悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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本日1話目


第十五話 たちの悪いイタズラ

「そんな量捌ききれねえって! 無理無理!」

 

「裕樹だったらなんとかなるよ!」

 

「逃げ回ってる俺に全魔法を当てようとしてる奴が言うセリフじゃねえだ……ろッ!」

 

 

 

 俺は今、玲衣にいくつもの魔法で狙われている。

 

 なんでかって? それは俺が一番知りたいくらいだ。

 俺に聞くな、玲衣に聞け。

 

 そもそも、今日はただその辺をフラッと歩いて家に帰るだけのはずだったんだよ。

 その帰りにバッタリと出会っちまって、何故かこんなことになっている。

 

 口ではこっちのことを応援しているような素振りを見せつつ、油断したところで大量に魔法を放ってくるとか終わってるだろ。

 

 玲衣は最初から魔法少女に変身した状態だったから、こりゃ待ち伏せされてたな。

 

 ほら、逃げたつもりなのに全く振り切れてねぇし。

 

 路地を使いつつ相手の視界に入らない位置に逃げても、完璧に補足されていてすぐに追い付かれる。

 

 最近の戦法は良く知らないが、ここまでしつこくスノウクリスタルが敵を追っているってのは中々ないことのはずだ。

 

 これは、何かしらの魔法少女の任務で狙われてる気がする。

 

 

 

「俺は散歩がしたかっただけなんだが!?」

 

「まあまあ、とりあえずちょっとお縄についてもらうだけで済むからさ」

 

「拘束する前提なのについていくわけねえだろ!」

 

 

 

 本当にいきなりのことで、いまだに状況が理解しきれていない。

 しかも、情報を整理しようにも飛んでくる氷のせいでそのことだけに脳のリソースをさくわけにもいかない。

 

 話こそ聞いてはくれるけれど、俺を狙う事には変わらないみたいだしな。

 ていうか俺はなんで日本最強に狙われてんだ?

 

 俺くらいの下っ端戦闘員ならわざわざ玲衣を出すほどでもないだろうのに。

 これが対ボスとかだったら玲衣を呼んでも別に良いとは思うけどな? 今追われてるのは俺なんだよ。

 

 さらっと人が集まってるだろう場所にいって妨害しようかなんて考えを思ったところで人が近くにいねえし……。

 国がこの周辺を封鎖してるとかそういうくらいじゃないとこんなんできないだろ。

 

 

 

「裕樹の行動は読みやすいよ~」

 

「!? 先回りか……」

 

 

 

 やべぇ、完全に油断してた。

 しばらく魔法が飛んでこないと思ったら自分の姿を隠すことに使ってたのか。

 

 そのまま、俺は玲衣に魔法を大量にほぼゼロ距離からぶち込まれる。

 そして体中に鈍い痛みが走り……。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間違いなく、悪夢の類だったわ、うん」

 

 

 

 目が覚めた時、見えたのは馴染みしかない俺の部屋の天井だった。

 手も足も問題なくついてるし、勿論怪我だってしていない。

 

 ったく、朝からこんな夢を見るとは思わなかったぜ。

 

 俺と玲衣が戦ったらあんな感じにボコされて負けるのかと思うと……まあ辛いものがある。

 

 ただ、あれはあくまでも夢だ。

 妙にリアルティはあったけれどな。

 

 実際やるとなればあそこまでボコボコにはされねえと思うんだけどなぁ。

 噛み合いによっては勝てるんじゃないか?

 

 

 

「リアルで戦うことになったときになんとか出来るようにしねぇとなぁ……」

 

「いやいや、いくら裕樹が強いからって言ってもボク相手に時間稼ぎなんかはさせないよ」

 

「あくまでも理想だからいいんだよ……って!? 何でお前がここにいるんだ……」

 

 

 ……おい。

 なんで俺の家、それも俺の部屋に玲衣がいるのか分からねぇんだけど。

 

 玲衣はさっきの夢に出てきたばっかりで、寝る前に会ったとかそんなこともねえのにどうしてここに。

 

 俺、昨日なんかやらかしたか?

 

 そう思ってスマホを取り出してメッセージを見たが、別に電話をしたとかそういうわけでもない。

 いや、マジでなんでここにいるんだよ。

 

 というか俺のベッドに潜り込もうとしてくるのはマジでやめてくれ。

 頬を膨らませたって無駄だからな?

 

 テレビであんなに王子サマ面してるスノウクリスタルは何処に行ったんだ。

 だからやめてくれって、そこまでやられると俺の心がもたねぇ。

 

 

 

「この前といい、最近の裕樹は本当につれないね……」

 

「まず自分の行動がだいぶたち悪いってことに気づいてくれ。さっきのニヤニヤした顔とか魔法少女が見せていいもんじゃない」

 

「大丈夫、他の人にはやってない、裕樹だけ。だから問題ないよ」

 

 

 

 いつも言ってんだけど、俺が大丈夫じゃねえんだよなぁ……。

 

 まあ、それはさておき問題はこんな家にわざわざ来た理由を聞くべきか。

 この前みたいに偶然街中で出会ったわけじゃないからな。

 

 良く考えなくてもこの前も偶然とは言い難い気がするが、そこはとりあえず一旦おいておこう。

 どうせそれなりに重要な理由があったりするだろうし。

 

 逆に部屋まで入り込まれたのに理由がないとかだったら流石にキレるぞ。

 

 

 

「で、今日は一体何の用事で来たんだ?」

 

「ああ、そういえばそのことを言い忘れていたよ。ごめんごめん」

 

「俺の布団に潜り込むよりよっぽど大事なことだろ……」

 

「そうそう、国が裕樹のところの組織を危険視してるって伝えに来たんだ」

 

「マジで?」

 

 

 

 ……ちょっと落差が酷すぎる。

 俺、ついさっきまで布団にもぐりこもうとする玲衣と戯れてた(?)はずなんだが。

 

 それにしてもそうなのか、別にこの組織大したことやってねと思うけどな。

 どっちかというと若干国の利益になるようなこともしてるぞ。

 

 まあ、それでも社会から見たらただの悪の組織だけどな、この前俺も裏切り者を消しにいったし。

 

 ていうか、そう考えると普通に社会的に駄目な組織じゃねえか。

 

 ただ、()の組織って言われるくらいだから別にそれで健全であるのか。

 悪の組織の方が受け入れられてたらもうおしまいだろ。

 

 それにしても俺らの組織ピンポイントってのはまあこれから気をつけたほうが良さそうだな。

 

 後でボスにでも連絡して全体に言ってもらうことにしよう。

 

 で、玲衣のことだからどうせこの後に本当のここに来た理由とかあるんだろ?

 

 今のは普通に助かったけれど、これからどうせまためんどくさい理由があるに決まってる。

 

 

 

「で、真の本題は?」

 

「いや~、そんなんあるわけないでしょ」

 

「今までの自分を振り返ってみろ」

 

「うーん……真の本題があっただなんてことは……一回もないね!」

 

 

 

 ダメだわ、こりゃ。

 玲衣の中に反省って言葉は何処にもないみたいだ。

 

 なんか昔の方がもう少し知性があった気がするんだよな……。

 

 初めて出会った時も図書館だったし……あ、別にそこで玲衣が本を読んでたわけでもないからやっぱり昔と変わらねえじゃん。

 

 変わったことっつったら髪全体に昔より青色が広がったってことくらいだな。

 日本最強として魔法をずっと使ってたらしいし多分も元の黒い髪はほとんどないんだろう。

 

 はぁ、とりあえず部屋からさっさと出るか。

 なんで俺らはここまでずっとベッドで喋ってたんだ……。

 

 

 

「それで咲はどこ行ったんだ? もしかしなくても……なんかしただろ」

 

「ぼ、ボクは何もしてないからね。咲ちゃんだって全然外に出てないんだから外に行きたくなる日くらいあるはず……多分」

 

「後で怒られろよ……たまに咲と出かけたりするけどアイツお前のことを結構慕ったりしてるっぽいぞ?」

 

「ううっ……あとで謝っておくよ。ちょっと幻覚見せただけなんだけどなぁ……」

 

 

 

 言い方的にさっきの夢を俺に見せてきたの、コイツなんじゃねえかな。

 

 今の発言のせいで急にそんな気がしてきた。

 咲が家に戻ってきたら絶対になんか一言くらい入れとけよ。

 

 まあどうせ幻覚つってもなんか精神的に追い詰めるようなもんじゃなくてちょっと散歩しようかって思うないだろうけどな。

 

 ただ、幻覚を見せるだけで人の行動を間接的に操作できるってのは中々怖い。

 俺もさっきのでもう少し鍛え直そうか本気で考えたからな。

 

 いや、一応夢通りになりたくはないから今度もう少し鍛えるぞ?

 この前玲衣と一緒に戦った時にそこまで差がないことは分かったから離されないように頑張るわ。

 

 前回のは一応トドメを刺しに行ったのは俺だし、な。

 きっと実力自体はほぼ同じだろう。

 

 一応あの時アイツがまだ本気を出してなかったっていう可能性も残ってるが、七八割くらいはあっちも出してたはずだ。

 

 それじゃ、とりあえず咲が帰ってくるのを待つとするか。

 あ、玲衣は咲に謝るために帰ってくるまでここにいろよ?

 

 最近の咲の定位置になってるそこのソファで座って反省しててな。

 逃げ出そうとするもんなら拘束魔法をかける準備も整ってるし完璧だぞ。

 

 

 

「今かけようとしてるのは拘束魔法……? ちょっとゾクってしちゃうね」

 

「何馬鹿なこと言ってんだ、頭でも打ったんじゃねえの。口も塞いでろ」

 

「あっ……」

 

 

 

 最近、俺の周りの人間が後輩みたいなピンク脳になってきている気がする。

 

 つて、それよりその顔をやめろ。

 なんでそんな演技が上手いんだ。

 

 それを見てると悪の組織に捕まってた魔法少女とか見たことあるから思い出しちまうよ。

 ま、結局あの後違う魔法少女が来てその魔法少女は助けられてたけどな。

 

 どうして魔法少女っていう奴らは逆に悪の組織が好きそうな表情を的確に出来るんだろうだろうか、不思議で仕方がない。

 

 

 

 と、そんなことをしていると、家の玄関から物音が聞こえた。

 咲が帰ってきたのだろう。

 

 咲はそのままリビングまで来て、ソファで手を振っている玲衣に気づく。

 その途端、まだ眠そうにしている目を見開いて心から驚いたような顔を見せる。

 

 

 

「スノウさん、何でここに……?」

 

「裕樹に逃げれないようにされたからさ」

 

 

 

 ……おい、ちょっとまて。

 

 だからどうしてお前はそんな誤解を与えかねないことを言うんだ……。




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