悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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本日2話目です


第十一話 デート、になるかもしれない

「裕樹さん、約束しましたよね?」

 

「押し切られただけな気がするんだが」

 

「それでも裕樹さんは頷いたのでOKってことです!」

 

「はぁ……分かったよ」

 

 

 

 あれから少し経って。

 思い出したかのように少し前にした任務に連れていくという約束を咲は持ち出してきた。

 

 あれ以来一度もそのことに触れてこなかったからもしかしたら忘れたんじゃねえかと安心していたんだが、覚えてたのか。

 

 覚えてるような素振りすらもなかったから完全に油断していたよ。

 

 

 

「それじゃ、今日のについてくるか?」

 

「はい!」

 

 

 

 そんな目を輝かしても面白いもんはねえんだけどなぁ……。

 なんだかんだ言っても俺達の組織が悪の組織であることには変わりねえし、魔法少女に見せるもんじゃぁないと思う。

 

 どうせ、そう言ったとしても別に良いとか言ってみようとするんだろうけど。

 

 それにしたって、なんで魔法少女が悪の組織に馴染もうとしてるんだろうな。

 俺には良く分かんねえよ。

 

 玲衣だって、積極的に悪の組織に関わろうとはしない。

 むしろ遠ざけるだろう。

 

 しかも悪の組織つってもピンキリだ。

 俺らのところはまともな方だと自負しているが、まとも寄りの組織があるなら、そりゃ終わってる組織もある。

 

 なんでそんな世界をわざわざ見ようとするのか。

 俺にはそれが心から不思議でしょうがない。

 

 

 

「あんま見てて気持ち良いもんじゃないからな?」

 

「はい、それでも大丈夫です!」

 

「俺は止めたからな。後からなんか言っても責任は取れねえぞ」

 

 

 

 ちょっと脅すような言い方になってしまったが、やはり咲は行くと言う。

 

 ま、本人がそれで良いっていうなら俺は止めない。

 

 咲は良くも悪くも真面目で、()()()()()()ことをするのに向いている。

 だからきっと本質的には俺達の組織とは合わないとは思うんだがなぁ。

 

 それどころか合う合わない以前にドン引きされる可能性だってないわけじゃない。

 むしろ、どっちかというと冗談抜きにその未来の方がありえるな……。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 何度も魔法少女を本部に入れるわけにはいかないので、今日は少し離れたところで待ってもらう。

 

 俺は、その間で、今日咲がついてくること含めてボスに伝えることにした。

 今日の任務内容が内容なので、良い感じのところで咲を帰したいしな。

 

 

 

「……というわけなんですがどうでしょう」

 

「それでいいよ」

 

「良いんですか?」

 

「こっちとしても任務が任務だから現場は見られたくない。それに、偽って言っても普通にいつかやろうと思っていたことだから」

 

「それじゃあ、途中まで偽のことを伝えていきます」

 

 

 

 よし、許可は貰えた。

 あとは良い感じのところで咲を離せば問題はないか。

 

 ……はぁ、よりによってどうしてこんなことをする日についていくって言いだしたんだ。

 

 本当は、もう少しまともな任務の時に言ってほしかった。

 よりによってこんな、裏切り者を処分するっていう日に。

 

 無理やりにでも説得して今日は連れて行かせない方が良かったかもしれない。

 まあ、もう既に後の祭りだが。

 

 まだ、その現場さえ見せなければただの任務に見せることが出来る。

 このへんは切り替えてやるしかない。

 

 

 

 俺はもう少し咲の熱量に押されすぎないようにしないとな。

 それだけは個々のの片隅に置いておこう。

 

 もし今日が他の組織との抗争の日で、それに連れて行くとかだったらもうどうしようもなかった。

 

 流石に今日がその日だったら確実に止めていたとは思うけどな。

 今度からは、もう少し後ろめたいことがない時に連れて行くことにするか。

 

 

「すまん、ちょっと話をしてた」

 

「いやいや、全然大丈夫です。連れて行ってもらえるだけでめちゃくちゃありがたいので……」

 

「あ、内容は後ででいいか? 別に今言ってもいいんだが」

 

「うーん……それは後でで構わないですよ」

 

 

 

 だって、こういう純粋な笑顔を騙していることになるわけだしな。

 それはちょっと心苦しすぎる。

 

 俺としても、こんなことをするのは本意じゃない。

 

 

 

「それじゃ、とりあえず仮の目的地まで行くぞ」

 

「わかりました!」

 

 

 

 そんな、俺の悩みなんて知らないだろう咲は、相変わらずの呑気な笑顔を浮かべていた。

 今だけは、こいつのポジティブさがちょっと羨ましい。

 

 だがこれ以上うだうだ言っても仕方ないし、とりあえず偽の目的地に向かうことにしよう。

 あくまでも本題は組織の裏切り者のことだ。

 

 一応偽の任務と言っても、たまに、本当にたまにすることはある任務だからな。

 よし、ポジティブにいいこう。

 

 そうしたら良い感じにテンションも上がってやり過ごせるだろ。

 知らねえけど。

 

 

 

「……裕樹さん」

 

「ん、なんだ?」

 

「無理なお願いだったのに、ありがとうございます 」

 

「そんな気にすんなよ」

 

 

 

 しっかし、ポジティブって言ってもコイツは色々気にしてくるから何かと断り辛い。

 

 ただ、だからこそ。

 偽の任務では思いっきり楽しんでもらうし役に立ってもらうつもりだ。

 

 そうじゃないと連れて行く意味がない。

 ちゃんと咲にも役割があるから連れて行っているさ。

 

 意味もなく連れていくっていうのは流石にな。

 そんなことは俺にはできなかったよ。

 

 

 

「あ、この辺来たことあります」

 

「そうなのか。割とあの穴から近いから魔法少女だったら来てるものか?」

 

「いや、スノウさんと個人的な用事で来ました」

 

「へえ」

 

「あ、スノウさんって言うのはスノウクリスタルさんのことです」

 

「大丈夫、分かってる」

 

 

 

 魔法少女としてこの辺で怪人討伐に駆り出されたのかと思っていたが、違うみたいだ。

 

 それにしてもスノウと個人的に遊びにいくくらいの仲って普通にすげえんじゃ?

 あいつのことだから別の目的で来た可能性もなくはないけれど。

 

 

 

「その時名前とかってどう呼びあってたんだ?」

 

「魔法少女名にちなんだ偽名で呼びあってました」

 

「本名とかは知らないってことか」

 

「はい、何故かスノウさんにはいつの間にか知られてましたけれど」

 

 

 

 この辺は秘密主義のあいつらしいな。

 自分の名前は隠しつつ人の名前は覚えるって、俺はあいつくらいしか知らない。

 

 一応、俺は本名も知っている。

 二人きりになった時とかでも、殆どの時はスノウと呼んでいるが、たまには本名で呼ぶ。

 

 もちろん俺はあっちから本名で呼ばれてるけどな?

 

 ていうか片方は魔法少女名で呼んで片方は本名で呼ぶってよく考えれば変な話だな。

 いつもそんな調子だったから気づかなかった。

 

 咲の場合は自分でポロッと言っちまったとかその辺だろう。

 アイツ、自分は秘密主義でやってる割には変に詮索はしてこないから。

 

 

 

「それじゃ、今日のとこはここな」

 

「結構あの穴に近いんですね」

 

「若干観光地化してるけどな、ここは。でも穴に近い分瘴気とかも良く発生して怪人が生まれやすいんだ」

 

 

 

 実際、この辺は割と魔法少女もよく来る。

 ここでの怪人討伐の時に合計何人の魔法少女とエンカウントしたっけな。

 

 

 

「それじゃ、私は瘴気が発生してる所とかを探せばいいんですね」

 

「そういうことだ。俺より咲の方が探知は優れてるしな」

 

「それじゃ、見つけたら連絡します!」

 

 

 

 やっぱり、理解するのが早いわ。

 ってもうどっかに駆け出していきやがった!?

 

 感心している場合じゃねえ。

 連絡と言ってもまだ連絡先やらを登録してない気がするんだが……。

 

 ……あ、この前強引に連絡先を追加されたんだんだっあ。

 じゃあ別にいいか……どうせすぐ見つけて連絡をバンバン入れてくるんだろ。

 

 

 

 それじゃ、俺は()()の方を片付けるとしよう。

 

 組織の情報を他の組織に洩らすことがどれだけ愚かなことか裏切り者に分からしてやるよ。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 ボスからの情報によると、裏切り者がいるのはこの辺のはず。

 

 組織にいた頃はコソコソも何もしないで馬鹿正直に行動する奴だった。

 だからきっと隠れもせずに真っ正面から挑んでくるだろう。

 

 ……ほらな、案の定自分から来やがった

 

 

 

「わざわざノコノコ来てくれてありがとうなぁ!」

 

「それはお前だ」

 

 

 

 怪しそうな路地裏に入るやいなや、予想通り真正面から現れ剣を振るってくる。

 技術も何もない力任せの振り下ろしだ。

 

 それを避けて、炎をお見舞いする。

 ……だが、効いた様子はない。

 

 

 

「ハッハッハ! どうせお前が来るだろうと思って炎は対策してきたぜ!」

 

「……」

 

「どうしたどうした? まさかビビってるんじゃねえよなぁ!」

 

 

 

 安い挑発には、乗らない。

 あれに乗って攻撃すれば何かしらのカウンターをくらってしまう。

 

 どうせ、炎がダメなら違う魔法を使えば良いだけだしな。

 別に俺は炎しか使えねえから使ってるわけじゃねえぞ。

 

 そもそも、コイツと俺じゃ圧倒的に俺の方が強い。

 

 油断さえしなければ、負けるだなんてことないんだから。

 

 そうだ、どうせなら結構前に玲衣から教えてもらった氷魔法でコイツを倒すことにしよう。

 

 

 

「お、オレの腕が!?」

 

「油断をするからだ」

 

 

 

 油断をしているコイツの手に思いっきり氷魔法をぶつけてやれば、ほら、この通り。

 

 努力くらいすれば、二属性の魔法でも覚えられるんだよ。

 

 自分も魔法が使えるっていうのに装備に油断しやがって。

 そもそもあの装備だって何度もやったらいつかは燃えるくらいの代物だろうのに。

 

 油断するからこうなる。

 

 足もついでに凍らせておくか。

 逃げれるほどじゃねえとは思うけどな。

 

 

 

「もう、逃げられないか……」

 

「そうだ、さっさと報いを受けやがれ。俺は組織の中でも穏便な方だからな」

 

「ッ……どの口が!」

 

 

 

 今お前の相手が後輩だったらお前はもう切り刻まれてんだよ。

 街中で余計な騒ぎを起こしたくないからこういうのは俺がやってんだ。

 

 どうせもう逃げられねえから、さっさと拘束して本部に連れていく準備をしよう。

 咲にはもう少しだけ待ってろ、みたいに伝えておればいいか。

 

 

 

「それじゃ、無駄な足掻きはするなよ」

 

「嫌だ! 嫌だ! ……そうだ、あの方からもらったこれを使って……!」

 

「おい!」

 

 

 

 だが俺が、本格的な拘束をしようとした時。

 奴に何か、よく分からなち飴玉みたいなやつを飲み込まれちまった。

 

 みるみるうちに、コイツの体は黒く染まり、黒いモヤが纏わりつく。

 

 

 

「これ、怪人化……?」

 

「ユ、ユ、ユウキ、オマエコロス、ス」

 

「くそったれ!」

 

 

 

 人工的に人を怪人化させる飴玉なんて俺はしらねぇぞ。

 なんでそんなもんをコイツが持ってんだ!?

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