デスノートさえなければ強くてニューゲームなのに! 作:世界三大探偵って実は同一人物ってマジ?
物心つく前から、私は飛行機とか、船とかといった地に足のついていない乗り物に乗ることを異常なほど怖がったそうです。
初めて私が喋った言葉は司祭さまの里帰りに付いて行った時の『飛行機は落ちるから乗りたくない!搭乗拒否します!』。
当時はまだ発音が未熟でほとんど喃語だったことが災いし、2時間以上に渡る悪夢のフライトが
しかし私ももう4歳。そのような統計に基づかない思い込みはいい加減に払拭する時期が来ているのです。
「ですから司祭さま。飛行機が落ちる確率は宝くじの1等!が当たる確率よりもよっぽど低いのです。だから私が乗っても大丈夫なのは論理的に正しいのです」
「でもミシシロさん。前にワタシの里帰りについて行ったとき、飛行機に乗っている間ずっと聖書を誦じてたじゃないですか。喃語で」
「もう3年も前のことです。忘れました。私も4歳。勇気を持ってこの試練、乗り越えてみせましょう」
「いやだから留守番しててくださいって」
明日飛行機に乗る司祭さまにどうにか同席できないか
くそっ手づまりか?いや、私のネゴシエイト力はこんなものではないはず。私だって今こそ保育園児だが、
何かないか。私は脳内には一切刻まれていないはずの前世の前世の記憶をなんとか引き出しながら、次の言葉を練ります。
人間には人格があり、人格が人間の本質を表す。しかし、人格とは脳が他の生理的反応に比して恒常的に出力している現象に過ぎない以上、『私』の本質というものは肉の軛を超えた先にしか確信できないのでしょう。
孤児として、司祭さまに拾われた私が転生者というのも寓話のようですが、私には前世、それどころか前世の前世までの記憶がありました。
彼岸の彼方に消え去った記憶も多く、現在の自認も完全に
私の軽い飛行機恐怖症はそのひとつといって差し支えないでしょう。
『三つ子の魂百まで』というのは訓戒ではなく、単なる事実を言い表してるのかしらん、といつの間にか横道にそれた思考を振り払いつつ私は司祭さまに懇願する。
「この乗り物嫌いこそ『私』の本質であり、ここで超越し消し去るべき欠点であるのです!」
「いや普通に追加料金かかるから留守番しててね、そもそも旅行じゃないし」
「〜〜〜〜〜〜ッ!……はい」
(いや、『奥さんとの旅行のつもりで行ってくる』よ、って形見の十字架を持ってたじゃん)
「院の財政を案じてそこで引いてくれるのはありがとうね」
まあ、奥さんには遠慮しておこうかなと思っただけですが、仕方ない。
私は15分間に及ぶ食い下がりを渋々諦め、困り笑顔の司祭さまから一歩遠のく。
一応、念のために一滴涙を左目からこぼして同情を誘うことも忘れない。
先日、保育園の先生にも、
「『子供』というより『女』ーー、アニメでしかみないようなコテコテの女ことばを使ってた頃からよくぞここまで……」
と戦慄の太鼓判を押された迫真の演技である。
採点やいかに、と司祭さまをチラ見するが、司祭さまが意見を翻すこともなかった。ちぇっ。
(ダメか。普段ならともかく、今回の旅程には是非とも付いて行きたかったのだが)
司祭さまは明日の朝、宮古島にある教会での信徒の集まりに出席することになっていたが、私にはどうしてもこの移動についていきたい理由があった。
「奥さんとの旅行のつもりで行ってくるよ」と十字架をきらりと光らせる司祭さまにぶーたれつつも私は見慣れた宮古島の景色と俺の家族の笑顔を思い浮かべた。
その日の夜、私はいつものように自分より年下の孤児たちを寝かしつけた後、自分も床に就いて考え事をした。
三段ベッドの一番上は譲らなかったものの、天窓から差し込む月の光は暗いのが怖い子に譲ってあげているので私のところにまでは届かない。
目を開けている私の目の前には見えるとも見えていないとも言えない暗い天井が広がっていた。
(これが島だったら星が見えてるんだがな)
前世の私は宮古島で生まれ、そこで気楽な高校生をしていた。そして心臓麻痺で死に、俺は私になった。ここまではいい。ぶっちゃけもう前世なんて妄想と切って捨てても構わない。
だがしかし、私の前世の記憶には、どうしても払拭できない謎がひとつ残っている。
(全国模試一位の人間の名前の読み方にテンションが上がって2徹で会いに行って泊めてもらった挙句、気まぐれに立ち寄った教会で倒れて死亡って何でですか?)
死の直前の一週間に限り、俺はあきらかに不審な挙動をしていた。
まだ転生して5年も経ってない以上、当時の自分自身の内心までしっかり覚えているのに、思い返すと何者かに操られていたとしか思えない狂い具合である。
これが物語なら見向きもされないだろう整合性のなさだ。現実なのがよりタチの悪さを際立たせる。多分警察は最初に俺が薬を持ってないか調べただろう。
エジプトで死んだ花京院と違って世界を救ったわけでもないので、前世の家族には謝れるなら謝りたい。
ていうか東京で死んだから東京で生まれ変わるって何?シティガールに生まれ変わりたかったとかそんなカスみたいな理由で死んだとしたら私は恥ずかしさで死ぬかもしれない。
(これだけなら、前世の私の頭が急にどっかいっちゃったというだけで済むのだけれど)
私は、自分の布団の中に隠してある、神父さまからかつて『誰にも見つからないように』と渡された『ノート』を取り出して両手で顔の前に持っていく。明かりひとつない共同寝室では何が書いてあるかなんて読めないが、どうせ表紙以外空白なのだから問題はない。
『デスノート』。私が常にない才能を周囲に示し始めた(実際は前世からの貯金で現在進行形でイキっているだけ)とき、司祭さまから渡されたのがこのふざけた表紙のノートであった。
これを初めて渡されたのは私の4歳の誕生日の朝である。その日の孤児院もまだ肌寒かったが、部屋のステンドグラスからの光が暖かく、その柱のなかで話を聞いていたことを印象的に覚えている。
「えっなんですこれは……、もしかして司祭さまストレスがたまってらっしゃる?肩でもお揉みしましょうか?」
「結構です」
誕生日プレゼントと思ってウキウキで進呈を待っていたらメタルバンドの物販が出てきてしまったことに私は困惑した。
普段ジョークの類を言わない司祭さまが、たまにやってみたら冗談が滑っちゃったって感じ?と恐る恐る彼の顔を伺ってみると、真剣な面持ちの神父さまが私を待ち受けていた。
たじろいで二の句がつげない私に、神父さまが言います。
「そのノートは偽物だから大丈夫」
「何がですか?」
「もし君がこのノートを見かけたり、目の前にノートが落ちてきても絶対に触ってはいけない」
「……もしかして。これ、本当に真剣な話ですか?」
「うん。ワタシは今までの人生で一番真剣な話をしているよ」
神父さまの目は、まったく透き通っていました。
「ワタシは悪魔を見たことがある」
途端になんか危ない人に見えてきましたね……。
「いいかい。君だけじゃない。ほかの子供達がこのノートを触りそうになったら絶対に止めるんだ。そして私に伝えるように」
司祭さまが、私と目線を合わせるためにしゃがんだら、司祭さまの高い上背に遮られていたステンドグラスからの光が目に眩しく、思わずふらつく。
「これは、君がこの孤児院で一番頭がいいから言うんじゃない。君が一番このことを真剣に受け止めてくれると信じて言うんだ。できるね?」
私の様子に司祭さまが気づかないまま私の肩を掴む。彼の両手には、線の細い司祭さまから出ているとは思えないほどの力が込められていて、
「痛い……」
はっと気づいた顔で両手を離し、慌てて謝ってくる司祭さま。すまない…、と落ち込む司祭さまが落ち着くのを待ってから私は「できます」とまっすぐに目を見ながら言った。
「ありがとう。このことは誰にも話さないように」
司祭さまは、何かに耐えるように俯いた後、部屋から出て行った。
そして、それに続いて部屋を出た私はその足で孤児のみんなにデスノートの話を私が考えたことにしてバラし司祭さまにめちゃくちゃ怒られた。
この記憶を思い返しながら、私は、私が今どんな状況に置かれているのかを推理する。
デスノート。
宮古島での集会。
そして、誰かに操られたとしか思えない俺の前世。
俺がこの教会で死に、この教会で育っている理由。
結論はひとつしかない。
(きっと、私はこのために転生したんだ)
次の日の朝。私は出発直前の司祭さまに朝の挨拶もそこそこにして、意を決して司祭さまに質問した。
「師匠、修行はいつから始まりますか?」
「な、何が?師匠?」
「悪魔と戦うエクソシストたちの集会が宮古島で行われるんですよね、私も同行します。いつ出発する?」
「誰か来てください!三四代さんが壊れた!」
司祭さまは人を呼びに行った。熱は本当にあった。
結局、神父さまは徒歩で駅まで行ってしまい、私は自室で布団にくるまりながら変な勘違いで恥ずかしいことを言ってしまったことを後悔していた。
これ多分一生思い出すやつだろ、と苦しんでいると、私と同年代の女の子が私を呼びにきた。
「ねー三四代ちゃん、前に言ってたノートが落ちてるってみんなが言ってたんだけど」
「…ノート?」
だるい頭をもたげて布団をでて、女の子の先導で孤児院の裏口を出てお堂まで辿り着くと、孤児院のみんながオルガンから乗り出すようにして告解室の前に落ちている黒いノートをじっと見ていた。
「ほらこれってそうでしょ?」
「嘘でしょ……?」
『おお本当に来た、もしもーし…見えてねえのか?名前は…バグったまんまなんだが』
司祭さまがこんな悪質な悪戯をするはずがない。ましていない時には。
女の子がおもむろにノートを拾い上げようとしたのを私は見咎めて叫んだ。
「触るなっ!」
「えっ」
女の子がノートに触れ、ようとした瞬間。ノートの方がずりずり、と女の子の手から逃げるように後退した。
「はあ!?」
そして目の前からノートが消え、私はほとんど勘働きで女の子を抱いて自分ごと前に飛んだ。
「ぐっ」
無理な姿勢のまま、檀家の方たちが日曜日の礼拝に座る備付のベンチに肩からぶつかり痛みで声が漏れるが、構わず元いた場所を確認する。
すると、やはりというか勘が的中し、ノートは私たちのいたところの頭上に現れ、床に落ち、また消える。よくみると現れた瞬間、明らかに地面に影がないように思える。
「うそっ?」
女の子を逆方向に突き飛ばし、その反動で自分もベンチの間を転がると、ノートは今度こそ私の頭上から落ちてきた。これで狙いは私に確定。
とにかくノートから逃げ回ろうと、ベンチを支えにして咄嗟に立ち上がり、さっきと同じようにまるでワープしてくるような挙動のノートから逃げ回る。
「くそっやっぱり司祭さまはエクソシストだっただろ!?クソッあのノートに触れたらどうなるんだ」
「デスノートだから…触れると死ぬ!?」
『いやそうじゃねえだろさすがに…やべっ笑って落としちまった』
またノートが一瞬だけ床に現れ消えた。
振り返ってオルガンの向こうにいる子供達を見る。この中で死んだことがあるのは私しかいない。
「こい!私が目当てなんだろう!?どうした?来ないのか!?」
我ながら下手な挑発をしながら鈍い頭を必死で回転させる。さっきからぶつけた肩がいやにジンジンと痛む。
(今までのノートの動きから、ノート自体に意思があるわけじゃないことは分かった…。)
おそらく、身長は2.5mから3m程度。形は人間型か、もしくはクレーンのような掴むのに特化した形か。とにかく幽霊のような存在がノートを摘んでは私の頭上に落としている。
反射神経は一般的な人間の範疇を超えていない。目的はなんだ?話は通じるのか?どうすれば子供たちを逃がせ――
「危ない!」
「なっ」
『やべっ、すっぽ抜けちゃった』
一瞬、考え込んでいた隙を突かれ、フリスビーのように飛んでくるノートに私は対応できなかった。なんとか動こうにもこの土壇場で足がもつれ、どうしようもなくなる。
「う、うわぁーー!!」
「……?」
恐る恐る目を開けた私の目の前には、大きな背中があった。
「し、司祭さま!?駅に行ったんじゃ」
私の疑問を無視し、司祭さまが斜め上を睨みつけながら叫ぶ。
「悪魔め…ここは貴様のくるべきところではない!」
『いや死神だって』
「どちらでも同じことだ……なぜ今更になってここへ戻り、ワタシの子供たちに手を出そうとする…!」
「し、神父さま……?」
『いや、俺は単にコイツ、いやコイツじゃないんだけどコイツに伝言があってだな』
「伝言?何を言っているんだ?」
『まあ、この様子だと言っても無駄かも知んねえけど一応……、俺も色々聞きてーことあるしな』
司祭さまが一人で空中に向かってぶつぶつと何かと会話をしている。子供たちはみんなその様子を見て、
「司祭さまって悪魔祓いだったんだ…!」
と目を輝かせているが、近場で見ているこっちとしてはぶっちゃけ目の焦点があってないこともあり微妙に怖さが勝る。
そうやっていくらかやりとりをしていた司祭さまにらちが明かないと思ったのか、悪魔(?)がノートに何かを書き込み、無理やり司祭さまにもたせると、それをこちらに向けて見せてきた。
『5秒やる。もし、お前に前世の記憶とやらがあり、かつ死の直前の記憶に不可解な点があるのなら、このノートに触れろ。そうすれば答えがわかる。もし触らなかったらそれっきりだ。』
「記憶……?」
司祭様が文字を読み、当惑した声を出す。そしてすぐ、私の動揺を見て「触らなくていい!」と言ってノートを閉じ抱え込もうとしてノートを空高く没収された。
次の瞬間、空から私の目の前に向かってノートが飛んできて、目の前の地面に落ちる。
「ダメだ、触るな!死神と関わったらあなたが苦しむだけだ!」
『5、4、3、2』
「
「ククッ、1」
私はノートを触『えr「へえ今ってデスノートってジャンプ+で3話無料で読めるんだ」「こんどまた買い揃えて」「13巻ってファンブックだったのか先に買っちゃおうかな」「海外旅行なんて久しぶりね」「ああ機内だとキャッシュで続き読めないのか」「今何が起き飛行機が落ちて」「今から心臓麻痺とかになんねえかな」「夜神月!?」「悪人が死ぬなら万々歳、俺は関係ねえんじゃねえのか」「東京って寒いし」「俺は…善人でいられるか?今までも…これからも」「デスノートなんて18年前に3話読み直しただけでもう全部うろ覚えだよクソッ」「でも船もねーし」「飛行機が昼に出てたような」「くそっ飛行機に乗るくらいだったら一生島から出ないつもりだったんだぞ!」「金が片道分しかねえ」「どうすれば月はキラにならない?」「大体月が通ってた高校ってどこだよ」「ネット小説でLを呼ぶってデスノのコラでも見たことねーな」「俺って今正気か……?」「くそっ寝れねえ」「田舎から出てきてイケメンのストーカーしてる俺ってちょっと気持ち悪い?」「俺は…人を殺したのか」「…やっぱり名前は書いてしまうんだな月」「リューク怖っ」「こんな桁の寿命覚え切れるわけねーだろ!」鈴木誠7324331男50代鈴木直樹21112639男学生加藤あゆみ24551781女学生吉山田鉄二18911男40代肥満伊藤文子47女80代以上死亡欄要確認渡辺弘子92222女60代足に引きずりあり佐々木七海37898758女10代以下妹?同日死亡?佐々木翼37898758男10代以下兄?同日死亡?山田浩55男40代?「マリオゴルフやろーぜライト」「くそっやられた」「「「「僕の勝ちだリューク!」」」」「携帯から小説打ち込むの難しすぎるだろ!」鈴木誠632937女20代名前では判別不能だが容姿は明らかに女性安藤サク1639女70代?加藤あゆみ13464181女10代前述の女性とは別人渋伊丸拓子1女20代健康所見なし茨木速球38937462男10代以下病院着「教会で懺悔して何を助かりたいっていうんだ俺は」「ああノートを月に渡すだけじゃだめか」「ノートの所有権」「ノートの所有権?」「今ここで俺が名前を書いて死んだら所有権はどうなる?」「所有権を放棄したらどこまで記憶が巻き込まれて」「手放せるのか!?この忌々しい記憶を…」「無になるのか。本当に?」「しかしここで手放して”次”があったらもう手を出すチャンスは」「なんでもいい、何か、保険を……―――」
昔、司祭さまがみんなを寝かしつけているときに言っていました。
「罪は悪者の心の中に語りかける。彼の目の前には、神に対する恐れがない」
「『ローマ人への手紙』ですね。悪者とは不信心者ってところがなんとなく現代に沿わないような気はしますが」
「起きてたのか?」
「もう3歳ですよ、こんな寝かしつけに騙される年じゃありません」
「それ保母さん困ってるから向こうでは素直に寝なさいね」
司祭さまは、どことなく憂鬱げにな顔で私の頭を撫で、それがくすぐったくて、私はなんとなく身を捩って逃げました。
「なにか辛いことがあったのですか?」
「…いや……、ただ、今のワタシには、この言葉がなんとも空回りした言葉に感じてしまって……今さら信仰心が歪むことなどないが……」
「……ックハァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッカハッ!はっ、はっ、はっ、は…」
『よ、五七川。どうだ?気分は』
「最悪だよリューク。できれば二度と会いたくなかったよ」
『えっ…つ、冷たっ』
『自分』を思い出した俺は、周囲の心配の声や久方ぶりに聞くリュークの声も耳に入らなかった。脳内に占めるのはただ、恐怖。そして保険が効いたことによるわずかな安堵のみ。
「み、三四代さん……」
「司祭さま。
「え、ええ……」
『一応言っておくけど女の方に入れよ』
「ヴッ……ゔぉええ……ッげえ……」
『吐くほど会いたくなかったのか』
「いやそこまでではない」
トイレで一通り吐いたあと、適当な別室に入って俺はリュークと向かいあった。ちょうどあった檀家さんからもらった果物の盛り合わせからリンゴを渡してやる。
「うほっ今日初リンゴ」
「まず、どうやって俺がここにいることが分かった?まだ俺がノートを落としてから4年しか経ってないだろうに」
「いや、お前の名前ってバグってるから普通に探し回っただけだぜ」
「ええ…そんな力技で…」
というかバグってるって、随分人間界に染まってるみたいだな……。リュークは宮古島まで探したんだけどまさか灯台下暗しの東京とは無駄に時間がかかったぜなどとのたまっている。
俺はため息を吐いた。まず、リュークが人間界にいる時点で、俺が放ったデスノート対策の『第二の矢』が不発なのは分かった。この様子だと期待薄だが、『第三の矢』、『第四の矢』についても確認しなければいけない。
「なあリューク、俺が死んでから、デスノートを人間界に落とすやつはどうなった…?」
「ああ、それならーー」
リュークからここまでの話を聞いて、俺は怒りに震え、絶望に膝をおらんとしていた。
「ルールが、ルールが全然増えてねえ……!」
「ああやっぱり?ジャスティンにそこら辺は聞いたわ」
俺が死の直前に必死に考えていたデスノート対策その4。それは『人間界のデスノート対策を増やして人間がノートを使いづらくしよう』。これは月とLがその意を汲んでくれているらしい。ここまではいい。
しかし、第3の対策、『デスノートのルール自体を増やさせて死神がノートを使いづらくしよう』がほぼ機能していない。もうこの時点で俺はイタズラに犠牲者を増やしただけではないか、と後ろ指を指されても反論ができない。
まあ月がキラにならなかった時点でキルスコアは差し引きでマイナスだろうが……。
「ああ、そもそも今日はジャスティンからの伝言を伝えにきたんだよ」
「伝言?」
ジャスティン?会ったこともないが…、一人間に何の用があるっていうんだ?
「『そういうのは自分でやんな』だとよ」
「……ふーん、そこまでばれんのか」
「これってどういう意味なんだ?これが聞きたくてわざわざ探したんだぜ。これってルールを増やす話じゃないんだろ?」
「ああ、俺はそもそもルールの確認とか制定をやらずに死んだだろ?で、ルールを作るにあたって死神大王にリュークとかほかの死神が押しかけるのを想定してたんだよ」
「それが?別に普通じゃねえかよ」
「いや、何度も自分に関わりのないめんどくさい負担を押し付けて大王をキレさせたら、死神を人間界から出禁、あるいは厳格な許可制に変えてくんねーかなって」
「……無茶だろ」
「ぶっちゃけいけると思ってたんだよな」
あ〜くそ、全然上手くいかね〜。俺は床に寝っ転がって駄々をこねた。
「第二第三の作戦も全部不発って…しかもコレ!」
「ノートがどうしたんだ?」
俺はノートを振り翳して言った。
「ノートの所有権放棄でデスノートの使用
「あ、やっぱりなんか俺の動きを知ってたのにもカラクリがあるわけね」
いやワンチャンなくなるかも、と思っていたからリュークにノートを持って来させる約束を5年に1回にしたんだが。
「これで忘れたまんまだったらノートを取りに行かないで安らかに人生過ごせてたんだよ俺は!」
「えっじゃああの約束って合流するとかじゃなかったのか!?」
「まさか転生しても見つけ出されるとは……こんなに裏目に出るとは思ってなかったマジ……」
ちょっとショックを受けてるリュークが、さっきの俺の言葉を捉えて聞く。
「ん?じゃあ第一の矢ってなんだ?」
「俺が死んで無になること」
リュークが俺の言葉に疑問符を浮かべて首を傾げる。ご丁寧に両手で自分の頭と顎を持って傾けるおまけ付き。
(『デスノートを使った人間が天国や地獄に行けると思うな』って、リュークが言ったんだぞ)
俺は理不尽に怒った。実際リュークはこの世界だと言っていないのだから完全な八つ当たりである。
俺はこの言葉が『天国や地獄などこの世界にはなく、意識や魂といったまやかしは無に消え去る』ということに最期の最期に賭けて死んだ。
実際は転生とかいうカスの制度のせいで俺だけはいつまでも無になれず、人間界を彷徨い続ける羽目になってしまったらしい。
しかも、所有権の消滅とともにデスノートの記憶が前世ごと消滅したのだから結果オーライであったところを土壇場でかけた保険のせいでそれもご破産……!
俺は、これからも死神の気まぐれでいつ死ぬかわからないという恐怖を抱えながら生きていかなければならなくなってしまった。……。
「デスノートさえ…」
「え…」
リュークが耳を近づける。俺、いや『私』は心から叫んだ。
「デスノートさえなかったら強くてニューゲームだったのに!」
「じゃあ所有権破棄すればいいじゃねえか」
「今更捨てられるか!今の人間界って死神が跋扈してる魔境と化してるんだろ!?」
「いやそれお前のせいじゃねえか?」
「……ふん!まだだ…、このデスノートをリュークに持って来させたのは『保険』!」
「あっ開き直った」
俺の脳裏に、デスノート1巻で語られていたリュークがノートを落とした理由が正確に思い出される。
(『実際、今の死神ってのは暇でね』『下手にデスノートに人間の名前なんて書いてると「何ガンバッちゃってるの?」って笑われる』)
…そう、
すなわち、過去や未来において、死神が人間を殺すことがブームになってしまう可能性は永遠に残ってしまう。いや、実際『ゲーム』に乗ってきている以上、そういう素養は確実にある。
死神はその気になればデスノートの行動操作でいくらでも人間を苦しめて殺すことができる。リュークがそうしないのは、たまたまリュークがそういう嗜好をもっていないというだけだ。
だから。
「だから今、俺
俺が転生するのが分かった以上、俺の魂の安寧を導くにはこの方法しかない。
月とLの『デスノート陣営』と俺とリュークの『キラ陣営』の挟み撃ちだ!
「見てろ、大量殺害に使う以外でデスノートを使う方法なんていくらでもあるんだ……!行くぞリューク、まずは情報収集だ!」
「お、おお?どこにだ」
「ネカフェだ!」
「締まらねえなぁ…」
俺は自身の罪悪感を正当化するための大義に押しのけられるようにして教会の扉を内から開き、この
「グーグルマップのストリートビューにすでに表札と人の顔にモザイクがかかってる!?」
「マイナンバーカード法案がもう提案されて否決されている!?」
「サーバー廃棄業者国有化!?!?!?!?!?!?」
「あ、あと俺は月とLのところ出禁になったから」
「ででで出禁!?!?!??!?」
「いや〜死神の目を持ってるやつの脳内反応を検知?する死神発見システムとかいうのが本部に設置されててよ〜……」
「いや、この社会対策は俺がさんざん小説で意識させておいた場面……!月、L!凡人には凡人なりの足掻きがあるって見せてやるよ……!」
「おいおい、それもう目的変わってねーか……」
「でもよリューク…」
「つーかよ大体…」