久々にダンジョンに潜って冒険者として冒険でもしようかなと考えて唐傘を差しながらダンジョンの下に向かって歩き進めた。
正直、死亡扱いされているし昔と格好はかなり違うから15年前の知り合いじゃなきゃ我だとは分からないだろうな。
18階層、
持ってきた食事を食べながらボーっと木を眺める。昔はここでこんなのんびり休んだことあったっけな。いや、アルフィア姐に色々とやらされた気がする。
「……そういえば好好爺はどこ行ったのやら。」
好好爺はオラリオから追放された後、我には何も告げずにどこかに行ってしまった。我に何も言わなかったのには理由があるから気にしてはいないが流石に15年は音沙汰無しなのはムカつくな…。一回くらい本格的に見つけに行ってやろうか。
そんなことを考えていたら誰かがこっちにやって来る気配がした。多分一介の冒険者だろうし、我のことを知ってる冒険者がそう簡単に会えるわけないだろうと高をくくっていた。
「君、流幽か……?」
「アー…人違イネ?」
これが好好爺の言ってたフラグ回収ってやつね…。こんな早く回収するとは思ってなかったヨ。
「流石に無理があると思わないかい?」
「……そうネ、久しぶりよ【勇者】。」
「まさか君が生きているとは思わなかったよ。君は7年前の『大抗争』で死んだと聞いていたから。」
「…運よく生き残った残兵ヨ。」
ロキ・ファミリア団長、【
「どうしてダンジョンにいるんだい?それに君が生きていることはギルドから報告されていないし。」
「まず、我がここにいるのは冒険者だからネ。だいたい、我がなんで勝手に死んでルことになってるアルよ。我の死体でも見つけたのなら納得するけどネ。」
「確かに……それについては調べた方が良いだろうね。まずは、また会えて良かったよ。」
「…お人好しネェ。【勇者】、本日はお一人カナ?」
「いや、ウチの幹部の子たちと一緒に探索だよ。君は会ったことないだろうけど。」
「フーン。」
俺と会ったことのない幹部ねぇ。少なくともLv.4、または5くらいの実力はあると思ってもいいか。しかしなぁ…。
「【勇者】、レベルはいくつダ?」
「Lv.6だ、リヴェリアとガレスも同じさ。」
「6?…思ったより上がってねぇナ。」
「君たちの速度が異常だっただけだから…。」
「それもそうカ。」
我は立ち上がり、フィンの方を向く。
「【勇者】、我の知らねー団員と手合わせさせるヨ。何人でもいい、我一人で相手するアル。」
「へぇ、再会早々に随分と面白い提案をするね。」
「我より若い世代の実力確認ヨ。」
「まだまだ若いくせに。」
「もう30になるからジジイヨ。」
「それで言ったら僕やガレスの方がずっと年上だね。」
「【
「…リヴェリアに直接言ってみたらどうだい?」
「……ヘラの眷属たちよりマシアル。」
「だからそこと比べないでくれ…。」
フィンに連れられて、ロキのところの優秀な若手に会いに向かう。
「団長、おかえりなさい!」
「ただいまティオネ。」
「フィン、その人誰…?」
「彼は…。」
金髪の剣士の少女が我のことを【勇者】に聞く。だが、我はこの少女のことを知っている。多分、あの好々爺から聞いた子か?確か『ダンジョンの娘』とかだった気がするが、あまり詮索しないでおくか。
「我はそうアルね…【勇者】の旧知の仲の冒険者と覚えてくれたらいいヨ。」
「冒険者?そうは見えないけど。」
「ティオナ、彼はこう見えても僕より強い。」
「あ?どういうことだよ。」
「戦ってみれば分かるよ。彼も君たちと手合わせしたいと話していたからね。」
「そうネー、予想よりかは強そうアル。ちょっとは楽しめそうネ。」
唐傘を軽く担いで観察する。金髪の少女はレイピア使いで小回りが利くタイプ。狼人は肉弾戦っぽいな。アマゾネス2人は面倒そうな気がするが、まぁなんとかなりそうだな。
「【勇者】、どれくらいまで手加減した方がいいアル?」
「そうだね…骨が折れない程度にとどめて欲しいかな?」
「ナルホド……まぁ好きなタイミングで初めてヨ。あ、お前らは本気でいいからサ。」
我は唐傘を差してあくびをしていると狼人が真っ先に突っ込んできた。
「甘ぇヨ。」
「は?」
我は蹴り出された脚を指で止め、足を掴んでは回転させて地面に伏せさせた。
「中々いい蹴りネ、Lv.5くらいカ?」
「クソっ‼」
続いてアマゾネスの二人が我に向かって攻撃してくるが、簡単に傘で気道の流れを変える。筋はいいが、まだまだ甘い。
「ちょっと!なんで傘で対抗できるのよ!」
「しかもこの傘、硬い!」
「特別製の傘ネ。見た目よりずっと頑丈でずっと…。」
「【
「魔法耐性もあるネ。」
アマゾネスの攻撃からのヒューマンの少女の追撃を傘を開いて防御する。連携はとてもいいが、それでもまだ弱い。
「…力量は分かったヨ。」
我は傘を閉じてそれを、少女に思いっきり投げつける。
「っ…!」
「【天は地となり】【地は天となる】」
「詠唱⁉」
「【
詠唱をやめさせようと攻撃をさせられるが、我は縦横無尽に避ける。
「【我の足着くところこそ地となり】【我の頭があるところこそ天なる】」
「はぁ!」
「やぁ‼」
「【天道も思うがまま】【我は万有の支配者】」
並行詠唱をしながら4人の体に連続で触る。
「【平服しろ】」
詠唱が完了した瞬間、触れた4人の体が地に伏せる。
「体が…!」
「重い‼」
「う、らぁぁ!」
「無駄ヨ、レベル差がありすぎるし。無理に抵抗しようとすればもっと潰れる。」
傘を拾い上げて汚れを手で落とす。重力をかけすぎるのも体に負担がかかるので解除すると【勇者】が笑いながら歩いてくる。
「流石は【最強】の眷属、腕は衰えてないみたいだね。」
「…嫌味カ?【最強】は消滅した、ここにいるのは残兵ヨ。」
「だとしても、君の冒険と経験は確かに残っているだろう【陰龍】。」
「【陰龍】…?」
「かつてオラリオに存在した【最強】、ゼウス・ファミリアに所属していたLv.7の冒険者の【陰龍】流幽。その本人さ。」
「ヨロシクネ~。」
「Lv.7⁉」
「【猛者】と同じ……!」
「我はギルドの記録では死亡扱いになってるみたいだけどネ。」
汚れを落とした我はそのまま傘を差す。ここで時間を使いすぎたし、そろそろ離れないとだな。
「【勇者】、我が生きていることはギルドに報告しないで欲しいアル。」
「どうしてだい?」
「一度死んだ者として扱われたのならそっちの方が都合がいいからネ。それに我はもう、一戦を退いた身。静かに暮らしたいアル。」
そう言って、我は背を向けて18階層から19階層へと向かった。
久々に今の第一級冒険者と手合わせをした。だけど、足りない。【黒龍】討伐にはもっと強さが必要だ。正直に言って、今のロキ・ファミリアもフレイヤ・ファミリアの戦力も足りなすぎる。
だが、そんなことは考えても仕方がなく、別の話題が頭に浮かんだ。
「あの小娘……短文詠唱の魔法の割には威力が強かったな。」
あの好々爺が昔、我にくれた本の中にあった英雄と精霊の話。確かなんという物語だったか…。
「英雄アルバートと風の精霊……いや、関係あるのか?」
この答えは多分、あの好々爺は知っているのだろうが、今の我には全く分からないのでこれ以上考えるのはやめておこう。
我が知っていい領分の話ではないのかもしれないしな。