愛しているからこそ、私は―――― 作:スティル……好きだ
嗚呼、なんて美味しそうなのかしら…!!
「ウフフ……アハハハッ!! いいわぁ……あの子の娘なだけあってよく馴染むわぁ……!」
目の前の怪物は顔が見えずとも恐ろしい笑みを浮かべているのがありありと解る。
そして、自分が知っている友に何か悪さをしている事は、頭があまり回らない自分でも本能で理解できた。
故に────
「ッ……お前、は誰だッ!!」
解き放たれた怪物を前に新緑の瞳がその背を射貫く。
その矢に気が付いた怪物はニタリとその背後からくる獲物に振り向く。
「フフフ、知りたい? ワタシが誰なのか。なら……その魂、喰らわせて頂戴!!」
前に視線を戻して怪物は先ほどよりも一段と加速して残り400の標識を通過した。
「……それは、やなこったッ!!」
新緑の裁定者もそれに負けじと余力度外視、まだスカウト前にしては破格すぎる、シニア級と相違ない末脚でその怪物を捕まえに行く。
幸いなことに彼女はこの長い直線が大得意である故に捉えられるだろう。
先程とは明確に打って変わり、その背が捉えられる位置に近づきお互いに残り
ああ、なんてことだ。
その姿を見たとき、気のせいだと思いたかった。
無常にも、その姿が近づいて来る程に脳裏で忘れかけていた
見ろ、ルーラーシップこそ喰らいつけているが、後の三人は怖じ気づいてどんどん差が開いている。
「────」
その栗毛が、おぞましいほど紅い怪しげに揺らめくその瞳が嫌というほどに主張してくる。
「────頼む、お前の娘まで狂わせないでくれ、スティル」
祈るように、嘆きが零れた。
「アハハハッ!! 素晴らしいわぁ!! 今まで食べてきた相手と比べて貴女は格別に美味しそう!! ほら……モット見せてェ! その走りをもっとッ!!」
怪物は距離を縮められても尚、余裕綽々といった表情で裁定者を食らい尽くそうとする。
あぁ、悍ましくて恐ろしくて今にも逃げ出したいと本能がそう警告してくる。
でもよ、私だって度し難いことにはある。それに、私が知っている友達はそんな鮮血よりも紅い目なんかじゃない!!
私の知るジューダは、澄み切ったような青空みたいな瞳の色をしているから……!
「やかましいんだぜ……。いまのお前が誰なのか知る気は無いし、知ったところで覚えている程物覚えがいい訳じゃない。でも、友の身体を乗っ取って悪さするなら──このルーラーシップが許さねえ……ッ!」
ドゴッ、と怪物の背後からひと際目立つ轟音が鳴り響く。
その音に一瞬、気を取られた。
何が起きたのかと慢心して振り返ってしまった。
「────」
気付けば真横から裁定者は裁決だと言わんばかりに怪物をぶち抜いた。
残り100mでぶち抜かれた。だがそれは決定打にならないと高を括っていた。
当然、彼女は直ぐに追走すればいいと足に力を籠めようとしただろう。
しかし────
「……あ、れ? 踏み込む、力が────」
怪物は自らが放出するエネルギーに身体を悲鳴を上げていることに気が付けなかった。
当然だ、純然たる器ならいざ知らず、ヒトが混ざった器であるならば自然と耐久力も下がるのは自明の理。
故に、
「ウソ……まさか負けるなんて……アハハハッ。それに、この身体ではしばらく主導権は握れそうにない……わね」
ワタシがまさかデビュー前の
「はぁッ……ハァッ……げほっ、ゲホ……なんとか、勝てた……」
ゴール版を抜けた瞬間、糸が切れたように私はターフに倒れこんだ。
ジューちゃんにいったい何が起きたのかとか色々と心配だし問いただしたいことがあるけれど。
……私はその怪物に重い体を起こしながら問いかけた。
「……ねぇ、私が勝ったんだから教えてよ。今の貴女はダレ?」
「ワタシは影。あるウマ娘の本能にして原初の欲。細かい内容については……アノ
お前を次は逃がさないと暗に宣言してきた直後、影とやらは意識を失うように地面に向かってゆっくり倒れていく。
「……! ジュー!! 大丈夫かッ!?」
咄嗟に倒れないように支え膝枕した数秒後に元の澄み切った蒼い瞳が私を見つめる。
「……るー、ちゃん?」
夢見心地なのか、ジューちゃんはぼんやりしている。
「────よかった……大丈夫かジュー。急に雰囲気変わったからびっくりしちゃったのだ! 後で根ほり葉ほり聞くからな! ジューちゃん!!」
「?? なんで──あ。そういえば……」
結局、あの時声を聴いて、それ以降の事が思い出せないな……多分ルーちゃんが目に見えて疲れている表情をしてるのは私が原因なのは確かだけど。
うーん……よく分からないや。
そうした時、ふと教官もといお義母さんがこっちを何か決意したように見つめていることに気が付いた。
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裏白いきつねさん、春日井ないたろさん、高評価大変ありがとうございます!!!
この感謝を胸に精進してまいります!
スティルインラブは、いいぞ。