五感組逆行譚〜我ら人生4周目、ワカメブッコロがし隊〜 作:幸翔雪
鬼殺隊九十六代目当主、産屋敷照利。かつての耀哉が、無惨に報復する為に生を長くしていたというのなら、彼は五感組に直接礼が言いたいの一心で生きながらえていた。
そもそも七年前に手紙が一方的に送りつけられた時から、変わらない戦局に追い風が吹いた、そんな感覚がしていたのだ。どうして鬼殺隊に入ってすらいない者が自分の存在を知っているか、なんて些細なこと。それだけに留まらず、誰にも話していない己の本心まで見抜かれているように感じたが、それでも照利は手紙の送り主のことを信じ続けていた。己の直感が、大丈夫な存在だと騒いでいるから、信じた。
「柱の座を賜ったばかりの身で差し出がましいのですが、我ら五人の連名として、先ず二つ程、信じていただきたい話がございます」
「うん、どうしたんだい?」
そう言って照利は、呪いに蝕まれた身体を無理矢理に起こして、五人の方を向き直る。それを支えたのは嫡男である耀哉ではなく、次男である閃理であった。耀哉は既に次代当主としての立ち位置におり、もう照利が余命幾ばくもないことから、立場としては当主と同等となっている。その反対、閃理と晟斗は照利と耀哉を支えるためにいるので、ここでその役割をするのは閃理となったのである。
照利はこの五人のことを、入隊前のこと、そして最終選別で聞いたこと、二年にわたる任務の様子から完全に信じ切っているので、どんな滑稽な話をされようとも信じると決めている。それが九十六代目当主としての最期の役割であり、また、己の命の恩人への最大限の謝礼であると考えているからだった。
そんな産屋敷家の男四人に続けて口を開いたのは、この場で唯一の女、栗花落カナヲだった。
「単刀直入にお伺いします。お館様は、“逃れ鬼”の存在をご存知でしょうか」
「“逃れ鬼”……鬼舞辻の呪いから逃れた鬼、であっているかい?」
「はい、その通りです。では、その逃れ鬼に該当する
「……閃理」
照利は己を支えている閃理を見やる。
「鬼殺隊五十二代目当主、産屋敷光義の頃の鬼殺隊の記録に、“珠世”たる鬼への言及があります。始まりの呼吸の剣士、継国縁壱が鬼舞辻無惨を追い詰めた際に鬼舞辻の支配から逃れ、継国縁壱はそれを見逃したとされています」
「晟斗」
「継国縁壱様は鬼殺隊に呼吸という技法をもたらし、多大に貢献してくださった方です! 彼が見逃した鬼と言うならば、信頼度は高いでしょう」
「……我々産屋敷は珠世たる鬼のことをこう考えているよ。分かってもらえたかな?」
閃理と晟斗に聞いたが、もちろん照利も耀哉も珠世のことは知っている。ただ、これからの鬼殺隊として、当主となりしっかりと先見の明を持つ耀哉を当主に、
「そうお考えなのでしたら、話が早いです。私達五人は、既に珠世さんとの接触を済ましています。そして、炭治郎の父、そして私と善逸の養父の患っていた病気の治療を頼み、成し遂げていただきました」
「……そうかい。それで?」
「既に接触から二年が経っており、私達の家族とも重ねて交流がありますが、珠世さん、そして彼女が唯一鬼に変えた人、愈史郎さんは人を襲うことはありません。また、医療の腕が相当でありますので、珠世さん、並びに愈史郎さんの存在を、鬼殺隊として承認していただきたく存じます」
「耀哉。これからの鬼殺隊を担うのは私ではない。耀哉だ。判断をしなさい」
「っ、はい」
耀哉はカナヲをはじめとした五人を見据え、じっと考え込むようにする。耀哉もまた、父を救ってくれた五人のことを既に信頼していた。故に、珠世達が人を襲わないというのは記録されてたことと合わせて完全にそれを信じている。耀哉が考えているのは、他の鬼殺隊の剣士たちに受け入れられるのか、そして上手く協力関係が結べるのか、そういったところだ。
しばらくして、耀哉はひとつ頷いた。
「鬼殺隊は珠世殿、並びに愈史郎殿のことを承認します。そして、近いうちに正式に協力関係も結びたいと考えています」
「ありがとうございます。耀哉様がそう判断なさったことは、しっかりと珠世さん達に伝えさせていただきます」
「それから、一つ教えてください。……どうして、珠世殿のことをご存知だったのですか? 父上のこともです。父上は
そして、耀哉はまた一つ、続ける。
「皆様は、未来のことをご存知なのではないでしょうか」
「……はい。それがちょうど俺達から信じていただきたかった、もう一つのことです。……俺達は、三度転生しています」
説明を代わったのは善逸だった。この五人で、礼儀を忘れずにしっかり説明をこなせるのは、善逸、カナヲ、玄弥の三人である。炭治郎は素直に説明が下手であるし、伊之助は礼儀が野生児している。もともとカナヲが珠世のことを、善逸が転生のことを、そしてその後の交渉は玄弥が請け負うことは決まっていた。
……まさか、話す前に悟られるとは思っていなかったけれど。善逸が内心ビビりまくっているのを炭治郎の鼻は敏感に察知した。
なんでバレるの!?産屋敷の先見の明、怖すぎない!?というか閃理くんはやけに正確に物話すし、晟斗くんは晟斗くんで天真爛漫な音の中にすごいどす黒いの聞こえるし!?耀哉様の優しさで包み隠された腹黒い音もヤバイし、お館様はいよいよなんにも音聞こえないし!?どうなってんの産屋敷!!!怖すぎるだろ産屋敷!!!
と、そんな様子は微塵も見せずに、善逸は淡々とこれまでの生のことを説明した。
常人からすれば、二百年とか生きてる善逸達も同じくらいどうなってるか分からないし怖い。
「……私の代で、鬼舞辻無惨が……!」
「耀哉。喜ぶのはまだ早いよ。ただ、これでどうしてこのような行動ができたかは分かったね……おや、閃理? どうかしたのかい?」
「……俺や晟斗は居なかったのでしょう。我妻様達の知る世界には」
閃理は頭の回転が著しく早かった。生まれた時から理解はすれど納得できなかったこの仕来りに、鬼の存在に、それでも向き合えるようになったのは、ここに居る父がいたからだった。
もし、その父が、自殺していたら。幼かった自分はきっと、碌なことをしなかったに違いない。自暴自棄になって自分もまた自殺……最悪の場合、弟、それからここにはいない姉や母までも巻き込んで心中した可能性が高い。そう判断した。
そう俯いた閃理に、ひとつ、近づいた影があった。炭治郎だ。
「俺達は閃理様や晟斗様のことを知りません。かつてのこの時代にもいなかったし、未来でも、いたかもしれないけど関わったことはない」
「はい」
「でも、だからこそ俺はこの生で、耀哉様の弟であるお二人に会えたことが嬉しい。俺達は三つの生のことを覚えているけど、閃理様達は知らないのだから。俺達がすべきは、この俺達の持つ知識と、今ここにいる閃理くん達の知恵を活かして、できる限りいい未来に進めるようにすること。そうじゃないかな?」
次第に、“鬼殺隊当主家のお子様”ではなく、ただの小さな子どもを諭すような口調で炭治郎は告げる。実際、炭治郎達は閃理達のことを、“知らない”以外何も言えない。ただ婿入りしたのか、はたまた命を絶ったのか、何も分からないけれど、せっかく会えたこの生では、少しでも多くの人に幸せに生きて欲しい、そう思っている。
「兄上。竈門様の言う通りです。私達はこの人生しか生きていません。この唯一の命を竈門様達に救っていただけたのなら、
「っ……ああ、そうだな。すみません、皆様、父上、兄上、晟斗。
「まあそもそもは照利を苦しめたキブツジが悪ぃからな! 悪いのはアイツだけだ!」
「伊之助、敬語使え!」
玄弥が伊之助を引っぱたき、きょとんとした空気の後、少し笑いが溢れる。その隙に炭治郎は元いた位置に戻り、姿勢を正した。
「えっと……産屋敷家の皆様には、俺達の持つ知識でできる限り力を尽くすことを誓います。ただ、時期が来るまでは、柱を含めた隊士達には話さないでいただきたいです」
「そうだね。無闇に話して予測がつかなくなることも困る。約束しよう」
「それから、珠世さん達のこと、俺達の記憶のことを踏まえて、幾つか玄弥から進言がございます」
善逸に話を振られて、玄弥が一礼する。ここまでそれなりに長かったが、五人が求める本題はここからである。
「一つ目、柱が頂いている屋敷ですが、俺達の家族と竈門の家族が住めるような広さの屋敷を五人で一つとしていただきたい。これは藤の家紋の家として、俺達の家族に頼んで機能させようと考えています。また、その隣に隊士達の診療所や療養の場として使える屋敷も欲しいです」
「それなら丁度、母屋と離れがある屋敷があるから、その離れに君達の家族が住むといい。しかもその隣には丁度、医者が住んでいたけど空き家になった屋敷もあるんだ。噂では
「ありがとうございます。次に、鬼殺隊の効率化について三つ。まず、鬼殺隊は政府公認の組織になるべきだと思い、俺が入隊してから政府の方に根回しをしています。続けてよろしいでしょうか」
「それは……すごい助かります。ですよね、父上?」
「耀哉の言う通りだ。ありがとう、玄弥」
「いえ、これは俺の性分なところもあるので……」
令和で警察官として生きた不死川玄弥。法が最強なことをよく知っているので、やはり非公認組織はむず痒い。それに鬼が滅亡した先の未来にもこのラインは必要になるだろうと踏んでいる。
「それから、今後、柱級の隊士が俺達を除いて、九人以上現れることを約束します。よって、柱の九人制度の撤廃をお願いしたいです」
「ああ、承った」
「最後に、最終選別について。今の状態では死傷率が高すぎると思います。戦力強化のため、柱級一人は藤襲山に配置、鬼に殺されそうになっている隊士の救出をするようにしていただきたい」
「……助けられた者は不合格ということでいいかい?」
「それはもちろんです」
「ああ、それならば見直させてもらうよ。耀哉、五人の力を借りながら耀哉が中心としてやりなさい」
「分かりました」
「俺からの進言は以上です。今後、我ら五人、産屋敷家並びに鬼殺隊に忠誠を誓うことを約束します」
「ありがとう。有意義な話ができたよ。鬼殺隊の未来のことを、どうぞよろしく頼む」
双方礼をする形となって、五人は産屋敷家から去ることとなった。自分達の要求がすんなりと全て受け入れられたことには驚いたが、あの不審すぎる手紙と二年間の仕事が評価されていた故なのであまり気にしなくていいだろう。
「これで、父さん達と玄弥んとこの家族、やっと里に呼べるね」
「おう! 明日にでも呼びに行くぞ!」
「あんま母ちゃん達のこと無理させちゃダメだぞ、伊之助」
「分かってらぁ! 権八郎の方も全員生まれたんだよな?」
「ああ。六太がちょうど就也くんと同い年だ」
「竈門兄弟は十年早く生まれてるけど、玄弥のところは順番が変わらないだけで不規則……不思議なこともあるんだね」
「あ、俺このまんま珠世さんと愈史郎に報告に行ってこようか? みんなは先にもらった屋敷見といてよ。すぐ追いつくから!」
「たのんだぜ紋逸!」
柱となりかなりの自由を手に入れた五人。彼らの望みはワカメを殺すことと恩人を救うこと。いよいよスタートラインに立てた、そんなところだろうか。「忙しくなる」と誰かが呟く。今日はよく晴れた空が広がっていた。
少し真面目すぎるんじゃないですかと思いつつ。次からはもっと自由にはっちゃけてもらいます!!!!(宣誓)
閃理くんの能力とか晟斗くんの性格とか諸々捏造だらけです。つまりね、
・珠世さん認めてね→もちろん
・俺達転生繰り返してるよ→役に立ててくれるんだね、ありがとう
・でけぇ屋敷ちょうだい、藤の家紋の家家族に頼んでやってもらうから→もちろん。隣におまけも付けとこう
・鬼殺隊政府公認にしていいですか(俺が気持ち悪いので)→助かるありがとう
・柱九人撤廃お願い!→五人が言うのなら信じよう
・最終選別、柱配置して!→分かった。見直すことにするよ
あらとても順調(白目)
いいんだ!これは鬼滅キャラにイージーストーリー歩ませたいからいいんだ!!
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