焼き尽くされる世界   作:流れ人

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手術の予定が決まったので初投稿です。


序曲(滅びへの道)

アカネイア騎士団は再建途上にある。

しかし、パレスの防衛を欠かす事が許される筈もない。

 

そこでアカネイア貴族達は自身の配下の騎士。その者達を各所に配置する事をニーナへ申し出る。

 

 

 

___

 

壊滅した旧アカネイア騎士団には練度の面では遠く及ばぬものの、体裁を保たねばならない。

いつまでも流浪の軍であるアリティア軍に頼り切る(任せる)事は彼等としても避けねばならなかった。

 

生き残った

⋯⋯いや、正確に言うならば逃げ隠れたアカネイア貴族にとって、マルス達はあくまでもアカネイアの同盟者でも庇護者でもない。

自分達(アカネイア)(こうべ)を垂れねばならない存在でしかなかったのだ。

 

 

 

更に不愉快なのが、ニーナ王女は馳せ参じた自分達よりも、無様にもパレスの牢に捕らえられていた騎士ミディアやボア司祭を頼りにしている事だった。

 

特にアカネイア貴族の中でも有力者の娘であり、親同士の定めた婚約を破り、結果として傭兵を選んだミディア。彼女に対する反感はかなりのもの。

『大陸一の弓使い』ジョルジュ。彼もまたアカネイア貴族の子息であり、両家の結びつきを強めるのは政治力学的にも、アカネイア王家を支える意味でも何の問題もなかった。

 

しかも、彼女の力量にそぐわぬ『聖騎士(パラディン)』として叙勲されておきながら。

 

 

多くのアカネイア騎士や兵士がドルーアにより殺されておりながら、彼女やトムスにミシェランは殺される事なく虜囚の身となった。

トムスとミシェランはあくまでもアカネイア騎士団の再建の為に精力的に動いており、不愉快ではあれどその働きは認めなければならない。

 

ミディアが虜囚の身となれた(・・・)のは、当時隊長として部隊を率いていた彼女の恋人アストリア。彼をドルーアに降らせる為の方便であり、人質としての価値があったからに過ぎなかった。

 

 

隊を任されておきながら、事もあろうに恋人の命惜しさにドルーアへ降ったアストリア。聖騎士という立場にありながら、虜囚としての辱めを受け、挙句新たな主君(ニーナ)に取り入る。

かつては己が父親すらも嫌悪し、家との関わりすらも否定した小娘のそれ。

 

いったい自分達と何が違うと言うのだろうか?

 

 

トドメとばかりに捕らえられていたトムスとミシェランは弱っていたが、ボアと小娘は直ぐ様戦闘に参加できる程度には余裕があった(・・・・・・)

つまり、虜囚の身でありながら食事などにも不自由していなかった。そういう事ではないか?

 

 

そうなると彼等は疑心暗鬼に陥り、実は小娘もまたドルーアに通じるつもりではなかったのか?

との疑いを持ち始める。

 

 

確かにアレは今となってはアカネイア騎士団唯一の聖騎士。

であるならば、積極的に軍の再建や恩を受けたアリティア軍に協力するべきではないのか?

 

 

そうして貴族達の不満は民に対してのみならず、内に対しても募らせてゆく。

 

 

___

 

 

さて、話は変わるが騎士とは民衆から尊崇の念を向けられるものである。

 

少なくとも、今のアカネイア騎士の多くはそう思っていた。

 

 

元々騎士とは『実力と共に高潔な精神』を持つ者がなれる職業(もの)だった。

ところが、貴族や有力者は己の派閥などに『箔をつける』為にそれを望み、自身の親族や縁者をアカネイア騎士団に入れようと画策した。

 

が、かつては大陸最大の国家であるアカネイア。その騎士団ともなれば志願する者は多い。そして当時の騎士団長らは『騎士として相応しい人物』のみを望んだ。

アカネイア貴族達の配下の騎士とはそれから弾かれた(・・・・・・・・)者。きつい言い方をすれば、不適格の烙印を押された者なのだ。

 

中には有力者の縁者と言うだけで騎士になれたものもいたりするが。

 

 

 

さて、その様な者の集まりである現在のアカネイア騎士。

彼等はアカネイア騎士というものに対して憧れを抱いていた。⋯⋯いや寧ろ、彼らの場合最早執着とすら言えるかも知れない。

 

まぁ実際にはアカネイア騎士という立場による名誉などを求めているだけなのだから、救いはなかった。

 

 

 

さて、そんな歪な思想を持つ者達が城門の警備。などという端役に価値を見出そうか?

本来城門を護る衛士などは信用が無ければ任せられない重要な職務なのだが。

 

 

自分達の考えている(妄想した)職務とかけ離れた仕事を任せられた者達は強い不満を持っていた。

そんな者達の目の前に、明らかに貧相な身なりをした若者がやって来た。

剣呑な雰囲気を隠そうともせずに。

 

 

 

___

 

 

そして、若者に対して彼等はすげなく対応。

その結果、言い合いとなったのだ。

 

 

そして、その騒ぎはパレスに滞在していたマルス達やハーディン達の耳に届く事となる。

 

 

 

「⋯何をやっておられるのか」

 

ハーディンはたまらず声をかけた。

本来ならば、アカネイアの事は他国の事である。ハーディンは確かにマルス達と共にニーナ王女を奉じてアカネイアを解放した。が、だからとてアカネイアの事に無闇矢鱈口を出すのは立場を弁えない行動。

 

が、そうであったとしても余りにも目に余る行動であった。

 

 

若者は1人。にも関わらず騎士は数人がかりで押さえつけている。武器を振り回している訳でもないし、若者も冷静を欠いている様にも思えるが、騎士達もまた明らかに冷静とは見えない。

 

 

「こ、これはハーディン殿

⋯し、しかしこの様な怪しげな者を通す訳にも」

 

「⋯⋯⋯それは理解出来る。しかし、相手の話を満足に聞こうともせず追い返そうとすればそうなるのも予想出来よう。

陳情があるならば、それを預かり、然るべき所へ上げるべきではないか?」

 

ハーディンの姿を認めて漸く落ち着く騎士。それを見たハーディンは必死に溜息を堪えて諭す。

 

(これが今のアカネイアの騎士のレベルか

⋯やり切れぬな)

 

 

 

 

 

 

 

若者の話を聞いたハーディンは若者が去るのを見届けた後、その話をアカネイアの有力者に話すべくその場を離れた。

 

どうやら、自分の思う以上に危険な状況にある事に歯噛みしながら。

 

 

 

 

 

 

 

余りの衝撃に彼は気付かなかった。

その様子を遠くから見ていた者がいる事に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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アカネイアは国家としての纏まりを失った。

アカネイア貴族達や騎士、そしてニーナやマルス達はパレスを解放し、アカネイア国内の敵を倒せばアカネイアは再建が叶う。と思っている。

 

 

しかし、そんなに簡単な事ではない。

これが村や町程度ならば再建するのも苦労はしようが、無理ではないだろう。

 

 

が、現在のアカネイアは慢性的な食料を始めとした物資不足に陥っている。

これを解決するには他国から購入するか、自国の生産能力を回復させるしか無い。

前者はそもそも大陸全土を巻き込んだ戦争中であり、アカネイアに好意的なオレルアンは戦火の影響から脱しておらず、タリスはそもそも距離が遠すぎる。

まぁ、それ以上にアカネイア(大陸最大の国家)としても、辺境の新興国に頼みたいと思っていない。それによしんば物資を望めたとしてもその輸送中の問題もあった訳だが。

 

 

 

そんなアカネイアの中にあって、『奴隷を買える』だけの物資を持つ組織がある。

 

 

 

___

 

 

神の教えに疑問を持ち、そして女手ひとつで孤児達を育てようとした女性がいた。

 

が、戦争が始まると足手まといになる子供を切り捨てる大人は増えてしまい、彼女が保護していた孤児の数は増え、それに反して食料は手に入らなくなっていってしまう。

 

 

 

「⋯ならば、この儂が助けてやろうか?」

 

飢えを何とかしようと必死に藻掻いていた女性のもとに、そう話を持ちかけた男がいた。条件を付けて

 

 

女性は悩みに悩んだ。

男の話を受け入れれば、確かに食料の問題は解決しよう。

だが、それは子供達のこれから(未来)を奪う事にも繋がる。

 

 

そして、女性は男の手を取った。

 

それが子供達だけではなく、自分すらも奈落に落とす行為と知りながら。

 

 

 

 

___

 

 

 

 

 

城門の騒ぎの翌日。

マルス達はアリティアを解放するべく、パレスから出撃していった。

 

遅々として進まなかった補給が不自然な程、迅速に進んだ事にマルスやジェイガンにハーディン達は訝しむ。しかし、間違いなくマルスはアリティアを解放せねばならないのもまた事実。

 

マルスとしては未だに戻らないアンナの事が気にかかったが、ドルーアにより苦しんでいるアリティアの事を引き合いに出されてしまい、言伝を任せる事を選ぶ。

 

 

 

 

マルス達がパレスを離れて暫く後

 

 

人々の間にある噂が流れる事となった。

 

アカネイア騎士が、パレスにまで出向いて陳情した人間を殺した

という噂が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回の更新は術後の経過次第となると思うので、気長にお待ち下さい。
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