悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました 作:ひぶうさぎ
どうやら、咲と玲衣はいい感じに打ち解けられたらしい。
あの後、咲が俺と接する時、異常にドギマギしていたけれど、まあそんなものはいちいち気にしたって仕方がない。
どうせ、玲衣がなんか言ったんだろ。
内容は特に聞いてないから全く分かんねえけどな。
実は少しだけ話したいことがあったんだが、結局あの日は玲衣も昼過ぎに帰っちまった。
そんなこんなで今日は魔法少女とは全く関係ない別件で組織に来ている。
あいや、厳密に言ったら魔法少女とは関係が一応あるのか。
まあともかく、わざわざ玲衣に言うような魔法少女に関しての件ではない……はず。
今日のは、表社会の基準からすると、公開した方がいい案件ではある。
しかし、そうするとうちの組織が本格的に
既に目をつけられている状況で、表に出すのは結構危うい。
そんな、今日の目的地であるそれなりの厄ネタがあるところは組織の地下二階。
闘技場の下にある、たった
だが、部屋というには周りがここはあまりにも頑丈に作られている上に、ボスの部屋よりも分厚い結界が貼られている。
何ならそもそもの壁の材質すら違う。
そんな、どちらかというと牢屋という方が正しい気がしてくるところが今日の目的地だ。
「おーい、起きてるか?」
ここの部屋主は、基本いつも眠っている。
だから来るときには取り替えず起きているか確認しなくてはならない。
しかも、ここに入れるのは部屋主が起きていることが絶対条件なのだ。
正確には、入るには部屋主の許可が必要な上に特殊な素材で作られている鍵を持っていないといけないというわけだが。
「……裕樹?」
「おう、最近忙しくてこれてなかったんだが久しぶりに来たぞ」
「本当に裕樹?」
「今から入るっての。しかもそもそもここには俺がボスかそれ以外の幹部しか入れねえよ」
運がいいことに、今日の部屋主は起きていたようだ。
何時であろうと眠っていることが多いこいつが昼に起きているだなんて随分と珍しい。
それにしても相変わらず殺風景な部屋だな。
一応部屋ってことになっているのにあるのはベッドだけ。
いくらこいつが忍耐強いって言ってもここまで娯楽なしで暴れもせずに生きていけるのはとんでもねえよ。
俺じゃこんな部屋で生きていくなんてとてもじゃないが耐えられない。
「会いたかった」
「そうか。そう言ってもらえると嬉しいな」
「ワタシのことなんか何とも思ってないくせに」
「定期的に会いに来てるじゃねえか」
見た目は咲や玲衣のような魔法少女。
しかし、一般的な魔法少女が華やかな色の衣装を纏うのに対してコイツは全身黒色でかためている。
コイツの名前はミラーワイト。
かつて、玲衣に次ぐ実力を持つとして世間に知られていた魔法少女。
そして、今は組織が確認している中で唯一の元の自我を残しつつ話すことのできる
◆◆◆
俺がコイツを見つけたのは、あの大災害で玲衣と共闘した後。
玲衣が一旦魔法少女の本部に連絡しに行ったところで穴から這い上がってきた。
はじめは怪人に人の姿をとる能力があるだなんて、と感心していたが、様子があまりにおかしかった。
能力こそ正反対の
それで対話も出来たから一旦組織の方に判断を仰いで、今に至るってわけ。だ。
テレビとかを見る限り、今だに帰りを待ってる人間は多いらしい。
残念ながら討伐される側になってしまっているので戻ることは出来ないが。
「今日はなんの用事?」
「久しぶりに玲衣に会ったからそのことを言いにきた」
「玲衣……? ……あ、あの子か」
「それと、多分お前が知らない魔法少女を一人拾ったから、それでだ」
「気になる」
怪人の特徴は、属性が元の人間から反転するか、元の属性を増長させるかの二択しかないこと。
こいつの場合は、それが反転だった。
魔法少女のころは今より大分感情が顔に出やすかったらしい。
俺はこいつを、顔の表情が全く変わらなくて、それで色々と言葉足らずの奴としか知らないが、元は違かったんだろう。
それと、コイツは不思議なことに俺にだけ異常に関心をよせてくる。
ボスや幹部たちが対話を試みた時より、俺との時の方が喋るんだよ。
対話は今見ている通り出来るし、一応それなりに力のセーブも出来るらしい。
それでも怪人であることには変わりないからガス抜きってことで俺がたまに顔を出すことになっている。
「その人、強い?」
「魔法少女の中では弱い方なんじゃねえかな。後方支援が主っぽい」
「ワタシを基準にすると?」
「流石にお前と比べたら格下だろ。時間稼ぎすら出来ないんじゃねえか?」
言葉が足りないことが多いってだけで別に癇癪を起こすとかそういったことはないから、今のところはそこまで問題ではない。
ベッドの上にちょこんと座っているくらいならどこから見ても無害だし。
いや、多分本気を出されたら軽く組織が崩壊しかねないほどの力は持ってるんだけどな。
まあ、それもあってそこそこ強いってことになってる俺が当てられてるんだろうけれど。
こうやって外面だけ見てる分には良いんだよなぁ。
反転がどこまで影響してるのかは知らねえけど割と身長もデカくねえし、顔だけは無害そうなんだよ。
それじゃ、俺この辺で帰っていいか?
コイツを相手にするのは疲れるし、これと言った話題がないんだ。
「もう、帰るの?」
「もう話すことがないからな」
「まだいて欲しい」
「そうは言われてもなぁ」
ただ、そう簡単にはコイツは帰してくれない。
いつも帰ろうとしたところで引き止めてくる。
さっさと帰りたいところだが、振り切って機嫌を損ねさせたら俺の命が危険に晒されてしまう。
コイツとの時間は、いつもここからが長い。
「もう少し話したい」
「そうは言われても俺からの話題はもう尽きてるんだよ。そっちから振ってくれるなら助かるんだが、そっちもないだろ?」
「ワタシにもある」
「えぇ、あんのかよ」
「つべこべ言わずに聞いて欲しい」
え、そもそもこんなぶっきらぼうな言葉遣いでいいのかって?
駄目に決まってんだろ、何がトリガーになるのかも分からねえんだぞ。
だから俺だって始めは敬語を使ってたよ。
でもなんか知らねえけどこんな感じで喋ったほうがあっちの機嫌がいいからな。
自分としても自然体で楽だしあったら何故か喜ぶしでウィンウィンだ。
で、なんだ、珍しくあっちから何か話題を切り出してくるのか。
外部から隔離されてるこんな部屋にいて切り出すことのできる話題なんてないと思うんだが、どうなんだろう。
それにコイツのことだから話題があるとか言いながら絶妙にズレていることを言い出すんじゃなえかな。
「ワタシはズレてない」
やべ、コイツは心を読むことができるんだった。
迂闊に心の中で色々考えるもんじゃあねえな。
どうせ今考えていることも読まれているだろうからそこはもう恐れずにいくしかねえけど。
「早く、本題」
「いや、お前が話があるって言ったんだろ」
「そうだった。玲衣を連れてきてほしい」
「……は?」
ちょっとまて。
いつも通りコイツの話のテンポがおかしいのはともかく玲衣を連れてくるっていうのは意味が分からねえ。
今の今までそんな素振りの欠片もなかっただろ。
さっきまで俺が玲衣と咲について話してたからか?
「どうして急に玲衣を連れてこいだなんて言い出したんだ?」
「時間が結構経ってる。だから」
「それは……魔法少女としてのお前が行方不明になってからっていうことか?」
「そういうこと」
なるほど、時間が経ったから顔をもう顔を合わせてもいいんじゃねえかってことか。
まあ、それにしたってどうせ性格も玲衣が知るミラーワイトではなくなっているであろうコこいつは変わった自分を見せるのに抵抗があるとは思うんだが。
「それでも、ワタシの存在を隠し通せるのはこの辺が限界」
「それは、そうだとは思うが……」
「玲衣にさえ言っておけば後は何とかなる。ワタシが保証する」
まあ、大丈夫って言ってんなら大丈夫なんだろ。
こいつだとここまでドヤ顔でも説得力は皆無だが、まあいいか。
いつになるかは分からねえけれど、今度玲衣に会ったときにそれとなく伝えて何とかすることにしよう。
あいつ、連絡を取ろうと思っても電話にすら出ねえからな。
「なるべく早く呼んでほしい」
「だから全然会えねえんだって」
「私の名前で釣ればきっとすぐに心配して連絡もつく」
何だか随分外道くさいこと言ってんな、おい。
いや、別に怪人だから人間の倫理とかは通用しねえんだけどさ。
しかもそれをするといくら玲衣でもブチギレて俺と縁を切ろうとしてくるだろ。
リターンが殆どねえのにここまでのリスクは取れねえよ。無理無理。
「頑張れ、ワタシが玲衣から聞いた理想の裕樹だったら何とかしてる」
「何だよ、玲衣の理想の俺像って……」
部屋から出る直前、意味の分からなすぎる単語を聞いた気がするが、気にしないようにしよう。
……いや、マジで何だよ理想の俺って。
やっとヒロイン3人目
今日で、連載開始から一週間みたいです
評価、お気に入り等をしてくださる皆様のおかげで、ルーキーオリジナル一位という初めての体験させてもらいました
この作品も、もう第一章の折り返し
引き続き、この作品を楽しんでもらえたら作者冥利に尽きます