悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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本日2話目


第二十一話 三人の魔法少女と

「ミラーのその格好は……ああ、なるほど……」

 

「久しぶり、玲衣。なんとか耐えた」

 

「あの時は行けなくてごめんなさい」

 

「気にしないで、ワタシも玲衣の立場だったら無理だったから」

 

 

 

 なんか、目の前で感動の再会が始まっているんだが。

 

 玲衣が泣くのをこらえている姿なんて、滅多に見ねえし、ミラーの表情がしっかり変わってる姿なんて初めて見たし。

 

 それにしても、やっぱり玲衣はミラーのことをミラーだって分かるのかよ。

 入ってきた瞬間ミラーを見て認識したんだから、相当だよ。

 

 咲は……相変わらず置いてけぼりだ。

 何がなんだから分からなくて呆気に取られた顔をしている。

 

 まあ咲はミラーと直接の関わりはないはずだしな。

 置いていかれるのも仕方がないと言ったら仕方がないのか……のか……?

 

 

 

「もうちょっと話したい。けど、麺伸びる」

 

「あ、食事前なのか。裕樹、ボクは違うの食べとくよ」

 

 

 

 玲衣がそう言ってくるが、客に無理をさせるわけにはいかない。

 俺が違うのを食べれば良いだけの話だろう。

 

 

 

「いや、それまだ食ってねえから玲衣が食べてていいぞ」

 

「いいの? じゃあお言葉に甘えて……」

 

「あの、裕樹さん、私全くついて行けてないんですけれど……」

 

 

 

 咲はもう少しだけ待ってろ。

 玲衣とミラーはまだまだ話し足りないだろうし、もうちょい二人で話す時間を作っとかないと。

 

 ていうかミラーは普通に食えるのかよ。

 作る時にあれだけ心配したのが馬鹿みたいじゃねえか。

 

 まあ美味そうにこっちを見てサムズアップしてるからいいんだけど。

 美味いって思ってもらえるならそれで十分だ。

 

 

 

「んっ、思ったよりも美味しいね」

 

「なんだよその地味に馬鹿にしたような言い方は」

 

「いや、出会ったばかりのころの裕樹の料理はこれみたいに途中まで出来てるもののはずなのに独創的な味がしたからさ」

 

「悪かったな」

 

 

 

 玲衣からも意外と好評のようだ。

 

 そういや、一回だけ家に玲衣を連れてきてあの頃の俺なりに頑張って作ったことがあった。

 

 あれは俺でもマズイって思った気がする。

 作った本人でもそう思う料理ってなんだって話だが、あの頃は今よりずっと料理ができなかった。

 

 今日のも料理って言っていいのかは謎だが、昔に比べれば結構進歩してるもんだな。

 

 何年も一人暮らしをしてるっていうのに全く進歩がないなんてこと普通はないし、当たり前っちゃ当たり前ではあるんだが嬉しいものは嬉しい。

 

 あの時の俺の手料理なんて咲が食ったら即答するんじゃねえかな。

 それくらい酷かったぞ、何を作っても見栄えはそこそこで味は激マズのができあがるんだから。

 

 

 

「あの、裕樹さん。そろそろ私にも事情を……」

 

 

 

 あ、そういえば咲のことを忘れていた。

 玲衣とミラーは……もう大丈夫そうか?

 

 あの二人はもう既にラーメンを食べ終わってるし、まあ大丈夫だな。

 ていうか咲ももう食べ終わってるのかよ。

 俺はまだ何も食べてないんだが?

 

 

 

「あー、どっから説明すればいいのか分かんねえな。やっぱ今度説明するでもいいか?」

 

「いやいや、スノウさんとこんな親しげに話してるこの人って何者なんですか!?」

 

「ぶいぶい」

 

「なんか、めちゃくちゃ凄い人っていうのは魔力量とかから分かるんですけれど、それからが本当に出てこないです……」

 

 

 

 そう言って、両手でVサインを作っているミラーの方をみる咲。

 その顔にはミラーの正体が全く分かっていないことによる困惑の色が濃く浮かんでいる。

 

 それを見る玲衣も、珍しく頭をかいて申し訳なさそうな表情を作っていた。

 

 別にミラーの件に関しては玲衣は全く悪くねえけどな。

 ミラーがああなった理由も分からないから、誰が悪い、誰かの所為とかそういうんじゃねえし。

 

 

 

「うぅんと……咲はミラーワイトって知ってるだろ?」

 

「はい、スノウさんと競っていた方ですよね」

 

「それがそこでぶいぶい言ってる奴だ」

 

「……え?」

 

 

 

 ミラーの方を見れば、さっきと変わらず口でも手でもぶいぶいとしていた。

 咲は、そんな残念な元・日本二位の魔法少女を指さして口をぽかんと開けている。

 

 当の本人があれでは説得力の欠片もない。

 せっかくいいイメージのまま紹介してやろうと思ったのに、これじゃあ台無しだ。

 

 それでもコイツがミラーっていう事実だけは揺らがないのがまた……。

 

 

 

「言われれば、ミラーさんですね……ってええええええ!?」

 

「あはははは……」

 

「裕樹、どうしたのワタシにそんなドン引きしたような目を向けて」

 

 

 

 この調子だと、咲がまた固まりかねない。

 それと、ミラーも咲ももうちょい後輩に対して優しくしてやってくれよ……。

 

 最近は咲が衝撃を与えられすぎている気がする。

 今日に関しては態度に出していないだけで玲衣も割と驚いているだろうけど。

 

 それにしても、ミラーのことを玲衣にはもう少し早めに言っておいてもよかったかもしれねぇ。

 

 ちゃんとミラーのことに気づいてくれてよかったよ。

 

 

 

 あ、そういえば俺の分の昼飯、忘れてた。

 

 出掛けてその辺のコンビニなり何なり寄るっていうのは……急に咲の目つきが厳しくなったからやめておくとして。

 

 ……今日は、別にカップ麺でもいいか。

 

 

 

「裕樹が今、カップ麺で済ませようとした」

 

「ええ!? 裕樹さん、お昼ご飯はちゃんと食べないと!」

 

「あ、ボクが来て足りなくなっちゃったからか……」

 

 

 

 おい、ミラー。

 こんな時にまで心を読まなくたって……。

 

 それと、玲衣はそんないつもの反動かってくらいいちいち落ち込むのをやめろ。

 

 ああ、もう。

 こんなに家でわちゃわちゃやるのは結構久しぶりのことかもしれねえ。

 

 でも。

 

 意外とこうやって何人かで集まって楽しむってのも悪くねえもんだな。

 

 玲衣と会わなくなってからずっと一人で暮らしてから、こういうのが楽しいもんだってことを忘れてたよ。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 そうして暫くして、裕樹は疲れたからと言って自分の部屋に戻ってしまった。

 そうなると、残されるのは咲、玲衣、ミラーの三人。

 

 全員魔法少女をしている、またはしていたという共通点こそ持っているが、どうも話が続かない。

 

 咲と玲衣、玲衣とミラーだけならばそれなりに付き合いがあるので話が続く。

 

 しかし、咲希とミラーがほぼ初対面ということもあり、()()()話すとなると上手くいけないのだ。

 

 しかも、咲も流石魔法少女と言うべきか、ミラーが完全な人間ではないことに気づいている。

 

 そこに触れてはいけないであろうことが分かっているので中々話しかけられていない、という訳だ。

 

 

 

「話、上手くいかない」

 

「ボク達はともかくミラーと咲は今まで関わりが無かったからね〜」

 

「す、すみません。私が邪魔ですよね?」

 

「そんなことは、ない。大丈夫」

 

 

 

 そのせいで時々咲が自己嫌悪に陥りかけているが、別にミラーと玲衣は咲がいらないだなんて思っていない。

 

 むしろ、ミラーは特に自分と属性が似ていて、サポートをメインとする咲にそれなりの関心がある。

 

 だが、今のミラーはかなり言葉が足りないことが多いので、その思いは咲に上手く伝わっていないだろう。

 もう少しだけ言葉を付け足せば、いいものを、言葉が足りないことによって面倒くさいと思っていると受け取られかねない。

 

 

 

「咲ちゃん、ミラーは色々と言葉が足りないけれど嘘は絶対に言わないから言葉通り受け取ればいいから」

 

 

 

 ただ、そのことに気づいた玲衣が自分なりに捕捉することによって、なんとか場の均衡は保たれている。

 

 それでも、咲が自分以外の二人に気圧されて中々話の中に入れないという状況は変わっていないが、少なくとも場の空気がギクシャクさせたくないという玲衣の考えだけはなんとか達成できている。

 

 だが、そこから場の空気を持っていく力を持っている人間が玲衣でもあり……。

 

 

 

「そうだね、とりあえず裕樹についてもう少し話そっか!」

 

「相変わらず突拍子もないことを……」

 

「ゆ、裕樹さんのことですか!?」

 

 

 

 突然、全員に共通している話題である裕樹のことを持ち出し、一気に場の空気を変えてしまう。

 それは、裕樹が言っているように滅多に表情を変えないミラーの目を見開かせるほど強烈で、その場の空気が変わったことを良く示していた。

 

 だが、確かにこの話題は、咲でも参加することのできる話題ではある。

 そういった点では空気こそ変わってしまったもの玲衣の判断は悪くはないのかもしれい。

 

 勿論、彼女は何も考えないでただ自分が話したいと思っていた話題をぶち込んだだけなのだが。

 

 

 

「だってさ、どうせ全員裕樹になにかしらの思いがあるじゃん」

 

「それは、そう」

 

「そりゃ……そうですけれど」

 

 

 

 そうして、彼女たちは次々に裕樹との思い出を語り始める。

 出会いは勿論、付き合いの中で起こったこと、ジャンルは様々だが、話していることは全部裕樹との思い出。

 

 気づけば、ミラーのドン引きエピソードにそこそこ親交があった玲衣がドン引きしたり、最近の裕樹を一番知っている咲の思い出話に二人が嫉妬したりと、さっきまでの固い空気が嘘みたいに消えていた。

 

 

 

 そして、そのまま。

 裕樹にとっても、裕樹の近くにもいる人々にとっても幸せな時間な時間は。

 

 ずっと……。

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