愛しているからこそ、私は――――   作:スティル……好きだ

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ずっと頭の中でこえがする。

それは決まって運命を超えろだとか運命を変えろだとか、よく分からないことを言ってくる。

そう、あの時まではその意味がよくわからなかった。


目覚めのプレリュード

 スティルインラブ。ルーちゃんが言ったウマ娘の名前を聞いた時、ドクンと自分の心臓が不思議なことに脈打つのを感じた。

 私は、そのウマ娘の名を知っている気がする。と。

「……そうなんだ。ありがとルーちゃん、後で調べてみるね」

「……? 、おう! 早く行こうぜジュー!!」

 そういってルーちゃんは走って行った。

 フリフリと尻尾を振りながら急かしてくるのが大型犬みたいだなぁと思いながら私は急かしていたルーちゃんを追いかけるように着替えを済ませてトレーニングコースに向かった。

 

 トレーニングコースに着くとルーちゃんが手を振って手招きしてくれたのでそこに行く。

「お、来たのだ、早くレースしたいぜ! ジューちゃんもそう思うだロ?」

「うーん……私は程々にかなぁ」

 私はルーちゃんに聞かれて咄嗟に誤魔化すように笑った。

 ……私はたぶんトレセン学園(ちゅうおう)で勝てる未来がイメージできないから。

 

 そんなこんなで待っているとチャイムが鳴り、お義母さんことアドマイヤグルーヴ教官が来た。

 どうやら今回の講師らしい。

 

「時間前に皆揃ったな。では今回の授業について説明する。今回は模擬レースとして君たちには走ってもらう。コースはそれぞれ芝の短距離1200m、マイル1600m、中距離2000m、2400mだ。このクラスは芝のコースの希望が多かったが、今回の結果次第では次回にダートでも走れるように希望出せるから安心したたまえ」

 お義母さん……教官は蛇足なく淡々と説明していく。

 心なしかまだ緊張している表情だけど、大丈夫かなと思案していると教官と目が合った。

 あ、やばい。

「……ジューダ、ぼーっとしていたが、私が今何を話していたか話してみなさい」

 教官は鋭利な刃物みたいな鋭い目つきでお前ちゃんと話聞いていたのかと問うた。

「あ、はい。……今回の授業はこの練習コースで模擬レースをすることで、芝コースの1200,1600、2000、2400で走る……であってますよね?」

「そうだ。わかっているのなら良い。それでは貴様ら、自分の走りたいコースを挙手しろ。では1200m……よし、下ろしていい。では……」

 危なかった、話聞いておいてよかった……危うくあのエアグルーヴさんのトレーナーさんみたいに『たわけッ!!』て言われるところだった。

「次、2000m!」

「「はい!」」

 私とルーちゃんの他に複数人挙げたので五人立てを三回に分けてやる事になった。

 仲がいい故なのかルーちゃんと同じ組になった。やったねと言いたいところだが、正直勝てそうにもないなぁと薄々思う私なのでした。

「ジューちゃんも同じ組だな! 頑張ろうな!」

 肩を掴んでグイグイとするルーちゃんは可愛いなぁ。

「そうだねルーちゃん! 今度こそ負けないからね~!」

 お返しにほっぺをぷにぷにしてやりました。

 ルーちゃんには何するだぁ!? とぷーっと頬を膨らませて抗議されたけど見なかったことにしときます。

 その方が可愛いので。

 

 そんなこんなでじゃれていると、いよいよレースの出番が来たので走ります、勝てるイメージなんてないですが。

「それでは三組目、ゲート入りせよ。一番ルーラーシップ。二番ジャラジャラ。三番アドマイヤテンバ。四番ジューダ。五番エンドレスタイムだ」

 ああ、なんて。

 なんて……難しい(美味しいそうな)レース……? 

 何か変な思考が入った気がするけどきっと気のせいだよね。

 またいつものやつだろう、と言い知れぬ奇妙な感覚をしまい込み、ゲートインを済ませ、そのゲートが開くのをじっと待つ。

 

 ガコンッ。

 ゲートが開き、五人の若駒が飛び出す。

 若干一名は出遅れたが、直ぐに飛び出して最後尾に付ける。

 ホームストレッチを抜けて第1コーナーへ。

 ペースはそこまで早くはないが皆浮足立っているようだ。

 栗毛をたなびかせ、()()()()の彼女が先頭で駆けて行く。

 ああ、やはり。

 似ているなと思ってしまう。

 作戦は違えど、その走り方や目つきは『彼女』とよく似ている。 

 ……そろそろ、伝えるべきだろう。

 私はターフを駆ける彼女らを見ながら思った。

 

「……ッ」 

 チクリと心臓の中からナニカが鳴動するのを感じるがまだ大丈夫。

 足りない頭で思考を回せ。

 周りの状況、己のスタミナ、この先の地面の状態でならどこでスパートするのが通用するかを。

 第2コーナーを抜けるとバックストレッチがしばらく続く。

 多分ルーちゃんはまた第3コーナーからまくっていくだろうから、そこに掛けよう……!! 

 私は背後、後方から感じる視線から逃げるように、力強く踏み込んで進む。

 

 先頭とは二バ身差で彼女は駆け、続いて後続のウマ娘もそれに倣うように進む。

 そしてバックストレッチ後半。新緑の瞳のウマ娘が動き出した。

「ここから……いく、ぜッ!!」

 剛ッ! と後方から先頭めがけてまくっていく。

 緑の風になっていくようにグングン加速していった。

 第3コーナーに入る時には二番手にまで進出していた。

 流石、()()()()だと感心する。

 

 

「はぁ、はぁ……ッ!」

 来た! 来た! やっぱり捲って来た! 

 分かってはいてももう背後にチリチリと気配を飛ばして来るほどに接近された! 

「追いついたぜジュー!! ここからは私の独断場だよ!!!」

 ジワリ、じわりとその差を縮めようとする。

 なら……! 

「なんの……今回こそは勝つのは私だよッ! はああぁぁぁぁ!!!」

 第四コーナーに差し掛かる直前に私は末脚を開放してスパートする。

 だが。

「にっひひー! まだまだ行くよー!」

 後ろの彼女はいとも簡単にそれについて来る。恐らくこのままだとまた負けるだろうなと私は直感的に理解できた。

 その時だった。

 

 ドクンとひと際心臓が大きく強く拍動した。

 その直後、に聞いた。

 

ワタシヲツカイナサイ。ソうスれば勝てるわよ? 

 

 その声と共に、脳裏にダレカの姿が見えた。

 そして、その姿を。

 

 ワタシは覚えている気がする。

 

 フフフ。ええ、ワタシは貴女と縁が深いからね。覚えているのは当然よ?何たって――――

 

 ――――――――

 

 終盤が何を言っているかは分からない。

 けど。もしこれであの『ルーラーシップ』に勝てるのなら、と私はその取引に乗ってしまった。

 瞬間。私の意識はブラックアウトする寸前に高らかに笑う私に似た誰かの声を聴いた。

 

「――――は」

 なんだ。いつもならここでジューちゃんを追い抜いているのに。

 一向に前に抜けない、いやそれどころか――――

「離……され……てるッ!?」 

 おかしいと感じた。

 その瞬間、目の前の友の雰囲気が一変した。

 重苦しい重圧と、幻覚として浮き出るほどの赤く紅いオーラが見えた。

 

「────」

 ソレを見て空気が、時間が止まるような感覚を私は体験した。

 なんだ、アレは。

 いや、分からないのでは無い。

 分かっているからこそ理解できない。

 何故ならそれは、()()()と同じ、それは。

 私は、私はその気配を知っている────! 

「拙い……!」

 ホームストレッチの最後の直線に差し掛かった時、その予感が的中してしまった。

 緋色よりも紅い、その瞳を目の当たりにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿したら一夜で透明ランキング一位になって色付きになったりとおっかなびっくりな投稿主です。
みんなスティルインラブに脳を焼かれたんだなぁとしみじみ感じています。
スティルはいいぞ。

サイリウムさん、緋衣の王さん、雅媛さん、猫宮屋さん、桶の桃ジュースさん!
好評価ありがとうございます!!!
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