悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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本日1話目です


第十話 やるときゃやる

 普通、怪人は負の感情が溜まりすぎてしまった人間のなれの果てとして、生まれてくる。

 しかし、この周辺の怪人は違う。

 

 ここの怪人は全て人間の負の感情()()で出来ている。

 そのため、理性などは勿論、コミュニケーションすら取ることが難しい。

 

 それどころか、不可能に近いと思われている。

 

 過去に一体だけここで意思疎通が出来る怪人に出会ったが、十数万体の怪人を倒した中の一体と考えると発生率の低さがわかるだろう。

 

 しかも、ここで生まれた怪人ではなかったやうだし。

 

 

 

「やっぱここの量異常だ……ろ!」

 

「この大穴の下に沢山いるんだよね」

 

「なんでそう言えるんだよ」

 

「一回確認しに行った」

 

「やっぱお前バケモンだろ」

 

 

 

 それでも、量が多いと言っても近づけさせなければ量なんて関係ねえ。

 

 俺が全方向に炎を撒き散らして、あいつが氷魔法で俺が打ち損じた怪人を撃ち抜く。

 あの時と全く変わらないやり方だ。

 

 それにしても、俺がある程度数を減らしているとはいえこいつの魔法の精度がえげつない。

 今だって、一瞬で十体くらいの怪人を正確に撃ち抜いた。

 

 あれを話しながらでも出来るっていうのが規格外さに拍車をかけている気がする。

 

 ……それにしても、全然減ってねえな。

 少なくとも数百体は倒してるはずなのに今もワラワラと穴から這い出してきてやがる。

 

 これ、大分キツイんじゃね?

 あいつの魔力量は切れないとしても、俺はそこまでの量持ってねえぞ。

 

 対多数の敵だったら俺の方がスノウより適正高いとはいえ、ちょっと多すぎるな。

 

 燃やしても燃やしても湧き出て来てる気がするんだが。

 

 

 

「GA……GA!」

 

「おい、スノウ」

 

「これはちょっと想定外かも……」

 

 

 

 それに、ここの怪人は声帯すら持ってないことが多いってのについに声を出す奴も現れた。

 おいおい、こんなんで本当に湧き潰し出来てるのかよ。

 

 ……もう少し、出力を増やしてみるか。

 どデカい魔法をぶち込んでやろう。

 

 

 

 

「スノウ、あれやるわ」

 

「……わかった。援護するよ」

 

「〈燃え上がれ、炎〉」

 

 

 

 詠唱をしないといけないのが面倒いが……。

 スノウがいるなら隙が出来る心配もない。

 

 勿論ごり押しだってこいつは得意だが、一番やべえところは魔法の正確性だ。

 

 一つの魔法を完全に制御するくらいだったら努力()()()誰でも出来る。

 だが、こいつは何十、何百、何千もの魔法を全て制御する。

 

 そんなことができる奴はこいつぐらいだろう。

 俺はまだ、こいつを超える奴に出会ったことがない。

 

 ……よし、全部終わった。

 あとはこれをぶちこむだけ。

 

 

 

「裕樹、行ける!?」

 

「任せろ!」

 

「GUAAAA!?!?」

 

 

 

 途端に、穴から巻き上がる炎柱。

 怪人達の断末魔が地下の方からいくつも聞こえてくる。

 

 声を出す怪人が全然いないここでは良くやった方だな。

 アイツらが成長したら割と手間取っただろうから今のうちに間引けたのはでかい。

 

 まあ、これ一発で倒せる怪人しかいなかったと考えるとそんなに危険ってほどではないが。

 怪人が定期的に湧くとかいう、この特殊な環境下では間引くのは大切だろう。

 

 ていうかスノウは花火を見てる時みたいな顔してるけどお前が元凶だろ。

 お前のせいで今俺の魔力ごっそり持ってかれてるんだよ。

 

 結局、一番楽しんだのはアイツか。

 いつも俺だけが貧乏くじを引いてる気しかしない。

 

 

 

「久しぶりに見たよ、裕樹のあれ」

 

「あれっていうなあれって。技名ねえけど」

 

「それにしても結構溜まってたみたいだ。ちょっとちょっかいかけるだけの予定だったんだけどね。ごめんよ」

 

「ま、色々発散できたしこっちとしても助かったから別に良いぞ」

 

 

 

 これは、別に嘘じゃない。

 

 この前行動が地味にうざったい怪人と当たったのとかもあって、理性がないただ襲ってくるだけの怪人を倒すのは中々爽快だった。

 

 まあ、それにしては少し倒さなければいけない怪人の量が多かった気はするけどな?

 

 俺としては、連絡すら取れなかった相手にまた会えたっていうだけで十分に価値がある。

 一応、こんなのでも初恋の相手だしな。

 

 仮にも一度好きになった相手のことだし、別少しくらいはなんでも良いさ。

 

 別に、今も好きとかそうわけじゃない。

 友人としては一番に好きだが、もう恋愛対象にするにはちょっと違う。

 

 フラれたわけじゃないから告白すればワンチャンあるかもしれないけれど、あっちはどうせ特にどうとも思ってねえんだから。

 

 それが現実ってやつだろ。

 

 

 

「じゃあ、咲ちゃんによろしく」

 

「了解」

 

「あ、そうだ、姉さんって元気にしてる?」

 

「ああ、それは大丈夫だぞ。この前咲と戦って楽しそうだったしな」

 

「……良かった」

 

「じゃあな」

 

「うん! じゃあね」

 

 

 

 ……全く。

 突然会ってきて、突然戦わさせてきて、嵐みたいな奴だった。

 

 一ヶ月に一度くらいは会いたい相手だが、次会えるのも長くなるだろう。

 元々の俺らはそんな関係性だったわけだし。

 

 けれど、多分次回はそこまで間が開かないような気がする。

 まあ、所詮勘ってやつだけどな。

 

 アイツの嬉しそうな後ろ姿を見ていると、こっちも元気が出る。

 さて、切り替えて家に戻るとするか。

 

 でもなぁ、それにしたってどうやって誤魔化すのが一番なのかマジで分かんねえよ……。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 --スノウクリスタルという魔法少女は、常に孤独だった。

 

 魔法少女になったばかりの頃から他の追随を許さない圧倒的な実力を誇り、国からは大きな期待を背負っていた。

 

 最も、本人は国のことなんて微塵も好きではなかったが。

 そのせいで同期から妬まれ、友と呼べる者は一人もいない。

 

 そんな状況だから、日に日に精神はすり減るばかり。

 

 

 

 そんな時に現れたのが、裕樹だった。

 

 当時まだそこまで有名ではなく、裕樹も魔法少女だとは知らない状態ではあったのも、彼女にとって良かった。

 その出会いは、確かにスノウクリスタルという魔法少女を変えることとなったのだから。

 

 

 

「もう少し笑ったほうがきっと楽しいぞ。ほら、顔上げろって」

 

「こう……かな?」

 

「お前は綺麗なんだから自信持ってもうちょっと笑えな」

 

「ふふっ、そう言ってくれるのは君くらいだよ……でも嬉しい」

 

 

 

 決して一週間に何回も会えるような関係ではなかったが、確実に、裕樹と会うごとにスノウには笑顔が増えようになった。

 

 自信もある程度ついたのか、成長する速度も段々と早くなっていく。

 

 この頃にもなると、実力差はもう覆せないものになっているので同期も関わってくれるようになってきた。

 

 間違いなくこの頃はスノウクリスタルにとって人生の中で五本の指に入るほどのものだっただろう。

 

 

 

「今日はちょっと良いことがあったんだよ」

 

「へぇ、またしょうもねえことじゃねの?」

 

「それが違うんだよ。今日のはちゃんとしたことだから!」

 

「玲衣のそれは信用がねえんだよ」

 

 

 

 しかし、幸せは長くは続かない。

 

 日本最悪の怪人大量発生によって、彼らの関係が危ういものとなってしまくこととなる。

 

 

 

「ボクはここに残る」

 

「いや、俺がここに残るから玲衣は逃げろ」

 

「……戦えるの?」

 

「……その姿、もしかしなくても、魔法少女か」

 

 

 

 魔法少女と悪の組織の一員。

 自分たちが、本来なら関わることすらもあり得ない関係だったと知ってしまったのだ。

 

 だからといって、相手が嫌いになったわけではない。

 

 しかし、会っても前までのように楽しい会話が続くことは少なくなり、ただえさえ低い頻度はもっと低くなっていく。

 

 そうしているうちに、彼らは連絡も取らないようになってしまった。

 誰が悪いとかそういうわけでもなく、二人にはどうすることもできない問題だった。

 

 

 

 そして、今日。

 久しぶりに会うということでスノウは心配をしていたのだが意外となんとかなるものだ。

 

 当時のように会話が繋がったし、軽口だって言い合えた。

 

 それがどれだけスノウにとって救われることだったのか。

 裕樹には分からないだろう。

 

 

 

(変わってない、あの頃のままの裕樹だった)

 

 

 

 当然、自分を明るくさせてくれた裕樹にはそれなりの感情を抱えている。

 ある意味、救われたとも言えるのだし、何より既に10年と少しほど拗らせている。

 今の所は咲よりもよっぽど深いはずだ。

 

 ただ、それを自分でしっかりと理解していてまだ今は抑えられている。

 

 

 

(でも、今度こそはもう少し一緒にいたい。これ以上裕樹から離れて生活したくない)

 

(じゃあ裕樹をどこかの部屋に閉じ込めたら……いや、君のことだからすぐに逃げちゃうか)

 

 

 

 

 だがその自制も既に限界が近い。

 そもそも、拗らせていた中で急に会えなくなってしまったのだ。

 そこからもう何年も耐えたのだから十分すぎるほどだろう。

 

 次に玲衣が裕樹に会った時、いやそのもう一回先かもしれないが。

 ともかく、玲衣の想いが決壊する日がそう遠くではないあろうことは間違いない。

 

 

 

「裕樹にまたすぐ会いたいな。その時はデートするみたいに2人きりで遊びたいよ」

 

 

 

 裕樹の周りにいる魔法少女は、大抵重くなる。

 それは、魔法少女という存在自体の問題もあるが、やはり一番は裕樹がちょうど良いタイミングで救うから、というところが大きい。

 

 裕樹はまだ知らないが、探せば裕樹に恩を感じている魔法少女は以外と出てくるものなのだ。

 

 ちなみに、かつて裕樹が玲衣(スノウ)に恋していた時、告白さえすれば普通に付き合えたことは確実である。

 機会を逃す男、それが裕樹だ。




どうしてあの人たちは誤解されかねない言葉遣いをしているんだ……

次話は12時7分に更新します

いきなり現れて場を引っ掻き回すキャラが好きです
ヒロイン2人目
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