悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました 作:ひぶうさぎ
人間、たまには一日中何もしたくなくなる日が来るもんだ。
俺にとっては、それが今日だった。
……と、いう訳ではなく。
単純に昨日のせいで体調があんまり良くなくて、ただただ動きたくない。
ここまでのは久しぶりだわ。
そういや最後にここまで体調が悪くなったのも後輩の初めての任務の打ち上げとかそんな火だった気がする。
やっぱり俺、いつもあいつに何かしらの迷惑をかけられている気がするんだが……。
あー、マジで体がダルい。
こんな状態で任務に行くとか無謀だろ。
まあ今日は一つも予定が入ってないから問題ないんだけどな!
そんなこんなで、俺はいつも通りの生活を送っている。
どうしようもないぜ。
「咲は今日どうするんだ?」
「裕樹さんと一緒に行動したいです」
「えぇ……俺今日体調悪いしお前のことまで見れる気がしないんだが……」
そうそう、ついさっき気づいたばっかりだが、ここ最近の咲は言動がちょっとおかしい。
上手く言語化が出来てないけれど、俺から離れたくないという無言の圧力を感じる。
何故こうなったのかはよく分からない。
強いて言うなら、本部に連れて行ってちょっと経ったあたりからこうなった気がする。
また、ちょっと言動が変になっているだけでそのうち拾ったばっかりの咲に戻るだろう。
いや、でも拾ったばかりの咲に戻るとそれはそれでコミュニケーションがしにくくなるから戻りすぎるっていうのも考えものか。
それにしてもあの時の咲がもう懐かしい。
時間としては懐かしいって感じるほどじゃないんだろうけれど俺にはあんまり人が家にいるって経験がないからな。
内容が濃いと、人間やっぱりどうしても長く感じてしまうもんだ。
なんせかんせ拾ったのが魔法少女だったし、まああの時はビビった。
今はそれなりにはうまくやれてるし別に問題はないが。
「そういや、ずっと気になってんだけどその……学校とかはどうなんだ?」
「魔法少女になってからは最低限しか受けてませんね……」
「……すまん」
前言撤回。
やっぱり所々で上手くやれてないわ。
俺があまりにも魔法少女のことを知らなすぎるせいで相手の地雷をいつも踏み抜いている。
これでも少しは理解したつもりなんだけどなぁ。
一般人が魔法少女の裏側を何も知らないのと同じで、悪の組織にいたって魔法少女の裏事情なんか分かんねえよ。
今度、また互いのことを理解するためにどっか出かけたり話したりしてみよう。
そしたらもうちょい俺が地雷を踏まなくて済むはずだし。
今だと三日にいっぺんくらい踏んでいる自信がある。
特に最初の一週間なんて一日に何度バッドコミュニケーションをかましたことか……。
……ダメだこりゃ、一旦忘れよう。
それより後輩のことだ、後輩のこと。
昨日のあれ、ただ気になったから聞いてきたんじゃなくて確実に知ってたから聞いてきてるっぽいんだよ。
組織の中でバレているかはともかく誰にも言ってないはずの情報だしな。
別にやましいこととかはないんだが。
家族だからって魔力が似てるってわけでもないから、絶対にあれは決め手にはならないはず。
むしろ俺の魔力は玲衣とかに似てたりするし、魔力で家族かなんて分かるはずがない。
そもそも、人によって適性がある属性だって違う。
これ、考えれば考えるほど意味が分からなくなってくるな。
……仕方ねえ、頭がまだ痛えけど会いに行ってくるか……。
「咲、ちょっと個人的な用があるから出かけてくるわ」
「え、体調が悪いんじゃなかったんですか!?」
「体調が悪くても行かないといけない用事なんだ」
「え、ええ……」
◆◆◆
連絡自体は、割と簡単にとることができた。
ということで、良く待ち合わせに使う駅前に集合することになる。
それにしてもどんなルートで俺と姉の関係をアイツは知ったんだ?
幹部と下っ端が家族だなんてバレると色々めんどくせえと思って隠してたのに。
もしかして意外と周りからバレてたりすんのか?
それならそれでいいんだが、どうせそういうわけでもないんだろう。
あー、本当に面倒くさい。
頭が痛いから早く来てくれ。
それでさっさと話を終わらせようぜ……。
そんなことを考えている間に奥の方から黄色い声がいくつも聞こえてくる。
どうせ後輩が何かしたのだろう。
そうでなければ、こんな、芸能人が街に現れたような反応は起こり得ない。
前みたいにすれ違って全員にウインクをするみたいな馬鹿げたことをまたやってたりするのかもな。
「あ、先輩相変わらず早いっすね!」
「とりあえず、なんで今日もこんなことになってるのか説明してくれないか?」
「いや〜、ただ街を歩いただけなんですって」
「はぁ……そんなわけないだろ」
お前と一緒にいると街の人間から「誰だこいつ」みたいな視線を感じることも多い。
一旦敵意に近い感情を抱かれるとそれはそれで恋人と勘違いされる以上に厄介なんだよな。
なんでコイツはファンサービスをするでもなくテレビに出てるわけでもないのに人をあんなに熱中させるかな。
そんな後輩の今日の格好はうまい具合に着崩したパーカーと、大分短い半ズボン。
俺にはファッションのことは良く分からないが、とにかくスタイルの良さだけは伝わってくる。
特に足、長すぎだろ。
コイツなら何を着てもきこなせるんじゃないか?
思わずそう思ってしまうほどだった。
……例えるなら、そう。
玲衣が王子様系なのは決定として、後輩は学園のお姉様みたいな感じだ。
いや、でもこの容姿とあの性格なら同性を冗談半分で誘惑して歪ませる一番やべえポジションに立っていたかもしれないか。
なんなら、むしろこっちの方が普通にあり得るかもしれない。
いや……絶対こっちのタイプだな。
とまあ、そんなことは置いておいて。
俺は後輩の目をしっかりと見つめて話を切り出す。
「それじゃ、本題なんだが……俺と姉の関係を何処で知った?」
「……なんのことですか?」
「とぼけなくていいから、何処で知ったかっていうのを答えろ」
「ああ……いや、あれですか……。あれはどうやって言えばいいんですかね……」
後輩は、そう言って言い出しづらそうな表情をする。
シラを切るつもりでは……なさそうか。
ここで独自の情報網とか言ってきたら徹底的に問い詰めてやろうと思っていたのに。
この調子だとあの姉が口を滑らしたとかそれくらいのしょうもない理由なのかもしれない。
「一旦、場所を変えましょうか」
「そうだな、街中でするような話じゃないかもしれねえ」
そうして、俺達は内緒話をするにはうってつけの路地裏に入っていく。
ここは、路地裏から出たら人通りは物凄く多いのに何故か人が全く入ってこないという不思議なところだ。
タネとしては俺達がこの辺で聞かれちゃマズイことを喋るときに使うために認識阻害的魔法的なものをかけているだけだけどな。
ただ、これはある程度魔法を分かっている奴にも簡単に破られない俺の自信作でもある。
まあこの前誰かに勝手に使われた形跡が残ってたけどな……。
調べたら組織の新人だったし、俺の魔法は新人にも簡単に突破されるくらいのクソザコ魔法だったみたいだよ。
っと、そんなことは置いておいて後輩を問い詰めれば。
後輩は、何か諦めたような顔をして話し始めた。
「話すと長いんですけれど……」
「全然構わねえぞ」
「ミキさんっていつも変な機械を作ってるじゃないですか」
「マジで用途がわからないやつばっかり作ってるよな」
「それで、なんか血縁があるか調べるみたいなこれまたよく分からない魔法を使って作った機械をこの前紹介されて……」
そういう……ことかよ……。
まだ後輩は全部言いきっていないが、ここまできたらもう察することはできる。
それで動作テストだとか言って試しに俺に使ってみろとでも言ったんだな。
なんで隠していることを自分から開示しにいくんだよ、俺の姉は。
「そういうことか」
「この前かけてたメガネがそれです。えっと……もしかして知るとダメなやつでした?」
「いや、そんなことはないからいいんだが……理解したけど理解したくねえ」
「俺も遠回しに聞かずに直接聞けばよかったです。すみません」
まあともかく、後輩が別に変な組織とかと繋がっているわけではないと知れたのは良かった。
姉は今度どっかであったときにこのことについて色々問い詰めてやる。
今日のところはこの辺でいいか……。
それにしてもなんだよ血縁を見分ける機械って。
んなもん何処で使うってんだ。
モノとしてはまあまあ面白そうだと思わないこととないけれど、スクープ記事くらいにしか使えないな。
なんなら、それ作れるくらいなら嘘発見器を作った方がよっぽど役に立つ。
多分、俺が知らないだけで既に作られているんだろうとは思うが。
「じゃあ先輩、今日も昨日のとこ行きます?」
「頭痛そうにしてるのが分からねえのか」
「もっかい行けばその痛みも吹き飛びますよ」
「後から強くなって帰ってくることが確定してるだろ、それ」
結局、今日は後輩と昨日の店に行くことはしないことにした。
流石にな、明日は任務も多分あるだろうし。
だから、とりあえずは今日のうちに体調を整えて明日万全な状態で任務に行けるようにしよう。
ていうかなんで後輩はあんなに元気なんだ。
おかしいだろ、俺とは違う体の作りしてたりしねぇだろうな?
ギャグ回のようなもの
主人公の姉の本格的な出番はもうちょっと先です