焼き尽くされる世界 作:流れ人
と疑問に思ったので初投稿です。
「軍の再建の為に金と人を出せ、とよ」
「⋯⋯何を考えておられるのか。
そんな余裕があろう筈もなかろうに」
ある町でこの様な話がされていた。
マルス達アリティア軍によりアカネイアの象徴にして中心たるパレスが奪還された。
それから程なくアカネイア全土にある布告が届く事となる。
一部とは言えニーナの帰還とこれからのアカネイアに期待していた民のそれを裏切って。
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支配や統治とは庇護下にある者の安全があるからこそ受け容れられるものだ。
如何に他国から悪逆非道と言われようとも、自国の民の生活に問題が無いならば問題となる事は少ない。
如何に王政という
不信が積み上がるならば、何れその権威は失墜し国体自体も変化する事となる。
王や王族の様に国を統べ、導く立場となるものこそ民の視線などに敏感とならねばならないだろう。
無論、これは理想論であり国を動かすともなれば煩雑極まるものが付き纏う。そして国を動かすともなれば、数多くの人間が政務や交渉などに携わらねばならない。
3人居れば派閥が出来る。との言葉もある様に人とはどうしても己の正しさを求めたくなるもの。
己の進む道を悪と知りながら進む者がいたとしても、その根底には『そうせねばならない』との意識はあろう。
組織を、ヒトを動かすとなれば正しさが常に望む未来を進む為の道標とならぬ事も、悲しい事だが儘ある。
然し、それは当事者としての認識であり、第三者から見れば受け入れ難い事ともなってしまう。
同じものを見るとしても、その視点が違えばまるで別の認識を持つというのは古今東西避けられぬもの。
ましてや、教育水準の決して高いとは言えぬアカネイア大陸。それに加えて数年にもわたる大陸全土を巻き込む戦争の只中。
常なれば国のやる事に対して理解のある民だとしても、貧しさとは様々なものを奪い去る。
民の中にはドルーアによる支配に漸く不本意ながらも折り合いをつけたと言うのに、今更になって生き残った王族が戻って来た。
その上、自分達の生活などどうでも良い。と言わんばかりのやり方をしたとなれば、それを黙って受け入れられようか?
そんな仄暗い感情の焔をその心の内に灯すものさえいた。
そして解放軍の決起の時には参じなかったのに、ニーナ王女の元には参じ、何食わぬ顔で貴族として振る舞う連中。王も国も、民さえも満足に守る事すら出来ない騎士という唾棄すべき連中の事も許せなかった。
騎士や貴族の中にはドルーアの侵攻によりパレスが陥落し、国王が死んだとの報を受けて自刃した者もいた。
貴族や騎士からすれば王に殉じた忠臣なのかも知れないが、自分達の生活を守るべき者が
言い方は悪くなるが、己のすべき事よりも自分の矜持を選んだとも言える。
当然、その貴族の所領では混乱をきたし、結果その混乱を好機と見た山賊や商人の中でも
そこは地獄だった
ドルーアやグルニア、マケドニアはパレス以外の地については完全に制圧するのではなく、要所のみを制圧するに留めた。
故に彼等を止めるものは何も無く、
賊徒は思うがままに食糧を奪い、人を殺し、人の尊厳をも奪い去り。
闇商人達は賊徒の機嫌を損ねない様に食糧を手に入れ、人を攫い、己が未来の為にあらゆるものを貪った。
そうして、幾つもの村が滅んだ。
幸運にも生き延びた者達はその心に決して消えぬ
嗚呼、斯くも世界とは理不尽に満ちていた。
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そして、その様な惨劇が起きた事は僅かな生き残りの口から多くの者達へと齎される。
まるで狭いところで波が起きたかの如く、その情報は確かな失望や怒りと共に拡がり、そして重ね合う。
アカネイアが事実上崩壊して、マルスの助けによりニーナがアカネイアを取り戻すまで数年経った。
マルス達はタリス王の庇護を
ニーナはオレルアン公達の庇護を
それぞれ享受していた、地獄の様な数年間を、だ。
その数年間、失望とやり場の無い怒りはアカネイアの人々の中に積み上がり続けた。
いつ自分達の生活が
生命が脅かされるのか分からない恐怖と共に。
マルスやニーナには到底理解出来ない地獄の様な状況を
そして
「何だお前は」
「なにがアカネイア再建の為だ!もう遅いんだよ!」
向き合う時が訪れる。
戦争の
世界の
光と陰と
地獄の釜が
押し込められていた感情が
牙を剥く