悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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第二十話 ミラーワイトが家に来る

 ボスは、さっきからずっと黒ローブについて悩み続けている。

 何かしら俺に出来ることだったら助け舟を出したいけれど、俺なんかの意見だと逆にボスの思考の邪魔になってしまうかもしれない。

 

 こういうときは、戦うくらいしか組織に貢献できない自分が恨めしい。

 しかも、だからと言って急にこの辺の能力が上がるわけでもないしな。

 

 やがてボスは頭の中で何かしら思いついたような様子を見せるが、いまいち納得がいっていない様子。

 そして考え始めてから三分ほどが経ったとき、やっと現実に帰ってきた。

 

 

「まあ、もうとりあえずは放置でいいかぁ……」

 

「大丈夫……そうですか?」

 

「うん、案は何個か思いついたし、多分また近くを襲撃されたときはなんとかなりそう」

 

 

 

 なんとか頭の中で納得できるアイデアは思いついたようだ。

 正直黒ローブは組織に最高戦力を何人も動員しないと勝てないんじゃないかと思っていたからこういう時のボスはとてつもなく頼もしい。

 

 そう思っていると、ボスが急に俺の方をじっと見つめる。

 もしかして、ボスが思いついたアイデアって俺に関係があることなのか?

 

 いや、さすがに俺が勝てないであろう相手に関する事なのに俺に頼るっていうのはおかしいよな。

 となると、俺じゃなくて俺の知り合いに関係すること……?

 

 そして、考えがいまいちわからずに困っている俺にボスは声をかける。

 

 

 

「それで心苦しいんだけど、少しだけ裕樹に手伝ってほしいことがあって……」

 

「構わないんですけれど、一体俺は何を?」

 

「地下にミラーワイトがいるじゃん。それで、私はよく分からないんだけど裕樹のことを好いてるみたいだから……ちょっと、ね」

 

 

 

 それは、ちょっとと言う割に中々俺の負担が大きそうなものではある。

 

 これって、もしかしなくてもボスはあいつを地下から出して俺につけようとしてるってことだよな。

 

 あいつって、俺がどうこう言ってもその通りに動いてくれないんじゃねえか?

 まあ、でも俺以外だと部屋に来ても入れようとすらしないことが殆どらしいし、俺が一番の適任の可能性もあるのか……。

 

 そうなると、これは断るわけにはいかない。

 俺なりに頑張ってアイツを制御してみせるぞ。

 

 

 

「結構大変な仕事になるだろうからいやだったら断ってもいいんだけど……」

 

「やります」

 

「ッ本当!? ありがとう!」

 

 

 

 いつも迷惑をかけているボスの助けになるなら、よほどの事じゃない限り俺は引き受けるつもりだ。

 こうやって、ボスの嬉しそうな顔を見れるだけで俺も嬉しいし。

 

 こんなに一部下の前で感情を露《あらわ》にするのはボスとして向いてないと思うけどな。

 俺はこの人がボスで良かった。

 

 ミラーをうまく扱えるかは分からないが、頑張っていこう。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「裕樹の家、楽しみ」

 

 

 

 ……やっぱり無理かもしれねぇ、コイツが隣を歩いているだけで胃が……。

 

 あの後、しっかりとミラーは半牢屋になっている地下の部屋から出てきた。

 しかし、さすがに何もしない状態でミラーを外に出すわけにはいかないので、ミラーは首にチョーカーをつけている。

 

 これは、監視機みたいなもんだ。

 まあ、そんなものミラーの前には意味はないしちょっとしたお祈りみたいなものだが。

 

 黒色の髪と黒色のチョーカー、そして全体的に黒色の衣装。

 何から何まで真っ黒な格好となっている。

 

 肌は一応白いが、これはミラーの認識阻害魔法によるもの。

 本来のミラーの肌はグレーに近い色だ。

 

 それにしても、いつもにもまして増してウキウキしてんな。

 足取りも出たときには普通に歩いていたのに今だともうスキップに近い歩き方になっている。

 

 まあ、地味に身長が低いコイツが不貞腐れた顔をして俺についていってたらそれはそれで俺があらぬ疑いをかけられるかもしれなかったから助かってはいるが。

 

 どっちにしろ俺にとってはそれなりのマイナスがついてくるんだけどな、悲しい。

 

 

 

 そんなわけで俺の家の近くまでこれた。

 一つだけ気がかりなことがあるとすれば、咲がどれくらい怒っているか、ってとこか。

 

 しかもミラーを連れて帰ってる途中だしな……。

 ミラーの魔力を感じ取ってキレた咲が家の中で待っている様子しか思い浮かばねぇ。

 

 

 

「ただいま……」

 

「おかえりなさい裕樹さん、ところで、そこの隣でウキウキの子は誰ですか?」

 

「組織の戦力」

 

「へ、へぇ……確かに魔力は私の三倍、いやもっとありそうですけれど……」

 

 

 

 恐る恐る家の中に入ると、意外とそこまで怒ってはいなさそうな咲のが見えてきた。

 案の定ミラーのことを指摘されたが、ここはほぼ本当のことを言ってなんとか疑いを回避する。

 

 なにかと重くなっている咲がミラーに対して拒否反応を見せるんじゃないかと心配してたんだが、杞憂だったみたいだ。

 

 ミラーも久しぶりのまともな家具のある家に興味津々のようだし、これはうまくいきそうだな。

 

 

 

「でも、この子なんか見たことがある顔をしてるんですけれど……裕樹さん、今日も何か隠してません?」

 

「裕樹、隠すのは良くない。それと、咲、ワタシは貴女より年上だから」

 

「ほら裕樹さん、この子もそう言っ……え、年上?」

 

 

 

 ……忘れてた、ミラーはマジで口を滑らしやすいんだ。

 確かに咲と比べてそれなりに年上ではあるんだが、いかんせんこの見た目だと説得力があんまりない。

 

 ていうかこんなすぐ年下扱いをしたときにこう返すって、意外と気にしてたのかもしれない。

 

 それにしたってその勝ち誇った要はドヤ顔はやめてくれ。

 年上って言ってる割にはその行動はちょっと子供っぽすぎるだろ。

 

 咲は、すっかり困った顔をして俺に助けを求めている。

 もうちょっと家に入る前の段階でミラーにそれとなく色々言っておくんだった。

 

 

 

「ゆ、裕樹さん……この子、いやこの人? が言ってることって本当なんですか?」

 

「まあ……一応咲よりかは年上だな」

 

「あ、そうなんですか……」

 

 

 

 初めはそれなりに怒っていたであろう咲もすっかりこんな調子だよ。

 色々言われないで済んだのはだいぶ嬉しいんだが、こうなるまで行くと逆にどう接すればいいのか分かんなくなってくるんだよなぁ。

 

 とにかく、ここはミラーと咲がぶつからないように頑張らねぇと。

 最近何かと人に褒められることの多い俺の手作り料理でなんとかするか。

 

 咲にミラーの正体がバレてもマズいし、その辺も気を付けないとな。

 

 着る服の趣味とかが結構変わってるから簡単にはバレねえはずだとは思うんだが、魔法少女になる前の咲は結構魔法少女について詳しかったぽいからなんかのきっかけでバレかねない。

 

 別のバレたらだめってわけじゃないんだけれど、バレたら面倒くさい、マジで。

 あの時ミラーの存在に気づいてはいた玲衣にバレる何倍も大騒ぎするだろうし。

 

 

 

「昼だからな、飯作るぞ」

 

「裕樹のご飯、食べる」

 

「裕樹さん、この人本当に私より……?」

 

「そうだ、信じられないかもしれないがマジでそうだ」

 

 

 

 

 ていうかミラーってもの食べれるのか?

 俺ミラーが食べてる所一度も見たこともないしあの部屋に食べ物が運ばれたところとか俺見てないんだよ。

 

 ……まあいいや。

 

 昔あいつ自身が空気中の魔力からでもなんでも養分をもらえるって言ってたからどうとでもなるだろ。

 

 属性的に食べれなくても栄養だけちゃっかり抜いて自分の糧にしそうだし、きっとなんとかなるはず。

 

 ということで、ついさっき冷蔵庫を漁っていたら見つけたラーメンを食わせてやるか。

 

 最近の簡単に作れるラーメンとかそういうやつはは普通に美味いのばっかなんだぜ。

 それに俺のあるか怪しい料理技術を見せてやる。

 

 こういうのは意外とテキトーにやっても美味くなるんだよな。

 まあ今はしっかり心を込めて作るけどさ。

 

 

 

「何を作るの」

 

「ラーメンだよ、ラーメン。楽しみに待っとけ」

 

 

 

 椅子に座って目を輝かせるミラー。

 

 それを見ながらやはり困惑した表情をする咲が何かを言いたそうな顔をしているが、そこは無視をしておく。

 

 残念ながらそいつはちゃんとお前よりも生きてるしちゃんとお前よりも格上の相手なんだ。

 同情だけはするよ、どんまい。

 

 

 

 家で一人だけの時は具材とかは入れないんだが、今日はしっかり入れておくか。

 流石にチャーシューみてえなのは作るつもりがなかったから置いてねえが、ほうれん草やらメンマやらは置いてあった。

 

 何でそんなもんが置いてあるのかって?

 それは過去の俺に言ってくれ、ほうれん草はともかくメンマはラーメンが食べたかったんだろ。

 

 ほら、こんなくだらないことを考えながら作ってても美味そうな湯気が立ち始めている。

 後はこれにそれっぽく盛り付けをしたら、特製ラーメンの出来上がりっと。

 

 やっぱ具材があるだけで見栄えが違う。

 麺しかなくて味気ない時よりと比べて湧いてくる食欲が段違いだ。

 

 そして、できたラーメンを机に持っていく。

 流石に居酒屋みたいに何個も運ぶとかは出来ないから一つずつな。

 

 

 

「わぁ、ありがとうございます」

 

「意外と、美味しそう」

 

 

 

 ミラーが悪口の一歩手前のようなことを言っているが、それは気にしないでおこう。

 

 

 

 そして、そのまま三人で食べようとした時。

 玄関から物音がしたかと思うと、その次には玲衣がリビングにやってきていて……。

 

 

 

「裕樹ー情報を持って……って、え? ミラー?」

 

「ぶい」




感動の再会
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