魔女の箒~原初の魔女は空飛ぶ箒でぶん殴る~ 作:令和大学文学部小説科
空飛ぶ箒で物理的に相手を叩きのめすシーンを書きたいです。
ジョジョのラッシュみたいに箒で相手を叩きのめしたいです!(自分への無茶振り)
-世は魔女狩りの時代-
戦場を覆う夜空に、不穏な影が走った。
誰もがそれを鳥の群れと錯覚した。
だが、次の瞬間には理解した。
――それは無数の箒だった。
天空より降り注ぐ箒の雨。
箒は矢よりも速く、槍よりも鋭く、大地に突き立つ度に爆ぜ、黒煙と業火を撒き散らした。地は抉れ、兵は肉片と化し、悲鳴すら爆音に掻き消される。逃げ惑う者を追うように、次々と降り注ぐ。一本ごとに命が潰え、十本ごとに軍勢が消え失せる。
箒の雨は止むことなく、空そのものが魔の支配に染め上げられていく。
人々が見上げた先にいたのは、一人の魔女。
揺らめく黒髪は紫の燐光を帯び、闇を切り裂くように広がる。瞳孔は深紅に染まり、通常の白目にあたる部分は漆黒で覆われていた。血の気を奪う白い肌に、漆黒のドレスをまとい、その裾を覆う深紅の紋様はまるで呪詛のよう。妖艶にして端正、凍りつくように完璧な肢体。彼女を見た誰もが絶世の美女としてその美しさに魅了されるだろう。
ーー彼女の頭上には虚空が裂け、そこから無尽蔵に箒が溢れ出していた。
彼女の魔法は空飛ぶ箒を創り出す。そして意のままに操ることができる。ただの箒ではない。箒は洗練され、あらゆる武器を凌駕する兵器として昇華していた。
その姿はまさに原初の魔女。
兵も、指揮官も、魔法使いさえも、彼女の前では膝を折ることしかできない。
そしてまた、空から箒の雨が降り注いだ。
箒。
箒箒。
箒箒箒箒。
箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒!
その一振りごとに戦場は沈黙し、やがて戦場から音そのものが奪われていった。
☆ ☆
――意識が、暗闇から浮かび上がった。
焼け付くような痛みが全身を駆け巡り、肺に溜まった空気がひどく重たい。
ゆっくりと目を開けると、そこは薄暗い部屋の中だった。
崩れかけた石壁に、月光が小さな窓から差し込んでいる。
埃と血の匂いが混ざり合い、冷え切った空気が肌を刺した。
「ここは……?」
あれ、声が随分高いな。澄んだ女の声って感じがする。
その響きに、心臓が跳ねた瞬間――別の光景が溢れだす。
そう、俺は――女なのか?
「……私は、確かに……“俺”だったはずなのに……」
胸に触れると、そこには女の柔らかい感触。
震える手を見下ろせば、華奢で白い指先。
己の声も、身体も、記憶にある男の体ではない。
――あれ、体が女に変わってるじゃん。 TS?俺の名は?
しかも…
「私は私だ、私私私…」
どういうことだ。
俺って言おうとしても、なぜか私口調になってるぞ。
喉まで出かかった「俺」が、どうしても「私」に変換されてしまう。意思に反して、女の一人称が勝手に口から零れ落ちる。
慌てて部屋を見回す。
壁際に、ほこりを被った大きな鏡が立てかけられていた。
吸い寄せられるように近づき、映った顔を見た瞬間、息が止まる。
そこにいたのは知らない美女――絶世と言って良いだろう
墨を溶かしたような漆黒の髪が肩を覆い、
瞳孔は深紅に染まり、通常の白目にあたる部分は漆黒で覆われていた。
白い肌を覆うのは、夜そのものを縫い上げたような黒いドレス。
俺が今まで出会ったことない程顔立ちが整っている。
女?女になってるやんけ!
女に変わっているのは何故だ。意味が分からない。
部屋の窓から薄暗い空を見上げると、月が二つ浮かんでいる――ここは地球じゃない。
そうだ。思い出した。
俺は――この世界に“魔女”として転生したのだった。
この世界には、人類と呼ばれる存在の中にもいくつもの種族が分かれている。獣人族、天狗族、そして人間族。その中でも魔女は、極めて特異な種族だ。
魔女は必ず女性として生まれる。
見た目も身体能力も、人間の女性とほとんど変わらない。
だが、決定的に違うものが二つだけある。
一つは血の色。魔女の血の色は黒色だ。だから出血したら一瞬で魔女だとバレてしまう。
――そしてもう一つが心臓だ。
魔女の心臓には特別な力が宿っている。
そして、その心臓を食べた生き物は『魔法』を使えるようになる。
つまりこの世界の魔法使いとは――魔女の心臓を喰らった者のことだ。
魔法というのは、工夫次第ではなんだってできる、夢のような力だ。言ってしまえば、魔女の心臓は海賊漫画の悪魔の果実みたいなもんである。
だからこの世界では魔女狩りが当たり前。皆、魔女のことを自分が魔法使いになるための道具にしか思ってない。
そんなわけで、魔女として生まれた俺はまぁ苦労した。
人間に襲われるなんてことは当然だが、仲間である魔女同士でも殺し合いはしょっちゅうだ。
魔法使いになれるのはなにも人間だけじゃない。魔女だって他の魔女の心臓を食えば魔法使いになれるのだから。皆、魔女として魔女狩り時代を生きてきたから現状を変えたくて仕方ないのだ。
俺もさすがに母親に殺されそうになった時はビビったね。反撃して殺す前に言ってたけど、魔法使いになって変わりたかったって。
だからって実の娘を普通殺そうとするか、普通?まぁ見てて可哀想だったから気持ちは分かるけどさ。
なんやかんやあって、俺も魔法使いになれたわけだけど、俺は魔法使いとしての適正があったみたい。強さには自信があったから、他の魔法使いにそうそう負けなかった。なんなら1人で魔法使いの軍隊とも戦えてた。
それでまぁ、襲ってくる奴ら叩きのめしていたら、仲間とかもできてきた。じゃあ、折角だから全ての魔女が安心して暮らせるパラダイスみてぇな国を創るかってなったわけだ。
で、戦争に勝ちまくって無事に領土を奪え、実際に国を創ってみた。あ、俺君主な。
まぁそれでしばらく平和に暮らしてたわけど、人間や獣人が黙ってるわけもなく、俺の国に侵攻してきた。
よし、いっちょやってみっか!と待ち受けてたところになんと反乱。一部の魔女が俺を裏切ったのだ。その時はマジで腹立ったね。何で裏切んねん。
かくして、
帝国(人間陣営)VS反乱魔女勢力VSクロエ(俺)陣営という戦いが始まったわけである。で、ボロ負けした。
いやさ、俺だって頑張った!仲間の魔女守りたかったから!
でも勝てるわけがない!だって帝国には有力な魔法使いが凄い多いんだもん。最終的には複数人でボコボコのボコだよ!
戦った後血まみれになり、折角の美貌が台無しよ!プンプン!
…いや、マジで心臓食われかけた。俺の心臓は魔女の中でも特別らしい。仲間割れ?している間に何とか逃げた。
逃げ出して、隠れ家の一つであるここまで来てようやく気絶できた。仲間の一体には、ここに来るよう戦う前に命令してある。月の満ち欠け具合からして数日は立っているはずだ。恐らく気絶している俺のことをベッドまで運んでくれたのだろう。
イタタタ、少し休んどくか。
しばらく待つと、ギィィ――と扉が軋む音がした。
息を呑む気配とともに、一人の女性が部屋に足を踏み入れる。
「クロエ様!」
若い女性が駆け寄ってきた。
背の丈から十五~十八くらいの歳だろうか。
透き通るような金の髪は背中まで流れ、鋭く澄んだ碧眼。美少女といって差し支えないだろう。
「……クロエ様!」
少女は涙を滲ませながら俺の手を握りしめる。
「私です!マリーです!お目覚めですか?」
「マリー、生きていたか」
彼女はマリオネットのマリー。
俺の仲間が魔法によって創り出した魔法人形である。
力量以上の世界観なので、全力を尽くします。
感想あったら、凄く喜びます!
【余計な設定】
魔女
この世界にいる生き物。その生態は謎が多い。特筆すべきは、魔女の心臓を食べることですべての生き物は魔法使いになれるということだ。
魔女の心臓
魔女の心臓を食べることが魔法使いになる唯一の方法である。最初に食べたものが魔法使いになり、後に別の生き物が食べても意味はない。また、魔法使いが再度別の心臓を食べようと試みても、不思議と食べる運命にはならない。
原初の魔女 クロエ・シャンリ
本作の主人公。魔法使いであり、魔女でもある。その特性は魔女の中でも特別な存在らしい。魔法の能力は空飛ぶ箒を無数に創り出し、自在に操ることである。
【挿絵表示】