焼き尽くされる世界   作:流れ人

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緊急手術が割り込みしてきたので、初投稿(予約投稿)です。


光陰

急かされる様にアリティア解放の為にアカネイアを出たマルス達。

パレスで彼等が助け出したトムス、ミシェラン、ミディア。そしてボア司祭。その何れもアリティア軍に従軍していなかった。

 

トムス達とて恩知らずではない。

アリティア軍への参加を話した。

 

 

が、その場でハーディンはこう疑問を口にしている。

 

「⋯確かにマルス王子に従い各地でドルーアと戦うのも必要かも知れぬ。しかし、それは我々でも出来る事。

貴殿等には貴殿等にしか出来ない事をすべきではないだろうか」

 

 

ハーディンの言葉は彼の本心であったが、それ以上に激戦をくぐり抜けてきたアリティア軍。それを見てきたハーディンからすると、これから彼等が味方となったとしても活躍させるのは難しいのではないか?との思いもあった。

 

トムスとミシェランは重騎士(アーマーナイト)。しかし、捕らえられていた時に満足な鍛錬が出来た筈もなく、実際パレス内での戦闘においても動きに精彩を欠いていた。

更に食事の量も少なかったのか、かなり体調も悪そうに見える。

ハーディンはオレルアンの騎士を纏める立場であった。

そうであるからこそ、弱った者を戦力として動かす事の難しさを理解している。

ディール要塞で捕らえられていたマリア王女。彼女は驚く程に丁重に扱われていたらしく、精神面はともかく体力面から見て問題はなかった。

 

 

 

それにハーディンは耳にしていた。

アカネイアの聖騎士ミディア。彼女の恋人アストリアがドルーアに降伏した事を。

 

臨時徴兵された兵ならともかく、正式に騎士として受勲した者や兵を束ねる立場にある人物が己の感情のままに裏切る。

と言うのは彼の中で著しく信用を損ねる行為として、嫌悪すべきものだった。

無論、感情はそこまで上手く扱えるものではないだろう事は理解はしている。

 

が、一度でも裏切った者に対する周囲からの視線はとかく冷淡なものだ。

そういった意味において、マルス王子率いるこの軍は異質そのものであり、自分では成し得ない事であろうと感じている。

 

 

しかし素直に本心を吐露するならば、ハーディンはマケドニアのミネルバ、パオラ、カチュアにマチスには一切共感出来ないし、信用したいとも思えない。

彼女達は『国を裏切る』と言うことを余りにも軽く見過ぎているとしか思えないからだ。

 

とは言っても、あくまでもこのアリティア軍の指揮官はマルス王子であり、自分は一介の騎士に過ぎない。部下達にもそれは言い含めている。

 

 

 

裏切ったものは一生その負の十字架を背負い続けねばならない。下手にそれに温情(情け)をかけてはならないし、してしまえば組織としての統率を失う事となるだろう。

マルス王子がその様な者達でも受け入れるのは、単純に戦力が足らぬ事や、少々酷な話だが組織を束ねる事に慣れていないからだ。

 

ハーディンは話に聞いたアストリアとやらと戦場で出会ったとしても、その理由(わけ)を知っていたとしても容赦も躊躇もなく殺すつもりだ。

己の身勝手な理由で裏切るならば、それは甘んじて受けねばならぬ。

 

 

それが戦場に生きる者の宿命(さだめ)なのだから。

 

 

___

 

 

マルス達アリティア軍を半ば追い出す様に送り出したアカネイア。それもある意味では仕方のない事ではあった。

 

 

何せ他国の人間であるハーディン(オレルアン公弟)に自国の醜聞を知られたのだから。そしてそれはほぼ間違いなくマルス王子にも知られる事となろう。

今、必死にアカネイアの権威を高めようとしている最中にこの様な事が他国へ流れたとなれば更に遅れるのは明白。

 

その為に貴族達は自分達のなけなしの食糧などの物資を渡して送り出したのである。

 

 

更に彼等の思惑があった。

仮に陳情の通り民が困窮しているならば、

 

これはまたとない好機なのだ

 

 

 

 

 

___

 

 

アカネイアは大陸一の国家であり、体制の中心だ。

となれば、それ相応の影響力を大陸全土に持たねばならず、建国王たるアドラ1世。その御代から伝わるグラディウス、パルティア、メリクルの強力無比な武器。それはアカネイアの力の象徴であり、至宝。

そして王家に代々伝わるファイアーエムブレム(炎の台座)。これらがアカネイアの手にあり、尚且つ正しく(・・・)(アカネイア視点)使われるからこそ、大陸の秩序は保たれる。

 

ところが、その至宝に劣らぬものがアカネイア以外の国に存在している。

 

 

アリティアのフォルシオン。

 

かつてアカネイアがドルーア帝国により滅ぼされた時、アカネイアの王女アルテミスが当時のアリティアに逃れた。

ドルーア帝国はアルテミスを亡き者にせんと、アリティアへと軍を差し向ける。

 

アリティアはドルーア帝国に対してアルテミスを守り戦う。

 

 

だが、ドルーアに対してアリティアの戦力は余りにも少なく、時間こそかかるだろうが、アリティアの敗北は目に見えていた。

 

 

その様な逼迫した状況の中、アリティアの若者アンリが試練を突破しファルシオンを手に入れる。

ファルシオンを手に入れたアンリはメディウスを打ち破り、大陸に平和をもたらした。

 

 

その血すらアカネイアに取り込む事でファルシオン(メディウスを倒し得る力)をも有すれば良かったのではないか?

 

との考えがにわかに台頭していた。

 

 

 

不幸(幸い)にもアリティアはドルーアとグラにより滅亡しており、現在マルス王子等が解放すべく奮闘している。

 

ファルシオンを使える血筋であるアリティア王家。少なくとも、現在生存の確認されているのはマルス王子のみだ。

仮にマルス王子に恋人なりがいなければ、貴族の子女。それが難しいならばニーナの王配とすれば良い。

 

が、忌々しくもタリス(辺境国)のシーダ王女と良い仲らしく、それは望めそうになかった。

 

 

⋯ならば、やり方を変えれば良い。

 

 

 

___

 

 

先の陳情から大陸全土で深刻な物資不足が起きている事を知った貴族達は一計を案じた。

 

 

アリティアを解放するとなれば、ドルーアに従っているグラを避けては通れない。

グラはアリティアを裏切りドルーアについたが、隣国である以上経済的な繋がりは続けられている。

 

 

⋯さて、そんなグラの地でマルス達アリティア軍が食糧や武器を買い漁ればどうなるだろうか?

 

確かに自分達はアリティア軍に物資を提供した。⋯が、これから激化するだろうドルーアとの戦闘を考えれば、足りるとは思えない。

 

 

敵地であるグラで補給するか?それとも、混乱しほぼ間違いなく窮乏するアリティアでそれを強行するか?

 

どちらにせよ、恨みを買う行為となろう。

 

 

 

 

 

「⋯さて、お手並み拝見といこうか」

 

その策を主導した人物は手元にある神器を愉快そうに眺めながら、嗤った。

 

 

これ(・・)を手に入れるには少しばかり手間取った。

とは言っても、所詮は一度負けて民からの信を失った敗残兵。上手く扇動すれば、除くのは容易く誤魔化すのも、さしたる問題はなかった。

 

 

 

 

 

だからとて、自分達が策に嵌まらない訳では決してないのだが。

 

 

 

 

___

 

 

 

 

「⋯アレだな

ロー、準備しろ」

 

「キキキ」

 

時はマルス達がアカネイアを出る少し前へ戻る。

 

肩を落とし、気落ちしている若者を見つめる冷酷な目があった。

 

 

 

「クライネやアイネも上手くやっているだろう

ロー、仕損じるなよ?」

 

薄汚れた服を着た少年は隣にいる人物に声をかけ、その機を伺っていた。

彼等の目的はパレスに陳情した若者(邪魔者)の排除。

理由など知らなかったし、興味もなかった。

 

 

ただ、自分達が明日を生きる為に

それだけなのだから。

 

 

 

 

 

 

___

 

 

 

ハーディンがダメ元でオレルアンに向かわせた使者はもうすぐアカネイアの領土を出ようとしていた。

 

使者とは言え、実力と共に確かな識見を持たねばならない。それ故に今のアカネイアにおいて希少である真っ当な感性を持っている。

 

そんな使者の近くの茂みから、紫色の髪をした少女が這い出てきた。ボロボロの衣服と明らかに怯えた表情で

 

「た、助けて下さい」

と懇願してくる。

 

 

本来ならばオレルアンへの使者としての主命を何よりも優先すべき。だが、少女を見捨てる事は出来なかった。

使者は馬を降りて、少女の側に駆け寄ると震える少女を落ち着けるべく

 

「⋯あ、ああ。ごめんなさい」

錯乱しているのか、少女は使者に縋りつき涙をその目に浮かべ震える声でそう言った。

 

「何があったのか?」

少女の様子から尋常ならぬ事があったと感じ、そう口にする。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい」

しかし少女はそう呟くのみ。

 

(どうしたものか)

少女をどうにか落ち着かせようと考えた、

 

 

その瞬間

 

 

ヒュッ!

 

そんな音が聞こえた。

そして、使者は激痛を感じ

 

「ごめんなさい、貴方を殺さないといけないのです」

 

 

 

そんな声が遠くに聞こえ、使者は意識を失った。

 

永遠に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

己の掲げる信念のもとに皆動き出す。

その先は、誰にも分からない。

 

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