lが関係者からの聴取についてワイミーからの報告を聞き終わり、ノートパソコンを閉じる。

 

 「どうだったL」

 「ええ、少し前のキラもどきと同じです、今回もギオローザがあの男に憑いてから少しして、『ノートを粉にして死神が見える粉にする』方法の入れ知恵を()()()()()()()()手紙で受けたと供述してたと本人の証言が」

 「そうか……決まりか?これで」

 「ええ」

 

 二人が少しの間だけ黙り、考え込むが、まずLが切り出す。

 

 「デスノートを『悪魔が見える粉』として運用、信者に適当なパフォーマンスとともに粉を振りかけると死神が見えるようになり、イニシエーションを通じて信者は自分自身を『教主に選ばれた特別な人間』と信じ、」

 「その死神を従えた教主はもっと偉い、というロジックで人を集め同志(サタニスト)から献金を受けてたというわけだ。これは確認なんだがL、」

 「当てましょう月さん」

 「いや自分で言う」

 「まあまあいいじゃないですか」

 「はあ、いいよ先に言えば」

 

 先に言ったほうが『でも俺が先に言ったからお前俺の真似して同意しただけだろ?』と言う感じのドヤ顔をかましてくるのが目に見えているのでセリフの取り合いをするが、月がプライドが高いが故に先に折れ、Lが言う。

 いつものパターンであった。

 

 「これ、デスノートで人を殺さずに金を集めることができるか、の実験例ですよね」

 「ああ、その通りだ」

 「月くんは私の真似して同意してるだけですよね」

 「……」

 「……そこまで怒った顔しなくてもいいじゃないですか」

 

 

 

 

 

 

 去年から、時々『デスノートを大量殺人に使わない』方法を『ゲーム』に参加した死神に入知恵する何者かが現れた。

 手紙を届ける方法はシンプルで、地下や海の中など、他の人間などから物理的に見えない位置から手紙だけ地面を滑らせているだけ。

 間違いなく協力しているのは死神。それも一人しかいない。

 

 「間違いなく五七川さん、いえもう五七川さんではないでしょうからこう言いましょう。Eキラがゲームに介入しています。」

 「あいつをキラと言うな!それに、そんなこと認めろと言うのか」

 「それが本人のためです。それに、死神がいる世界で今更なにを認めないと言うのです。あなたが言い始め、私も貴方に賛同しました。もうこれ以外存在しない!」

 

 Lの言葉を聞いて月は拳を握り締め、何かに耐えるような顔をしたあと、息を吐いて言った。

 

 「……五七川は『DEATH NOTEを夜神月が使ったらどうなるか』という筋書きの本が出版された世界における読者で、その記憶を保ったままこの世界に生まれ直した」

 「そして、今もこの世界でデスノートを使用した記憶だけ失って転生し、何らかの方法でリュークと接触」

 

 月は、窓のない部屋で外を見ようと壁に目を向けつぶやいた。

 

 「まだ、この世にいるのか……五七川」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、名前をポエミーにつぶやかれた当の五七川は。

 

 「私はッ!ひらがなも満足に書けない無能ですッ!」

 「せんせー、ミシロちゃんがね、またひらがな上手に書けなくて泣いてるー」

 

 ビービー泣きながらひらがなを必死に書き写していた。

 元々佐藤、元五七川。現在の名前は三四代纏(みししろまとめ)と言った。

 




元々の名前に意味は全くありません
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