魔女の箒~原初の魔女は空飛ぶ箒でぶん殴る~   作:令和大学文学部小説科

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第四話 魔女収容所へ行こう

「は、速いですクロエ様! でも、すっごく気持ちいいです!」

 

風は、邪魔にならなかった。

 

箒と俺の感覚は、完全に重なっている。空気の密度、流れ、抵抗――そのすべてが、手に取るように分かる。星が線になって後方へ流れる。だが、視界は一切ブレない。

 

速い。だが、制御できない速さじゃない。

 

腕一本で箒を掴みながら、俺はさらに速度を上げた。下方の森は一瞬で遠ざかり、景色は平野へと変わる。身体は悲鳴を上げない。むしろ、この速度こそが自然だった。念じれば箒は自在に操作できる。音が遅れて消えていく感覚が分かる。今、俺は――音を置き去りにした。

 

 

…ここらへんでよいだろう。あまり行き過ぎると、飛んできたことがバレる可能性がある。ここからは歩きだ。

 

このまま行けば、収容所まではすぐだ。夜の彼方に浮かぶ光を見据え、俺は、さらに前へ出た。

 

☆ ☆

 

 

気づけば、地面の舗装が変わっていた。

土と砂利の道は、いつの間にか滑らかな石畳に変わっている。靴裏に伝わる感触が軽い。左右には建物が増え、明かりが連なり、夜だというのに闇が薄れていく。

 

ここが、収容所か。

まだ、ばれるわけにはいかない。隠れながら、少しずつ近づいていこう。

 

 

近づくにつれ、視界に緑色の影が溢れ出した。

 

なんだ、あれ?

ひそひそ声でマリーに聞いてみよ。

 

「ゴブリンですよ、ゴブリン」

「ゴブリン? ああ、お前と同じ魔物か」

「あんな気持ち悪い奴らと一緒だなんて、すっごい嫌です!」

 

魔物——生命創生型の魔法使いが生み出す、人工の生命体。

個体ごとに異なる強みを持ち、中には魔法を扱うものもいる。魔物そのものが魔法の延長だからだ。

 

収容所の周囲を、ゴブリンどもが巡回している。

醜悪な顔つきに似合わず、足並みは揃い、動きに無駄がない。

 

統率されている。

 

だが、あの目に忠誠の光はない。

あるのは空虚さだけだ。

 

恐らく、使い手が魔力で直接操作しているのだろう。使い手が縛れるタイプか。

ということは——収容所の中に、生命創生型の魔法使いがいる。

 

「ゴブリン自体は大して強くないんですが、恐ろしいのはその数です! あいつら、哺乳類だったらどんな動物とも繁殖するんですよ! 本当に気持ち悪いです! まるで人間みたい!」

 

石畳の上を、緑の群れがぞろぞろと歩く。見張りのゴブリンは退屈らしく、時折あくびをしている。

 

だが——悪いな。空飛ぶ箒を創り出す、そういう魔法を持っている。

 

俺は箒を創り出す。何本も何十本も。

 

創りだした箒は魔力で操作できる。俺の手足と同様、自由自在だ。

 

 

箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒箒

 

 

 

 

 

 

 

 




【魔法解説】
ステータス成績 目安
ランクZ…制御不能、暴走状態。

ランクE…魔法使いの中で、下位10%
ランクD…魔法使いの中で、下位35%
ランクC…魔法使いの中で、下位35%~上位35%
ランクB…魔法使いの中で、上位10%
ランクA…魔法使いの中で、上位3%(ヤバい)
ランクS…魔法使いの中で上位5名(覇者)

基本EからSに近づくほど、総合的に優れた魔法です。勿論、使い手の技量や環境によります。
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