神出鬼没な冒険者と仲間になるのは間違ってるのか   作:やりも

1 / 17
迷宮都市_オラリオ

「ふぁぁぁ…7年振りアルネ。」

 

 

 茶色の丸いサングラスをかけた長身で細身の男が迷宮都市オラリオの城門の前で唐傘を差して見ていた。

 今日は快晴であるのにこの場には合わない唐傘を差した男は城門に向かってゆっくりと歩いた。

 

 オラリオに入るためには身分証明等を行わなければならず、そのためには列に並ばなければいけない。だが男はそんな列は無視するように歩いて向かう。

 

 

 だが、瞬きをする間に男は城門を抜けてオラリオに入っていた。

 男は振り向く様子もなくそのままオラリオの中心へと向かった。男はオラリオではなかなか見ないような服装でかなり珍しい装いであるのに対し、周りは男のことを認識していないようにただ日常を過ごしていた。

 

 

 男はあまりにも変わらない様子を見て少し溜息を吐いた。

 だがすぐに興味を失せたように大通りを通ってオラリオの中央にそびえる高塔、バベルへと向かった。バベルの下にある迷宮、ダンジョンへの入り口を通り、そのまま階段を下っていく。

 

 

 上層は見向きもせずにそのまま中層へと降りる。モンスターとすれ違ってもモンスターは男の存在を認識すらしていないようであった。

 

 

 男は下り続けて25階層までやって来た。

 

 男は相変わらず誰にも認識されていないのに慣れているように唐傘を差しながら歩いていると向かいから大剣を持った猪人の冒険者とその仲間であろう人物たちが歩いてきた。男はそんなことも気にせずに通り過ぎようとした。

 

だが猪人の冒険者が一瞬で剣を抜き、男の首元に向けた。

 

 

「そこにいるのは誰だ。」

 

「………。」

 

 

男は驚く様子もなく、サングラスの奥に隠れる目を猪人に向けてから唐傘を閉じた。

 

 

「お前は…!」

 

「久しぶりアル、随分と筋骨隆々な男前になった様子ネ。」

 

 

男は軽薄そうな笑みを浮かべて手をひらひらと振る。猪人は男の正体に気が付くと剣を下ろした。

 

 

「帰ってきていたのか。」

 

「とは言っても今日ヨ?暇だから下層まで降りてきたところネ。」

 

「暇だからと言って下層に降りるのはお前くらいだ。」

 

「二ヒヒ!まぁ再会はここまでにして、この周りの奴をどうにかして欲しいアル~。」

 

 

 男は困ったような声を出しながら周りに目を向ける。男の周りには猫人、エルフ、ダークエルフ、4人の小人がそれぞれの得物を男に向けていた。

 

 

「おい、コイツがどうしてオラリオにいる?」

 

「何って、冒険者だからヨ?」

 

「まずお前は、ゼウス・ファミリアの【陰龍(イェンロン)】は7年前に死亡したはずだ。」

 

「……。」

 

 

 男はその言葉を聞いて固まった。

 

 男は猪人に向かってあることを聞いた。

 

 

「我って死んでたの?」

 

「……じゃあ今ここにいるお前は何者だ?」

 

「間違いなくゼウス・ファミリアの【陰龍】の流幽(リュウユー)ネ。え、もしかして我って死亡扱い⁉」

 

 

 男、もとい流幽と名乗った男はびっくりしたような声をあげた。

 

 

「お前…何年間オラリオから離れていた?」

 

「7年ネ!ザルドとアルフィア姉が暴れてるって聞いてオラリオに来て以来?」

 

「そこから姿を確認できなかったから死亡扱いになったんだろう。お前のスキルと魔法は認識できないからな。」

 

「ナルホドネ!」

 

 

 流幽は納得したように笑ってからサングラスを頭にかけた。

 

 

「流石に幽霊扱いは慣れてるケド、死亡扱いは初めてヨ!」

 

「じゃあお前、生きてるのか?」

 

「「「本物!?」」」

 

「失礼な小人どもネ!ぶっ飛ばされてーアル!?」

 

 

  流幽は唐傘をバッドのように構えるが猪人が止める。流幽は溜息をついて傘を下ろした。

 

 

「流幽、今はどこのファミリア所属だ?」

 

「オッタルには関係ねーアル…と言いたいところアルが古い親友だし教えててやるネ。一応ヘルメスのところヨ。」

 

「ヘルメス・ファミリアか。」

 

「父神が勝手にヨ。ステイタス更新は15年前から一切してネーあるから当時のままヨ。」

 

「それであれほど気配を消せるなら今はかなりのものだろうな。」

 

「知らネーアル。我はヘルメスを主神と認めたわけじゃないネ。」

 

 

 流幽はサングラスをかけなおし、唐傘を開いた。

 

 

「足止めして悪かったネ。我が生きてることはギルドに報告しないでいいアル、面倒くせーシ。今度はこっちから遊びに行くヨ。」

 

 

 そういうと流幽は唐傘を差して下に向かって歩き出す。

 

 そこにオッタルが声をかける。

 

 

「俺らのファミリアに来ないか?」

 

 

 流幽は足を止めて振り向くが、先ほどの軽薄そうな笑みは消えていた。

 

 

「我が慕っていた父神を…主神様をオラリオから追放したのは他でもないお前の主神だ。それを理解して声をかけているなら、お前をここで殺す。」

 

 

 流幽の声は怒気に満ちており、サングラスから覗いた目には憎悪が滲んでいた。

 

 

「お前が俺を殺せると思っているのか?」

 

「7年という猶予があったのに成長していないお前がその言葉を言えるとはな。」

 

 

 流幽は背を向け、そのまま歩き出すが瞬きの間にその姿は傘と共に一瞬で消えた。

 

 

「やはりダメだったか。」

 

「アイツを誘うなんて正気の沙汰じゃないだろ。」

 

「…いけると思った。」

 

「バカだろ。」

 

 

オッタㇽはヘディンの言葉を聞いて誘うのはまた今度にしよう、ダンジョン以外の場所でと考えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。